褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 市民ケーン(1941) 映画界の金字塔と言うべき作品

2018年09月09日 | 映画(さ行)
  映画史に語り継がれ続かれている大傑作が今回紹介する映画市民ケーン。しかもオーソン・ウェルズが弱冠25歳にして監督、主演まで兼ねた彼のデビュー作。現在においても映画評論家達の評価が高く今でも映画史上最高傑作と呼ばれる作品だ。この映画を褒めるのによく撮影技術のことが言われる。パンフォーカス、長回し、超ローアングル、老けメイク、時間軸構成など。しかし、このような予備知識を無しで本作を観て、あのシーンの撮影テクニックが凄いぞ、と気づく人はまずいない。今の映画の特撮技術に慣れてしまっている人にとって、正直なところ本作を観ても驚くことは何もない。1941年という時代を想像しながら見れば、あの映像はどうやって撮ったんだろうと思うかもしれないが、このシーンはどんな撮影テクニックが使われているのかを考えながら観るのはやめた方が良い。『映画好きならば絶対に市民ケーンは観ろ!』なんて偉そうに言うような自称映画評論家が多いが、ハッキリ言って余計なお世話だ。
 そりゃ~、俺だってスピルバーグ監督のジュラシックパークを見た時はリアルに動く恐竜に驚いたが、やはり映画に求めるのは感動できるか、衝撃があるか。その当時の人はこの映画の革新的な作りに衝撃を受けたようだが、今を生きる俺の観点から言うと、確かに後世に残る傑作映画はこの映画から凄い影響力を受けている。俺も本作以前の古い映画も見ているが、この映画の題材、構成、結末は現在の映画に見られるパターンが多い。
 実はこの映画の主人公は当時実在したウィリアム・ランドル・ハーストをモデルにしている。彼は新聞王と呼ばれ、アメリカのメディアを殆ど支配下におき、当時のアメリカにおいて世論を大きく動かすことすらできた。実は俺が面白かったのは、この新聞王の描き方。まだ存命中でありアメリカの政界、財界、民衆に大きな影響を与え、海外の大物政治家にも繋がりのあったハーストを25歳の青年が果たしてどのように描いてしまったのか。

 それでは映画史に残る大傑作のストーリーの紹介を。
 大豪邸において寂しく新聞王ケーン(オーソン・ウェルズ)が『バラのつぼみ』という言葉を残して死んだ。早速、彼の記録映画が製作されるが、それを観た経営陣たちは何か物足りなさを感じていた。しかし、死ぬ間際に発した言葉『バラのつぼみ』の意味を知ることによってケーンの人物像が明らかになると考え、ニュース記者のトンプソン(ウィリアム・アランド)は、ケーンの生前を知る者を片っ端から訪ねていく。
 ケーンの生涯の最初の転機は両親とはまだ幼い頃に引き離されて、銀行家の金持ちサッチャーを後見人として育てられたこと。しかし、ケーンが最も興味を持ったのは新聞の仕事。彼は友人のリーランド(ジョゼフ・コットン)、バーンステイン(エヴェレット・スローン)を引き連れ、新聞経営に乗り出す。民衆受けする記事を載せて新聞の売り上げを伸ばしまくり、そして大統領の姪であるエミリー(ルース・ウォーリック)と結婚。後々は大統領にまでなろうかという勢いで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで一躍注目の人物になる。
 そして、ついにケーンは州知事に立候補し当選するような勢いだったのだが、思わぬ墓穴を掘ってしまい次第に人生の歯車が狂ってくる・・・

 一度でも栄華を極めた人間の落ちっぷりが凄い。この主人公ケーンだが他人のアドバイスは全く聞かずに、自己中心。そりゃ~かつての友達も愛する奥さんも離れて行ってしまう。まるで自分を応援してくれている人を裏切ったり、騙したりしているために段々と人が離れていく俺の知人を思い出す。
 しかし、笑えるのが愛する売れない歌手をしている女性に対して豪華な宮殿やオペラ劇場をプレゼントしているところ。しかも、その宮殿はヨーロッパから集めた骨とう品だらけで動物園なみに象やキリンがいる。しかし、さすがにそんな物をもらっても喜べない。女性がでかい宮殿で一人ぼっちでジグソーパズルをしているのには笑ってしまった。
 そしてケーンがその女性が宮殿を出て行ってしまう時に言うセリフが凄い。『こんなに愛しているのに、なんで愛してくれないんだ?』。とんでもなく自己中で笑った。

 しかし、オーソン・ウェルズは老けメイクをしていない時でもかなりのおっさんに見える。お前本当にこの時はまだ25歳だったのかよ。しかし、本作を観て思うのは若さというのは一歩間違えれば恐ろしい。当時の新聞王ハーストは絶大な権力を持ち、まだ存命中なのにかなり馬鹿にした内容の映画を撮ってしまった。俺はその部分がかなり面白かった。それは若者が軽い冗談で、新聞王をからかってやろうかと思ったぐらいのつもりで撮ったのじゃないかと俺は想像してしまったのだが。しかし、若僧が大手の新聞会社を敵に回してはいけない。それは今の日本でも、政治家がメディアからデタラメなでっち上げで袋叩きに遭っていることからもわかる。
 ちなみに本作市民ケーン新聞王ハーストの圧力に遭う。おかげで映画の興行成績は惨敗。アカデミー賞も本命視されながらこちらも惨敗。そして、オーソン・ウェルズ自身もその後は自由に映画を撮らさせてもらえず、その後の監督作品は出来上がったフィルムが映画会社からズタズタにカットされるなどされてしまう。結局、彼は監督として市民ケーンを超える映画を撮ることもなく、脇役で見るぐらいになってしまった。
 さて、結局『バラのつぼみ』の意味は何だったんだろう。最後に理解できる仕組みになっているのだが、俺にはハッキリとしたことがわからなかった。個人的には幼い時に離れた母親との思い出の象徴だと思っているのだが。この白黒はっきりしない終わり方も今風のハリウッド映画に近い気がする。
 映画史に残る最大の傑作を見てみたい、ストーリーの内容は無視してもどんな驚くような映像技術を使っているのか知りたい人、謎解きが大好きな人、主人公の馬鹿っぷりに笑いたい人、新聞王ウィリアム・ランドル・ハーストに興味が湧いた人に映画市民ケーンを今回はお勧めしておこう。


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 監督は前述したように悲劇の天才オーソン・ウェルズ。この人のお勧め映画は黒い罠。冒頭からの長回しは、流石だと思わせます。

 

 



 

 

 
 
 
 
 


 

 




  

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