バックへ行くと、まず、竹輪担当の花岡さんが机に向かっていた。
「おはようございます!」
お互いに挨拶を交わす。
彼女の先には、南副店長がいた。
花岡さんと挨拶を交わす私の声が、彼にも聞こえていたからか、 真剣に・・・と、言うよりは、むしろ、引きつったような表情で、パソコン画面を見つめている。
いつもの副店長なら、声が聞こえれば、ごく自然に こちらを振り返るのだが、 この日は不自然なほど、じ~っと画面を見つめたままだ。
私は、絶対、言い訳しまいと、決めていた。
ある人は、私に、こう助言したが・・・。
「一言、『忘れました!』などと言ったら、カーッと頭に血が上るタイプだから、・・・!」
私は椅子に座ったままパソコンから目を離そうとしない、副店長に声をかけた。
「副店長、おはようございます。先日は、申し訳ありませんでした」
副店長は、ゆっくりと・・・ とても、ゆっくりと、こちらを振り返った。
まるで、スローモーションのように。
真正面を見ると、
「え~っと・・・」
「・・・・」
「俺が18日に発注するといったのを金曜日だと、勘違いした?」
南副店長は、小刻みに震えながら言った。
「それもありますが・・・、忘れました」
その時、私は何を思ったのか。
言ってはいけない、と言われていた事をあえて口にしていた。
ゴロゴロ、ドンピカド~ン
この瞬間、私は生まれて初めて?雷というものは、室内でも発生するのだと、瞬時に悟った。
「わ・す・れ・た・・・?」
南副店長は言葉の意味を自分で確認するかのように、呟いた。
「はい。水曜日に前倒しで私が発注しなければいけなかったことを忘れていて、 し・な・か・っ・た!」
ご丁寧に?私は、副店長の為に、『わ・す・れ・た』の意味を辞書並みに解説したのだ。
その直後の副店長の顔は・・・。
一言で表現すれば、 『沸騰した やかん 』 だった。
いつも冷静な副店長が、この日、初めて感情的になったのである。
それだけ、お店と お客様に多大なる迷惑をかけた、ということだ。
この日の教訓
南副店長曰く、
『とにかく、お店と お客様に迷惑をかけない それさえ、分かっていてくれたらいいから』
副店長の お話は終了。
担当から外されることもなく、 クビになることもなく、 切腹を言い渡されることもなく、
『今日の発注のアドバイスを頂いた!』
しかも、とっても詳しく、丁寧に。
「クリスマス前なので、小麦粉は通常の3倍発注して、ちょうどいいくらいだと思う。特に、こんな小麦粉ほしかった(商品名)は、よく売れるので多めに・・・」 などなど。
そして、
荷出しも手伝ってくれた。
副店長は、いつもの笑顔で、何故か、字幕スーパーの翻訳家の事を話題にし、 『字幕なしで映画を鑑賞するか?』と質問しながら・・・。 (字幕は必ず読みます!どう、翻訳してあるか、興味あるし、100%理解できるわけじゃないので)
しかも、
『クリスマスケーキの手渡し方法』に関する私の質問にも答えてくれた!
「クリスマスケーキを予約している お客様には、カトちゃんがサンタ服を着て、手渡すといいのでは? 子供は喜ぶだろうし、来年も、ここでケーキ予約しよ~って、来年につながるかも?」 と私が提案。
ちなみに、梅子さんと花岡さんは、 「絶対似合う」と、太鼓判。
19歳に見えないカトちゃんには、サンタのおじさんのイメージぴったり!
ついでにハマグリ君をトナカイにしちゃったりして・・・。
100円均一で売られているトナカイの角の ヘアーバンドしたら・・?
ア~、あまりにも、イメージぴったりすぎて、笑える・・・
実は、南副店長はサンタだった!
・・・という、秘話を披露してくれたのである。
花園バイヤーと共に、子供達と、じゃんけんし、勝ったら***という企画を店前で行ったという。
副店長がサンタさんになり・・・。
「マイ衣装も、持ってますよ」
と、南副店長。
次回は、私も是非、参加・・・じゃなかった、見学したい。
そして、最後に
「残業できますか?」
2時間残業して、一日が終了・・・とあいなった。
色々あり、 迷惑をかけ、 ハラハラどきどきした数日間だったが・・・。
犠牲を払いながらも学ぶ事も多かった。
この失敗を教訓にし、 今後に生かせたら・・・
お店をつぶさないよう、精進致します。
そして、遂に・・・!
そう、今度こそ、 完
正真正銘の完である!