海に流れついたのはいつだったのだろう。こころは海の底へ沈んでいた。沈殿物が堆積し、僕は化石になった。海は穏やかな流れに乗って、世界中の土地に足を運ぶ。いろんな経験をして、僕をそっと包んでくれる。海は優しい存在だ。僕はそう確信している。海は僕を安心する場所へ運んでくれる。波のリズムに合わせて流れていけば、そこにはきっと居場所がある。僕は海では泳ごうとはしない。海は優しく僕を運んでいってくれるだろうから。
海は嵐に見舞われようが、雪に凍らされようが、その身の雄大さを保ち続ける。僕が身を寄せるのはそのためだ。僕はこの生命に生れて、あまり得をしたことがない。でも、この海と一緒なら、僕はどこまでも行くことができる。安心できるパートナーだ。海は何も文句を言わずに流れている。人々がどんなに病んでいても、海はその存在を、まるで雨の日にひっそりと佇んでいる蛙のように、身を置いているのだ。
こころの中にはいつも波のリズムと、広大な青の世界が広がっている。僕はその事を思うときだけ、安心を取り戻すのだ。
海が僕を流し去ってくれる、そんなことを思うのだ。