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近視の発症・進行に関与する新たな遺伝子を発見

2020-05-25 | 健康・病気
 横浜市立大学学術院医学群 眼科学の目黒明特任准教授と水木信久主任教授らの研究グループは、強度近視を対象とした遺伝子解析研究を行い、近視の発症・進行に関与する新たな疾患感受性遺伝子領域を同定した(5月18日発表)。この研究成果は、京都大学、シンガポール国立大学、国立台湾大学との共同研究によるものである。本研究の成果は、眼科の主要国際雑誌「Ophthalmology」に掲載。
 研究成果のポイント
 〇アジア人(日本人、シンガポール人、台湾人)の強度近視を対象としたゲノムワイド関連解析により、近視の発症と進行に関与する9個の疾患感受性遺伝子領域を同定した。
 〇上記の疾患感受性遺伝子領域のうち、6個(「HIVEP3」、「NFASC-CNTN2」、「CNTN4-CNTN6」、「FRMD4B」、「LINC02418」、「AKAP13」)が新規の疾患感受性遺伝子領域であった。
 〇上記9個の疾患感受性遺伝子領域は「シナプスシグナル伝達」、「神経発達」、「Ras/Rhoシグナル伝達」に関連する神経系の機能を亢進または抑制させることによって近視の発症、進行および病態に深く関与することが分かった。
 〇以上の成果は、近視の発症リスクおよび進行度を遺伝子判定から予測するための基礎情報になることが期待される。
 研究の背景
 近視は、眼軸の延長と水晶体の屈折力の変化により網膜への結像が障害される眼疾患である。近視の中でも眼軸長の異常な延長を示す「強度近視」は、網膜剥離や黄斑下出血、緑内障、白内障、網膜変性症などの基礎疾患となり、重篤な視力障害を引き起こすことが知られている。強度近視の患者は日本、中国、シンガポールを含むアジア地域に多く、他の地域における有病率と比べて著しい高値を示す。近視の有病率は世界中で急激に上昇しており、2050年までに世界人口の約半分(約50億人)が近視を、約10%(約10億人)が強度近視を有する(すなわち、10人に1人が失明のリスクを抱える)ことが予想されている。近視は遺伝要因(疾患感受性遺伝子)と環境要因とが複合的に関与して発症・進行する多因子疾患と考えられており、これまでに遺伝子解析研究が多数実施されているものの、未同定の疾患感受性遺伝子が依然として多く存在することが示唆されている。
 研究の内容
 近視の発症・進行に関与する疾患感受性遺伝子を同定するため、日本・シンガポール・台湾の3ヵ国による国際共同研究を実施した。近視の程度が強くなるほど、その発症・進行に対する遺伝要因の影響度が大きくなることが報告されているため、本研究では、強度近視を対象に遺伝子解析を行った。
 まず日本人集団(強度近視患者1,668例、健常者1,601例)を対象にゲノム全域を網羅するSNP解析(ゲノムワイド関連解析:GWAS)を実施したのち、新たな日本人・シンガポール人・台湾人集団(強度近視患者881例、健常者9,946例)を用いて追認試験・メタ解析を行った結果、強度近視とゲノムワイドレベルの相関(P < 5×10-8)を示す9個の疾患感受性遺伝子領域(「HIVEP3」、「NFASC-CNTN2」、「ZC3H11B」、「CNTN4-CNTN6」、「FRMD4B」、「LINC02418」、「GJD2」、「RASGRF1」、「AKAP13」)を同定した。同定した9個の疾患感受性遺伝子領域のうち、3個(「ZC3H11B」、「GJD2」、「RASGRF1」)は既知の有力な近視感受性遺伝子領域であり、6個(「HIVEP3」、「NFASC-CNTN2」、「CNTN4-CNTN6」、「FRMD4B」、「LINC02418」、「AKAP13」)が今回のGWAS研究で新たに同定された疾患感受性遺伝子領域となる。
 上記9個の疾患感受性遺伝子領域を対象とした機能解析の結果、これら疾患感受性遺伝子領域内に位置する複数の遺伝子の発現量の変動が近視の発症・進行に有意な影響を与えることが分かった。また、遺伝子オントロジーエンリッチメント解析により、「シナプスシグナル伝達」、「神経発達」、「Ras/Rhoシグナル伝達」に関連する神経系の機能の亢進や抑制が近視の発症、進行および病態に深く関与していることが分かった。
 本研究は、眼軸長の異常な延長を示す強度近視を対象としたGWAS研究であり、本研究で網羅的に同定された疾患感受性遺伝子は近視の発症・進行に影響を与える重要な遺伝要因であることが推察された。
 今後の展開
 本研究の成果は、近視の発症メカニズムおよび病態の全容解明の一助となることが期待される。また、本研究で得られた遺伝学的情報は、近視の発症リスクおよび進行度を遺伝子判定により予測するための基礎情報になることが期待される。近視を発症するリスクや近視発症後の進行度を予測出来れば、近視の発症・進行予防への早期取り組みが可能となり、医学的・社会的価値は大変高いと考えられる。
 ◆用語解説
 〇ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS)
 ゲノムワイドとは、「ゲノム全体」、「ゲノム全域にわたる」の意であり、ゲノムワイド関連解析は、ゲノム全域を網羅する遺伝子多型(主にSNP)を対象に、ある疾患を持つ群と持たない群との間で統計学的に有意な頻度差を示す遺伝子多型を検索する手法である。
 〇SNP
 single nucleotide polymorphism(一塩基多型)の略。ヒトゲノムは30億塩基対のDNAからなるとされているが、個々人を比較するとそのうちの 0.1%の塩基配列に違いがあると見られており、これを遺伝子多型と呼ぶ。遺伝子多型のうち、1つの塩基が他の塩基に置き変わるものをSNPと呼ぶ。SNPは最も多く存在する遺伝子多型である。遺伝子多型のタイプにより遺伝子をもとに体内で作られるタンパク質の働きが微妙に変化し、疾患の罹り易さや医薬品への反応に変化が生じる場合がある。
 〇遺伝子オントロジーエンリッチメント解析
 遺伝子オントロジー(Gene Ontology)とは、各遺伝子の機能や役割を階層化して分類・整理し、遺伝子に付けられるアノテーション(注釈付け)であり、遺伝子オントロジーエンリッチメント解析は、遺伝子オントロジーが関連付けられた遺伝子集団にはどのような生物学的プロセスや分子学的機能が多く含まれているかを調べる解析手法である。

ステロイドの副作用からこどもの骨を守る治療法開発に成功

2020-05-09 | 健康・病気
 北海道大学大学院医学研究院の髙畑雅彦准教授、同大学院歯学研究院の網塚憲生教授らの研究グループは、第一三共株式会社と共同で、同社が創生したシグレック15抗体が小児ステロイド性骨粗しょう症に対し、有効かつ安全な治療法となり得ることを世界で初めて証明した。本研究成果は2020年3月23日(月)公開のBONE誌にオンライン掲載。
 ポイント
 〇抗シグレック15療法がステロイドの副作用である骨粗しょう症の予防に有効であることを証明。
 〇抗シグレック15療法は骨成長を妨げずに骨量及び骨強度を増加させる。
 〇小児ステロイド性骨粗鬆症治療薬開発の進展に期待。
 骨粗しょう症は高齢者に多い病気だが、小児でも骨系統疾患(生まれつきの骨の病気)やネフローゼ症候群、小児がんなどの疾病やその治療に用いられる薬剤によって骨粗しょう症を発症することがある。
 最も頻度が高いのはステロイド薬による骨粗しょう症で、長期的に使用した場合やパルス療法を行なった場合は、脆弱性骨折を起こすこともまれではない。成人では、ステロイドを投与する場合、予防的に骨粗しょう症治療薬を併用投与することが推奨されている。しかし小児では、既存の骨粗しょう症治療薬の安全性が確立されておらず、ステロイドと併用できる骨粗しょう症治療薬がない。そのため、小児にも安全に使用できる新しいステロイド性骨粗しょう症治療薬の開発が必要とされている。
 骨粗しょう症の治療には破骨細胞の分化や働きを抑える骨吸収抑制薬が主に用いられるが、この薬剤を成長期の小児に使用した場合、骨の成長を妨げる可能性がある。これは、成人の骨が形を変えないままリモデリング(新陳代謝)で維持されるのに対し、成長期の骨はリモデリングに加えて、成長に伴う形態変化(モデリング)が必要なためだ。破骨細胞はこのモデリングにおいても重要な役割を担っている。実際に、遺伝的に破骨細胞ができない/機能しないマウスでは長幹骨に成長障害がみられ、こびと症を呈する。
 シグレック15抗体と既存骨粗しょう症薬、予防効果と骨成長への影響をラットで比較
 シグレック15 は主に破骨細胞の細胞膜に発現するシアル酸受容体ファミリータンパク質のひとつで、破骨細胞の最終分化を制御するI型膜タンパク質。シグレック15遺伝子を欠損するマウスは破骨細胞分化不全による大理石病様表現型を示すものの、成長障害はきたさない。これは成長帯付近にシグレック15の代償経路が存在するためだ。つまり、抗シグレック15分子標的療法は、骨の成長に悪影響を与えずに骨量を増加させる理想的な小児骨粗しょう症治療法といえる。そこで今回、研究グループは、成長期の小児ステロイド性骨粗しょう症に対するシグレック15 抗体と代表的な既存骨粗しょう症治療薬であるアレンドロネートの予防的治療効果と骨成長への影響を、ラットを用いて検討した。
 6週齢の成長期雌ラット背部にステロイド(プレドニゾロン)が徐々に溶け出すペレットを埋め込み、ステロイド性骨粗しょう症モデルを作成。このラットに、シグレック15 抗体、アレンドロネート、溶媒のみ(コントロール)をステロイド投与と同時期に6週間投与し、骨成長への影響と骨量・骨強度増加効果を比較検証した。骨成長への影響は、経時的な体長、大腿骨長の計測と成長帯の組織学的観察で評価した。骨量・骨強度増加効果は、X線マイクロCTを用いた骨量・骨微細構造解析、重エネルギーX線吸収測定法による骨密度測定、組織学的観察で評価した。
 抗シグレック15療法は骨成長を妨げず、骨量と骨強度を増加
 ステロイドを投与したラットは、健常ラットと比較して大腿骨の骨量と骨強度が低下するとともに体長及び大腿骨長の成長が鈍化した。ステロイドに加え溶媒のみを投与したラットと比較して、シグレック15抗体を投与したラットでは体長や大腿骨長に変化はなかったが、大腿骨の骨量、骨密度と骨強度が有意に改善した。アレンドロネートを投与したラットでは、骨量や骨密度が有意に改善したが、骨の形態異常や骨成長帯に異常が生じた。シグレック15抗体はアレンドロネートと比較して骨量増加効果や骨強度改善効果が優れていたが、これはアレンドロネート投与により骨形成がさらに低下したのに対し、シグレック15抗体投与では低下しないためと考えられた。つまり、骨成長に対する安全性だけでなく、骨粗しょう症治療効果においてもシグレック15抗体は既存の骨吸収抑制剤よりも優れる可能性が示された。
 研究グループは、「抗シグレック15療法は、小児ステロイド性骨粗しょう症に対して有効かつ安全に使用できる可能性が示された。小児がんや自己免疫疾患、ネフローゼ症候群などの病気に苦しむ子どもにステロイドを使う際の有効な予防法になると期待される」と、述べている。
 ◆用語解説
 〇破骨細胞
 骨の新陳代謝の過程において、古い骨を溶かして吸収する細胞。閉経や炎症、がんなどで過剰に数が増えると病的な骨吸収を引きおこし、骨粗しょう症や病的骨破壊の原因となる。
 〇シグレック15
 骨の吸収を担う破骨細胞の最終分化を制御するタンパク質(免疫グロブリン様受容体)。
 〇成長帯
 関節の近くの軟骨でできた部分。骨は、成長帯において伸びる。
 〇パミドロネート、アレンドロネート
 骨粗しょう症治療の第一選択薬であるビスフォスフォネート製剤。破骨細胞に取り込まれ、細胞の自死(アポトーシス)を誘導することで骨吸収を強力に抑制する。

 今日の天気は晴れ。日々、気温が上がり、今日の最高気温は、23℃とか。
 小さなお庭の隅で、”ゴウダソウ”の花が咲き始めている。・・まだ団扇の様な丸い莢の実は付いていない。
 名(ゴウダソウ)の由来は、1901年(明治34年)に東京美術学校教授の合田清氏がパリから種子を持ち帰ったのが始まりである。学名はルナリア(Lunaria annua)、属名の Lunaria はラテン語の「Luna(月)」からである。団扇(うちわ)の様な丸い莢(さや)の形から名づけられたものである。因みに、昨日紹介した”ヒメキンギョソウ(姫金魚草)”は、別名:リナリア(Linaria)。
 花後にできる莢がとてもユニークで、団扇の様な円形の平たい莢の中に数粒の種がある。最初は淡緑色だが段々と曇りガラスの様な透明感のある薄い膜となる。熟して種が出てしまっても薄い膜(隔膜)が株に残る。
 ゴウダソウ(合田草)
 別名:大判草(おおばんそう)、銀扇草(ぎんせんそう)、銀貨草(ぎんかそう)
    ルナリア(Lunaria)
 学名:Lunaria annua
 アブラナ科ルナリア属
 一年草
 原産地はヨーロッパ中央部
 開花時期は5月~6月
 花は径2cm位でアブラナ科特有の十字形の花びら
 花色は赤紫色、白色もある
 花後の種子は薄く半透明で団扇のような形の莢に入っている


ヒト皮膚線維芽細胞からヒト褐色脂肪細胞を誘導する方法を開発

2020-04-12 | 健康・病気
 京都府立医科大学大学院医学研究科細胞再生医学戴平研究教授らの研究グループは、ヒト皮膚由来線維芽細胞を最適化された数種類の低分子化合物を添加した無血清誘導培地を用いて培養することにより、褐色脂肪細胞を誘導する方法を開発した。本研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」(英国時間:2020年2月28日)に掲載。
 褐色脂肪細胞は、脂肪を蓄えるための細胞ではなく、脂肪を燃焼し熱を産生する細胞として知られており、体温の維持や代謝の向上によって、肥満や糖尿病の予防に重要な役割を果たしていると考えられている。研究グループは、ヒト皮膚由来線維芽細胞から数種類の低分子化合物を添加した無血清培地を使用し、褐色脂肪細胞を簡便かつ短期間で誘導する方法を開発した。この誘導方法は、遺伝子の導入を行う必要がなく、動物由来成分や未知の成分を含む血清を使用しないため、基礎研究だけでなく、創薬研究にとって極めて重要である。また、この褐色脂肪細胞は上記の理由から安全性が高いことが想定され、将来的な臨床応用や細胞移植治療を行う上で大きなメリットとなる。今後、ciBAsを用いて褐色脂肪細胞がヒトの体内で発生する仕組みの解明や、体内の褐色脂肪細胞を増加させる機能性食品や薬の評価、個別化医療などに利用されることなどが期待される。
 研究成果のポイント
 ○数種類の低分子化合物を添加した無血清誘導培地を使用し、ヒト皮膚線維芽細胞から、褐色脂肪細胞ciBAs (chemical compound-induced brown adipocytes)を誘導する方法を開発した。
 ○ciBAs は、褐色脂肪細胞に特徴的な遺伝子発現を示し、ミトコンドリアによる酸素消費量が増加していることから、新規なヒト褐色脂肪細胞モデルとして利用可能である。
 ○ciBAsは、無血清培地を用いて簡便かつ短期間に誘導されることから、褐色化を促進する機能性食品の成分や既存薬の探索を目的とした創薬研究に最適であると考えられる。
 ○ciBAsは、個別化医療の他、将来的な細胞移植治療への臨床応用が期待される
 研究概要
 研究の背景
 食事や運動などの生活習慣において、エネルギーの摂取が消費を超えると肥満の原因となり、糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞などの重篤な疾患を発症する大きな要因となる。病的な肥満だけでなく、加齢に伴う基礎代謝の減少による軽度の肥満であっても、長期的にはこれらの代謝疾患のリスクと関連することが指摘されている。脂肪細胞には大きく分けて2種類あり、通常の脂肪を蓄える白色脂肪細胞と、脂肪を消費して熱に変換する褐色脂肪細胞がある。我々ヒトでは個人差が大きいですが、褐色脂肪細胞は首回りや胸回りの脂肪内に散在しており、活発な糖や脂肪の代謝を行っている。これらの褐色脂肪細胞は、褐色化(Browning)という現象により白色脂肪細胞から性質が変化したベージュ細胞に近いと考えられている。褐色化によるベージュ細胞の増加は、長期的な寒冷刺激や運動などによって起こると報告されているが、その発生メカニズムの詳細はまだ明らかとなっていない。
 -- --ダイレクトリプログラミング
 分化した細胞に特定の遺伝子を人為的に発現させることによって、目的の細胞を直接誘導する手法をダイレクトリプログラミングと言う。しかし、遺伝子の導入に基づいた方法では、細胞の機能や遺伝情報を損なう危険性がある。また、多能性幹細胞などから特定の細胞を分化させても、未分化の幹細胞が残留することによる腫瘍化のリスクが存在する。
 そこで我々はこれまで、細胞のシグナル伝達経路や転写因子を制御する低分子化合物を複数用いて、ヒト線維芽細胞から神経細胞や褐色脂肪細胞を誘導することに成功した。このように、遺伝子の導入を行わず低分子化合物のみで直接誘導することによって、安全性が高い細胞を短期間で誘導することができる。以前の研究から、5種類の低分子化合物を用いて低分子化合物誘導性褐色脂肪細胞ciBAs の誘導に成功したものの、創薬研究や臨床への応用には、誘導培地中の血清の使用が障害となっていた。
 本研究では、血清を使用しない無血清培地と、これに最適化された化合物カクテルを新たに同定し、簡便かつ短期間にciBAs を誘導する方法を開発した。
 研究の内容
 本研究では、まず褐色脂肪細胞の分化に重要なBMP7(骨形成タンパク質)というサイトカインを新たに使用すると同時に、前回ciBAs の誘導に使用した5種類の低分子化合物の組み合わせについて検討した。その結果、この5種類の中で骨形成タンパク質の機能を阻害する2種類の化合物を除くと、BMP7 はciBAs の誘導効率には影響を与えないものの、褐色脂肪細胞のマーカー遺伝子であるUcp1( Uncoupling protein 1 ) の発現を活性化させることがわかった。次に、無血清培地において、血清の代わりに特定の脂肪酸のみが結合したアルブミンを使用することで、脂肪酸の供給と細胞の安定性の向上を図った。この時、上記のBMP7 を使用した新しい化合物の組み合わせが、無血清培地下での誘導においても有効であることがわかった。また、血清の存在下ではciBAs の誘導に、TGF.シグナル伝達経路の阻害剤が必要であったが、無血清培地ではこの経路が活性化しておらず、この阻害剤を使用しない方がより効率よく誘導されることが判明した。
 このように最適化された化合物カクテル( Rosiglitazone 、Forskolin 、BMP7)を添加した無血清培地を用いて線維芽細胞を培養することで、2.4週間以内にciBAs が誘導される。また、このciBAs は、ヒトの褐色脂肪細胞(ベージュ細胞)に特徴的な遺伝子発現を示し、アドレナリン受容体作動薬によるUcp1 遺伝子の発現上昇が検出された。また、ミトコンドリアによる酸素消費量が増加していることから、細胞内の脂肪酸代謝が活性化していることを証明した。
 今後の展開
 近年、世界中で肥満者の増加が社会問題となっており、日本においても肥満が引き起こす糖尿病や循環器疾患が医療費高騰の大きな要因の一つとなってる。本研究では、ヒト皮膚線維芽細胞から数種類の低分子化合物と無血清培地を用いて、簡便かつ短期間に褐色脂肪細胞ciBAs を誘導する方法を開発した。この誘導方法は、遺伝子の導入を行う必要がなく、また動物由来成分や未知の成分を含む血清を使用しないため、基礎研究だけでなく創薬研究にとって必須の誘導方法となる。採取が難しいヒト褐色脂肪細胞(ベージュ細胞)の代わりに、ciBAs を新規な褐色脂肪細胞モデルとして用いることで、褐色化を促進する機能性食品の成分や既存薬の探索といった創薬研究に最適であると期待されるす。
 そして、これまで具体的な方法がなかった、日々の生活から機能性食品などの摂取により、体内でベージュ細胞を増加させることができれば、安全で画期的な肥満や糖尿病の予防になると期待される。また、ciBAs を用いて褐色脂肪細胞がヒトの体
内で発生する仕組みの解明に資することが期待されます。他にも我々の開発した誘導法により、複数の人から採取した線維芽細胞をciBAs に誘導し食品成分や薬の効果を解析することで、個々の人に合わせたより効果的な食品成分や薬の選択、また副作用の有無を解析するといった個別化医療への応用にも道が開けると期待される。無血清培地と低分子化合物で誘導されるciBAsは安全性が高いことが想定され、将来の臨床応用や細胞移植治療を行う上でも重要であると考えられる。

 今日の天気は晴れ。風も穏やか。明日は雨の予報なので、畑作業は雨の準備。
 畑までの道沿い、お庭に”ジューンベリー”の花が咲いていた。葉が完全に展葉する前に白い花が咲く。名(ジューンベリー)の如くに、6月(june:ジューン)には実が熟す。因みに、”ジューンベリー”の果実は酸味が弱く味に締りが感じられないので、酸味を補ってジャムなどにした方が味的には美味しい、と言う。
 ”ジューンベリー(June berry)”と呼んでいるのは、ザイフリボク属の同じ様な果実が付く種の総称であるが、”アメリカザイフリボク”とも呼ばれる。”ザイフリボク”との違いは、”ザイフリボク”は雄しべが20個・雌しべの花柱が5個で下部が合着している、”アメリカザイフリボク(ジューンベリー)”は雄しべが18個、1つの花柱の先が5分裂している。
 ジューンベリー
 別名:アメリカザイフリボク
 英名:Juneberry
 学名:Amelanchier canadensis
 バラ科ザイフリボク属
 落葉性広葉樹、低~中木
 原産地:北アメリカ北東部
 開花時期:4月~5月
 花は5弁で白色、果実は6月頃に熟す
 果実はスグリほどの小さな実で、熟すと赤から濃い紫へと色付く


70万人のゲノムによるリスク予測で、高血圧・肥満が現代人の寿命を最も縮めている

2020-03-26 | 健康・病気
 大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学教室坂上沙央里大学院生(東京大学大学院医学系研究科博士課程)、金井仁弘特別研究生(ハーバード大学医学部 博士課程)、岡田随象教授らの研究グループは、日本・イギリス・フィンランドの大規模バイオバンクが保有する合計70万人のゲノム情報・バイオマーカー・寿命情報を解析する手法を開発し、健康バイオマーカーの値をゲノム情報から予測するとともに、人種横断的に高血圧・肥満が現代人の寿命を縮める原因になっていることを明らかにした。 日本人では高血圧が、欧米人では肥満が寿命への影響が大きく、糖尿病罹患患者・男性など特にリスクが大きいサブグループの特定にも成功した。
 本研究成果は、米国科学誌「Nature Medicine」に、3月24日(火)午前1時(日本時間)に公開。
 研究成果のポイント
 〇個人のゲノム情報を用いて将来の健康リスクやバイオマーカー値を予測するポリジェニック・リスク・スコア(PRS)と寿命の長さとの関連を調べることで、高血圧・肥満が特に現代人の寿命を縮めていることを導き出した。
 〇世界中から集められた70万人のゲノム情報を活用することで、これまでの観察研究では困難だった、因果関係が明らかな健康リスク因子の特定に成功した。
 〇今回開発した手法を更に多様なバイオマーカーや電子カルテデータ、人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、医療が改善できる要素を見つけ介入する、個別化医療・予防医療に貢献することが期待される。
 医学研究分野では、個人の健康状態の最終結果である「健康アウトカム」、すなわち寿命や健康寿命が、どのような原因によって短くなったり長くなったりするのかを特定することが一つの目標である。これまでの大規模なゲノム研究によって、集めた遺伝情報からゲノムと病気の発症との関連について「ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)」という数値が導き出され、個人のゲノム情報から将来の病気の発症の予測ができるようになった。しかし、PRSは生まれつきの遺伝要因しか考慮されていないため、PRSを集団レベルで寿命や健康の改善に結び付ける方法に課題があった。
 今回、岡田教授らの研究グループは、健康の指標かつ治療可能なバイオマーカーのPRSと寿命(死亡年齢)との関連を人種横断的に調べる手法を開発し、世界70万人のゲノムデータに適用することで、現在の世界の人々の寿命を縮める最も強い原因が高血圧と肥満であることを特定した。この手法を更に多様な健康マーカーや人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、どのバイオマーカーをモニターし医学的に介入すれば健康アウトカムの改善が期待できるかを推定することができる。すなわち、ゲノム情報を用いた個別化医療・予防医療の実現が期待される。
 研究の背景
 この20年間の大規模なヒトゲノム研究により、ゲノム上の多様性がどのように病気や個人の特徴(形質)に影響を与えているかについて全体像が明らかになった。一般的な病気や形質に与える遺伝要因の影響は「ポリジェニック」、すなわち個々では非常に小さな一つの遺伝的変異の影響の数十~数千個にわたる組み合わせと足し合わせにより形成されていることが分かった。
 これまで、世界中の研究機関や国家的なバイオバンクの協力により、ヒトの個性を形作る多様な形質に関する数万人~数百万人を対象とした研究が行われ、一つずつの遺伝的変異がヒトの形質に与える効果量が概ね推定できるようになった。この結果を利用して、個人ごとの遺伝的変異の組み合わせとそれらの効果量を掛け合わせて和をとった「ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)」を計算することで、将来の疾患リスクが高い人たちを特定できるようになった。しかし当然、生まれたときに与えられた遺伝要因は変えることができないため、このスコアを健康アウトカムの改善に役立てる方法論に課題があった。
 一方で、人間の健康は遺伝的なリスクだけではなく環境因子や生活習慣の影響も強く受ける。寿命などの健康アウトカムの違いの原因となるリスク因子を見つけることは、医学研究の最大の目的の一つである。これらのリスク因子に医学的な観察・介入を行えば、集団レベルで健康アウトカムを改善させることが期待できるからである。従来リスク因子の特定には、観察研究やランダム化比較試験の手法が用いられてきた。しかし、観察研究からは因果関係の証明ができず、ランダム化比較試験は費用や倫理面の問題から非常に限られた検査値にしか応用できないという問題点があった。
 今回、岡田教授らのグループは、近年、臨床的有用性が注目されているPRSを、大規模なゲノム情報と臨床情報に適用し、さまざまな健康のリスク因子と寿命との関わりを調べた。
 本研究の成果
 研究グループは、身長、体重や血液検査値など多数のリスク因子の候補(バイオマーカー)に対して、それぞれのPRSを作成して寿命との関連を調べることで、どのバイオマーカーが現代人の寿命を伸ばしたり縮めたりする原因となっているかを特定する手法を開発した。これまでの観察研究では、たとえバイオマーカー自体と寿命に相関があっても、バイオマーカーが寿命の長さを規定する原因なのか、それともその他の健康状態が影響してバイオマーカーの値が変化しているのかの因果関係が分からない。生まれつきのゲノム情報によるバイオマーカーの予測値(原因)であるPRSと寿命(結果)との関連を調べることにより、因果関係を担保した状態で寿命を規定する因子を見つけることができる。この手法を、日本(バイオバンク・ジャパン--18万人)、イギリス(UK バイオバンク--36万人)、フィンランド(フィンジェン--14万人)の国家的なバイオバンクで保有する遺伝子情報と臨床情報に適用し、世界で初めて、人種横断的に高血圧が現代人の寿命を最も縮めていることを示した。特に、糖尿病・脳梗塞・脂質異常症を合併した人でその影響は強く、心血管病による死亡と最も強く関連していた。肥満も寿命を最も縮める強い要因でしたが、その影響の強さは欧米人の方が日本人よりも大きいこともわかった。特に、不安定狭心症を合併した人でその影響は強く、脳血管病による死亡と最も強く関連していた。血圧・肥満に続き、高コレステロール、高身長、低血小板も寿命を縮めるバイオマーカーとして特定された。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 本研究では、これまで行われてきた観察研究やランダム化比較試験の課題点を克服し、遺伝情報を用いることで高血圧や肥満が現代人の寿命を縮めていることを初めて示した。今回関連が同定されたバイオマーカーは寿命を決定する原因となっている可能性が高く、医学的に観察・介入することで集団レベルでの健康アウトカムを改善することが期待される。現在、全世界で大規模なバイオバンクによるゲノム情報・臨床情報・電子カルテ情報の収集が盛んに行われ、いまだかつて無いほど膨大に蓄積されつつある。この手法を更に多様なバイオマーカーや電子カルテデータ、人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、医療が改善できる課題を見つけ介入する、個別化医療・予防医療に貢献することが期待される。
 ◆用語説明
 〇バイオマーカー
 ヒトの疾患病態や生物的特徴の説明に役立つ、測定指標のこと。体重、血圧などの身体測定値や、コレステロールや尿酸などの血液検査値が含まれる。
 〇バイオバンク
 疾患疫学や病態研究などを目的に、多数のヒトのDNA、血清、尿、組織などの検体を収集、蓄積、管理する施設のこと。近年では国家レベルで数十万人を対象とするバイオバンクが構築され、個人の検体とともに電子カルテ上の臨床情報やその後の予後などの追跡情報も蓄積される例が多い。
 〇健康アウトカム(health outcome)
 健康状態の結果を表す指標のこと。医療介入の評価の一指標として用いられる。寿命、健康寿命、薬剤治療への反応性、生活の質(Quality of life; QOL)などが含まれる。
 〇ポリジェニック・リスク・スコア(polygenic risk score; PRS)
 大規模なゲノムワイド関連解析研究(GWAS; ヒトゲノム配列上に存在する数千万カ所の遺伝子変異とヒト疾患との発症の関係を網羅的に検討する、遺伝統計解析手法)により疾患や形質との関連が示唆された数十~数千の遺伝的変異の重み付きの和を個人ごとに計算したスコア。このスコアは実際の疾患発症リスクと相関することが示されており、集団内でスコアの分布を調べることで、特にその疾患のリスクが高い個人を特定することができる。
 〇ポリジェニック(polygenic)
 糖尿病、高血圧など頻度の高い疾患や、身長、体重などの形質では、多数の(ポリ)遺伝的変異の影響(ジェニック)が組み合わされ足し合わされて全体の遺伝的な影響が説明されるということ。
 〇観察研究(observational study)
 研究のための治療などの介入を行わず、血液検査値などのある時点での観察値とアウトカムとの関連を調べる研究のこと。値とアウトカムに相関を認めても、どちらが原因でどちらが結果かの判断が困難な場合がある。(例: 体重が少ない方が寿命が短い相関が出たとき、痩せているせいで死亡率が高いのか、もともと持病があり痩せてしまったのか、判断できない。)
 〇ランダム化比較試験(randomized controlled trial; RCT)
 ある要因がアウトカムに与える影響を示すために、要因に対して投薬などの医学的な介入で変えてアウトカムへの影響を調べる方法の一つ。集団をランダムに介入群と非介入群に割り付け、アウトカムへの影響を比較することで、未知の交絡因子のない因果関係を明らかにすることができる。(例:LDLコレステロールの値が高いことが心筋梗塞のリスクを高めることを示すために、LDLコレステロールを下げる薬を与える群と与えない群での心筋梗塞の発生を追跡比較する。)
 〇バイオバンク・ジャパン(BioBank Japan)
 日本人集団27万人を対象とした生体試料バイオバンクで、ゲノム解析が終了した人数は約20万人とアジア最大である。オーダーメイド医療の実現プログラムを通じて、ゲノムDNAや血清サンプルを臨床情報と共に収集し、研究者へのデータ提供や分譲を行っている。
 〇UK バイオバンク(UK Biobank)
 英国で実施されている国家的バイオバンク機構。中高年のボランティア約50万人を対象に、ゲノム情報や2千以上の多彩な臨床情報、追跡情報を収集し、ほぼ無償で世界の研究者にデータの公開や分譲を行っている。
 〇フィンジェン(FinnGen)
 フィンランドで実施されている国家的バイオバンク機構。フィンランドの大学、既存のバイオバンク、病院、国際的な製薬会社が手を取り、50万人を目標にゲノムデータの収集を行っている。更にフィンランド政府のhealth registryとの紐付けにより豊富な臨床情報の入手が可能である。
 〇不安定狭心症
心臓に血液を送る冠動脈の流れが悪くなり、心筋に送り込まれる血液が不足し心筋が酸素不足に陥る病気を「狭心症」という。このうち、完全に血流が途絶えて閉塞した状態となるのが急性心筋梗塞で、その一歩手前で閉塞が不完全な状態でとどまっているのが、不安定狭心症。急性心筋梗塞に移行する可能性が高く、安静時にも胸痛などの症状を認める。

 晴れ。朝はまだ寒いと感じたが、昼近くから暖かくなってきた。最高気温は18℃・・暖かい。
 散歩道沿いの”ボケ”。やっと花が咲き出した。赤い花・・可愛い、小さな赤い球の蕾も多い・・満開になったらとても綺麗だ。
 名(ボケ:木瓜)の由来は、木になる瓜だから木瓜(もけ、ぼっくわ)で、これが転訛して”ボケ”となったと言う。本草和名(ほんぞうわみょう、日本現存最古の薬物辞典、延喜年間(901年-923年)に編纂)では、”もけ”と収録されている。
 花色は基本的に紅・淡紅で、白や白と紅の斑などがある。花色や由来・季節などによって色々な名で呼ばれる。
  唐木瓜:ぼけ(木瓜)の異名・・中国から渡来したから
  緋木瓜:花色が緋色から
  寒木瓜:冬(11月)に咲くボケ
  淀木瓜:真紅で小輪
  白木瓜:花色が白色
  更紗木瓜:花色が紅地に白
  広東木瓜:淡紅色で大輪
  長春木瓜:四季咲き
 ボケ(木瓜)
 別名:放春花(春を呼ぶ花)
 学名:Chaenomeles speciosa
 バラ科ボケ属
 落葉低木(樹高は1m~2m)
 中国原産、平安時代に渡来
 開花時期は3月~4月
 花の径は3cm前後、花色は紅・淡紅、白、白と紅の斑など
 ◆ボケと言えば「もの忘れ」の事でもある
 「もの忘れ」には加齢によるものと病気が引き起こすものがある。加齢によるものとは自然な老化による記憶力の低下である・・これが本来のボケ。自分が忘れたと言う自覚があれば”ボケ”で、自覚がなければ”認知症”となる。因みに、年齢と共に記憶力は低下し、20代と比べて50代では半分、70歳以上では4分の3まで失われるとの事。
 ある研究によると、70歳~90歳を対象に1日3km(歩数で約4千歩)以上歩く方と殆ど歩かない方を比較したら、歩かない方の認知症の発症率が2倍といわれる。・・歩けば楽し。


がん10年生存率57%に、技術進歩で改善続く

2020-03-19 | 健康・病気
 国立がん研究センターはがんと診断された人の10年後の生存率を発表した(3月17日)。
 2003~06年にがんと診断された人の10年後の生存率は、がん全体で57.2%だった。昨年の集計に比べて0.8ポイント上昇し、データを取り始めた1990年代末から伸び続けている。特定のがん細胞を狙い撃ちする分子標的薬の登場や、早期発見につながる診断技術の進歩が貢献したとみられる。
 10年生存率の発表は5回目で、全国約20のがん専門病院で診断、治療を受けた約8万人を集計した。調査を担当した千葉県がんセンター研究所の永瀬浩喜所長は「最新の研究や治療法の進歩によって生存率が上がっていることが示された。今後も、がんゲノム医療やオプジーボをはじめとする『免疫チェックポイント阻害剤』の効果で上昇するだろう」と話した。
 また2009~2011年にがんと診断された約14万3千人の5年生存率は、がん全体で68.4%で、前年集計よりも0.5ポイント高かった。
 部位別で生存率(10年生存)が高かったのは前立腺がん(97.8%)乳がん(85.9%)甲状腺がん(84.1%)。最も低かったのは膵臓(すいぞう)がん(5.3%)で、肝臓がん(15.6%)胆のう胆道がん(18%)が続いた。
 ◆がん生存率
 がんと診断された人が、一定期間経過した後に生存している割合。がん医療を評価する指標の一つで、100%に近いほど治療の効果が高いことを示す。がんの部位や進行度、治療法ごとに集計し、がん以外の死亡の影響を除いた「相対生存率」がよく使われる。
 早期発見や治療効果の検証に役立てる目的で長期間の健康状態を見る10年生存率や、新たな治療法の影響を短期間に探る3年生存率などがある。
 ◆主ながんの5年・10年生存率(%)
        (国立がん研究センター)
 5年生存率は2009~2011年
 10年生存率は2003~2006年に診断された患者
       5年   10年 (1期 2期 3期 4期)
 前立腺がん 100.0   97.8(100.0 100.0 94.7 53.8)
 乳がん   93.7   85.9(97.6 87.4 61.9 18.3)
 甲状腺がん 92.4   84.1(99.2 100.0 94.7 53.8)
 子宮体がん 96.4   81.2(92.4 87.0 58.8 12.1)
 子宮頸がん 76.8   68.8(88.6 67.6 47.7 18.3)
 大腸がん  76.8   67.8(92.9 81.0 73.5 12.7)
 胃がん   74.9   65.3(90.7 54.9 35.5 4.4)
 腎臓など  69.4   64.0(90.9 68.7 52.4 13.1)
 卵巣がん  66.2   45.3
 肺がん   45.2   30.9(4.8 28.4 12.0 1.7)
 食道がん  46.0   30.9(68.3 33.7 21.3 7.1)
 肝臓がん  37.0   15.6(27.3 17.5 6.7 2.4)
 胆のう胆道がん 28.6 18.0
 膵臓がん  9.9    5.3
 ◆調査結果
 今回の詳しい調査結果の閲覧は、
 全国がんセンター協議会のウェブサイト(http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/)

 今日の天気は晴れ。心は曇りor雨・・プリンターが壊れ、新機を購入した・・。
 散歩で見つけた”ヒマラヤユキノシタ”の花。大きなシャモジの様な丸い葉で、花茎を伸ばしてピンク色の花径1cm程の花が纏まっている。
 名(ヒマラヤユキノシタ:ヒマラヤ雪ノ下)の由来は、ヒマラヤやシベリア地方に多く、寒さに強く、雪でも常緑の葉だから、の説がある。葉は革質で固く、タンニンを多く含むので、ロシアではこのタンニンを製革に使用する・・とか。
 ”ヒマラヤユキノシタ”が属するユキノシタ科ベルゲニア属は10種程が知られており、種間雑種も多い。”ヒマラヤユキノシタ”はベルゲニア・ストレイチー(Bergenia stracheyi)に付けられた名であるが、交雑種も含めてヒマラヤユキノシタと呼んでいる事が多い。
 ヒマラヤユキノシタ(ヒマラヤ雪ノ下)
 別名:大岩軍配(おおいわぐんばい)、桜鏡(さくらかがみ)
   ウインター・ベゴニア(Winter begonia) 、ベルゲニア(Bergenia)
 学名:Bergenia stracheyi
 ユキノシタ科ベルゲニア属
 耐寒性常緑多年草
 原産地はヒマラヤ山脈周辺、明治初期に渡来
 開花時期は3月~5月
 花色には赤色・白色がある


糖尿病治療の新候補物質を確定

2020-03-14 | 健康・病気
 京都大学の松田文彦教授と島津製作所、フランス、レバノンなどの共同研究チームは糖尿病患者は通常の人と比べ、血液中の有機化合物「4ークレゾール」が少ないことを突き止めた。ネズミの実験で、「4―クレゾール」が膵臓(すいぞう)のベータ細胞の増加を促し、インスリン分泌量を増やしたり血糖値を下げて安定させたりする作用があった。糖尿病の予防や治療に役立つ可能性がある。(2月26日、新聞記事より)
 研究チームは心筋梗塞などを起こしたレバノンの137人を糖尿病患者とそれ以外の通常の人に分けて血液を調べた。糖尿病患者は4―クレゾールの血中濃度が低かった。この物質をマウスの皮下に投与し高脂肪食を与えたり、糖尿病のモデルラットに皮下投与したりする実験をした。 脂肪細胞の状態改善や脂肪肝を抑えるといった作用も確認できた。人は4―クレゾールを体内で直接作れないため、大半は複数の腸内細菌の働きでできたとみており、詳しく調べる。
 ◆日本の糖尿病医療費は世界第5位
 世界で糖尿病人口がもっとも多い国の順位は(1)中国(1億1,400万人)、(2)インド(7,300万人)、(3)米国(3,000万人)となり、上位3ヵ国だけで2億人を超えている。
 日本は2015年の調査では世界ランキングの9位だったが、2017年の調査では上位10位から外れた。日本は65歳以上の糖尿病人口が多く、ランキングでは2017年は世界第6位の430万人となっている。
 糖尿病関連の医療費は約83兆円(7,270億ドル)で、2015年から8%増加し、世界の主な国で全医療費の12%を占めている。糖尿病の医療費の負担は世界的に増大しているが、糖尿病を予防するために費やされる予算は不足している。
 糖尿病の医療費が多い国の順位は、(1)米国(39.5兆円)、(2)中国(12.5兆円)、(3)ドイツ(4.8兆円)、(4)インド(3.5兆円)、(5)日本(3.2兆円)となっている。

 今日の天気は、晴れ~曇り。気温は、最高気温7℃・最低気温2℃。最高気温が昨日より10℃は下がった・・寒い。
 散歩道の横の空き地で、”タンポポ”が咲いている。見慣れた”タンポポ(西洋タンポポ)”と少し花の様子が違っている。チョット失礼して花の下の総苞(そうほう)を見ると、総苞外片は外側に反り返らず立っている。・・なので、在来種の”カントウタンポポ”でしょう・・総苞外片が外側に反り返っているのは外来種の”セイヨウタンポポ”。外来種(西洋タンポポ)は季節を選ばずに咲き、在来種は春に咲く、目にするのはセイヨウタンポポが多くなる。春に在来種を確認できた・・うれしい。
 名(タンポポ)の由来は、種子の冠毛が丸く集まる様子がたんぽ(綿を丸めて布ど包んだもの)に似ていることから”たんぽ穂→タンポポ”となったとの事。蒲公英は漢名から。
 タンポポ(蒲公英)
 別名:鼓草(つづみぐさ)
 学名:Taraxacum platycarpum(関東タンポポ)
   :Taraxacum officinale (西洋タンポポ)
 キク科タンポポ属
 多年草
 開花時期は3月~5月(関東タンポポ)
 花色は黄色で白花もある


加齢に伴う聴力低下、たんぱく質が劣化

2020-03-09 | 健康・病気
 順天堂大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科学の神谷和作准教授、田島勝利大学院生らの研究チームは、老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした(2月28日)。研究チームが内耳の「ギャップ結合」という分子の複合体に注目して解析したところ、この分子が老化に伴って崩壊・減少し、老人性難聴の進行に関与する可能性が示された。このメカニズムの解明により、当研究チームが現在開発中の内耳ギャップ結合を標的とした薬剤や遺伝子治療が老人性難聴にも適用できる可能性がある。本研究はネイチャー系列誌「Experimental & Molecular Medicine」に掲載。
 本研究成果のポイント
 〇老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした
 〇老化に伴って内耳の「ギャップ結合」という構造体が疎水化・断片化し、タンパク質量が低下していた
 〇ギャップ結合の異常は遺伝性難聴の原因と共通しており、同じ治療法が適用できる可能性
 背景
 老人性難聴(加齢性難聴)は老化に伴う進行的な聴力障害で、場合によっては40代で補聴器がを必要になる例も少なくない。最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因に中年期以降の聴力低下(老人性難聴)が含まれるとのデータが報告され、老人性難聴への早期予防が認知症予防の最重要項目の一つであると考えられている。
 今回着目した内耳ギャップ結合は内耳のイオン環境を整える重要な分子構造であり、遺伝性難聴では、検出される遺伝性難聴の半数程度はギャップ結合遺伝子(GJB2遺伝子など)の異常によるコネキシン26遺伝子変異型難聴であることがわかってきた。
 研究チームでは2014年に内耳ギャップ結合構造の崩壊による遺伝性難聴の発症メカニズムを解明、2015年にモデル動物の遺伝子治療実験によりギャップ結合の修復と聴力回復に成功、2016年にはiPS細胞から内耳ギャップ結合を作る基盤技術を開発し、内耳ギャップ結合を標的とした創薬や遺伝子治療の技術開発を進めています。その中で老人性難聴にもこれらの新しい治療法が役立つ可能性があると考え、メカニズムの解析を進めた。
 内容
 研究チームは、老人性難聴の初期の変化が病態進行のメカニズムや治療法を探る鍵となると考えた。まず、モデル動物(マウス)を用い聴力が急激に低下する時期を特定し、その際に内耳に起こる遺伝子やタンパク質の変化を観察した。従来の報告では、老人性難聴は内耳の有毛細胞と呼ばれる感覚細胞の脱落が主な原因という説があったが、病態初期には有毛細胞はまだ正常に存在していた。しかし、内耳の重要な分子構造であるギャップ結合の複合体とその構成成分であるコネキシン26とコネキシン30を解析したところ、若年期に比べてギャップ結合複合体の構造が著しく崩壊しており、構成成分であるコネキシン26とコネキシン30タンパク質の量も大きく減少していた。そこで、ギャップ結合複合体の構造を詳細に解析したところ、老化初期の内耳(32週齢)ではこの構造は分断され、2マイクロメートル程度と若年期(5マイクロメートル程度)に比べて大きく減少していた。さらにタンパク質量を測定すると老化初期の内耳では若年期の約40%に減少していた。次に、ギャップ結合タンパク質の生化学的な特性を調べたところ、老化の影響でギャップ結合は脂質に取り囲まれたり共存するようになるという性質の変化があることが分かった。
 以上の結果から、この現象が安定したギャップ結合複合体を維持することを妨げて分解されやすくなり、タンパク質量が低下することでギャップ結合の劣化・老化につながっていることが考えられた。さらに、ギャップ結合機能の低下は、内耳が活動するためのリンパ液の電位の低下や、内耳の感覚細胞である有毛細胞の活動低下を伴うため、老化による聴力の低下に大きな影響を与えることが考えられる。
 今後の展開
 研究チームは内耳のギャップ結合を修復するための医薬品や遺伝子治療ベクターの開発を進めている。現在、老人性難聴の根本的治療法や治療薬はないが、将来的には、研究チームが開発中のギャップ結合タンパク質を安定化する薬剤やコネキシンを補充する遺伝子治療の開発によって老人性難聴の予防や聴力の回復が期待できる。
 ・ ・ ・
 因みに、国立国際医療研究センターなどの調査でわかった、「喫煙は耳の聞こえにも悪い影響をもたらすらしい。」
 追跡より、年齢や高血圧、糖尿病の有無などを踏まえて分析すると、たばこの本数が多いほど聴力低下の傾向がある。
  〇1日21本以上吸う人は吸わない人に比べて高音域で1.7倍、低音域で1.4倍だった。
  〇調査時に5年以上禁煙していた人は、聴力低下のリスクは吸わない人とほとんどかわらなかった。
  〇中年期の聴力の低下は、認知症にかかるリスクを高めることも指摘されている。
 ◆用語説明
 〇老人性難聴
  加齢性難聴(老人性難聴)は、加齢によって起こる難聴で、「年齢以外に特別な原因がないもの」である。加齢性難聴は誰でも起こる可能性がある。
 一般的に50歳頃から始まり、場合によっては40代で補聴器が必要になる例も少なくない。65歳を超えると急に増加するといわれる。その頻度は、60歳代前半では5~10人に1人、60歳代後半では3人に1人、75歳以上になると7割以上との報告がある。
 最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因は中年期以降の聴力低下(老人性難聴)であるとのデータが医学誌Lancetで報告され、認知症予防の観点からも老人性難聴への早期予防が最重要項目の一つであると考えられている。
 〇ギャップ結合
 コネキシンは6個の集合体により細胞膜に分子の通り道を作り、隣の細胞の集合体と連結して細胞と細胞をつなぐトンネルを作る。このギャップ結合は分子量約1000以下の低分子やイオンを濃度勾配によって透過させ、細胞間の物質輸送を可能とする。
 〇コネキシン26・GJB2変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)
 コネキシン26は遺伝子GJB2(GAP JUNCTION PROTEIN, BETA-2)により合成され、内耳のギャップ結合を構成する主要タンパク質の一つ。最も高頻度に検出される遺伝性難聴の原因因子。 GJB2変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)は、我が国では遺伝性難聴の50%以上もの割合を占めるとされており、常染色体劣性と常染色体優性の遺伝形式を持つ感音性難聴。

 晴れ~曇り。気温が昨日より高くなった。昨日の最高気温は10℃以下で、今日は14℃で最低気温は8℃・・春の気温だよ。
 畑に行った。梅に花が咲き出している。花色は白~桃色だ。ひと月前に榴岡天満宮の梅の開花を見たが、畑での開花を見ると感激。
 ”ウメ”が満開となると、次の開花は桜(吉野桜)だね。”ウメ””サクラ”、どちらも花見は良いね・・桜が咲くころに病が収まってくれ・。
 奈良時代に「花」と言えば梅(の花)。別名も、風待草(かぜまちぐさ)・好文木(こうぶんぼく)・春告草(はるつげぐさ)・・などと多い。平安時代中頃から、梅より桜(の花)が好まれるようになり、江戸時代以降は花といえば「桜」となる。
 ウメ(梅)
  梅の果実も梅と言う
 学名:Prunus mume
 バラ科サクラ属、落葉高木
 原産地は中国、奈良時代の遣隋使か遣唐使が持って来たと言う
 開花時期は1月~4月
 種類により開花期が異なる
 梅には300種以上の品種があり、野梅系・紅梅系・豊後系の3系統に分類される


妊娠中の食物繊維摂取は胎児の代謝機能の発達を促し、出生後、子の肥満になりにくい体質をつくる

2020-02-28 | 健康・病気
 東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学部門の木村郁夫教授らと慶應義塾大学薬学部の長谷耕二教授らの研究グループは、妊娠中の母親の腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が胎児の発達に影響を与えることによって、出生後の子の代謝機能の成熟に関与し、その結果、肥満発症の抑制に繋がることを明らかにした。周産期における母体の食生活や腸内環境の改善など、母体の栄養管理を介した先制医療や予防医学による新たな治療法の確立に向けて、今後、本成果の応用が期待される。本研究成果は、米国科学誌「Science」(2月28日付)に掲載。
 現状
 近年の抗生物質の使用拡大や、欧米食に代表される高糖質・高脂肪な高カロリー食、食物繊維の摂取不足のような食生活の変化は、腸内細菌叢に異常をきたし、その結果、肥満や糖尿病に代表される生活習慣病を含むさまざまな病気の罹患率を高めることが分かってきている。このように、成人の生活環境に対する腸内細菌叢の影響についてさまざまな報告がなされてきているが、胎児期での腸内細菌叢の影響に関してはあまり知られていませんでした。また、将来の健康や特定の病気への罹りやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定されるというDOHaD仮説に関しても、コホート研究等により、低出生体重児は成人期に糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病を発症するリスクが高い等の報告がされてきたが、その根底にあるメカニズムは未だ不明なままであった。
 本研究グループは、母体の腸内細菌叢が胎児の発達と出生後の疾患への感受性に及ぼす影響についてマウス実験により詳細な研究を行った。
 また、短鎖脂肪酸に代表される腸内細菌叢由来の代謝産物は、宿主のエネルギー源として利用されるだけではなく、シグナル伝達分子として脂肪酸受容体であるGPR41やGPR43のような宿主側の受容体を介して、宿主の生理機能にまで影響を及ぼす。我々は以前から、食由来成分や腸内細菌叢由来の代謝産物との相互作用を通じて、エネルギー代謝におけるこれら脂肪酸受容体の生物学的重要性を明らかにしてきた。
 研究成果
 本研究グループは、始めに、妊娠マウスを通常環境下、および無菌環境下で飼育した。分娩後は成長環境を同一にするために、両群の出生仔を通常環境下で仮親によって成育させた。離乳後、高脂肪食を摂取させたところ、 無菌母親マウスの仔は、成長に伴って重度の肥満になり、高血糖・高脂血症などのメタボリック症候群の症状を示した。また、妊娠中に食物繊維をほとんど含まない餌を与えた母親マウスの仔でも、同様な症状が観察された。一方で、食物繊維を豊富に含む餌を妊娠母親マウスに与えた場合には、生まれてきた仔マウスは肥満になりにくいことが分かった。このとき、母体の腸内細菌によって食物繊維が分解されて、短鎖脂肪酸が多く産生されることで、その一部は血液を介して胎児に届けられていることが分かった。
 そこで、無菌飼育した妊娠マウスや低食物繊維の餌を与えた妊娠マウスの餌に、短鎖脂肪酸の1つであるプロピオン酸を補充したところ、生まれてきた仔マウスの肥満が抑制された。このことから、妊娠中の母親の腸内細菌叢が産生する短鎖脂肪酸は、生まれてきた仔の肥満を予防することが分かった。
 興味深いことに、胎児の交感神経、腸管、膵臓には短鎖脂肪酸の受容体であるGPR41とGPR43が高発現していました。胎児は腸内細菌を持たないため、自分では短鎖脂肪酸を多く作ることはできない。よって、胎児組織のGPR41とGPR43は、母体の腸内から届けられた短鎖脂肪酸を感知していると考えられる。短鎖脂肪酸によって胎児のGPR41とGPR43が活性化すると、神経細胞、GLP-1陽性の腸内分泌細胞、膵β細胞の分化を促進することが分かった。その結果として、生後の仔の代謝・内分泌系が正常に成熟し、成長時のエネルギー代謝を整えることで、肥満になりくい体質を作ることを明らかにした。
 今後の展開
 本研究により、妊娠中の母体の腸内細菌叢は、短鎖脂肪酸を産生することにより、胎児の短鎖脂肪酸受容体を介して、出生後、子の肥満に対する抵抗性を与えることを明らかにした。これらの発見は、妊娠中の母体の腸内環境が、生活習慣病を防ぐために子孫の代謝プログラミングの決定に重要であることを示している。したがって、今回の発見は、母体の腸内環境と子の生活習慣病というDOHaD仮説の新たな連関を提唱するものである。
 また、本研究の成果は、母体への食事介入や栄養管理を介した先制医療や予防医学、更には腸内代謝産物や、その生体側の受容体を標的とした新たな代謝性疾患の治療薬の開発に寄与する可能性が大いに期待される。
 ◆用語解説
 〇DOHaD仮説
 Developmental Origins of Health and Diseaseの略。胎児期や生後直後の健康・栄養状態が、成人になってからの健康に影響を及ぼすという概念のこと。
 〇コホート研究
 介入を行わず対象者の生活習慣や疾患などを一定期間に渡り調査・観察する「観察研究」の一つ。
 〇短鎖脂肪酸
 炭素数6以下の脂肪酸の総称。主に酢酸、プロピオン酸、酪酸がありエネルギー源や脂肪合成の基質として使用される。最近では、受容体を介したシグナル分子としての作用やエピジェネティック(DNAの配列変化によらず遺伝子発現を制御するシステム)な作用なども報告されている。
 〇脂肪酸受容体
 GPCR(G蛋白質共役型受容体:G-protein coupled receptor)群の一つ。脂肪酸をリガンドとする細胞膜を7回貫通する細胞膜上受容体の一つであり、三量体のGタンパク質を介して細胞内にシグナルを伝達する。短鎖脂肪酸受容体(GPR41やGPR43)、中鎖脂肪酸受容体(GPR84)、長鎖脂肪酸受容体(GPR40やGPR120)が知られている。
 〇無菌環境
 空気中の細菌や宿主の共生細菌が存在しない環境のこと。
 〇GLP-1
 Glucagon like peptide-1の略。腸内分泌細胞のL細胞から分泌される腸管ホルモンの一種であり、摂食調節やインスリン分泌の促進に関与する。
 〇膵β細胞
 膵臓のランゲルハンス島(島状に散在して内分泌を営む細胞群)内に局在するインスリン分泌細胞のこと。グルコース濃度に応じてインスリン分泌を促す。
 〇代謝プログラミング
 胎児期や生後早期などの臓器形成・成熟の感受性が高い時期における栄養環境などにより、代謝システムの形成に影響を及ぼすこと。

 今日は2月28日。でも今年は閏年(うるうどし)だから明日1日(2月29日)がある・・得したのか?損したのか?・・と考えてサリーマン生活を送っていた。
 天気は晴れ~曇り、朝はチラチラと小雪が舞う。
 今日も畑。”オオイヌノフグリ”の花が咲き出している・・春近し。
 緑葉が絨毯の様に広がり、これに白青の水玉模様を散らした様に花が咲く。花は4枚の萼・4枚の青紫色の花弁(根元で纏まり、一つの花冠となる)で、ゴマノハグサ科クワガタソウ属の特徴である、2本の雄しべ・1本の雌しべ。
 ”オオイヌノフグリ”は、花が小さい”イヌノフグリ”より大きい花なので名付けられたようだ。”イヌノフグリ(犬陰嚢)”は”オオイヌノフグリ”と同科同属で、春に薄桃色の小さな花(径3mmほど)が咲く。かつては道端などで普通に見られた雑草であったが近年大幅に減少し、レッドデータブックでは絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)に指定されている。
 ”イヌノフグリ”の名は、二つ付いた果実の様子が犬のフグリ(陰嚢:いんのう)に似ているから・・とても小さなフグリ。
 オオイヌノフグリ(大犬陰嚢)
 別名:天人唐草(てんにんからくさ)、星の瞳(ほしのひとみ)、瑠璃唐草(るりからくさ)
 英名:Bird's eye
 学名:Veronica persica Poiret
 ゴマノハグサ科クワガタソウ属
 越年草
 ヨーロッパ原産、明治初期に渡来した帰化植物
 開花時期は2月~6月
 花色はコバルトブルー、花径は8mm程
 花は日が当たると広げ、日が陰ると閉じる


肌セラミド量を増加させる革新的な化粧品素材を開発

2020-01-13 | 健康・病気
 富山大学附属病院薬剤部(加藤敦准教授)は、株式会社伏見製薬所と公益財団法人かがわ産業支援財団と共に経済産業省の補助事業である戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の採択を受け、セラミド合成酵素(CERS3)の亢進とセラミド分解酵素(CDase)阻害のデュアルアクションによって肌セラミド量を増加させる革新的な化粧品素材の開発に成功した。また同企業より2019年4月から販売を開始した。本成果を1月20日からの幕張メッセで開催される「第10回 化粧品開発展(COSME Tech 2020)」内アカデミックフォーラムに出展し発表。
 産官学連携の成果により生まれた独自の水溶性の天然由来化粧品素材である。今回販売を開始した化粧品素材は、保湿性に優れるとともに、表皮細胞の分化促進作用(肌ターンオーバー促進作用)も有することから今後、幅広い化粧品への配合が期待される。
 研究の背景
 正常な肌表皮は、体内からの過度な水分蒸散の防止や、外界からの刺激の侵入を防ぐバリアとして重要な役割を担っている。現在、化粧品市場には肌のセラミドを補う目的で植物セラミドや合成セラミドなどの疑似セラミドを肌に塗布する化粧品が多く見られる。これらは一時的に肌のセラミドを補うことはできるものの、肌本来のセラミド産生機能を向上させるものではない。化粧品業界では以前より疑似セラミドやセラミド原料を肌や経口から摂取するのではなく、肌のセラミド産生機能に働きかけることで、ヒト本来の健康な肌を実現させる「肌の内側から体内美容成分を増やす化粧品原料」が求められてきた。
 〇皮膚機能におけるセラミドの重要性
 セラミドは親水基と疎水基を持ち、角質細胞間で脂質二重層構造を形成することにより水分を挟み込み、水層と脂質層が交互に重なったラメラ構造をとる。このラメラ構造により水分が保持され、角質細胞間の隙間を埋めることで角質細胞が容易に剥離しないようになっている。
 肌の水分を保つ役割への寄与
 ----セラミド 約80%
 ----NMF(天然保湿因子) 約18%
 ----皮脂 約2%
  角質層--ラメラ構造(セラミド+水分、セラミド+水分 互層)
  顆粒層
  有棘層
  基底層
 〇ラメラ構造
 セラミド量の増加が及ぼす3つの効果
 セラミド量が低下することで異物など外部からの刺激が肌内部に侵入しやすくなり、肌内部からの水分蒸発量である経表皮水分蒸散量(TEWL : transepidermal water loss) が増大することが報告されている。また、セラミド量の低下は、しわや たるみの原因となる。
 研究の概要
 加齢に伴い低下する肌セラミド量や代謝機能、不足した成分を外から補うのではなく、肌本来の機能を回復させ「肌の内側から体内美容成分を増やす化粧品」をコンセプトとした機能性化粧品素材である。
 1) 内因性セラミドの増加作用
 正常ヒト表皮ケラチノサイト (PHK16-0b )を50 μM ginnalin B 添加培地で48 時間培養し、セラミド合成酵素遺伝子(CERS3)に対する発現解析を行ったところ、ginnalin B 無添加での培養時と比べ、セラミド合成酵素遺伝子の有意な発現上昇が確認された。更に50-100 μMginnalin B 存在下で48 時間培養したPHK16-0b 細胞では、ginnalin B 無添加で培養した場合に比べ、細胞内セラミドの産生量が濃度依存的に増加した。
 2) 表皮細胞の分化促進作用
 正常ヒト表皮ケラチノサイト (PHK16-0b )に 各濃度のginnalin B を添加し、48 時間または72時間培養し、分化関連遺伝子に対する発現解析を行ったところ、ginnalin B 無添加での培養時と比べ、ケラチノサイトの初期分化マーカーであるケラチン10、ケラチン1 および後期分化マーカーであるフィラグリン遺伝子の有意な発現上昇が確認された。
 3) 分化関連タンパク質の産生促進
 ヒト皮膚三次元モデル(EpiDerm Skin. Model EPI-212)を100 μM ginnalin B 添加培地で7日間培養し、分化関連タンパク質(ケラチン10、フィラグリン)の免疫染色を行ったところ、ginnalin B 無添加での培養時と比べ、ケラチン10、フィラグリンの染色が増加し、分化関連タンパク質の産生量の増加が確認された。
 ◆補足説明
 〇 戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)
 サポインとはサポーティングインダストリーの略で、日本の製造業を支える中小企業の「ものづくり基盤技術」を指す。戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)は「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく支援策の一環として、同法により「研究開発等計画」の認定を受けた中小企業者を国が補助することにより、ものづくり基盤技術の高度化に貢献できる研究開発について、事業化に向けた取り組みを支援する事業です。
 〇Ginnalin B について
 サトウカエデやアメリカハナノキなどメープルシロップを産生するカエデ科植物の原木に含まれる希少な天然物です。希少糖である1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)のC6位の水酸基に没食子酸が結合したカエデタンニンの一種です。カエデタンニンは植物中に含まれる糖質やポリフェノール類、着色成分などとの分離が困難なことから、これまで化粧品素材として使用されてきませんでした。今回、経済産業省の補助事業である戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の採択を受け、合成カエデタンニンの生産技術の開発に着手し、低コストかつ大量生産を可能にしました。
 表示成分
 化学名 :6-O-galloyl-1,5-anhydroglucitol
 INCL名:Anhydroglucityl Gallate
 化粧品成分表示名称(粧工連):没食子酸無水ソルビトール
 CAS No.:82151-97-1

 今日の天気は、午前は曇りで時々小雨、午後から晴れ。最高気温は8℃、最低気温2℃。
 クリスマスに飾られるホーリーやモミの木には魔よけがあると言う。これらはキリストの被った茨の冠の「受難」を意味し、赤い実は「流した血」として飾られ情熱を表わし、常緑の葉は永遠の命を象徴すると言う。
 クリスマスホーリーと呼ばれるものには、シナヒイラギ(ヒイラギモチ、チャイニーズホーリー)、セイヨウヒイラギ(イングリッシュホーリー)、アメリカヒイラギ(アメリカンホーリー)があるが、モチノキ科モチノキ(イレックス)属の近縁種や交雑種などの赤・黄の実が付くものを含めてホーリーと呼ぶこともあるようだ。
 クリスマスホーリーとは、正確には、セイヨウヒイラギ(Ilex aquifolium)の事であるが、よく見かけるのはシナヒイラギ(ヒイラギモチ)である。これは、セイヨウヒイラギやアメリカヒイラギは高木(樹高数m以上)であるが、シナヒイラギは横に広がる低木なので扱い易く、果実も大きいので日本では寄せ植えや鉢植えなどで使われている。
 散歩で見つけたのは、”ヒイラギモチ(チャイニーズホーリー)”。赤い実がまだ沢山付いている。・・少し遅れたクリスマス・・かな。
 ヒイラギモチ(柊黐)
 別名:クリスマスホーリー、チャイニーズ・ホーリー、支那柊(しなひいらぎ)、柊擬(ひいらぎもどき)
 学名:Ilex aquifolia
 モチノキ科モチノキ(イレックス)属
 原産地は中国
 常緑低木(樹高は2m~5m)
 葉は厚く刺があり、光沢がある
 花期は4月~6月、花径は数mm、花色は黄緑色
 実の鑑賞期は11月~翌2月、実は径1cm弱の球形で秋に赤くなる
 雌雄異株だが雌木の受精なくても結実する
   単為結果(たんいけっか)と言う、普通は種なしとなる


老化を誘発する仕組み、グリシン摂取が老化の緩和に有効か?

2019-12-27 | 健康・病気
 筑波大学生存ダイナミクス研究センターの林純一名誉教授らの研究グループは、ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏に、核遺伝子SHMT2が関係していることに注目し、その仕組みをShmt2遺伝子破壊マウスを用いて解明したと発表した(11月8日)。研究成果は、「Scientific Reports」の電子版に掲載。
 ポイント
 〇Shmt2遺伝子破壊により、主に胎児肝臓で細胞分化遅延と細胞分裂遅延が誘発され、胎児肝臓の85%を構成する造血細胞が枯渇し、貧血になること。
 〇この時、胎児肝臓ではグリシンが枯渇し、これがタウリン枯渇とヌクレオチド枯渇を誘発すること、そしてタウリン枯渇はエネルギー欠乏による細胞分化遅延を、ヌクレオチド枯渇は核酸枯渇による細胞分裂遅延を誘発すること。
 この結果は、ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏のみならず、老化に伴う細胞分裂遅延の回復にも、グリシン摂取が有効である可能性を示唆している。

 ヒトは老化に伴いエネルギー欠乏になるが、その原因についてはさまざまな仮説が提出されている。研究グループはこれまでに、「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏の原因が、突然変異ではなくゲノム修飾による可逆的な遺伝子発現の変化であり、特にSHMT2遺伝子の発現低下が重要である」という新仮説を提出し、この遺伝子を破壊したマウスに、胎児貧血と胚致死が誘発されることも明らかにした。今回は、Shmt2遺伝子破壊マウスの胎児組織を用いた質量分析等により、この新仮説の一部を検証した。
 新化説のうち、「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏の原因として、SHMT2遺伝子の発現量低下が重要である」という部分を検証するため、研究グループはまず、Shmt2遺伝子破壊マウスを用いて、胚致死前(13.5日胚)の肝臓と脳のエネルギー産生能を調べた。その結果、肝臓で著しいエネルギー欠乏が生じていることが確認された。エネルギー欠乏は成体の造血組織である骨髄の造血細胞分化を抑制することから、胎児の造血組織である肝臓の造血細胞分化を調べたところ、Shmt2遺伝子破壊マウスの細胞分化も抑制されていた。
 さらに肝臓の重量も低下しており、肝臓内にある造血細胞の細胞分裂遅延も明らかになった。マウス13.5日胚の肝臓は85%が造血細胞で構成されていることから、これらの結果は、エネルギー欠乏による造血細胞分化遅延と、造血細胞の分裂遅延が原因で、胎児貧血が誘発されたことを示している。
 また、Shmt2遺伝子破壊によりどのような仕組みでエネルギー欠乏と細胞分裂阻害になるのかを質量分析等で調べた結果、グリシン枯渇のみならずタウリン枯渇とヌクレオチド枯渇も誘発されていた。タウリンはエネルギー産生に、ヌクレオチドは核酸合成に必須であるため、両者の枯渇が、それぞれエネルギー欠乏と細胞分裂遅延につながったと考えられる。
 Shmt2遺伝子の働きはセリンからグリシンへの変換であるため、Shmt2破壊による胎児肝臓でのグリシン枯渇は予想通りだったが、脳ではグリシン欠乏が見られなかった。これは Shmt2遺伝子とは別の遺伝子(Gcat等)を使ってスレオニンからグリシンを得ているためと考えられる。一方、胎児の肝臓は、活発な細胞分裂と細胞分化で大量の血球を作るためにShmt2遺伝子の発現を高めており、これが原因でShmt2 遺伝子破壊が胎児貧血を誘発したと考えられた。
 ヒトSHMT2遺伝子の異常が原因の胎児貧血は、妊婦がグリシンを摂取することで緩和される可能性があるため、研究グループは、これについてShmt2遺伝子破壊マウスで検証していくとしている。また今回の研究により、ヒトSHMT2遺伝子の発現低下が「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏」のみならず、「ヒトの老化に伴う細胞分裂遅延」の原因である可能性が示唆された。したがって、グリシン摂取がこの両方を緩和することが期待される。
 一方、SHMT2遺伝子の発現抑制はがん細胞の分裂速度も抑制されるという報告もある。そうだとすれば、ヒトの老化に伴うSHMT遺伝子の発現抑制は、エネルギー欠乏と細胞分裂遅延を来すという負の側面と同時に、老化とともに発症頻度が高まるがん細胞の増殖(細胞分裂)を抑制し、逆に健全な老化(長寿)に貢献している、つまり老化を促進することでがん化を抑制するという別の側面も持つ可能性がある。研究グループは、「グリシン摂取については、今後さらに、がん細胞の増殖を促進する可能性を考慮した研究が必要だ」と、述べている。
 ◆グリシン
 グリシン(glycine) は、タンパク質を構成するアミノ酸の中で最も単純な形を持つアミノ酢酸のこと。別名グリココル。糖原性アミノ酸である。非極性側鎖アミノ酸に分類される。
 多くの種類のタンパク質ではグリシンはわずかしか含まれていないが、ゼラチンやエラスチンといった、動物性タンパク質のうちコラーゲンと呼ばれるものに多く(全体の3分の1くらい)含まれる。
 化学式:C2H5NO2、平均モル質量: 75.07グラム/モル

 早朝~朝は雨。次第に晴れてきた。風も弱く、雨上がりの緑はつやつやと光っている、外の空気が美味しいと感じる。
 散歩道で、丸丸とした実を沢山付けた”トウネズミモチ”を見つけた。多くの樹では実はもう鳥に実を食べられているが、沢山残っている樹がある。・・この樹は残っている。
 ”ネズミモチ”と”トウネズミモチ”は葉・花・実とも良く似ており、判別はチョット難しい。簡単な判別は葉の葉脈で、葉を裏から日に透かして見ると、ネズミモチの側脈は見えないか不明瞭でトウネズミモチは明瞭に見える。遠くからは樹枝の形で、”ネズミモチ”は灌木で”トウネズミモチ”は樹木のようだ。開花時期は、ネズミモチ;6月頃、トウネズミモチ;7月頃である。名(トウネズミモチ:唐鼠黐)の由来は、文字通り中国から来た”ネズミモチ”から。
 因みに、種が鳥により運ばれ、野生化したものが多く、在来の植生に影響を与えるとして、”要注意外来植物”に指定されている
 トウネズミモチ(唐鼠黐)
 学名:Ligustrum lucidum
 モクセイ科イボタノキ属
 常緑高木(樹高は15m~20m)
 中国中南部原産、明治初期に渡来
 開花時期は6月~7月
 枝先に沢山の白い花を付ける、花は径数mmで長さ3~4mm
 実は径1cm位のほぼ球形で、10月~12月に紫黒色に熟し、実の表面に白い粉を帯びる


アルツハイマー病発症予防に植物由来のセラミドが有効

2019-12-26 | 健康・病気
 北海道大学大学院先端生命科学研究院産業創出部門の五十嵐靖之招聘客員教授、湯山耕平特任准教授らの研究グループは、植物由来のセラミドがアミロイドsペプチド(As)蓄積を軽減させることを疾患モデルマウスを用いた実験で発見した。本研究成果は2019年11月14日公開の「Scientific Reports」誌に掲載。
 アルツハイマー病(AD)の発症原因の一つは、アミロイドsペプチド(As)が脳内に過剰に蓄積することであるとされている。最近の研究によってAs蓄積はAD発症の15年以上前から始まることが明らかになり、As蓄積を抑制することはAD予防を目的とした薬剤や機能性食品の開発戦略の一つとなっている。
 ポイント
 〇植物(こんにゃく)セラミド摂取により脳内のアルツハイマー病原因物質が減少し認知機能が改善。
 〇植物セラミドは同病の発症原因物質を除去する神経細胞由来エクソソームの産生を促進。
 〇認知症予防目的の機能性食品素材や新薬開発への貢献に期待。
 背景
 アルツハイマー病(AD)は主要な老年期の認知症性疾患であり、現在早急な予防法・治療法の確立が望まれている。AD発症には様々な要因が関与しているが、脳内での As蓄積増加が主な原因と考えられており、脳内Asレベルを制御することが治療・予防戦略の一つとして有望視されている。
 五十嵐教授らの研究グループ はこれまでに、神経細胞から放出される二重膜で構成されたナノ顆粒 "エクソソーム "が Asを除去する能力をもつことを培養細胞とADモデルマウスを用いた実験で明らかにしてきた。これらの知見から本研究グループではエクソソーム依存性As分解系の促進というアプローチを用いたAD予防法の確立を目的に研究を進めており、本研究では新たに発見したエクソソーム産生を促進する分子の一つである植物セラミドの効果をADモデルマウスを用いた実験で検証した。
 研究手法
 研究グループは実験材料の植物性セラミドとしてこんにゃく芋から精製したセラミド(グルコシルセラミド)を用いた。こんにゃく芋由来セラミドは機能性食品素材として美肌目的のサプリメントや飲料に配合されている脂質成分である。ADモデルマウスには脳内でAsを過剰発現するAPPトランスジェニックマウスを使用した。このマウスに植物セラミド 1日 1mg量を2週間継続的に経口投与した後、As病理とエクソソーム量を解析した。
 研究成果
 ADモデルマウスに植物セラミドを経口投与すると大脳皮質や海馬領域でAs濃度の低下とアミロイド斑老人斑様のAs沈着 が 減少していた。また、海馬領域ではシナプス障害の抑制も観察され、行動実験では短期記憶の改善が認められた。さらに同じ脳標本中のエクソソームを解析したところ、神経細胞由来のマーカータンパク質の増加がみられた。
 今回の実験で、植物セラミドの経口摂取によってADのようなAs関連病理が低減することが実証され、また、植物セラミドの作用でエクソソーム依存性As分解を促進させる可能性を示唆する結果が得られた。
 今後への期待
 脳内As蓄積の抑制はAD予防の有効な戦略とされており、本研究で得られた新たな知見は機能性食品素材や新薬開発に繋がる 可能性がある。今後研究グループではヒト介入試験による植物性セラミドの認知機能改善効果の検証を実施する予定である。
 ◆用語解説
 〇アミロイド sペプチド
 アミロイド s前駆体タンパク質から切断されて産生される約40アミノ酸からなる生理的ペプチド。アルツハイマー病では、このペプチドの過剰な蓄積がアルツハイマー病発症の引き金と考えられている。
 〇エクソソーム
 様々な種類の細胞から分泌される直径 50~150nm程度の細胞外小胞。特定の分子を包含し、細胞間で受け渡すキャリアーの役割を担う。神経細胞由来エクソソームは表面膜の糖脂質でAsを捕捉しグリア細胞に運搬することでAs分解を促進させる。

 今日の天気は曇り。だんだんと雨模様になりそうで、明日は雨の予報。畑にとってはありがたい雨かな。
 散歩で見つけた、塀の”ヘデラ”。”ヘデラ”は常緑蔓性低木の観葉植物で、耐寒性が強く、塀や戸外のグランドカバーなど利用される。冬の散歩で緑を見る、今日の散歩は当たりかな。
 ”ヘデラ”は”アイビー”とも呼ばれるが、正式名称は”ヘデラ”、”アイビー”は愛称。和名は西洋木蔦(せいようきづた)。種類は、葉(ハート型・星型・丸型・カール型など)や大きさ(大小)、斑入りの有無などで沢山ある。
 ヘデラ
 別名:アイビー、西洋木蔦(せいようきづた)
 英名:English ivy
 学名:Hedera helix
 ウコギ科ヘデラ属(キヅタ属)
 常緑蔓性低木
 耐寒性あり(氷点下5℃以上)
 原産地はヨーロッパ、アジアなど
 開花時期は9月~12月
 小さな5枚花びらの花が集まり、かんざし状


少量の飲酒でも10年間続けると、がんになるリスクが5%上がる

2019-12-19 | 健康・病気
 東京大などのチームが、「1日ワイン1杯程度の少量のアルコールでも10年間飲酒を続けると、がんになるリスクが5%上がる」との研究結果を米医学誌に発表した。少量の飲酒は循環器病などのリスクを下げるとの報告もあるが、がんに関しては量に応じて危険性が高まるとしている。
 少量のアルコールで、がんのリスクが高まるとの研究は最近、海外でも報告されているが、日本人を大規模に調べた研究は初めて。チームの財津將嘉東大助教(公衆衛生学)は「リスクを自覚してお酒と付き合ってほしい」と話している。
 チームは、2005~16年に全国33の労災病院に入院したがん患者、約6万3千人と、がんではない患者、約6万3千人の飲酒量や飲酒期間を分析した。この結果、飲酒しない人ががんになるリスクが最も低く、飲酒量が多いほどがんになりやすいことが分かった。
 1日ワイン1杯程度の少量のアルコール程度とは
  1日に日本酒1合、ワイン1杯(180ミリリットル)、ビール中瓶1本、ウイスキー1杯(60ミリリットル)
 がんになるリスクが5%とは
  がん全体では5%上がる
  食道がんになるリスクが45%
  喉頭がんは22%
  大腸がんは8%
  胃がんは6%  の上昇

 今日の天気は晴れ。陽が出ているが、とても弱く感じる・・冬の日差し!。
 郊外に出た。休耕田が大豆畑となっている。葉は落ち、複数の実を沢山付けたサヤがポツンと土に立っている。
 私たち日本人にとって、ダイズは5穀(米・麦・粟・キビ・ダイズ)の1つに数えられる大切な食料源とされてきた。味噌・醤油・豆腐など様々な加工食品の原料として利用されている。
 ダイズは丈60~100cmに生長し、互い違いに咲きの尖った卵型の葉っぱが生える。5月~8月にスイトピーに似た白や紫、ピンク色の花が咲く。この花が結実すると、中に2~3個ほどの豆が入ったサヤが実り、乾燥させたものが大豆として流通する。未熟なものは枝豆としてビールのお供に!!。
 ダイズ(大豆)
 別名:枝豆(エダマメ)、大豆(オオマメ)、味噌豆(ミソマメ)
 英名:Soy beans、Soya beans
 学名:Glycine max
 マメ科ダイズ属
 原産地:中国東部からシベリア
   日本では、縄文時代や弥生時代にはすでに栽培されていたとされる
 開花時期:5月~8月
 収穫時期:10月~11月
 ◆大豆(ダイズ)の種類
 国産大豆の品種は多く、その数は生産量が少ないものを含めると500を超えるといわれる。
 よくい出回っている大豆の種類。
 黄大豆
 皮がクリーム色をしている種類で、最も多く栽培されている。一般に大豆というと本種を指し、未熟なものは枝豆として出回るほか、味噌や豆腐、納豆などの原材料となる。
 黒豆(黒大豆)
 おせちの黒豆の材料で、皮が黒くなっている。煮豆に使われるのが一般的である。
 赤豆(赤大豆、紅大豆)
 皮があずきのような赤色をしており、煮豆の材料になる種類である。西日本や東北などの一部で栽培されており、あまり見かけることはない。
 青豆(青大豆)
 皮が緑色の大豆で、きなこや煮豆に使われる。



腎細胞がんに特異的に発現するタンパク質を発見、腫瘍マーカーや抗がん剤への活用期待

2019-12-09 | 健康・病気
 千葉大学大学院医学研究院の安西尚彦教授と市川智彦教授らの研究グループは、腎細胞がんの細胞に特異的に発現して転移にも関わるタンパク質を見つけた(11月29日発表)。本研究成果は、「Scientific Reports」に掲載。
 共同研究グループは、ヒトの細胞内でアミノ酸を運ぶ役割を担う膜タンパク質「アミノ酸トランスポーターLAT1 (SLC7A5)」が腎臓においてがんに特異的に発現し、がんの転移や発現に関わることを解明した。このトランスポーターが腎細胞がんの腫瘍マーカーや治療標的になると見ている。さらに、このトランスポーターを阻害するLAT1阻害剤(JPH203)が抗がん剤として使える可能性もあるとしている。
 研究の背景
 アミノ酸トランスポーターは細胞の中にアミノ酸を運ぶ役割がある。特にLarge neutral aminoacid transporter (LAT) は人体の維持に必要な必須アミノ酸(ロイシンなど)を取り込む役割がある。LATには1~4の種類があるが、中でもLAT1 は様々ながん細胞に発現することで近年注目を集めている。これまでに、ジェイファーマ株式会社の遠藤仁氏と安西らはLAT1を阻害する薬剤 (JPH203) を開発しており、消化器領域の一部のがんでは抗がん作用が確認されていた。
 研究の成果
 ①腎細胞がんとアミノ酸トランスポーターLAT1の関連を解明
 腎細胞がんの手術を受けた患者のがん組織と正常組織をLAT1 に反応する抗体で染色したところ、LAT1 ががん部に多く発現しており、また、がん部のLAT1 の発現が多いほど転移や再発が多いことがわかった。
 ②アミノ酸トランスポーターLAT1 阻害薬が腎細胞がん細胞に対して抗がん作用をもつことを解明
 腎細胞がんの細胞に対してLAT1阻害薬(JPH203)を投与すると、細胞の中に入るアミノ酸の量が減ることがわかった。また、必須アミノ酸の流入が減少することにより、アミノ酸などの栄養素によって活性化され、がんの細胞増殖に重要な役割を果たすリン酸化酵素mTOR の活性が低下することを理由の一つとして、腎細胞がんの細胞増殖が抑制されることがわかった。
た。
 今後の展開:新規治療法の実用化に向けて
 実験の結果から、このアミノ酸トランスポーターLAT1 自体が腎細胞がんの腫瘍マーカーとなる可能性があり、また、阻害薬(JPH203)はその治療薬となる可能性がある。今後は、腎細胞がんだけでなく前立腺がん、膀胱がんなど他のがんへの応用研究や、ヒトへの阻害薬投与を行う臨床試験を計画しており、実用化に向けて着実に研究を進めていく。

 天気は晴れ。風は弱く、微風程度。
 散歩道沿いのお宅の玄関前の”カクレミノ”。実が沢山付いている。でもまだ黒く熟していない。・・黒く熟した実は、小鳥達の好物・・なので、じきに実や枝が整理される・・。
 ”カクレミノ”は日本原産の常緑樹。本州の千葉以南~沖縄にかけて分布し、湿り気のある樹林内や海岸近くに多く自生している。名(カクレミノ:隠蓑)の由来は、若木の頃の葉は深い切れ込みが入り、その姿が昔の雨具の「蓑(みの)」に形が似ているから、と言う。成長して成木になると切れ込みのない葉が出たり、老木になると古い葉が秋に紅葉し、成長とともに葉が変化していく。
 カクレミノ(隠蓑)
 別名:カラミツデ、テングノウチワ、ミツデ、ミツナガシワ、ミツノカシワ、ミソブタ
 学名:Dendropanax trifidus
 ウコギ科カクレミノ属
 常緑の亜高木
 日陰や潮風に優れた耐久力を持っている
 葉の形は変異が大きく、若木では3~5裂し、成木では全縁の楕円形の葉が多くなる
 開花時期は7月~8月
 枝先に散形花序で、黄緑色の小さな両性花と雄花が混じって咲く
 果実は径1cm位で、晩秋に黒紫色に熟す


関節炎で骨を破壊する「悪玉破骨細胞」を発見

2019-11-27 | 健康・病気
 大阪大学大学院医学系研究科の長谷川哲雄特任研究員、石井優教授(免疫細胞生物学)らの研究グループは、破骨細胞には正常な破骨細胞とは性質も起源も異なる「悪玉破骨細胞」が存在することを世界で初めて明らかにした。本研究成果は、英国科学誌「Nature Immunology」に、11月19日に公開。
 古い骨を溶かす「破骨細胞」は、生理的な状態では骨の内側のみに存在し、骨を造る「骨芽細胞」と協調して骨構造を緻密に維持している。一方、関節リウマチなどの病的な状態では関節組織に発生し、骨を「外側」から壊すことで関節構造を破壊する。これまでに「破骨細胞」とその「前駆細胞」の研究は、骨髄や脾臓や血液の細胞を用いて数多く行われてきたが、実際に病的な骨破壊が起こる「関節組織」を用いた解析は、病変部位が非常に小さいため詳細に行われてこなかった。そのため、正常な破骨細胞の発生過程と病的な破骨細胞の発生過程が同じなのか、明らかではなかった。これまでの通説では、この破骨細胞は一種類であり、働き方が異なることで、「良い働き」や「悪い働き」を行うと考えられてきたが、今回の研究グループは、これらの細胞は元々異なるものであり、病的な骨破壊を行う「悪玉破骨細胞」が存在することを同定した。
 ポイント
 〇炎症関節の細胞を採取・解析する技術を独自に開発し、関節炎で病的に骨を破壊する「悪玉破骨細胞」を同定した。
 〇「悪玉破骨細胞」は、通常の骨代謝を担う「善玉破骨細胞」とは、性質も起源も異なることが分かった。
 〇「悪玉破骨細胞」のみを特異的に阻害することで、善玉の破骨細胞が担う正常な骨の新陳代謝には影響を与えずに、関節リウマチ患者の病的な骨破壊のみ完全に阻止する画期的な治療薬開発が期待される。
 研究成果
 研究グループでは、関節炎において病的な骨破壊が起こる部位の組織(関節組織と骨の境界領域)を単離する独自のプロトコールを開発した。これにより、関節炎を発症した関節組織には、正常な骨の中には存在しない病的な「破骨前駆細胞」が存在することが明らかになり、「arthritis-associated osteoclastogenic macrophage(AtoM)」と命名した。AtoMは、関節に常在している細胞からではなく、骨髄由来の細胞が血流を介して関節に流入した後にM-CSFに反応して発生し、うち約10パーセントの細胞が関節局所で病的な「破骨細胞」へと分化していくことがシングルセル解析を用いて明らかになった。また、正常な破骨細胞へ分化するために必要なRANKL(ランクル)に加え、炎症性サイトカインであるTNFを同時に投与すると、関節に流入した骨髄由来の細胞がAtoMへ分化する能力がさらに高まることが明らかになった。
 さらに網羅的な遺伝子発現を調べることで、AtoMがFoxM1と呼ばれる転写因子により部分的に制御されていることが示され、FoxM1の阻害薬がマウスにおいても、関節リウマチ患者さんの関節液から採取した細胞においても、破骨細胞への分化を阻害することが明らかとなった。
 研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 関節リウマチは、全人口の約1パーセントが罹患する、自己免疫疾患の中で最も頻度の高い病気の1つである。本疾患や、慢性的な関節炎を惹起する疾患群は、最終的に関節の表面に形成される病的な破骨細胞が骨を破壊することで著しい身体機能の低下、ひいては生命予後の悪化を招く。本研究成果により、病的な破骨細胞が発生する過程が詳細に解き明かされたことで、関節の表面に形成される病的な破骨細胞をターゲットとする新たな治療法の開発が期待される。
 ◆用語解説
 注1)M-CSF(macrophage colony stimulating factor)
 単球系細胞が破骨細胞へ分化するために必須のサイトカインの1つであり、単球系細胞の増殖や分化に関与する。
 注2)シングルセル解析(single-cell RNA sequencing)
 1つの細胞に含まれるメッセンジャーRNAからcDNAを作成し、増幅した後に次世代シークエンサーを用いて読み取ることで、全遺伝子の発現量を細胞毎に定量解析する手法。
 注3)RANKL(蘭くる:receptor activator of nuclear factor-kappa B ligand)
 単球系細胞が破骨細胞へ分化するために必須のサイトカインの1つであり、抗RANKL抗体はヒトにおいて骨粗鬆症や関節リウマチの治療薬として用いられている。
 注4)TNF(tumor necrosis factor)
 主にマクロファージにより産生される炎症性サイトカインの一種であり、抗TNF抗体は関節リウマチや炎症性腸疾患に対して効果を発揮する。

 朝から晴れ~曇り。風は無風状態かな。最高気温が10℃、最低気温が1℃、・・畑に行ったら霜が降りていた。
 小さなお庭で、”アリッサム(スイートアリッサム)”が咲いている。開花期間が長く、8月始めから咲いており、晩秋まで咲くのかな。小さな花が球状に纏まり、この球状花が集合し、這うように広がり、カーペット状になる。
 花には甘い芳香があり、スイート・アリッサム(Sweet alyssum)と呼ばれる。花はアブラナ科に特徴の4弁花。花色には白花が多く、ピンク・赤・紫などもある。
 スイートアリッサム
  (Sweet alyssum、Alyssum)
 別名:庭薺(にわなずな)
 流通名はアリッサム
  (アリッサムとして栽培されているのはロブラリア・マリティマの園芸品種)
 学名:Lobularia maritima
 アブラナ科ロブラリア属
 多年草、園芸では1年草と扱う
 地中海沿岸原産、渡来時期は不詳
 開花時期は3月~6月と9月~11月


入歯の手入れを毎日しないと過去1年間の肺炎のリスクが1.3倍高い

2019-11-07 | 健康・病気
 令和元年10月28日東北大学大学院歯学研究科の発表。
 研究の背景
 肺炎は高齢者において死因の上位を占めている。嚥下機能及び免疫機能が低下する高齢者では、飲食物や唾液などが肺に入ることによる「誤嚥性肺炎」を発症するリスクが高く、誤嚥時に口腔内の微生物も一緒に肺に到達することにより、肺炎が発症すると考えられている。そのため入院患者や介護施設入所者に対して「口腔ケア」を実施することで、肺炎を予防できることが報告されてきた。しかしながら、誤嚥による肺炎発症のリスクは地域在住高齢者でも高く、口腔内を清潔に保つことは地域在住高齢者においても誤嚥性肺炎の予防につながると考えられる。
 高齢者では歯の喪失に伴い、入れ歯(義歯)を装着している者が多く、義歯の表面には「デンチャー・プラーク」と呼ばれる細菌などからなる有機物が付着しており、それらが誤嚥により肺に到達し、肺炎を引き起こす可能性がある。
 対象と方法
 2016年に実施されたJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study; 日本老年学的研究)調査に参加した要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者の内、義歯を使用している71,227人を対象に義歯の清掃頻度と過去1年間の肺炎発症の有無の関連を横断研究で調べた。義歯の清掃頻度は「毎日入れ歯の手入れをしていますか?」という質問に「はい」または「いいえ」で答えてもらった。分析に際して、無回答の項目を統計学的に補完した上で、交絡因子として性別、年齢、喫煙歴、等価所得、教育歴、現在歯数、ADL、脳梗塞・認知症の既往、肺炎球菌ワクチンの接種を用いて傾向スコアを算出し、逆確率による重みづけを用いたロジスティック回帰分析を行い、仮想的に対象集団の背景因子を同じにしたときに義歯を毎日清掃する人としない人で肺炎発症のリスクが異なるかを評価した。
 研究のポイント
 〇口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に有効であることは、入院患者及び介護施設入所者を対象に多くの研究で明らかにされている。しかし、地域在住高齢者においても口腔衛生状態を保つことが誤嚥性肺炎予防につながるかは明らかにされていなかった。
 〇本研究から要介護状態にない地域在住の高齢者においても、入れ歯の手入れを毎日はしない人は毎日手入れをする人に比べて、過去1年間に肺炎を発症した人が1.3倍多いことが明らかとなった。
 結果
 対象者71,227人のうち、過去1年間に肺炎を発症したと答えた人は2.3%、義歯を毎日は清掃しない人は4.6%であった。また、義歯を毎日清掃する人では過去1年間に肺炎を発症した人は2.3%であった一方、毎日は清掃しない人では3.0%であった。さらに75歳以上の人に限ると義歯を毎日清掃する人では過去1年間に肺炎を発症した人は2.9%であった一方、毎日は清掃しない人では4.3%と肺炎発症のリスクが高くなった。また、傾向スコアを用いた統計解析により、65歳以上の全対象者では義歯を毎日は清掃しないことにより、リスクが1.30(95%信頼区間:1.01-1.68)倍高く、また、75歳以上の人に限ると1.58(95%信頼区間:1.15-2.17)倍高くなることが示された。
 いればの清掃頻度と過去1年間の排煙発症との関連(N=71,227)
  毎日いればの手入れをする 1.0
  毎日はいればの手入れをしない 1.30(65歳以上全対象者)
  毎日はいればの手入れをしない 1.58(75歳以上のみ)
 本研究の意義
 現在、誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアは入院患者や介護施設入所者などリスクの高い人に対して行われている。しかしながら、高齢者の大部分を占めている地域在住の高齢者においても誤嚥性肺炎発症のリスクはある。今回の研究で示された義歯の清掃を含め、地域在住高齢者の口腔衛生状態も清潔に保っていくことが、日本人全体の誤嚥性肺炎の発症を減らしていくことにつながると考えられる。
 要介護状態にない人でも、入れ歯を使っている人は、手入れを毎日行うことが肺炎の予防につながる可能性がある。また定期的に歯科医院で、義歯の状態のチェックや、家庭でとれない歯石などの入れ歯汚れを除去してもらうことも大切だと言える。

 街に出かけた。
 街路樹の”イチョウ”を見る。黄葉し始め、樹の周辺に黄葉が散り始めている。もう少し秋が深まると、黄葉が散り、道路が黄色の絨毯となる・・綺麗だ。”イチョウ”の実も落ち始める・・”イチョウ”は雌雄異株、実は雌株にのみになる。
 因みに、”イチョウ”は「生きている化石」植物の一つである。イチョウ類は、約3億年前(古生代後期)に出現し、中生代に最も繁栄した。
 イチョウ(銀杏、公孫樹、鴨脚樹)
 イチョウ科イチョウ属
  裸子植物門イチョウ綱の中で唯一の現存している種
 落葉高木
  広葉樹にも針葉樹にも属さない
 雌雄異株 実は雌株にのみになる
 中国原産、鎌倉時代の渡来説が有力
 開花時期は4月~5月
  花粉は風で運ばれる(風媒花)。結実は9月~10月