灌漑農業によって塩類が集積した地域や海沿いにある耕作地域では塩害が生じ、農作物の生産に悪影響を及ぼしている。塩害は世界の灌漑農地の2割で発生している。2050年に世界人口が約90億人に達すると予測され、これから食料不足が懸念される。このため、持続的な食料生産の実現に向けて、耐塩性など植物の環境適応能力を高める技術が求められている。
理化学研究所環境資源科学研究センター植物ゲノム発現研究チームの中南健太郎研究員、関原明チームリーダー、機能開発研究グループの花田耕介客員研究員(九州工業大学大学院情報工学研究院准教授)らの共同研究グループは、外部から投与することで植物の塩ストレス耐性を強化できる13アミノ酸のペプチドを発見した。
共同研究グループは、材料にモデル植物であるシロイヌナズナを用い、塩ストレス処理で発現が上昇する81のペプチドをコードすると考えられる短い遺伝子の中から17遺伝子を選び出し、それらを過剰発現させた植物を作製した。これら過剰発現体の塩ストレス耐性を、生存率と塩ストレスによる根の伸長により評価し、塩ストレスに対し耐性を示した AT5、AT12、AtPROPEP3、AT23の四つの遺伝子を候補として同定した。
ここで、高塩条件で最も多く誘導されたAtPROPEP3遺伝子に的を絞り、人工合成したAtPROPEP3がコードするAtPep3ペプチドを植物に投与し、植物体に塩ストレス耐性を示すかを検討した。その結果、期待通りに、AtPep3ペプチドの投与でも、植物内でAtPROPEP3遺伝子を過剰発現させることと類似した効果、つまり塩ストレス耐性を示すことを発見した。これは、トランスクリプトーム解析によっても、AtPep3ペプチドの投与は、植物内部でAtPROPEP3遺伝子を過剰に発現させる遺伝子組換え植物体と同じ効果を示すことが実証された。この結果は、ペプチド投与が遺伝子組換え体と同じ効果があることを示している。
AtPep3ペプチドは植物の病原体に対する抵抗性を上げるものとして、以前に発見されていたが、塩ストレス耐性を高める機能を持つことはこの研究で初めて示された。AtPep3ペプチドをコードするAtPROPEP3遺伝子はAtPROPEP遺伝子ファミリーの一つだが、他のファミリーの遺伝子と比較しても、AtPROPEP3遺伝子が塩ストレス処理で非常に多く誘導されることが明らかになった。さらに、遺伝子の発現だけでなく、AtPep3ペプチド自体も塩ストレス処理で増加することが明らかになった。
これまでの植物免疫システムの研究からAtPepペプチドファミリーの受容体はPEPR1、PEPR2の二つがあり、植物の病原体に対する耐性を高めるためには、AtPep3ペプチドはPEPR2受容体ではなく、PEPR1受容体により結合することが分かっていた。
AtPep3ペプチドの受容体であるPEPR1とそのホモログであるがAtPep3ペプチドの受容体ではないPEPR2の欠損変異体を用いて、AtPep3ペプチドによる塩ストレス耐性が植物の免疫システムと同じ経路で機能しているかを調べた。その結果、PEPR1が機能しているpepr2欠損変異体ではAtPep3ペプチドを投与すると塩ストレス耐性を示したのに対し、pepr1欠損変異体またはpepr1/pepr2二重欠損変異体ではAtPep3ペプチドによる塩ストレス耐性強化の効果はなかった。これはAtPep3ペプチドがPEPR1に受容され、病原体に対する耐性を高めるのと同じ経路で塩ストレス耐性を高めていることを示している。すなわち、塩ストレスによりダメージを受け病気になりやすい状態の植物が、あらかじめ免疫システムも高めておくことで生存しようとする、非常に理にかなったメカニズムが存在することが明らかになった。
今回発見されたAtPep3ペプチドは植物体内で作られる天然物であり、その安全性からAtPep3ペプチドを利用した新しい農法の開発が期待できる。特にAtPep3ペプチドは、塩ストレス耐性だけでなく病原体に対する耐性も一度に強化することができ、万能な非生物・生物ストレス耐性農薬の開発につながる可能性がある。
◆トランスクリプトーム解析
DNAから転写されるメッセンジャ-RNA(mRNA)などの遺伝子の発現を網羅的に解析すること。
◆植物免疫システム
植物が病原体やバクテリアの感染などの生物的なストレスに対して抵抗する機構。
◆受容体
ペプチドなどのシグナル分子を受け取る器官で、細胞の外側に受容する部位を持ち、細胞の内側にその情報を伝える。
◆ホモログ
相同遺伝子とも呼ばれ、塩基配列が類似する遺伝子のこと。アミノ酸配列も類似しているので、コードされるタンパク質やペプチドも互いに似た機能を持つことが多い。
今日は朝から雨。弱い雨だけど、明日の予報は、強い雨、そして強い風。台風接近の影響だ
数日前の晴れた日。道路沿いのお庭。高い木が育っている。その木に赤い花が幾つも咲いている。”ザクロ”の花だ。
”ザクロ”は花より果実が知られている。球状の果実は花托の発達したもので、熟すと赤く硬い外皮が不規則に裂け、赤く透明な多汁性の果肉(仮種皮)の粒が現れる。ザクロの実が割れる様が語源となった、「ザックリ」がある・・とか。
名(ザクロ)の由来は良く分かっていない。二千年前、ペルシャ北部の安石国から中国に伝わり、果実が瘤の様だったので、安石榴・石榴(ジャクリュウ)と呼ばれた。これが”ザクロ”の名の由来とか。
多くの男性の中にいる一人の女性を指す「紅一点」の語源は、中国の詩人・王安石(11世紀)の「万緑叢中紅一点」で、青葉の紅いザクロ花の咲く様子、を詠んだ、と言う。
ザクロ(石榴、柘榴、若榴)
木、およびその果実
学名:Punica granatum
ザクロ科ザクロ属
落葉小高木
原産地は西南アジア、日本には平安時代に渡来
多くの品種・変種がある。
一般的な赤身ザクロの他、白い水晶ザクロ・果肉が黒いザクロなどがある
開花時期は6月~7月



