国際農研は、マダガスカル国立農村開発応用研究センターと共同で、リン肥料と水田土壌を混合した泥状の液体に苗を浸してから移植するリン浸漬処理技術により、イネの収量と施肥効率を大幅に改善できること、さらに、この技術がイネの生育日数を短縮し生育後半の低温ストレス回避に有効であることをマダガスカルの農家圃場で明らかにした。リン浸漬処理を施すことで、従来の施肥法(表層施肥)に比べて、籾収量が9~35%増加した。マダガスカルをはじめとするサブサハラアフリカでは、リン供給力に乏しい貧栄養土壌や生育期間中の不安定な生産環境(水不足、低温・高温ストレス)により、イネの生産性が著しく制限されている。同技術を普及させることで、サブサハラ地域のイネの安定生産、さらには、食料安全保障に貢献することが期待される。本研究成果は、国際科学専門誌「Field Crops Research」電子版(日本時間2020年4月24日15時)に掲載。
ポイント
〇移植苗のリン浸漬処理がリン欠乏圃場でのイネ増収と生育日数の短縮につながることを解明
〇生育日数が短縮することで、生育後半の低温ストレス回避につながることを実証
〇リン欠乏や低温ストレスに悩まされるアフリカの安定的イネ生産に貢献
背景と経緯
マダガスカルは、日本人の2倍以上のコメを消費するアフリカ随一の稲作国である。しかし、イネの生産性は今日まで停滞しており、主食であるコメの安定供給と農村地域の貧困削減を妨げている。その 結果、マダガスカルは、国民の77%が1日1.9 ドル未満で暮らす世界の最貧国の1つに数えられる。
イネの生産性を阻害する要因として、農家が貧しいために肥料を購入する資金が少ないこと、貧栄養土壌が広く分布していることが挙げられる。特に、作物の三大栄養素の1つであるリンは、土壌中の存在量が少なく、また、土壌のリン固定能が高いために、施肥をしても土壌に吸着し、イネに吸収されにくい問題があった。そこで、本研究では、かつて日本で実践されていた 揉付(もみつけ)などにもヒントを得ながら、リン固定能の高い土壌でも、少ない肥料で効率的にイネの生産性を改善できる施肥技術の開発を目指した。
内容・意義
本研究で着目したリン浸漬処理は、リン肥料 (重過リン酸石灰 と水田土壌を混合した泥状の液体(スラリーに苗の根を30分程度浸してから移植する。小規模農家にも実践しやすい局所施肥技術の1つである。
マダガスカルの農家圃場で、2年間にわたり同技術の効果を評価したところ、リン浸漬処理を施すだけで、無施肥に比べて59~171%、表層施肥に比べて、同量もしくは半分の施肥量で9~35%、籾収量が増加することが示され、リン固定能の高い熱帯の貧栄養土壌でこの技術の効果が高いことが明らかになった。さらに、リン浸漬処理は、無施肥に比べて約3週間、表層施肥 に比べて約10日間、イネの生育期間を短縮できることが分かった。その結果、この技術は、標高の高い地域における生育後半の低温ストレス回避、すなわち、イネの登熟不良の改善にも有効であることが示された。リン欠乏がイネの発育を遅延させることはよく知られているが、本研究では、リンの施肥法の違いにより顕著に生育日数が変化すること、さらに、それにともなって環境ストレスが回避できることを生産現場で初めて実証することに成功した。
マダガスカルをはじめ、サブサハラ地域のイネ生産は、リン欠乏のみならず、水不足や低温・高温ストレスなど生育期間中のさまざまな環境ストレスにさらされている。本 成果は、こうした栽培環境での安定的なイネ生産にもつながることから、 学術的にも実用的にも価値が高いものといえる。
今後の予定・期待
本成果は、マダガスカルの現地メディアにも広く取り上げられており、農家や行政機関の関心が高まっている。今後、国際農研は、マダガスカルの共同研究機関、農業畜産水産省、肥料会社、および JICA 技術協力プロジェクト PAPRIZ 2などと力を合わせて、数百 世帯 の小規模農家を対象とした実証試験 を予定している。
実証試験で得られたデータを基に、同技術の 効果 や農家が実践する上での課題を抽出し、技術の汎用化と広域への普及を目指す。同技術が普及することで、マダガスカル政府が掲げる2023年までのコメの自給達成 や同様の生産課題を抱えるサブサハラ地域の安定的なイネ生産、さらには、同地域の食料安全保障および貧困削減に貢献することが期待される。
◆用語解説
〇1日1.9ドル未満
必要 最小限の生活水準が満たされていない とする世界銀行が示す絶対的貧困ライン 。
〇リン固定能
施肥したリンが土壌に吸着する割合を示す指標。土壌中の非晶質のアルミニウムや鉄含量が 多いほど高くなりやすく、作物のリン吸収を阻害する。
〇揉付(もみつけ)
リン固定能の高い火山灰土壌が多い 鹿児島県などに みられた施肥法。リン肥料もしくはリンを多く含む骨粉を苗の根に揉み付けてからイネを移植した。
〇スラリー
液体中に粘土などの固 体粒子が懸濁(けんだく)した泥状のもの。
〇局所施肥技術
作物の根が分布する位置にあらかじめ 施肥することで 、効率よく肥料成分を吸収させる施肥法。
〇PAPRIZ 2
コメ生産性向上・流域管理プロジェクトフェーズ 2(2015年12月~2020年11月)。
マダガスカルの稲作技術普及と生産性向上に取り組む JICA 技術協力プロジェクト。
天気は曇り。時間によって雲の厚さが異なるのか、空からの明るさが変化する。
近所の空地で、”ハハコグサ”の花が咲いている。開花時期は、4月~6月だから時期外れの開花ではない・・昨年も一昨年も時期外れの花を見てきたから・・。
名(ハハコグサ:母子草)の由来に、毛が多い状態、毛が形成される状態を「ほほけ立つ」と呼び、この”ホホケグサ”の転訛から、との説がある。古い呼び名にホウコグサがあり、茎・葉が「蓬(ほお)けて」白い細かな毛に覆われているので、「ほうこぐさ、ほおこぐさ」との別名である。
”ハハコグサ”は、春の七草の一つ。御形(おぎょう、又は、ごぎょう)と呼ばれ、食べるのは春の茎葉の若いものだけ。草餅の材料に使われたが、「母と子を臼と杵でつくのは縁起が良くない」として蓬(よもぎ)に代わったと言う。
ハハコグサ(母子草)
別名:御形(おぎょう、ごぎょう)
学名: Gnaphalium affine
キク科ハハコグサ属
1年草または多年草
(春の七草の一つ)
ムギ類とともに伝来した史前帰化植物
開花時期は、4月~6月
ポイント
〇移植苗のリン浸漬処理がリン欠乏圃場でのイネ増収と生育日数の短縮につながることを解明
〇生育日数が短縮することで、生育後半の低温ストレス回避につながることを実証
〇リン欠乏や低温ストレスに悩まされるアフリカの安定的イネ生産に貢献
背景と経緯
マダガスカルは、日本人の2倍以上のコメを消費するアフリカ随一の稲作国である。しかし、イネの生産性は今日まで停滞しており、主食であるコメの安定供給と農村地域の貧困削減を妨げている。その 結果、マダガスカルは、国民の77%が1日1.9 ドル未満で暮らす世界の最貧国の1つに数えられる。
イネの生産性を阻害する要因として、農家が貧しいために肥料を購入する資金が少ないこと、貧栄養土壌が広く分布していることが挙げられる。特に、作物の三大栄養素の1つであるリンは、土壌中の存在量が少なく、また、土壌のリン固定能が高いために、施肥をしても土壌に吸着し、イネに吸収されにくい問題があった。そこで、本研究では、かつて日本で実践されていた 揉付(もみつけ)などにもヒントを得ながら、リン固定能の高い土壌でも、少ない肥料で効率的にイネの生産性を改善できる施肥技術の開発を目指した。
内容・意義
本研究で着目したリン浸漬処理は、リン肥料 (重過リン酸石灰 と水田土壌を混合した泥状の液体(スラリーに苗の根を30分程度浸してから移植する。小規模農家にも実践しやすい局所施肥技術の1つである。
マダガスカルの農家圃場で、2年間にわたり同技術の効果を評価したところ、リン浸漬処理を施すだけで、無施肥に比べて59~171%、表層施肥に比べて、同量もしくは半分の施肥量で9~35%、籾収量が増加することが示され、リン固定能の高い熱帯の貧栄養土壌でこの技術の効果が高いことが明らかになった。さらに、リン浸漬処理は、無施肥に比べて約3週間、表層施肥 に比べて約10日間、イネの生育期間を短縮できることが分かった。その結果、この技術は、標高の高い地域における生育後半の低温ストレス回避、すなわち、イネの登熟不良の改善にも有効であることが示された。リン欠乏がイネの発育を遅延させることはよく知られているが、本研究では、リンの施肥法の違いにより顕著に生育日数が変化すること、さらに、それにともなって環境ストレスが回避できることを生産現場で初めて実証することに成功した。
マダガスカルをはじめ、サブサハラ地域のイネ生産は、リン欠乏のみならず、水不足や低温・高温ストレスなど生育期間中のさまざまな環境ストレスにさらされている。本 成果は、こうした栽培環境での安定的なイネ生産にもつながることから、 学術的にも実用的にも価値が高いものといえる。
今後の予定・期待
本成果は、マダガスカルの現地メディアにも広く取り上げられており、農家や行政機関の関心が高まっている。今後、国際農研は、マダガスカルの共同研究機関、農業畜産水産省、肥料会社、および JICA 技術協力プロジェクト PAPRIZ 2などと力を合わせて、数百 世帯 の小規模農家を対象とした実証試験 を予定している。
実証試験で得られたデータを基に、同技術の 効果 や農家が実践する上での課題を抽出し、技術の汎用化と広域への普及を目指す。同技術が普及することで、マダガスカル政府が掲げる2023年までのコメの自給達成 や同様の生産課題を抱えるサブサハラ地域の安定的なイネ生産、さらには、同地域の食料安全保障および貧困削減に貢献することが期待される。
◆用語解説
〇1日1.9ドル未満
必要 最小限の生活水準が満たされていない とする世界銀行が示す絶対的貧困ライン 。
〇リン固定能
施肥したリンが土壌に吸着する割合を示す指標。土壌中の非晶質のアルミニウムや鉄含量が 多いほど高くなりやすく、作物のリン吸収を阻害する。
〇揉付(もみつけ)
リン固定能の高い火山灰土壌が多い 鹿児島県などに みられた施肥法。リン肥料もしくはリンを多く含む骨粉を苗の根に揉み付けてからイネを移植した。
〇スラリー
液体中に粘土などの固 体粒子が懸濁(けんだく)した泥状のもの。
〇局所施肥技術
作物の根が分布する位置にあらかじめ 施肥することで 、効率よく肥料成分を吸収させる施肥法。
〇PAPRIZ 2
コメ生産性向上・流域管理プロジェクトフェーズ 2(2015年12月~2020年11月)。
マダガスカルの稲作技術普及と生産性向上に取り組む JICA 技術協力プロジェクト。
天気は曇り。時間によって雲の厚さが異なるのか、空からの明るさが変化する。
近所の空地で、”ハハコグサ”の花が咲いている。開花時期は、4月~6月だから時期外れの開花ではない・・昨年も一昨年も時期外れの花を見てきたから・・。
名(ハハコグサ:母子草)の由来に、毛が多い状態、毛が形成される状態を「ほほけ立つ」と呼び、この”ホホケグサ”の転訛から、との説がある。古い呼び名にホウコグサがあり、茎・葉が「蓬(ほお)けて」白い細かな毛に覆われているので、「ほうこぐさ、ほおこぐさ」との別名である。
”ハハコグサ”は、春の七草の一つ。御形(おぎょう、又は、ごぎょう)と呼ばれ、食べるのは春の茎葉の若いものだけ。草餅の材料に使われたが、「母と子を臼と杵でつくのは縁起が良くない」として蓬(よもぎ)に代わったと言う。
ハハコグサ(母子草)
別名:御形(おぎょう、ごぎょう)
学名: Gnaphalium affine
キク科ハハコグサ属
1年草または多年草
(春の七草の一つ)
ムギ類とともに伝来した史前帰化植物
開花時期は、4月~6月