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ニホンミツバチは外来ダニ(アカリンダニ)をうまく払い落とすことができない

2020-03-08 | 農業
 国立環境研究所生物・生態系環境研究センター坂本佳子研究員等の研究グループは、近年ニホンミツバチの気管で増殖し、甚大な被害をもたらしているアカリンダニが、なぜニホンミツバチだけで重症化し、セイヨウミツバチでは問題とならないのかについて、行動学的な視点からの要因究明を試みた。結果、セイヨウミツバチと比較して、ニホンミツバチではアカリンダニをうまく払い落とすことができないことが明らかになった。本成果は、令和元年11月22日付で刊行された学術誌「Insectes Sociaux」に掲載。
 背景・目的
 数年前から、飛べなくなったミツバチが巣の周りを徘徊するという現象が日本各地で報告される。この異常な行動を引き起こしている原因の一つが「アカリンダニ」による寄生だと言われている。アカリンダニは体長0.1mmのとても小さなダニで、ミツバチの胸部気管内で繁殖する。気管の中がアカリンダニでいっぱいになったミツバチは酸素不足になり、飛翔や温度調節ができなくなる。また、気管の中で成熟したダニが別のミツバチの気管に侵入し繁殖するという寄生が繰り返されるため、巣内のミツバチ全体にダニが蔓延し、やがてコロニーが死滅する。
 日本には、古来より生息するニホンミツバチ(トウヨウミツバチの一亜種)と、養蜂のために海外から輸入しているセイヨウミツバチがいる。アカリンダニが猛威を振るっている対象はニホンミツバチだけで、セイヨウミツバチではほとんど被害が報告されていない。なぜニホンミツバチだけで、アカリンダニが流行しているのでしょうか?これまでに、我々の研究グループはアカリンダニがセイヨウミツバチと比べてニホンミツバチの気管に侵入しやすいことを実験室内での観察により突き止めている(Sakamoto et al. 2016)。そこで、アカリンダニが気管に侵入する前にミツバチがダニに気付いて払い落とすことが出来るかどうかが、ダニの寄生率を左右する要因ではないかと考え、本研究ではミツバチの「グルーミング」に着目して調査した。
 方法
 ニホンミツバチおよびセイヨウミツバチのそれぞれの胸部背面(=背中)にアカリンダニを付着させた後、ミツバチがダニを払い落とそうとする行動(=グルーミング)を一定時間観察し、ダニを付着させなかった場合(コントロール)の行動と比較した。また、観察終了後にダニが胸部背面から除去されたかどうかも記録した。
 実験成功のポイントは、①0.1mmの微小なダニを操作するために、楊枝の先にヒトのまつげを付けた特殊な「まつげブラシ」を用いたこと、②動き回るミツバチにダニを付着させるのは困難なため、暖かい場所に集まる習性を利用して、脚元を温める床暖房(Floor-heating method:床暖房法)を考案したことにある。
 結果・考察
 ダニを付着させなかった場合(コントロール)では、両種ともグルーミングをした個体の比率が約20%であった。ダニを付着させた場合では、両種ともグルーミングが誘発されたが、セイヨウミツバチ(69%)よりもニホンミツバチ(45%)の方がその比率が低い結果となった。両種においてグルーミングがダニの除去に効果的であるが、グルーミングを行った場合でも、ニホンミツバチの方がダニを除去する能力が低いことが分かった。全体でみると、ニホンミツバチは、セイヨウミツバチの約半数のダニしか除去できないことが明らかになった。
 今後の研究展開
 本研究より、ニホンミツバチはセイヨウミツバチよりもアカリンダニを払い落とす能力が低いことが明らかになった。
 今後は、なぜそのような能力の差が生じるのかについて、生理学的・形態学的なアプローチも取り込んで詳細に分析し、その結果に基づき、将来的にニホンミツバチがアカリンダニに対して抵抗性を獲得する可能性を予測する。また、このような新しい病気の流行を未然に防ぐために、ミツバチを含むハナバチ全体に潜在する病原生物の網羅的探索も予定している。
 ◆アカリンダニ
 アカリンダニ(Acarapis woodi)は、ミツバチの体内に寄生するホコリダニ科のダニである。クモの仲間で8本の脚を持つ。アカリンダニはハチの気管内で生活し、繁殖する。メスは気管壁に5個から10個の卵を産み、孵化した幼虫は2週間から3週間で成虫になる。
 アカリンダニは、これまでにヨーロッパや北米・南米のセイヨウミツバチで分布が確認されている。日本では、ごく最近の2010年に見つかっていることから、このダニは人間によって意図せず持ち込まれた「外来生物」ではないかと考えられており、我々の研究グループの遺伝子解析からも、それを支持する結果が得られている。
 本来、宿主と寄生者は、生態系の中で互いに対立しながらも安定した関係を築いている。ところが人間活動によって生き物を移動させることで、寄生者もまったく新しい地域に持ち込まれ、対抗策を持たない新しい宿主にとりつき、病気の大流行を引き起こす。
 今回の事例でも、セイヨウミツバチはアカリンダニを効果的に除去する行動を獲得しているのに対し、ニホンミツバチはこの外来ダニへの有効な対抗手段を持ち合わせていないため、ダニの寄生が進行して深刻な被害がもたらされていると考えられた。ニホンミツバチは、我が国において多様な植物の受粉を担う重要な送粉者であり、ニホンミツバチが減少すれば、これらの植物の多様性にも影響がでる恐れがある。

暑さ・いもち病に強い東北向け業務用多収米「しふくのみのり」を育種

2019-11-29 | 農業
 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)東北農業研究センターは、低コストで食味と多収性に優れた業務用米に最適な新品種「しふくのみのり」を開発したと発表した(11月27日)。
 外食や販売用の弁当、おにぎりなどに使われる業務用米は需要が伸びている。コメの消費割合で1985年に15%だった業務用米は2016年に31.1%と倍増、2035年には40%に達すると見込まれている。
 ポイント
 東北地域向けに、倒伏しにくく暑さにも強い直播栽培向きの多収良食味水稲品種「しふくのみのり」を育成した。「ひとめぼれ」並の良食味で、「ひとめぼれ」より標肥直播栽培で約1割、多肥直播栽培で約3割多収となる。また、いもち病に強く、縞葉枯病(しまはかれびょう)に抵抗性を持つ。業務用米に適した品種として、令和3年から本格栽培が始まり、秋田県大潟村秋田県で200haの作付けが計画されている。
 新品種「しふくのみのり」の特徴
 1. いもち病に強く、縞葉枯病に抵抗性で良質・良食味の「奥羽406号」を母とし、多収の「ふくひびき」を父として交配を行い、「しふくのみのり」を育成した。
 2. 育成地(秋田県大仙市)での出穂期は「ひとめぼれ」より移植栽培で1日、直播栽培で3日程度早く、「萌えみのり」と同程度。成熟期は「ひとめぼれ」、「萌えみのり」と同程度。
 3. 稈長は「ひとめぼれ」よりかなり短く、「萌えみのり」よりやや短い。耐倒伏性はかなり強く、多肥直播栽培でも倒伏はほとんどない。
 4. 育成地における多肥移植栽培、直播栽培(標肥、多肥)の精玄米重は、いずれも「ひとめぼれ」より多収。「ひとめぼれ」の標肥直播栽培と比較して、標肥直播栽培では641kg/10aで約1割、多肥直播栽培では754kg/10aで約3割多収となり、「萌えみのり」と同程度の多収。
 5. 玄米千粒重は「ひとめぼれ」より1g程度重く、「萌えみのり」と同程度。玄米外観品質は「ひとめぼれ」と同程度かやや優れ、「萌えみのり」より優れる。
 6. 高温耐性は「ひとめぼれ」、「萌えみのり」よりも強く、"やや強"。「ひとめぼれ」、「萌えみのり」よりいもち病に強く、葉いもち・穂いもちともに"強"。縞葉枯病に抵抗性で、白葉枯病はやや強。耐冷性は中、穂発芽性はやや難。
 7. 食味は「ひとめぼれ」、「萌えみのり」と同程度。業務用米の用途として、店内炊飯、おにぎり等に適している。
 10年がかりで新品種を開発した同センター大仙研究拠点(秋田県大仙市)の太田久稔・水稲育種グループ長は「新品種は大きな欠点がなく、業務用米として最適な品種です。東北における業務用米の主力に育ってほしい」と話している。
 ◆用語解説
 〇標肥直播栽培、多肥直播栽培
 一般に、肥料を多く施用すると、地上部全体が大きくなり、玄米の収量が多くなるが、草丈(稈長)が長くなるため倒れやすくなる。「ひとめぼれ」は肥料を多く施用すると倒れやすくなるため、標準的な量を施用(標肥直播栽培)する。 一方、「しふくのみのり」は、かなり倒れにくいため直播栽培においても標準的な量より多い肥料を施用(多肥直播栽培)することが可能である。
 〇縞葉枯病
 稲のウイルス病のひとつで、ヒメトビウンカによって媒介される。葉に黄緑色または黄白色の縞状の病斑があらわれ、生育が不良となり、やがて枯死する。後期感染では、黄緑色の条斑を生じ、穂が奇形となって十分に葉から出なくなる症状を示す。関東から東海地域を中心に発生が多くなっている病害である。
 〇高温耐性
 水稲の玄米は、出穂後の登熟期間に気温が著しく高くなると、背白粒、基白粒等の白未熟粒が多く発生し、玄米の外観品質が低下する。基準品種(「ひとめぼれ」等)と玄米外観品質を比較し、白未熟粒の発生が少ない品種は"強"、白未熟粒の発生が多い品種は"弱"と評価する。
 〇白葉枯病
 稲の細菌病のひとつで、冠水や強風雨によって感染の機会が増大し、発病が助長される。葉縁に沿って黄色、白色あるいは青みを帯びた灰緑色の病斑が現れ、基部方向に伸長していく。発病葉は先端から次第に枯れて灰白色となり、葉の枯死で稔実が害され、減収になることもある。

 今日の天気は晴れ、雲が少し多いけど。
 ここ1~2週間は、気温が段々と下がり、冬の気候となる。ベランダの鉢植え”シャコバサボテン(別名でクリスマスカクタス)”を家の中に入れた、・・保温のため。
 数日経ったら、花が咲き出した。開花はクリスマスの頃(12月中旬)と言うが、開花が少しくなったのかな。鉢一杯(径70cm・高さ70cm)に大きく成長し、この鉢に咲く花はとても見事(・・連合い自慢の鉢植え)。
 ”シャコバサボテン”は着生(ちゃくせい)の森林性サボテンで、砂漠に生えているサボテンとは異なる。着生とは岩肌や樹木などに付着(根を張って)して生育する事で、寄生ではない。
 名の由来で、”シャコバサボテン(蝦蛄葉サボテン)”のシャコとは、茎の節ごとに一対の突起があり、蝦蛄(しゃこ、エビに似ている)の様であることから。デンマークで育種されたのを、デンマークカクタスと呼ぶことがあるが、大輪早生のもの指すようで、ほとんど区別がつかず、シャコバサボテンの別名としても良い、と言う。
 シャコバサボテン(蝦蛄葉サボテン)
 別名:クリスマスカクタス、デンマークカクタス
 学名:Schlumbergera truncata
 サボテン科ジゴカクタス属
      (シュルンベルゲラ属)
 常緑多肉植物、非耐寒性(耐寒温度は5~10℃位)
 原産地はブラジルの山岳地帯
 19世紀初めヨーロッパに渡り、日本には明治に渡来
 開花時期は10月~翌年1月
 花は茎節の末端に付き、花径は3cm~5cm、長さ7cm位
 基本的花色は赤桃色で、ピンク・白色など


細胞壁の形成を促進する新たなタンパク質2種を発見

2019-03-24 | 農業
 植物の細胞壁は、陸上にもっとも豊富に存在する最大の生物資源である。木材や綿、紙パルプなどといった多くの工業製品にも応用されている。近年は化石燃料に代わるバイオ燃料や次世代素材のセルロースナノファイバーの供給源としても着目されている。細胞壁はセルロースなどの多糖類が蓄積されたものである。細胞壁形成のための蓄積量や位置は、植物細胞の中で制御されていると考えられており、その仕組みは解明されていない。
 国立遺伝学研究所の小田祥久准教授、東京大学大学院理学系研究科、理化学研究所環境資源科学研究センターの共同研究により、「細胞壁の形成を促進する新たなタンパク質2種を発見した」(1月29日)。
 研究グループでは細胞壁の形成を制御する遺伝子を探すために、道管の細胞に着目した。道管を構成する細胞は、細胞内を空洞にすることで水を通す役割を果たしているが、その細胞壁は厚く丈夫であり、「壁孔」と呼ばれる微小な水の通り道をつくっている。「壁孔」周辺ではとりわけ細胞壁は厚くなり、特徴的なアーチ型になることが知られている。
 独自の細胞培養法を用いて、道管の壁孔周辺で活発に働くタンパク質を調査したところ、新たに2種のタンパク質が発見され、「WAL」と「BDR1」と名付けた。
 「WAL」は、アクチン繊維と呼ばれる繊維状の構造に結合することで、壁孔の縁に沿ったリング状のアクチン構造を作り出すことが確認された。アクチン繊維を破壊した植物や、WALタンパク質を失ったwal変異体では機能が抑制され、アーチ状の細胞壁の形成は不完全なものにとどまった。
 「BDR1」は細胞膜上に存在する低分子量GTPアーゼの一種である、ROPタンパク質とWALの双方に相互作用することで、アクチン繊維のリング構造が形成される位置を制御していた。「BDR1」の働きを制御することで、壁孔のWALタンパク質が消失することが確認された。
 これらから、細胞膜上のROPタンパク質が、「WAL」と「BDR1」を介してアクチン構造を壁孔に集めることで、壁孔周辺での細胞壁の形成促進していることを示している。
 植物の細胞壁を利用した物質・エネルギー生産は温暖化の原因である大気中の二酸化炭素の削減に貢献するとされる。中でも樹木を用いることで、食料生産と競合することがなくなるというメリットも踏まえた上で、研究グループでは、今回発見されたタンパク質の働きを利用して細胞壁の形成を促進することで、細胞壁の生産の多い樹木の開発などにつながると期待を寄せている。
 〇道管の細胞壁にある壁孔
  壁孔を伴った細胞壁を形成し、壁孔の縁で特に活発化し、アーチ状の細胞壁が形成される。
 〇WALタンパク質
  道管を構成する細胞では壁孔の縁に存在し、リング状の局在を示す。

 今日は曇り~晴れ。風が少し強く、最高気温8℃程、寒さが戻ってきた感がある。
 近所の駐車場の塀とアスファルト舗装の間に今年も”フキノトウ”が出てた。同じ場所で見つけて今年で7年目?となる。
 ”フキノトウ(蕗の薹)”はフキ(蕗)の花の蕾で、葉が出る前に花蕾(フキノトウ)だけが地面に出てきた。早春の雪解けの防寒のためか、蕾を苞(ほう)が厚く取り巻いている。
 フキノトウ(蕗の薹)
  フキ(蕗)の蕾
 キク科フキ属
 原産地は日本、樺太・朝鮮半島・中国にも分布する
 多年草
 蕾の状態で摘み採り、煮物・味噌汁・ふきのとう味噌などで食べる
  ・・花が咲いてしまうと苦い・・


病害に強く倒伏しにくい飼料用サトウキビ新品種「やえのうしえ」を育成

2019-03-08 | 農業
 農研機構は、黒穂病抵抗性が極強で耐倒伏性に優れる飼料用サトウキビ2)新品種「やえのうしえ」を育成した(3月6日発表)。
 肉用牛の繁殖経営が盛んな南西諸島では、畑の面積が限定されることや、台風や干ばつなどの被害を頻繁に受けることが粗飼料確保の上で課題となっている。
 これまでに農研機構は、南西諸島で普及している既存の飼料作物(牧草)であるローズグラスよりも多収となる飼料用サトウキビ「KRFo93-1」「しまのうしえ」を育成し、普及を進めてきた。しかし、「KRFo93-1」はさび病類の発生、「しまのうしえ」は収穫時期が遅れた際の倒伏が課題となっていた。また、特に沖縄県についてはサトウキビ最重要病害である黒穂病の発生地帯であるため、罹病した株からの黒穂病菌が他のサトウキビ畑へ拡散する懸念は常にある。こうしたなかで両品種とも黒穂病への抵抗性をさらに高めることが求められていた。
 これより、今回、耐病性と耐倒伏性に優れる飼料用サトウキビ新品種「やえのうしえ」を育成した。「やえのうしえ」は母(種子親):製糖用サトウキビ品種「農林8号」、父(花粉親):黒穂病抵抗性が極めて高い国内自生のサトウキビ野生種「西表いりおもて8」とする品種である。黒穂病やさび病などの主要病害に強く、収穫時期に倒伏しにくいことが特徴であり、機械収穫に要する時間が短縮されることが期待できる。
 栽培適地は南西諸島全域であり、現在沖縄県南城市で栽培が開始されている。
 因みに、栄養価を示すIVDMD(インビトロ乾物分解率)は、育成地では「KRFo93-1」および「しまのうしえ」と同程度である。沖縄でのIVDMDは「しまのうしえ」よりもやや低い値となるが、肉用繁殖牛への給餌において「やえのうしえ」は「しまのうしえ」と同様に利用できる。
 その他の特徴と栽培上の注意点、としては
 1.新植時の初期生育がやや遅いので、除草剤を使用する等雑草害を受けないように気を付ける必要がある。
 2.葉鞘(ようしょう)の毛群(もうぐん)が多いため、手刈り収穫には適さない。
 3.飼料用であり製糖用原料としては利用できない。
 ◆用語解説
 〇黒穂病(正式名称:サトウキビ黒穂病)
 黒穂病菌(Sporisorium scitamineum)の寄生によって起こる植物の病気で、サトウキビ最重要病害である。
 病気が発生すると茎の先端から薄い灰色の膜につつまれた黒色の鞭状物を抽出し胞子を飛散させる。感染した株は枯死するため大幅な減収をもたらす。胞子の飛散による被害の拡大を防ぐためには、株の抜き取り作業を行う必要があり多大な労力が必要となる。
 〇飼料用サトウキビ
 牛の飼料専用に開発されたサトウキビで、これまでに「KRFo93-1」と「しまのうしえ」の2品種が育成されており、「やえのうしえ」は3番目の品種となる。
 〇さび病類
 さび病は葉身に鉄さびが付着したような病徴を示すサトウキビの重要病害である。2種類のさび病菌によって褐色を呈する場合と黄色を呈するものがあり、両者を併せてさび病類としている。さび病による病斑の密度が高くなると葉は枯れる。
 〇株出し栽培
 前作の収穫後に再生する萌芽茎を仕立て、再度、収穫する栽培法のこと。
 〇多回株出し栽培
 複数回にわたり株出し栽培を実施する栽培法。
 〇モザイク病(正式名称:サトウキビモザイク病)
 アブラムシ類の媒介によって発病するウイルス性病害であり、サトウキビ栽培地帯では広範囲にみられる病気の種類である。モザイク病が広がるとかなり減収となる。病徴はウイルスの種類やサトウキビの品種により異なるが、一般には緑色の葉に淡黄色や濃緑色をした、長さが不揃いな病斑を生じる。
 〇種間交雑
 同属異種間の植物を人工的に交配し雑種をつくること。
 「やえのうしえ」は「農林8号」(Saccharum spp. Hybrid)と「西表8」(Saccharum spontaneum)を交配した雑種から選抜・育成された。
 〇IVDMD(in vitro:インビトロ)
 乾物分解率の略語で栄養価を示す。
 インビトロとは生体の機能や反応を試験管内で行う試験や実験の総称。牛の第一胃の胃液を用いた培養法で乾物サンプルの消化のしやすさを測定する。
 〇葉鞘の毛群
 葉の基部が鞘状になり茎を包む部分(葉鞘)に生えている細かい毛のこと。生育旺盛期に多くみられる。

特定の遺伝子型で選抜し地鶏の発育性を向上

2019-02-21 | 農業
 農研機構は、秋田県畜産試験場、岐阜県畜産研究所、熊本県農業研究センター畜産研究所、宮崎県畜産試験場と共同で、4県の地鶏について、生産の基になっている種鶏(しゅけい)を特定の遺伝子型で選抜することにより、地鶏の発育性を向上させ、出荷時体重を増加させることに成功した。
 4県の地鶏
  秋田県の比内(ひない)地鶏
  岐阜県の奥美濃古(おくみのこ)地鶏
  熊本県の天草(あまくさ)大王
  宮崎県のみやざき地頭鶏(じとっこ)
 地鶏は、地域の特産品として定着し、ブロイラーよりも高値で取引されている。しかし、飼育期間が長く生産にコストがかかることから、生産者から発育性の向上が求められている。なお、市場に流通する地鶏の多くは、在来種と他の鶏種を交配して生産されている。
 農研機構は2012年に、秋田県畜産試験場と共同で、「比内地鶏」の父系親品種の「比内鶏どり」において、発育性に強く関連する遺伝子(コレシストキニンA受容体遺伝子)が、ある遺伝子型(A型)を持つと、比内鶏の発育性が向上することを発見した。今回この成果をもとに、農研機構らは、共同で、4県の地鶏生産のルーツとなっている鶏(種鶏)を、比内鶏で発育性が向上するA型の遺伝子型で選抜・固定することによって、4県すべての地鶏の発育性が向上し、出荷時体重が増加することを確認した。
 本成果は、4県の地鶏の生産者所得の増加に貢献すると共に、全国のブランド地鶏の、発育性向上にも利用できると期待される。4県の試験場および研究所は、遺伝子選抜を行った種鶏群の孵化場への供給を、31年度以降、順次行う予定である。また本成果は、発育性の育種改良が遅れている他の地鶏への応用が期待される。
 因みに、上記4種の地鶏について、旧来の種鶏群から、A型固定の種鶏群へと完全に入れ替えた場合の経済効果を試算した。4県で年間1,250千羽の地鶏が出荷されており(2017年度)、4県合計で年間約66,000千円の生産者の売り上げ増加が見込まれる。
 ◆用語解説
 〇地鶏
 本成果で使用している「地鶏」は、「地鶏肉の日本農林規格」(平成11年7月施行、平成22年6月16日改正)で定義されているものを指す。その中で、飼育の対象となるひな鶏、飼育期間、飼育方法、飼育密度が詳細に定められている。
 例えば、ひな鶏では、在来種由来の血液百分率が50%以上のものであって、出生の証明(在来種からの系譜、在来種由来血液百分率およびふ化日の証明をいう。)ができること、とされている。日本食鳥協会のホームページには、ブランド名を持つ地鶏が約60種類掲載されている。
 〇種鶏
 地鶏の生産において、純粋な品種や系統がそのまま市場に出回ることはない。純粋な品種や系統は「原(げん)種鶏」と呼ばれる。原種鶏から、市場に流通する地鶏肉を生産するために分派させた鶏群が「種鶏」である。コマーシャル鶏は、複数の種鶏を交配させて作出されている。遺伝的な改良は、種鶏で行われている。
 〇コレシストキニンA受容体遺伝子(CCKAR:cholecystokinin type A receptor gene)
 コレシストキニンA受容体をコードする遺伝子。ニワトリでは、第4番染色体に座乗している。コレシストキニンは、食欲を抑制する神経情報伝達を担うペプチドホルモンとして知られている。コレシストキニンの受容体としては、AおよびB受容体が同定されている。このうち、主に腸管に分布しているA受容体は、満腹感を脳に伝えるシグナル伝達を担っている。CCKARの一塩基多型が、どのようなメカニズムで、発育形質に影響を及ぼしているかについて、今後詳細に検討する必要があるが、食欲や代謝に影響を及ぼしている可能性がある。
 〇一塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)
 遺伝子多型のうち、1つの塩基が、ほかの塩基と異なっているものは、一塩基多型(SNP: Single Nucleotide Polymorphism)と呼ばれている。そのタイプによって、遺伝子の発現量や遺伝子をもとに体内で作られるタンパク質の働きが微妙に変化し、発現形質に影響を与えることがある。

 今日は気温が上がり温かい(最高気温11℃位)。
 郊外のイチゴ栽培場(一苺一笑;いちごいちえ 松森農場)で、イチゴを購入。甘い・美味しい!。


植物や鉱物だけからなる紫外線カット透湿フィルムを開発

2019-01-25 | 農業
 産業技術総合研究所化学プロセス研究部門機能素材プロセッシンググループ石井亮研究グループ長、敷中 一洋 主任研究員は、森林研究・整備機構森林総合研究所森林資源化学研究領域大塚祐一郎主任研究員と共同で、リグニンと粘土だけからなる透明で透湿性に優れた紫外線カットフィルムを開発した(2018.12.19)。
 近年、農業分野では、温暖化による気温上昇が引き起こす病害虫の活動活発化に伴う病害虫被害拡大が懸念されている。病害虫を防ぐ目的で防虫ネットを用いた場合は農薬を使用する必要があるが、病害虫の多くは紫外線への走光性を持つため、病害虫の侵入を防ぐ紫外線カットフィルムによる農業用被覆資材(ビニールハウスやマルチフィルムなど)が有効である。また、石油由来成分の使用による環境負荷を低減するため、石油由来成分以外の植物成分や鉱物成分を用いた機能材料開発が、持続可能な社会実現のために注目を集めている。しかし石油由来成分を用いない紫外線カットフィルムはこれまでにほとんど例が無く開発が望まれていた。
 リグニンは、耐熱性や紫外線吸収性を持つ植物由来の高分子であり、農業用紫外線カットフィルムなどへの利用が期待される。そこで、クレーストRとリグニンを組み合わせて、環境負荷の低い農業用被覆資材の開発に取り組んだ。
 研究の内容
 クレーストRは本来、紫外線吸収性を持たないため、紫外線カットフィルムとして用いるには紫外線吸収剤を別途添加する必要がある。クレーストRは水蒸気バリア性が高いため、農業用フィルムに求められる水蒸気透過性の付与も課題であった。一方、産総研は森林総研と共同で、「同時酵素糖化粉砕法」で抽出したリグニンを使った機能材料を2016年に開発した。同時酵素糖化粉砕法は、強酸や強アルカリを使わないので成分の変質が少ない水分散性リグニンナノ粒子を抽出できるが、このリグニンナノ粒子単独で自立膜とするのは困難であった。そこで今回、水分散性リグニンナノ粒子が紫外線吸収性を持つことに着目し、クレースト作製技術を用いてリグニンナノ粒子を含む自立膜を開発した。水分散性リグニンナノ粒子は水中でクレーストRの主成分である粘土と簡単に混合でき、その混合液を用いて製膜すると、リグニンナノ粒子を含むクレーストR (リグノクレースト)が得られる。
 まず、紫外可視分光法により確認されたリグノクレーストの280nmから400nmの領域での紫外線遮蔽率は0.03mmの膜厚で99%以上であった。これは、従来の農業用紫外線カットフィルム(0.1mm厚で紫外線遮蔽率90%程度)に比べ高い紫外線吸収性である(図1左)。この紫外線吸収性はリグニンが持つフェノールやケトンなどの発色団構造に由来するもので、同時酵素糖化粉砕法で抽出したリグニンでは発色団構造の変性が抑制されたため実現できた。
 次いで、防湿包装材料の透湿度を試験するJIS Z0208に従ったカップ法でリグノクレーストの水蒸気透過性を調べたところ、その透湿度は1,100g/m2・dayで、従来の農業用紫外線カットフィルムに用いられる多孔性ポリオレフィンの透湿度(1,200g/m2・day)に匹敵する値であった。これまでに、ほとんど水蒸気を通さないクレーストRが開発されているが、その透湿度は10-5 g/m2・dayであった。この高い水蒸気バリア性は、緻密に積層した粘土の間を有機物質が埋める構造による。
 リグノクレーストは、透過型電子顕微鏡による観察より、リグニンもしくは粘土からなる数十nm厚の層が交互に積層し、かつクレーストRより空隙を含む構造であった。水蒸気はリグニン層に含まれる数十nmの空隙を通って透過すると考えられる。リグノクレーストの特異な積層構造の形成過程は明らかではないが、その構造形成にリグニンナノ粒子が大きく寄与したと推測される。なお、リグノクレーストの難燃性は従来のクレーストRと同等であった。リグノクレーストはJISK7162に従った引張特性試験では破断強度480MPa、弾性率770MPaを示し、透明でありながらリグニンに由来する木肌色を呈する。
 リグノクレーストは、農作物生育に必要な透湿性と従来よりも高い紫外線吸収性を持つため、病害虫を寄せ付けない紫外線カットフィルムとして優位性を持つ。また、従来の農業用紫外線カットフィルムは、石油由来成分を用いた塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン系樹脂などが主で、使用後は回収・焼却処分が必要である一方で、リグノクレーストは、植物・鉱物由来成分だけからなり、リグニンには生分解性が期待され、粘土成分はそのまま土に戻るため、すき込み処分できると見込まれ、農業用被覆材として用いると、作業のコスト低減や効率化が期待される。
 用語説明
 ◆リグニン
 植物の25~35%を占める構成成分として重要な高分子化合物。ベンゼン環に水酸基、メトキシル基などが結合した基本要素を持つポリフェノール類である。植物の細胞や細胞壁を結合させ、強化する成分。
 ◆粘土
 2 μm以下の微細な層状珪酸塩。ケイ素と酸素からなる4面体シートとアルミニウム、鉄、マグネシウムなどの金属元素、酸素、水酸基からなる8面体シートが重なり合った、厚さ約1nmの単位結晶である。
 ◆クレーストR
 産総研で開発された、粘土を主成分とする膜材料。厚さ約1nmの粘土を緻密に積層した柔軟で耐熱性に優れた膜である。耐熱性、高ガスバリア性などが特徴。合成粘土を用いることにより透明なフィルムも作製することができる。
 ◆発色団
 可視領域や紫外領域などの光を吸収する原子ないし原子団。
 ◆同時酵素糖化粉砕法
 植物の粉砕と同時に酵素糖化を行うことで、強酸・強アルカリを使わずにリグニンを変性の少ない水分散性ナノ粒子として抽出する技術。酵素糖化とは、酵素によって、多糖を単糖やオリゴ糖に変化させる方法であるが、同時酵素糖化粉砕法では、酵素にセルラーゼ・ヘミセルラーゼを用いている。
 ◆紫外線遮蔽率
 320~400 nm(紫外線A波:UVA)や280~320nm(紫外線B波:UVB)の波長領域の紫外線を遮蔽する割合。それぞれの波長の紫外線は太陽光線に含まれ、照射により樹脂の劣化や肌におけるシミやしわの発生などを引き起こす。
 ◆カップ法
 吸湿材を入れ試験膜で蓋をしたカップを恒温恒湿で静置し、カップの質量変化から膜を通過した水蒸気量を算出、透湿度を計算する方法。
 ◆すき込み処分
 農機具や鍬などで土に混ぜ合わせる農業用資材の処分法。

害虫から植物を守る新タイプのタンパク質機能を発見

2018-11-06 | 農業
 農研機構は、クワの乳液中に含まれるタンパク質が、昆虫の消化管内の囲食膜という薄膜を異常に肥厚させて消化を抑制し、成長を阻害することを明らかにした(7月17日発表)。このようなしくみで昆虫の成長を阻害するタンパク質はこれまで見つかっておらず、新たな害虫防除資材としての活用が期待できる。
 植物は動くことができないので、昆虫などの生物に食べられることを防ぐために、"毒"のような作用を示すタンパク質などの物質を生産することが知られている。このような物質は害虫を防除するための薬剤として利用できる可能性があり、旧来の薬剤が効かない害虫も出現しているため、新しい製剤の開発につながる資材として注目されている。
 クワの葉はカイコの餌としてよく知られており、カイコ以外のほとんどの昆虫はこれを利用することができない。農研機構は、クワ乳液に含まれる特定のタンパク質(MLX56様タンパク質)が、これまでに報告されたことがない全く新しいメカニズムで害虫の成長を阻害することを発見した。このタンパク質は、ガ類の幼虫の消化管内に存在する囲食膜という薄膜を異常に肥厚させて消化機能不全を起こすことが分かった。しかも、0.01-0.04%という極めて低い濃度で餌に加えるだけで、幼虫の成長を顕著に阻害した。
 MLX56様タンパク質は害虫から植物を守る新しい技術開発の資材として有望な候補である。
 研究の内容
 1.エリサンというガの幼虫に、MLX56様タンパク質を含む餌を食べさせると、0.01-0.04%という非常に低濃度で加えた場合でも、顕著に成長が阻害された。昆虫の消化管内には、囲食膜というチューブ状の薄い膜が、食物を包むように存在しています。MLX56様タンパク質は、この囲食膜に特異的に結合して肥厚させ、クワの葉を食べたエリサンの消化機能不全を引き起こすことが分かった。
 2.MLX56様タンパク質を含む餌を摂食したエリサンの消化管の横断切片を作り、光学顕微鏡で観察したところ、本来は極めて薄い囲食膜が腸管断面の1/5を越えるほど厚くなることが分かった。
 3.囲食膜は主にキチンでできている。キチンの合成を阻害する薬剤とMLX56様タンパク質を共にエリサン幼虫に食べさせると、MLX56様タンパク質による囲食膜の肥厚は見られず、エリサン幼虫に対する成長阻害活性も確認されなかった。また、クワを消化できるカイコにMLX56様タンパク質を与えた場合にも、囲食膜の肥厚や成長阻害は見られなかった。このことから、MLX56様タンパク質の作用による囲食膜の肥厚がエリサン幼虫の消化機能を低下させ、その結果としてクワを利用できないエリサンの成長が阻害されると考えられる。
 4.MLX56様タンパク質はHevein領域とExtensin領域という特徴的な構造を含むが、MLX56様タンパク質はそのHevein領域で囲食膜のキチンに結合し、Extensin領域が持つ膨潤効果で囲食膜を顕著に肥厚させることが判明した。
 5.囲食膜に結合して肥厚させることで昆虫の消化機能不全を引き起こすという昆虫食害耐性メカニズムは、これまでに報告されたことがない全く新しいタイプのもの。MLX56様タンパク質を利用した新たな害虫防除技術の開発が期待できる。
 ◆説明
 〇乳液
 植物の葉、茎、実などの組織の傷口から滲出してくる白色の液体。クワ、イチジク、サツマイモ、レタス、タンポポ、パパイアなど多くの植物が分泌する。その役割には諸説があるが、乳液には昆虫や病原菌に対して毒性をもつ化合物やタンパク質が高濃度で含まれていることが多いため、昆虫や病原菌に対する防御のために分泌されるという説が有力である。
 〇囲食膜
 昆虫の消化管の内腔に消化管壁に沿って食物を包むように存在する極めて薄い透明な膜。キチンを主成分とする。その生物的役割は完全に解明されているわけではないが、昆虫が食べた植物破片などの硬い物体と消化管内壁の細胞の接触による物理的ダメージや病気の感染を防ぐ役割があるものと考えられている。未消化の植物片やタンパク質、デンプンなどは囲食膜を通過でないが、消化酵素や消化されたペプチド、アミノ酸、ブドウ糖などの小さい分子は囲食膜を通過して消化管の細胞に届く。
 〇MLX56様タンパク質
 クワ乳液中に含まれるMLX56は、クワが自らを昆虫による食害から身を守るために生産する耐虫性タンパク質。クワ乳液にはMLX56によく似た(95%以上)構造のLA-bという類似タンパク質も同じくらいの量で含まれている。この両者を総称してMLX56様タンパク質と呼ぶ。昆虫に対する成長阻害活性が高く、0.01-0.04%という低濃度で餌に添加するだけでその成長を顕著に阻害できる。構造も特徴的で、キチンに結合する能力をもつHevein領域という構造と、これまで植物における機能が不明であったExtensin領域と呼ばれる構造を含む。Extensin構造は本研究で膨潤効果をもつことが判明した。
 〇昆虫(害虫)に対し毒性や成長阻害活性を示すタンパク質
 微生物由来のBt毒素や、植物が昆虫の食害から身を守るために保持している消化酵素阻害タンパク質などの防御タンパク質がある。現在は昆虫だけに毒性を示すBt毒素が、農薬や耐虫性品種遺伝子育種に広く用いられている。近年、抵抗性を発達させた(毒が効かない)昆虫の報告が増えており、新たな作用メカニズムで昆虫に毒性や成長阻害活性を示すタンパク質の発見が待たれている。
 〇抵抗性を発達させた害虫
 害虫を防除するために同じ殺虫剤を使用していると、ごく稀に存在するその薬剤が効きにくい個体だけが生き残る。このような個体が増加し、やがて大勢を占めるようになると、その害虫には同じ殺虫剤が使えなくなる、という問題が生じる。これが抵抗性と呼ばれる現象である。現在実用化されている殺虫性タンパク質のBt毒素も例外でなく、抵抗性を発達させた害虫が報告されている。Bt毒素抵抗性が害虫集団中に広まるスピードは他の殺虫剤に対する抵抗性に比べて遅いことが知られているが、長期的にはBt毒素抵抗性の害虫が増えてくることが危惧されている。そのため、新たな作用メカニズムを持つ殺虫性・成長阻害性タンパク質の発見が求められている。
 〇キチン
 N-アセチルグルコサミンという糖が重合した高分子。エビやカニなどの甲殻類の殻や昆虫の表皮、カビ、キノコに含まれるが、ヒトを含む脊椎動物の体内には存在しない。昆虫では表皮だけでなく、消化管内の囲食膜や呼吸器官である気管にも含まれている。

 朝は曇り、昼頃から小雨となり夕方まで。
 春に咲いた”ヒサカキ”の花。熟した実が枝に沢山付いている。
 ”ヒサカキ”は雌雄異株、でも雄花・雌花だけを付ける雄株・雌株だけでなく両性花の株もあると言う。
 開花時期は、3月~4月で、枝の下側に短くぶら下がる様に咲く。雄花には雄しべ、雌花には雌しべだけが見える。花の大きさは数mm、雌花が雄花より気持ち小さいかな。花の形は、白っぽいクリーム色で壺状。強い芳香が漂ってくる。
 「榊:サカキ」が手に入らない関東地方以北では、墓・仏壇へのお供え(仏さん柴)や玉串などに、サカキ代替で使われることがある。これより、名(ヒサカキ)の由来に、「榊に非ず」から「非さかき」説、サカキより小振りから「姫サカキ」説がある。
 ヒサカキ(姫榊)
 学名:Eurya japonica
 ツバキ科ヒサカキ属
 雌雄異株(常緑小高木)
 開花時期は3月~4月
 白い小さな花が葉腋(ようえき)に付ける
 5弁花で花径は数mm
 雄花は鐘形で、雌しべは退化して見えない
 雌花は杯形、雌しべのみで花柱は3裂してる
 果実も径数mm程で、秋に黒紫色に熟す


高温耐性に優れた多収の極良食味水稲新品種「にじのきらめき」を育成

2018-09-09 | 農業
 農研機構(NARO)は、高温耐性と耐倒伏性に優れた中生水稲新品種「にじのきらめき」を育成した(発表9月6日発表)。「コシヒカリ」並の極良食味で、15%程度多収となる。縞葉枯しまはがれ病に抵抗性を持つ。大粒で業務用に適した品種として北関東の群馬県を中心に普及の取り組みが進められる予定で、北陸・東海地域以西でも栽培可能な品種。
 近年、温暖化の進行に伴う登熟期間中の高温の影響で「コシヒカリ」に白未熟粒が発生し、品質が低下することが問題となっている。また、「コシヒカリ」は草丈が長く、収量向上のために多く施肥すると倒伏してしまい、穂発芽による品質の低下や収穫作業が予定通り進まないといった問題が発生している。
 農研機構は、高温登熟性と耐倒伏性に優れる中生水稲新品種「にじのきらめき」を育成した。草丈が短くて耐倒伏性が強く、「コシヒカリ」に比べて標肥栽培で15%程度、「コシヒカリ」が倒伏する多肥栽培では30%弱多収。玄米の外観品質は「コシヒカリ」よりも良好で、高温条件で栽培しても玄米品質に優れる。炊飯米の食味は「コシヒカリ」と同等の極良食味である。
 ◆品種登録出願番号:第32954号(平成30年3月20日出願、6月18日出願公表)

 朝から小雨、時々止む。
 曇りの日の散歩で見つけた、塀の”ヘデラ”の花。”ヘデラ”の花はなかなか見つけ難い、開花時期も短い、花が咲かない種もあるから・・珍しい。
 ”ヘデラ”は常緑蔓性低木の観葉植物で、耐寒性が強く、塀や戸外のグランドカバーなど利用される。
 ”ヘデラ”は”アイビー”とも呼ばれるが、正式名称は”ヘデラ”、”アイビー”は愛称。和名は西洋木蔦(せいようきづた)。種類は、葉(ハート型・星型・丸型・カール型など)や大きさ(大小)、斑入りの有無などで沢山ある。”ヘリックス”は”ヘデラ”の代表・基本種で、日本には明治時代末に入ってきた。
 ヘデラ
 別名:アイビー、西洋木蔦(せいようきづた)
 英名:English ivy
 学名:Hedera helix
 ウコギ科ヘデラ属(キヅタ属)
 常緑蔓性低木
 耐寒性あり(氷点下5℃以上)
 原産地はヨーロッパ、アジアなど
 開花時期は9月~12月
 小さな5枚花びらの花が集まり、かんざし状


植物細胞に酵素を撃ち込む、ゲノム編集での品種改良効率化に

2018-09-03 | 農業
 ゲノム編集は狙った遺伝子を酵素で切断し、その働きを抑える技術。植物に応用すれば、収穫量や栄養を増やす品種改良に役立つと期待されている。植物に実施する際には、細胞のDNAにその酵素を作る遺伝子を組み込み、そこから酵素を作らせる必要がある。
 ゲノム編集は先端技術であり、国際的に利用法が議論されている。欧州では、欧州連合(EU)司法裁判所が7月、ゲノム編集した作物について、原則、従来の遺伝子組み換えと同じ規制に含めるべきだとする判断を示した。米国は特別な規制をしない方針を示すなど各国で対応が分かれている。政府(日本)は環境省を中心に規制のあり方を検討している。年内にも正式にまとまるが、DNAに外部から遺伝子を加える場合は規制対象となる方向で調整が進む。
 カネカと農業・食品産業技術総合研究機構は細胞に酵素を撃ち込み、狙った遺伝子の働きを抑える技術を開発した。理化学研究所は日本たばこ産業(JT)などと細胞実験に成功した。数年かかる品種改良を1年以内にできる可能性がある。
 この技術は外部から酵素を作るための遺伝子を入れないのが特徴である。カネカなどは花粉などのもとになる細胞に、特殊な装置で酵素を撃ち込む手法を開発した。実験では狙った通りにゲノム編集が起きた。数日で新品種のもとを作れるという。理研などは受精直後の細胞を利用した。植物特有の細胞壁がなく、外部から酵素が入りやすい。イネの細胞で確かめたが、ほかの植物でもこの細胞を取り出せれば、応用できる見込みだという。
 従来の品種改良は交配のほか、放射線をあてたり、薬品に漬けたりして植物細胞の遺伝子に傷をつけ、狙った特性に変化したものを見つけて育てている。遺伝子の変化は制御できず、狙い通りに変化するとは限らないため手間がかかっていた。

 今日は曇り。薄曇り・黒雲が空を覆う。台風が接近している。
 青空が広がっている日、街路樹の”ヤマボウシ”に赤い実が付いている。まだ緑の実も沢山ある。
 赤い実を1つ取って割って食べて見たら甘かった。ヤマボウシの実は、球形(径1~3cm)の集合果で、皮が赤色やオレンジ色で果肉は黄色である。
 ★集合果
 花は1個の雌しべをもち、これが成熟して1個の果実となる。しかし1個の花に多数の雌しべが存在することがあり、このような場合、多数の雌しべから1個の果実が形成されることが多い。近縁にハナミズキ(別名アメリカヤマボウシ)があるが、ハナミズキの果実は集合果ではなく、個々に分離した果実である。
 ”ヤマボウシ”は、春の花、秋の赤い果実と紅葉にと色彩豊かに楽しめる樹で、庭木や公園・街路樹などに利用される。
 名(ヤマボウシ:山法師)の由来は、中心の丸い花穂を坊主頭に、白い総包片が白い頭巾を連想させ、これを比叡山延暦寺の「山法師」になぞらえたことから。別名に、山桑(やまぐわ)があるが、果実の表面が桑の実の様にブツブツしているから。
 ヤマボウシ(山法師、山帽子)
 別名:山桑(やまぐわ)
    桑の別名も「山桑」
 ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属
 落葉中木
 開花時期は6月~7月
 秋の紅葉は綺麗で、丸い赤い実も熟す
 品種改良によって、
   実の大きな品種(ビッグアップル)
   落葉しない品種(ホンコンエンシス)
   斑入りの品種(ウルフアイ)
   赤身がかった花をつける品種(源平・サトミ)
   黄色の花をつける品種(金陽)などの多彩な種が流通


地中レーダーでスーダンサバンナの土壌型・土地生産力を迅速に評価

2018-08-13 | 農業
 西アフリカのスーダンサバンナで砂漠化と飢餓の問題を解決するためには、土壌を適切に保全し、持続可能な方法で農業生産力を高める必要がある。現地では、これまで土壌保全・品種改良・栽培管理等に関する多くの研究が実施されてきた。しかしスーダンサバンナは、数百m程度離れただけでも土壌型と土地生産力が大きく異なるという特徴がある。このため、ある調査地点で得られた試験結果をどこまで適用できるかわからず、研究成果を実用的に利用できない要因となっていた。大規模な調査の実施には高度な専門知識と多大な労力と時間が必要である。
 国際農研はブルキナファソ国・環境農業研究所との共同研究で、市販の地中レーダーによりスーダンサバンナで主要な三種類の土壌型と土地生産力を迅速に高解像度で評価する手法の開発に世界ではじめて成功した。
 本手法により、例えばこれまで高度な専門知識を持った研究者が1年という時間を要していた土壌調査を、専門知識を持たない人でも数日で実施できるようになり、また従来法に比べて空間解像度も数百倍になる。さらに、地中レーダーで詳細に土壌型を把握できるため、土壌条件に応じて試験結果の適用範囲を決定することが可能になる。今後スーダンサバンナで土壌型と土地生産性を踏まえた土壌保全、品種改良、栽培管理等の技術開発が加速され、砂漠化と飢餓の問題が解決に向けて大きく前進することが期待される。
 ◆スーダンサバンナ
 サハラ砂漠の南に位置する年間降水量が600~900mmの半乾燥地を指す。東西約3300km、南北約300kmで、面積は我が国の国土面積の約2.5倍。セネガル、ガンビア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ベナン、ナイジェリアの7ヶ国にまたがっており、2017年6月時点では、ナイジェリア以外は後発開発途上国である。
 ◆地中レーダー
 地中に電磁波を放射し、電気特性の異なる境界で反射した電磁波を捉えることで地中を探査する装置。電磁波の往復時間から境界面の深度を推定できる。本研究で使用したレーダーは、800MHzと300MHzの2周波を同時に出力できる。
 ◆プリンソソル、鉄石固結層
 土壌型の一つ。最新のFAOの分類体系(世界土壌照合基準2015年)によれば、プリンソソルとは鉄により土壌粒子が結合されて鉄石となったものを多く含む鉄石層もしくは鉄石同士がさらに鉄によって結合されて板状になった鉄石固結層を土中の浅い場所に有する土壌を指す。ここではスーダンサバンナで優占する、鉄石層と鉄石固結層の両方を持つPisoplinthic Petric PlinthosolsをⅠ型、鉄石固結層だけを持つPetric PlinthosolsをⅡ型とした。走査画像では鉄石固結層が33cm深未満に見られる場合はⅠ型、33~50cm深に見られる場合はⅡ型と判断することができた。なお、鉄石層のみを持つPisoplinthic PlinthosolsというⅢ型もあるが、本研究ではⅢ型までは検討していない。
 ◆リキシソル
 土壌型の一つ。ここでは鉄石層や鉄石固結層を土中の浅い場所に持たない土壌を指す。作物にとっての有効土層が厚いため、プリンソソルと比較して生産性が高い。
 ◆砂漠化
 国連砂漠化対処条約での定義を簡略化すれば、乾燥地で土壌が強風や豪雨によって削られる土壌侵食により土地生産性が低下する現象を指す。砂丘や砂地の拡大による砂漠化は世界的にみれば稀である。

 朝から雲が多い晴れ。あたる直射日光が少ないので、少し涼しい・・かな。
 早朝の散歩で、塀に絡みついた”キカラスウリ”。花が咲いている。同じ様な花に、”カラスウリ”がある。両者とも夜から咲くが、朝まで咲いているのは、”キカラスウリ”である。
 名(キカラスウリ:黄烏瓜)は、花が”カラスウリ(烏瓜)”に似ており、果実が黄色に熟するから。”カラスウリ”の実は赤く熟し、”キカラスウリ”はやや大きな黄色の実となる。両者の花は、5裂花で花弁の先が糸状であるが、”カラスウリ”は花弁先端が分かれず、”キカラスウリ”は花弁先端が2つに分かれている。
 キカラスウリ(黄烏瓜)
 ウリ科カラスウリ属
 蔓性の多年草
 雌雄異株
 開花時期は7月~9月
 花は径5~10cm位で白色。花冠は数枚に裂け、その先は糸状となっている
 雌花はつぼみの段階で子房を持つ(雄花は持たない)
 秋に黄色に実が熟す(果実長径8cm~9cm、短径数cm)
 同じ仲間(同属)のカラスウリ(烏瓜・唐朱瓜)と花はとても良く似ており、
 カラスウリは赤い実(果実長径数cm、短径3.5cm位)がなる