歩けば楽し

楽しさを歩いて発見

  思い出を歩いて発掘

   健康を歩いて増進

アオキの雄花と雌花

2020-03-31 | 園芸
 朝から晴れた。風も穏やかなので暖かい1日かな。段々と春らしくなる。
 散歩道で”アオキ”を見る機会が増える、花が咲きだしたから。
 ”アオキ”は雌雄異株で、雌株には雌花、雄株には雄花が咲く。冬に艶のある美しい赤色の実を付けるのは雌花。
  雌花;花弁が4個と柱頭の大きな雌蕊が1個あり、雄蕊はない
  雄花;花弁が4個と雄蕊が4個で雌蕊はない
 ”アオキ”は、日本の古来種で、学名は”Aucuba japonica:アウクバ ヤポニカ”とある。名(アオキ:青木)の由来は、冬でも青々とした常緑の枝・葉からのアオキバ(青木葉)から。
 アオキ(青木)
 別名:青木葉(あおきば)、ダルマノキ
 学名:Aucuba japonica
 ミズキ科アオキ属
 常緑低木
 雌雄異株
 枝は緑色、古くなると木質化し灰褐色
 開花時期は3月~5月
 枝先に紫褐色の小さな花が咲く
 果実は雌株に付く、実は1~2cm程の楕円形で深紅色となる
 果実が黄色のキミノアオキ、白色のシロミノアオキがある
  (掲載写真の前半3枚は雄花、後半3枚は雌花)
 果実は雌株に付く、実は1~2cm程の楕円形で深紅色となる
 果実が黄色のキミノアオキ、白色のシロミノアオキがある


超高精度光周波数の240キロメートルファイバー伝送に成功

2020-03-30 | 科学・技術
 日本電信電話株式会社(以下NTT)と東京大学大学院工学系研究科香取秀俊教授(理化学研究所 光量子工学研究センター チームリーダー、同開拓研究本部主任研究員)および東日本電信電話株式会社(以下NTT東)は、複数の遠隔地間で240キロメートルに及ぶ光周波数ファイバー伝送の実証実験を実施し、データ積算時間2600秒で、周波数精度1×10-18に達する超高精度光周波数遠隔地間伝送に成功した。この結果は、現在、世界最高性能の光格子時計の有する光周波数を、その性能を保ったまま、光ファイバーで200キロメートルを超える伝送が可能であることを示している。
 光格子時計は、セシウム原子時計を桁違いに上回る超高精度な原子時計である。光格子時計の驚異的な精度の高さを利用する応用の1つが、複数の遠隔地に設置した光格子時計を光ファイバーで接続し、その周波数差を遠隔比較する「相対論的な効果を使った標高差測定(相対論的測地))」である。それにより、重力ポテンシャル計測に基づく精度1センチメートルレベルの水準点や、地震や噴火の前兆現象につながるわずかな地殻変動の日常監視など、新たなインフラストラクチャーへの展開が期待されている。
 本研究において、NTTとNTT東日本は、世界で初めて、平面光波回路(PLC)技術を用いた光周波数中継装置(リピーター)を開発し、このリピーターをカスケード接続した超高精度光周波数ファイバー伝送網を構築した。構築したファイバー網に超狭線幅レーザーを伝送させ、伝送精度を評価することにより、1センチメートル精度の標高差比較が可能な1×10-18という周波数の精度を保ったまま、200キロメートル級の遠隔地間へと伝送距離を拡張することを実証した。この周波数伝送精度は、東大・理研が開発した世界最高精度の光格子時計を用いた遠隔地間周波数比較による相対論的測地が可能なレベルである。
 本成果は2020年3月17日(米国時間)に米国科学誌「オプティクス・エクスプレス」にて公開。
 実験の背景
 光格子時計は、光の周波数(数百テラヘルツ)を基準とする超高精度な原子時計で、その周波数精度は現在の「秒」の定義となっているセシウム原子時計を桁違いに上回ることから、次世代の「秒」の定義の有力候補として世界中で研究されている。アインシュタインの一般相対性理論によれば、異なる高さに置かれた2台の時計を比較すると、低い方の時計は地球の重力ポテンシャルの影響を大きく受け、ゆっくりと時を刻むことが知られている。この原理を用いて、全国的に複数の遠隔地に設置した光格子時計を光ファイバーで接続し、その周波数差を遠隔比較する「相対論的な効果を使った標高差測定(相対論的測地)」は、従来の原子時計ではできない新しい応用として注目されてる。これを実現することによって、現在のGNSS(Global Navigation Satellite System)による測地精度では困難な1センチメートル精度の標高差測定が可能になり、各地の標高差を1センチメートル精度で常時モニターすれば、重力ポテンシャル計測に基づく水準点や、地殻変動の監視など、新たなインフラストラクチャーへの展開が期待できる。地殻変動をリアルタイムに観測するためには、1×10-18という精度で2台の光格子時計の周波数差を数時間で計測する必要がある。光格子時計は、この極限的高精度にわずか数時間のデータ積算(平均化)時間で到達するという他の原子時計には無い特徴を備えており、現在、世界最高性能を有する光格子時計では、10000秒以上のデータ積算時間で、周波数精度1×10-18に到達する。従って、その光格子時計の特徴を最大限生かした相対論的測地の実現を想定した場合、まず第一歩として、光ファイバーによる光伝送が、10000秒よりも短いデータ積算時間で、周波数18桁まで安定であることが必要不可欠である。さらに、このような光格子時計の光伝送ファイバーネットワークを全国規模に敷設することを想定すれば、そのファイバー距離の拡張性も重要な要素である。過去に、東大・理研では、その最も基本的な実験として、2017年に本郷(東大)-和光(理研)間において、30キロメートルの無中継ファイバー伝送による2台の光格子時計の周波数比較を実現し、数センチメートル精度の遠隔地間標高差測定の原理実証を行った。[Takano et al., Nature Photonics 10, 662 (2016)]。東大・理研で開発されたファイバー伝送の手法では、無中継で伝送できるのは100キロメートルまでが限度であり、数百キロメートルの県レベルや数千キロメートルの全国レベルにまで拡大するには、高精度を保ったまま光を中継しながら伝送する技術が必要となる。
 本実験では、県レベルの域内における光周波数伝送ファイバーネットワークを想定し、1センチメートル精度の標高差測定を実証するために、200キロメートル級の超高精度光周波数ファイバー伝送技術の実現を目指した。
 実験の成果
 今回の実験は、1センチメートル精度の標高差比較が可能な1×10-18という周波数の精度を保ったまま、200キロメートル級の遠隔地間へと伝送距離を拡張するために、複数の区間に分けて、リピーターを介して中継するカスケード方式を用いたことを特徴としている。そのために、NTTとNTT東は、2015年10月より、東大本郷キャンパスを基点にNTT厚木研究開発センタまで、複数の中継局(電話局)を中継した実証実験用の超高精度光周波数伝送ファイバーリンクを構築した。リピーターによる中継では、光の位相を検出するために光干渉計が用いられるが、従来の空間光学系やファイバーカプラを用いた光干渉計では、干渉計自体が発する雑音を除去できないという問題があった。そこで、NTTが独自に開発した平面光波回路(PLC)による差動検波型マッハツェンダー干渉計を用いることで、安定に動作するリピーターシステムを開発し、温度・湿度・振動などの細心の対策が施された実験室環境とは異なる電話局内の商用環境に設置した。この実証実験用ファイバーリンクを用いて、1秒間のデータ積算時間で3×10-16、2600秒で1×10-18の周波数安定度および精度での伝送を実証した。この周波数伝送安定度は、香取研究室が開発した世界最高精度の光格子時計を用いた遠隔地間周波数比較が実現可能なレベルであり、相対論的測地応用につながる成果である。
 実験の説明
 ①本実験では、東大・理研が本郷-和光間光格子時計周波数比較実験に用いた光ファイバーと、NTT東が今回新たに構築した本郷-厚木間商用ファイバーリンクを本郷で接続し、和光(理研)-本郷(東大)-厚木(NTT)間150キロメートル級光周波数伝送ファイバーリンクを構築した。本郷-厚木間には3つの中継局舎(電話局)を用意し、19インチラック1基にリピーターシステムを設置した。各局舎のリピーターは、別の通信ネットワークを介して、遠隔操作することが可能である。
 ②本ファイバーリンクの光周波数伝送精度を評価する実験では、理研に設置している超低膨張ガラス共振器に安定化した波長698ナノメートル(周波数429テラヘルツ)の超狭線幅レーザー(時計レーザー)を基準とし、その2倍の波長である1397ナノメートル(215テラヘルツ)をファイバー伝送する光周波数として用いた。理研から東大へファイバー伝送した215テラヘルツ光周波数基準を東大および局舎Aのリピーターにより中継してNTT厚木に送り、NTT厚木からはもう1本のファイバーを使って、局舎Bのリピーターで中継して、東大まで戻す本郷-厚木-本郷の240キロメートルループ網を構築する。東大から送った光周波数と、ループ網により戻ってきた光周波数の差を検出することで、ファイバーリンク伝送の周波数安定度を評価することに成功した。その結果、周波数安定度は、1秒間のデータ積算時間で3×10-16、2600秒で1×10-18と評価された。この評価結果は、東大・理研が開発した光格子時計の周波数安定度を1桁程度上回っており、ファイバーリンクを介して光格子時計の10-18精度周波数比較が数時間の測定で可能なことを意味している。
 技術のポイント
 (1)1397ナノメートル波長帯を用いたカスケード型ファイバー雑音補償技術(東大・理研・NTT)
 今回の実験で構築した超高精度光周波数ファイバー伝送網は、ストロンチウム原子による光格子時計の周波数比較実験に用いることを想定している。ストロンチウム光格子時計が提供する光周波数基準(時計周波数)は、698ナノメートル波長帯であり、今回の伝送実験で用いた1397ナノメートル波長帯は、ちょうどその2倍の関係がある。この関係により、波長変換デバイスを1つ用いるという簡素な構成で、光格子時計の光周波数基準をファイバー伝送可能な波長帯に変換することが可能である[Akatsuka et al., Japanese Journal of Applied Physics 53, 032801 (2014)]。
 一方、伝送に用いる光ファイバーには、日々の温度変化によるファイバーの伸縮や、敷設環境に由来する振動などさまざまな雑音があり、ファイバー伝送される光周波数の精度の劣化を引き起こす。このファイバー雑音を補償する技術がファイバー雑音補償技術であり、リピーターは、ファイバー雑音補償機能と再生中継機能を1つの装置にまとめたものである。ファイバー雑音補償された光周波数を次の区間へ中継し、またファイバー雑音補償するという繰り返し(カスケード)接続により、精度劣化を可能な限り抑えて遠隔地へ伝送することが可能である。
 (2)石英光導波路による集積型光干渉計技術(NTT)
 本リピーターに、複雑な光の干渉計を高精度かつ集積化可能とする石英系平面光波回路(PLC)技術を適用した。これにより、リピーターが小型化されるとともに、安定性や検出感度の向上が実現されている。具体的には、リピーターレーザーの位相を同期するための光干渉計と、ファイバー雑音を検出するための光干渉計をワンチップに集積実装した。光路長が精密に設計された干渉回路を光チップ内に作り込むことで、温度などの環境変動にも強く、光干渉計自体に由来する雑音を極限まで低減することに成功している。また、光干渉計の光の差動出力を利用することにより光干渉信号の差動検波を可能とし、検出感度の向上を図っている。
 今後の展開
 本実験チームは、今後、今回構築した超高精度周波数伝送ファイバーネットワーク環境を用いて、和光および厚木に設置する光格子時計の周波数比較実験を実施する予定である。これにより、200キロメートル級の遠隔地間で、数センチメートル精度の標高差を検知する相対論的測地の実証に挑戦する。さらに、JST未来社会創造事業「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築」で目的とする光格子時計の全国規模のファイバーネットワーク化を想定し、より多中継で安定な運用が可能なリピーターの開発を進め、この超高精度光周波数基準のファイバー伝送技術を1000キロメートル級まで拡張した実証実験環境を構築する予定である。
 ◆用語解説
 〇光格子時計
 2001年に東京大学 大学院工学系研究科の香取秀俊助教授(研究当時)が考案した原子時計の手法。「魔法波長(魔法周波数)」と呼ばれる特別な波長(周波数)のレーザー光を対向させてできる、数十ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の微小空間に原子を閉じ込めて、その原子が吸収する光の周波数(共鳴周波数)を測定する。この光の周波数により、1秒の長さを決める。光格子全体には多数の原子を捕獲できるので、それらの原子の共鳴周波数を一度に測定して平均をとることで、短時間で時間を決めることができる。
 〇相対論的測地
 アルベルト・アインシュタインによって築かれた現代物理の基本理論の1つである一般相対性理論では、「重いものの周りでは時間は遅く流れる」という現象を論じており、超高精度な時計ではこの現象を観測することができるようになる。複数の超高精度な時計の時間の進み方(周波数)の差を読み取り、重力の変化を検出することで、時計の設置場所間の高低差を測定することが可能である。この原理を測量に応用することは、相対論的測地と呼ばれている。
 〇平面光波回路(Planar Lightwave Circuit: PLC)
 NTTが実用化してきた光導波路技術で、光導波路をLSIと同様のプロセスで製造でき、さまざまな干渉計を集積することができる。PLCは製造の自動化が可能であるため量産性に優れ量産時のコスト低減効果が大きいという特徴と、光ファイバーと同じガラス素材で導波路を形成できるため低損失で信頼性が高いという特徴がある。本技術は、大容量光ファイバー通信で用いられる波長多重器/分離器や光スイッチなどのデバイスで実用化されている。
 〇カスケード接続
 長距離のファイバー伝送を行う際に、中継局を設置することで短距離のファイバー伝送を次々とつないでいく方法。より高い周波数の雑音まで補償できるようになるため、全体の伝送安定度を改善することができる。
 〇周波数安定度
 周波数がどれだけ正確かを表す精度の指標の1つである。周波数安定度は、ある中心周波数fに対して、測定した周波数のばらつきをΔfとすると、Δf/fと表す。
 〇時計レーザー
 光格子時計において、原子の共鳴周波数を測定するためのレーザーのことを指す。共鳴周波数を測定することにより、原子の共鳴周波数をレーザーの周波数にコピーすることになり、光格子時計の時間基準を読み出すことに対応する。一般的に、スペクトル線幅数Hz程度の超狭線幅レーザーを、時計レーザーとして用いる。
 〇ファイバー雑音補償技術
 精度の高い光周波数を光ファイバーで遠方に送る際、ファイバーの敷設環境に由来する周波数雑音を補償し、精度の劣化を抑えて伝送する技術。ファイバー伝搬後の光を一部折り返し、送信元で光干渉をとることでファイバー雑音φ(t)を検出し、周波数シフタにより-φ(t)を与え、ファイバー雑音を補償する。ファイバー雑音補償技術では、ファイバーの往復伝搬時間よりも速く変動する雑音は補償できないため、補償区間を短くすることによって、できるだけ忠実にファイバー雑音を補償することが可能である。

 天気は晴れ。風が無く、穏やか・・でも気温が上がらず寒い
 散歩道沿いの””ヒサカキ”。塀からはみ出して花がさいている。”ヒサカキ”は雌雄異株、でも雄花・雌花だけを付ける雄株・雌株だけでなく両性花の株もあると言う。開花時期は、3月~4月で、枝の下側に短くぶら下がる様に咲く。
 雄花には雄しべ、雌花には雌しべだけが見える。花の大きさは数mm、雌花が雄花より気持ち小さいかな。花の形は、白っぽいクリーム色で壺状。強い芳香が漂ってくる。
 「榊:サカキ」が手に入らない関東地方以北では、墓・仏壇へのお供え(仏さん柴)や玉串などに、サカキ代替で使われることがある。これより、名(ヒサカキ)の由来に、「榊に非ず」から「非さかき」説、サカキより小振りから「姫サカキ」説がある。
 ヒサカキ(姫榊)
 学名:Eurya japonica
 ツバキ科ヒサカキ属
 雌雄異株(常緑小高木)
  雌花、雄花がある
  掲載写真の前半3枚は雌花、後半3枚は雄花
 開花時期は3月~4月
 白い小さな花が葉腋に付ける
 5弁花で花径は数mm
 雄花は鐘形で、雌しべは退化して見えない
 雌花は杯形、雌しべのみで花柱は3裂してる
 果実も径数mm程で、秋に黒紫色に熟す


現状検出が困難な1cm未満の膵がんを画像化、早期膵がんを診断できる

2020-03-29 | 医学
 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構量子医学・医療部門放射線医学総合研究所の吉井幸恵主幹研究員、田島英朗主任研究員、山谷泰賀グループリーダー、張明栄部長、東達也部長らは、難治性として知られる膵がんを早期に診断すると同時に、治療にも有用となる、微小膵がんの画像診断法を開発した。本成果は、英科学誌Natureの姉妹誌である「Scientific Reports」オンライン版に、2020年3月10日19時(日本時間)に公開。
 ポイント
 〇がん細胞表面に高密度に存在する上皮成長因子受容体(EGFR)に結合するPET検査薬剤(64Cu-セツキシマブ)と、感度と解像度が高い3次元放射線検出器を搭載したPET装置を組み合わせた画像診断法を開発
 〇従来の画像診断法では検出できない3 mmの微小な早期膵がんをマウスで画像化
 〇難治性として知られる膵がんを1cm未満の早期に診断し、適切な治療計画の策定の実現につながる技術となることが期待される
 膵がんは、生存率が最も低い難治性のがんの一種で、その予後を改善するため早期診断・治療を可能にする手法の開発が望まれている。特に、1 cm未満の早期膵がんの検出・治療はより高い生存延長効果が得られると報告されているが、現状のCT検査、検査薬剤としてFDGを用いたPET検査、MRI検査、超音波検査のいずれも1 cm未満の早期膵がんを画像化することは困難である。
 これに対して量研では、PET検査薬剤として、膵がんなど多くのがん細胞の表面に高密度に存在している上皮成長因子受容体(EGFR)に結合する抗体(セツキシマブ)を放射性同位体の銅-64(64Cu)で標識した64Cu-セツキシマブを開発し、本薬剤を腹腔投与すると膵がんに特異的に高集積させられることを、これまでの研究で見出していた。また、感度と解像度を飛躍的に向上させた3次元放射線検出器を搭載することにより、従来のPET装置よりも高解像度の画像を撮像できるPET装置を独自に開発していた。
 今回プレスリリースした研究では、これらの技術を融合することで、治療にも有用な早期膵がんの画像診断法を開発できると考え、64Cu-セツキシマブを早期膵がんモデルマウスに腹腔投与し、3次元放射線検出器を搭載した独自のPET装置で撮像した。その結果、マウス膵臓内の3 mm大の微小膵がんを明瞭に検出することができ、64Cu-セツキシマブと独自のPET装置を用いた画像診断法が早期膵がんを画像化する手法として有用であることが示された。本画像診断法は、1 cm未満の早期膵がんを診断し、適切な治療計画を策定する上で役立つ技術となることが期待される。
 それだけでなく、今回使用したPET装置は、検出器の並べ方を工夫することで、患者さんが装置で囲われていない開放部分から重粒子線を照射することができる設計(Open-PET)になっている。そのため、今回の研究成果で可能となった解像度の高い撮像法と重粒子線がん治療を併せて用いることで、将来的には、治療時に微小ながんの正確な位置を画像で確認しながらより効果的で、患者の負担が少ない革新的な膵がん治療を提供することも期待される。
 背景
 膵がんは、5年相対生存率が10%以下と極めて低い難治性のがんである。膵がんの生存率が低い原因として、膵臓は体深部に位置するため早期発見が難しいことや、自覚症状が乏しいことが知られており、膵がんの予後改善のためには、早期診断・治療法の開発が求められている。特に、1cm未満の早期膵がんの発見・治療は、より高い生存延長効果が得られると報告されており、その手法開発は非常に重要である(Kikuyama et al. Cancers. 2018, Jung et al. J Korean Med Sci. 2007)。
 近年、血液中のがん特異的なバイオマーカーを検出する血液バイオマーカー検査7)が早期膵がん患者の有望なスクリーニング法として注目され、臨床で使用され始めている。しかし、現状の画像診断法では、血液バイオマーカーで膵がん高リスクと診断されても腫瘍位置を特定できず、確定診断並びにその後の適切な治療計画を立てることは困難である。また現在、膵がんの画像診断法としては、CT検査、MRI検査、FDG-PET検査、超音波検査などがあるが、これらの方法を用いたとしても、1 cm未満の膵がん病変の検出は困難なのが現状である。
 これに対して、吉井・張・東らは、これまでに、膵がんを含む多くのがんに過剰発現するEGFRに対する抗体(抗EGFR抗体セツキシマブ)をPET画像診断に使用できる放射性核種64Cuで標識した64Cu-セツキシマブを開発した(Yoshii et al. Oncotarget 2018)。さらに、マウスを用いた実験より64Cu-セツキシマブを腹腔投与することで、同薬剤がマウスの膵臓内に形成された膵がん病巣に高集積することを示した(Yoshii et al. J Nucl Med 2019)。
 また、田島・山谷らは、感度と解像度を飛躍的に向上させた3次元放射線検出器を搭載した次世代型PET装置として、OpenPETを開発、改良してきた。OpenPETは、従来の一般的なPET装置よりも解像度が高く(分解能2mm)、リアルタイムにPETを撮像しながら、装置で患者さんが囲われていない部分から、手術や重粒子線治療などを施すことが可能な世界初の開放型PET装置である。
 研究内容と成果
 本研究では、これらの技術を融合し、64Cu-セツキシマブを腹腔投与し、OpenPETで撮像することで、膵臓内にある微小な早期膵がんを検出することが可能になるのではないかと考え、マウスを用いた動物実験を行った。その結果、マウス膵臓内の1 cm未満の早期膵がんを明瞭に画像化できた。また、これまでの技術では非常に困難であった3 mm大の微小な早期膵がんの画像化にも成功しており、特筆すべき成果と言える。
 一方、現在臨床において膵がんの画像診断に使用されているPET薬剤のFDGを静脈投与・腹腔投与した場合や、64Cu-セツキシマブを静脈投与した場合は、OpenPETを用いても、マウスに形成された早期膵がんを画像化することはできなかった。
 これらのことから、64Cu-セツキシマブを腹腔投与してOpenPETで撮像する手法は、膵がんの早期画像診断に有用であることが示された。また、OpenPETには患者さんが装置で囲われていない部分があるので、そこから治療(重粒子線がん治療や手術など)を施すことができる。治療時に64Cu-セツキシマブを投与してOpenPETで撮像することにより、微小膵がんの位置をリアルタイムに確認しながら、重粒子線を腫瘍に正確に治療照射する技術としても有用と考えられる。
 今後の展開
 本成果を受け、現在は、64Cu-セツキシマブとOpenPETを組み合わせた早期膵がん診断法の臨床実用化を目指して安全性を確認する非臨床試験を実施中です。
 本法は、血液バイオマーカーを用いた早期膵がん患者スクリーニングで膵がん疑いとなった患者に適用することで、これまで画像診断が困難であった早期膵がん患者において、腫瘍の正確な位置決定並びに適切な治療計画策定に寄与できると期待される。それだけでなく、本法を用いて、治療時にがんの位置を画像で確認しながら重粒子線を正確に照射することにより、より効果的で、患者の負担が少ない革新的な膵がん治療戦略を提供することも期待される。
 ◆用語解説
 〇上皮成長因子受容体(EGFR)
 EGFRとは、Epidermal Growth Factor Receptorの略で上皮成長因子受容体のこと。膵がんを含む多くのがんで高発現することが知られる。
 〇3次元放射線検出器
 次世代のPET技術開発において、量研が世界に先駆けて開発した検出器。従来の検出器が、2次元の放射線位置検出であるのに対し、検出素子の深さ方向も含めて3次元の放射線位置検出を可能とする。
 〇FDG
 18F-fluorodeoxyglucoseのこと。多くのがんではFDGを多く取り込む性質があり、がんPET診断薬として、広く使用されている。
 〇銅-64(64Cu)
 陽電子放出放射性核種であり、PET用の放射性薬剤の標識用に使用できる。
 〇 OpenPET
 PETとは、Positron emission tomographyの略で陽電子放射断層撮影のこと。
 OpenPETは、3次元放射線検出器を使用した高感度かつ高解像度な画像撮影が可能な次世代型PET装置で、従来の一般的なPET装置よりも高分解能を有する(分解能2 mm)。また、高速画像解析システムでリアルタイムにPETを撮影しながら、患者さんが装置で囲われていない開放部分から治療を施すことが可能。
 〇重粒子線がん治療
 炭素粒子を用いたがん治療法で、がん病巣に狙いを定めた選択的照射が可能なため、正常組織への影響が少なくがんに対する効果が高い治療法。
 〇血液バイオマーカー検査
 近年、膵がんのみならず多くのがんに対し、早期にがんの疑いがあることを予測する(スクリーニング)する手法として、血中のがん特異的物質を探索する検査(血液バイオマーカー検査)が世界各国で研究されている。膵がんに対しては、アミノ酸プロファイルを使った血液バイオマーカー検査が臨床実用化されている。

 天気は曇り~小雨。昨日の予報では「積雪の恐れあり」、雪は降らずに小雨となった。
 数日前の散歩道で見つけた小さなお庭の”ペチコートスイセン”、独特な花の姿で咲いている。
 ”ペチコートスイセン”の名は英名「Hoop petticoat daffodil」からの訳名のようだ。ペチコートとは「スカート状の」との事で、ラッパの様な副花冠の姿からの由来である。副花冠が目立つが、花冠は外側の6枚の細い萼(がく)の様なヒゲの様で目立たない
 因みに、ペチコートとは、現代では”スカートの下に装着する女性用の下着、ランジェリーの一種”である。しかし、19世紀初期以前では”スカート状ドレス”との事で、19世紀初期以前の命名なら納得かな。
 別名はナルキスス・ブルボコディウム (学名:Narcissus bulbocodium)で、”Narcissus”はギリシャ神話の水に映った自分の姿に恋した美青年の名前からである。ナルシスト(自己陶酔型の人)の言葉で残っている
 ペチコートスイセン(ペチコート水仙)
 別名:ナルキスス・ブルボコディウム (学名:Narcissus bulbocodium)
 英名:Hoop petticoat daffodil
 学名:Narcissus bulbocodium
 ヒガンバナ科スイセン(ナルキスス)属
 原産地は地中海沿岸地方
 耐寒性多年草
 丈は10cm~20cm
 開花時期は3月~4月
 花は径4cm位、花色は黄色、円錐状の副花冠が特徴
 葉は細くほぼ筒状


巨大環状分子のナノ構造体、磁界中で環電流特性を示すことを発見

2020-03-28 | 科学・技術
 首都大学東京大学院理学研究科の伊與田正彦客員教授(名誉教授)、西長亨准教授、理化学研究所開拓研究本部内山元素化学研究室の村中厚哉専任研究員、内山真伸主任研究員(東京大学大学院薬学系研究科教授)、横浜国立大学大学院環境情報研究院の大谷裕之 教授、名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科の青柳忍教授、信州大学繊維学部の小林長夫 特任教授らの研究グループは、チオフェン分子を環状に連結した6T4A-4Buリング型分子に酸化処理を施すことで、世界で前例のない二重ドーナツ型構造の巨大超分子を作ることに成功した。この二重ドーナツ型分子の特性を詳しく調べた結果、磁界中では分子リングに沿って回転するように電気が流れるという、電気回路に使われるコイルと同じ性質を示すことを見出した。この特性により、6T4A-4Buは磁気に応答する単分子素子として、各種の応用開発が期待できる。本研究成果は、米国化学会が発行する英文誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載。
 ポイント
 〇巨大環状分子を用いるナノ構造体の構築に成功した
 〇70個の共役π電子を有する二重ドーナツ型巨大超分子の構造と電子状態を明らかにした
 〇チオフェンから作った二重ドーナツ型巨大超分子が磁界中で環電流特性を示すことを見出した
 〇本研究の成果は、磁気に応答する単分子素子として、各種の応用展開が期待できる

 研究の背景
 マテリアルサイエンスによって、新しい機能をもつ物質がつくり出されているが、その中でも周囲の環境の変化や外界からの刺激に応じて自ら応答するスマートマテリアルが注目を集めている。また、ナノサイズの分子機能材料を用いるナノサイエンスは、21世紀において鍵となる新原理と新技術の探索を続けている。しかしながら、分子機能材料のもつ秘められた可能性を最大限に引き出すのは、一般に用いられている化学物質を組み合わせるだけでは不十分で、従来とは異なる電子状態をもつ分子の物性・機能の研究が必要とされている。本研究では、非常に大きな分子が作る二重ドーナツ型巨大超分子を用いることによって、磁気に応答する新しい単分子素子の開発を目指した。
 研究の詳細
 チオフェンは、ベンゼンと同様に自然界にも存在する環状分子で、チオフェンを直線状に連結した導電性の高分子化合物(オリゴチオフェン、ポリチオフェン)は、発光ダイオードや有機EL、電界効果トランジスタ、太陽電池など、幅広い用途に応用できる。このようなチオフェンの機能を更に拡張するために、今回6個のチオフェンを環状に連結した6T4A-4Buリング型分子を合成し、酸化処理を施したときの分子特性を詳しく調べた。酸化処理により分子内の電子が1個だけ不足したラジカルカチオンの状態にすることで、新しい磁気的・電気的な特性が現れることを期待した。光吸収や電子スピン共鳴、磁気円偏光二色性などの各種測定の結果、6T4A-4Buのラジカルカチオンは溶液中で2個の分子が組み合わさったダイマーを形成することが分った。溶液から結晶を作り、大型放射光施設SPring-8でのX線回折により結晶構造を調べた結果、6T4A-4Buのラジカルカチオンは結晶中で図2 ① に示す二重ドーナツ型の巨大超分子を形成することが分かりました。分子リング内部に取り込まれた小分子(CH2Cl2)の磁界中の挙動を核磁気共鳴で調べたところ、通常よりも高い磁界に対して共鳴吸収を示した。この結果を理論計算で解析することで、6T4A-4Buのラジカルカチオンは、分子内の70個もの共役π電子により、磁界中で6個のチオフェンでできた分子リングに沿って回転するように電気が流れる環電流特性を示すことを明らかにした。この特性は、6T4A-4Buの二重ドーナツ型分子が1ナノメートル(10億分の1メートル)程度の大きさの超分子コイルとして働くことを意味する。
 研究の意義と波及効果
 本研究の大きな成果は、チオフェンを直線状に連結した従来の分子では絶対に発現し得ない二重ドーナツ型の分子構造と環電流特性を、チオフェンを環状に巧みに連結して組み合わせた超分子πダイマーにおいて初めて見出した点にあり、チオフェンなどの有機分子を基盤とする分子エレクトロニクス技術の発展に大きく貢献するものである。
 ◆用語解説
 〇チオフェン、ブチル基
 チオフェン (thiophene) とは、有機化合物の一種で、炭素原子4個と硫黄原子1個が5角形状に結合してできる複素環式化合物。化学式は C4H4S。フランの酸素が硫黄に置き換わった5員環構造を持つ。タール中に少量含まれ,工業的にはn-ブタンと硫黄から合成される。
 ブチル基(butyl group)とは、ブタン、あるいはイソブタンから水素が1つ取り除かれた形を持つ1価の基のこと。アルキル基の一種。元のブタンの構造と、取り除かれた水素の位置からいくつかの種類がある。
 ブチル(英語表記;butyl)
 アルキル基C4H9-の名称で、Buと略称。次の4種類の異性構造がある。
  n-ブチル(n-Bu-)CH3CH2CH2CH2-
  イソブチル(i-Bu-)(CH3)2CHCH2-
  sec-ブチル(s-Bu-)CH3CH2CH(CH3)-
  tert-ブチル(t-Bu-)(CH3)3C-
 〇 酸化処理
 酸素など電子を受け取りやすい物質(酸化剤)の作用などにより、対象分子から電子を奪い取る処理。
 〇超分子
複数の分子が分子間相互作用により規則的に集合した安定な化学種。
 〇コイル
 導線を環状やらせん状などに巻いたもので、電磁石や発電機、モーターなどに利用される電気回路内の素子。
 〇ラジカルカチオン
 奇数個の電子を持つ陽イオン性の分子で、偶数個の電子を持つ中性の分子を酸化処理することで得られる。
 〇光吸収
 物質の紫外、可視、近赤外領域の光の吸収の大きさを測定する実験で、分子内の電子の光励起エネルギーに関する情報などが得られる。
 〇電子スピン共鳴
 磁界中に置いた物質の電子スピン(電子が磁界に応答して2つの状態をとる性質)を測定する実験で、分子内の電子の磁気的性質に関する情報などが得られる。
 〇磁気円偏光二色性
 磁界中に置いた物質の光吸収の偏光状態による変化を測定する実験で、分子内の電子の光励起状態に関する情報などが得られる。
 〇ダイマー
 2個の同種分子が組み合わさることで形成される1組の分子。
 〇SPring-8
 高輝度短波長なX線を利用できる兵庫県にある共同利用施設。
 〇 X線回折
物質に照射したX線の回折・散乱像を測定する実験で、結晶内の分子の立体構造などが得られる。
 〇核磁気共鳴
 磁界中に置いた物質の核スピン(原子核が磁界に応答して複数の状態をとる性質)を測定する実験で、分子内の特定の原子核の磁気的性質に関する情報などが得られる。
 〇共役(きょうやく)π電子
 分子内に交互に並んだ単結合と多重結合のために非局在化した電子。
 〇環電流
 磁界中に置いた環状の分子内に生ずる、分子リングに沿った共役π電子の流れ。

 天気は晴れ。風が少し強く、気温も高くない。
 近所のレストランのお庭で、”ユキゲユリ”に花が咲いている。”ユキゲユリ”は高山植物で、自生地では雪が解けずに残っていても花が咲くこともあることからこの名(雪解ゆり)になったと言う。別名に”チオノドクサ”とあるが、チオノドクサは属名である。”チオノドクサ”には数種類が知られている。”チオノドクサ・リュシーリアエ(C. luciliae)”が良く知られており、花色は澄んだ青で中心が白い。花の澄んだ青色で中心が白色は、和名の”ユキゲユリ(雪解百合)”が似合うかな。
 学名の「Chionodoxa」は、ギリシア語の「chion:雪」と「doxa:栄光、華麗」からと言う。英名では「Glory of the snow」との事で、何れも雪に関係している。
 ユキゲユリ(雪解百合)
 別名:チオノドクサ
 英名:Glory of the snow
 学名:Chionodoxa luciliae Boiss.
 ユリ科チオノドクサ属
 クサスギカズラ科、ヒヤシンス科、キジカクシ科に分類することもある
 多年草(秋植え球根、径4cm位)
 原産地は地中海沿岸~小アジア
 開花時期は2月~4月
 花色は 青・紫・白・ピンク


長期的に非常に安定した小型原子時計を開発

2020-03-27 | 科学・技術
 産業技術総合研究所物理計測標準研究部門高周波標準研究グループ柳町真也主任研究員は、首都大学東京システムデザイン学部電子情報システム工学科五箇繁善准教授、株式会社リコー原坂和宏、鈴木暢、鈴木亮一郎と共同で長期的に非常に安定した小型原子時計を開発した。成果の詳細は、2020年3月10日に米国物理学協会の学術誌Applied Physics Lettersに掲載。
 ポイント
 〇ライトシフトの揺らぎを制御することで非常に安定した小型原子時計を実現
 〇新しい理論を構築してセシウム(Cs)原子の固有周波数が変動しない駆動条件を導出
 〇途切れの無いIoTネットワークを介したデータ収集への貢献に期待
 概要
 小型原子時計では原子の固有周波数の情報を得るのに、コヒーレントポピュレーショントラッピング(CPT:Coherent Population Trapping)共鳴という光と原子の相互作用に由来する共鳴現象を利用するのが主流となっている。しかし、長期的な時間・周波数の安定性はライトシフトの揺らぎによる周波数変動によって制限されていた。今回、セシウム(Cs)小型原子時計の重要部品である面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)の経年変化に着目し、ライトシフトが揺らぐメカニズムを解明、揺らぎを抑制する技術を開発して、非常に安定した小型原子時計を実現した。高安定な原子時計は、IoTネットワークを通じたシームレスなデータ収集への貢献が期待される。
 開発の社会的背景
 膨大なデータの中から新たな知見を見出すビックデータの収集・分析・活用への取り組みが本格化しつつある。これまでは顧客の購入・検索履歴といったヒトから得られる情報の活用が主であった。最近は、省電力広域ネットワークなど低消費電力の通信技術の発展によりヒト以外のさまざまなモノから情報が発信される本格的なIoT時代へと向かっており、そこから得られるであろう新たな知見に期待がかかっている。しかし、情報に付随する時刻情報が不正確だとデータ分析でのノイズとなるため、正確な時刻情報の重要性が増している。これまで時刻情報は全地球航法衛星システムに頼ってきたが、電波妨害やなりすましによる時刻情報の改ざんがもたらす脆弱性が指摘されている。IoT端末に小型で安定した原子時計を搭載できるようになれば、IoT端末が利用する時刻の正確さを自律的に診断・補正可能となるため、全地球航法衛星システムで問題となっている安全性を確保することができる。
 研究の経緯
 産総研は、1970年からCs原子時計の研究開発に取り組んでいる。現在、「1秒」はCs原子の固有周波数に関連した持続時間で定義されており、産総研は時間の1次標準器を用いて国際原子時の高精度化に貢献している(産総研プレス発表2003年6月9日、産総研today2011年8月号)。近年は、実験室の外の環境で、全地球航法衛星システムに依存しないで容易かつ高精度に時刻情報を一致させる技術ニーズに対応するため、小型原子時計の開発を進めている。NEDOが推進する「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」で、2015年より無線センサー端末に搭載できる小型原子時計の開発を開始し、これまでに低消費電力化の技術を確立した(産総研プレス発表2019年2月19日)。
 研究の内容
 一般的に、小型原子時計を駆動するには量子干渉効果の一種であるCPT共鳴を利用する。半導体レーザーであるVCSELに周波数変調を加え、出力される2周波数のレーザー光とCs原子の相互作用によりCPT共鳴が生成する。その過程で、ライトシフトも共に発生してしまい、Cs原子固有周波数の変動要因となり、小型原子時計の長期的な安定性を阻害してきた。
 今回、VCSEL発振波長の経年変化がライトシフトの揺らぎに関与していることを定量的に解明した。しかし、ライトシフトの揺らぎを直接抑制することは消費電力の増加につながる。そこで、半導体レーザーの基礎方程式に基づき、VCSEL発振波長が経年変化してもCs原子の固有周波数が変動しない駆動方法としてゼロクロス法を考案し、小型原子時計に適用した。
 ゼロクロス法適用の効果は、150日以上の長期間の評価期間を経て、慎重に検証した。ゼロクロス法を適用した場合はCs原子の固有周波数の変動を十分に抑制することができ、その結果、平均時間を約50日間(4.3x10^6秒)とした場合、従来の小型原子時計と比べて100倍の安定性を得ることに成功した。
 今後の予定
 今後は小型原子時計のさらなる高安定化を目指した研究開発を進める予定である。
 ◆用語の説明
 〇小型原子時計
 原子時計は原子と電磁波の共鳴現象に現れる共鳴周波数と、一般的な時計に利用される水晶発振器の周波数を関連させている時計である。そのため、一般的な時計より安定な時計装置が実現できる。小型原子時計ではパッケージング技術により共鳴現象を得るために必要なデバイスを量子部へ集積化する。量子部内へはヒーターと測温素子からなる温度制御機構と、面発光レーザー素子(VCSEL)、Cs原子を封入したガスセル、検出器である受光素子などが配置される。
 〇CPT共鳴
 CPT(Coherent Population Trapping)は量子干渉効果の一種であり、原子と電磁波の共鳴現象である。Cs原子に光を照射すると、通常であれば吸収が起きて透過光量は減少する。そこに2種類の周波数の光を照射する場合、それらの光の周波数差がCs原子の固有周波数と一致すると、Cs原子内に光を吸収しない量子的な重ね合わせ状態が発生し、光の吸収量が減少、すなわち透過光量が増加する。以前の原子時計はCs原子とマイクロ波(波長3 cm)の直接相互作用となる共鳴現象を利用していたため大型であったが、このCPT共鳴を利用すれば光の波長領域(1μm以下)でも共鳴現象が生じるので、小型原子時計では必須の手法となっている。
 〇ライトシフト
 量子力学に基づいて発生する原子のエネルギー準位の変化(シフト)に関連する現象である。CPT共鳴を生成するためにはCs原子にレーザー光を照射し、光の電場成分(光電場)と原子の相互作用を活用する。一般的に光電場中のCs原子は電荷分布の偏りを持つようになり、さらにその電荷分布の偏りに対して周期的な変化をもたらす。その結果、原子のエネルギー準位が変化し、Cs原子の固有周波数の変化となって観測される。このようにして現れるCPT共鳴の共鳴周波数の変化をライトシフトという。
 〇VCSEL
 VCSEL(Vertical Surface Emitting Laser)は基板面に垂直にレーザー光を放射する面発光レーザーであり、半導体レーザーの一種である。このレーザーは光を閉じ込める半導体素子の体積が小さいため電流による変調帯域が広く、レーザー発振波長に、予測不能で意図しない不連続な変化がほとんど起こらないという特徴を持つ。さらに小型原子時計への搭載に対しては、閾値電流が低く、省電力動作が可能という優れた特徴をも併せ持つ。
 〇全地球航法衛星システム
 GPS(米国)、GLONASS(ロシア)、Galileo(ヨーロッパ)、準天頂衛星(日本)などの衛星測位システムの総称。人工衛星からの電波を用いて、受信機の位置決めや時刻補正ができる。
 〇Cs原子固有周波数
 Cs原子の基底状態には周波数約9.2GHzのマイクロ波に相当するエネルギー準位構造があり、原子時計の基準として用いられる。
 〇ゼロクロス法
 VCSEL発振波長が経年変化してもCs原子の固有周波数を変動させず、小型原子時計を駆動する手法。

 天気は晴れ~曇り・時々小雨~晴れ。お日様が顔を出すと暖かい、見えないと寒い。
 道沿いのお庭で、”キブシ(木五倍子)”の花を見つけた。枝には葉がなく、淡黄色の花を沢山つけた穂状花序が垂れ下がっている。花は丸くプックリとしている。”キブシ”は雌雄異株で、外見で雌雄の区別は難しい。雄花は淡黄色、雌花はやや緑色を帯びる。このお花は、雄蕊が見えるから雄花かな。”キブシ”の花は早春の山菜として、おひたし・天ぷらにして食べることができる、と言う。
 名(キブシ:木五倍子)の由来は、果実をタンニンを多く含み、染料の原料である五倍子(ふし、ヌルデの虫こぶ)の代用として使ったから。因みに、江戸時代にはお歯黒の材料で利用された。
 キブシ(木五倍子)
 別名:木藤(きふじ)、豆五倍子(まめぶし)
 学名:Stachyurus praecox
 キブシ科キブシ属
 雌雄異株
 落葉低木
 日本固有種
 開花時期は3月~4月
 葉が出る前に、薄黄色の釣鐘型小花(1cm以下)が葡萄の様に垂れ下がって咲く
 花は4弁花
 果実は径1cm程の卵形・球形で、熟すと黄褐色になる


70万人のゲノムによるリスク予測で、高血圧・肥満が現代人の寿命を最も縮めている

2020-03-26 | 健康・病気
 大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学教室坂上沙央里大学院生(東京大学大学院医学系研究科博士課程)、金井仁弘特別研究生(ハーバード大学医学部 博士課程)、岡田随象教授らの研究グループは、日本・イギリス・フィンランドの大規模バイオバンクが保有する合計70万人のゲノム情報・バイオマーカー・寿命情報を解析する手法を開発し、健康バイオマーカーの値をゲノム情報から予測するとともに、人種横断的に高血圧・肥満が現代人の寿命を縮める原因になっていることを明らかにした。 日本人では高血圧が、欧米人では肥満が寿命への影響が大きく、糖尿病罹患患者・男性など特にリスクが大きいサブグループの特定にも成功した。
 本研究成果は、米国科学誌「Nature Medicine」に、3月24日(火)午前1時(日本時間)に公開。
 研究成果のポイント
 〇個人のゲノム情報を用いて将来の健康リスクやバイオマーカー値を予測するポリジェニック・リスク・スコア(PRS)と寿命の長さとの関連を調べることで、高血圧・肥満が特に現代人の寿命を縮めていることを導き出した。
 〇世界中から集められた70万人のゲノム情報を活用することで、これまでの観察研究では困難だった、因果関係が明らかな健康リスク因子の特定に成功した。
 〇今回開発した手法を更に多様なバイオマーカーや電子カルテデータ、人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、医療が改善できる要素を見つけ介入する、個別化医療・予防医療に貢献することが期待される。
 医学研究分野では、個人の健康状態の最終結果である「健康アウトカム」、すなわち寿命や健康寿命が、どのような原因によって短くなったり長くなったりするのかを特定することが一つの目標である。これまでの大規模なゲノム研究によって、集めた遺伝情報からゲノムと病気の発症との関連について「ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)」という数値が導き出され、個人のゲノム情報から将来の病気の発症の予測ができるようになった。しかし、PRSは生まれつきの遺伝要因しか考慮されていないため、PRSを集団レベルで寿命や健康の改善に結び付ける方法に課題があった。
 今回、岡田教授らの研究グループは、健康の指標かつ治療可能なバイオマーカーのPRSと寿命(死亡年齢)との関連を人種横断的に調べる手法を開発し、世界70万人のゲノムデータに適用することで、現在の世界の人々の寿命を縮める最も強い原因が高血圧と肥満であることを特定した。この手法を更に多様な健康マーカーや人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、どのバイオマーカーをモニターし医学的に介入すれば健康アウトカムの改善が期待できるかを推定することができる。すなわち、ゲノム情報を用いた個別化医療・予防医療の実現が期待される。
 研究の背景
 この20年間の大規模なヒトゲノム研究により、ゲノム上の多様性がどのように病気や個人の特徴(形質)に影響を与えているかについて全体像が明らかになった。一般的な病気や形質に与える遺伝要因の影響は「ポリジェニック」、すなわち個々では非常に小さな一つの遺伝的変異の影響の数十~数千個にわたる組み合わせと足し合わせにより形成されていることが分かった。
 これまで、世界中の研究機関や国家的なバイオバンクの協力により、ヒトの個性を形作る多様な形質に関する数万人~数百万人を対象とした研究が行われ、一つずつの遺伝的変異がヒトの形質に与える効果量が概ね推定できるようになった。この結果を利用して、個人ごとの遺伝的変異の組み合わせとそれらの効果量を掛け合わせて和をとった「ポリジェニック・リスク・スコア(PRS)」を計算することで、将来の疾患リスクが高い人たちを特定できるようになった。しかし当然、生まれたときに与えられた遺伝要因は変えることができないため、このスコアを健康アウトカムの改善に役立てる方法論に課題があった。
 一方で、人間の健康は遺伝的なリスクだけではなく環境因子や生活習慣の影響も強く受ける。寿命などの健康アウトカムの違いの原因となるリスク因子を見つけることは、医学研究の最大の目的の一つである。これらのリスク因子に医学的な観察・介入を行えば、集団レベルで健康アウトカムを改善させることが期待できるからである。従来リスク因子の特定には、観察研究やランダム化比較試験の手法が用いられてきた。しかし、観察研究からは因果関係の証明ができず、ランダム化比較試験は費用や倫理面の問題から非常に限られた検査値にしか応用できないという問題点があった。
 今回、岡田教授らのグループは、近年、臨床的有用性が注目されているPRSを、大規模なゲノム情報と臨床情報に適用し、さまざまな健康のリスク因子と寿命との関わりを調べた。
 本研究の成果
 研究グループは、身長、体重や血液検査値など多数のリスク因子の候補(バイオマーカー)に対して、それぞれのPRSを作成して寿命との関連を調べることで、どのバイオマーカーが現代人の寿命を伸ばしたり縮めたりする原因となっているかを特定する手法を開発した。これまでの観察研究では、たとえバイオマーカー自体と寿命に相関があっても、バイオマーカーが寿命の長さを規定する原因なのか、それともその他の健康状態が影響してバイオマーカーの値が変化しているのかの因果関係が分からない。生まれつきのゲノム情報によるバイオマーカーの予測値(原因)であるPRSと寿命(結果)との関連を調べることにより、因果関係を担保した状態で寿命を規定する因子を見つけることができる。この手法を、日本(バイオバンク・ジャパン--18万人)、イギリス(UK バイオバンク--36万人)、フィンランド(フィンジェン--14万人)の国家的なバイオバンクで保有する遺伝子情報と臨床情報に適用し、世界で初めて、人種横断的に高血圧が現代人の寿命を最も縮めていることを示した。特に、糖尿病・脳梗塞・脂質異常症を合併した人でその影響は強く、心血管病による死亡と最も強く関連していた。肥満も寿命を最も縮める強い要因でしたが、その影響の強さは欧米人の方が日本人よりも大きいこともわかった。特に、不安定狭心症を合併した人でその影響は強く、脳血管病による死亡と最も強く関連していた。血圧・肥満に続き、高コレステロール、高身長、低血小板も寿命を縮めるバイオマーカーとして特定された。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 本研究では、これまで行われてきた観察研究やランダム化比較試験の課題点を克服し、遺伝情報を用いることで高血圧や肥満が現代人の寿命を縮めていることを初めて示した。今回関連が同定されたバイオマーカーは寿命を決定する原因となっている可能性が高く、医学的に観察・介入することで集団レベルでの健康アウトカムを改善することが期待される。現在、全世界で大規模なバイオバンクによるゲノム情報・臨床情報・電子カルテ情報の収集が盛んに行われ、いまだかつて無いほど膨大に蓄積されつつある。この手法を更に多様なバイオマーカーや電子カルテデータ、人種集団に当てはめることで、個人の健康リスクを正確に予測し、医療が改善できる課題を見つけ介入する、個別化医療・予防医療に貢献することが期待される。
 ◆用語説明
 〇バイオマーカー
 ヒトの疾患病態や生物的特徴の説明に役立つ、測定指標のこと。体重、血圧などの身体測定値や、コレステロールや尿酸などの血液検査値が含まれる。
 〇バイオバンク
 疾患疫学や病態研究などを目的に、多数のヒトのDNA、血清、尿、組織などの検体を収集、蓄積、管理する施設のこと。近年では国家レベルで数十万人を対象とするバイオバンクが構築され、個人の検体とともに電子カルテ上の臨床情報やその後の予後などの追跡情報も蓄積される例が多い。
 〇健康アウトカム(health outcome)
 健康状態の結果を表す指標のこと。医療介入の評価の一指標として用いられる。寿命、健康寿命、薬剤治療への反応性、生活の質(Quality of life; QOL)などが含まれる。
 〇ポリジェニック・リスク・スコア(polygenic risk score; PRS)
 大規模なゲノムワイド関連解析研究(GWAS; ヒトゲノム配列上に存在する数千万カ所の遺伝子変異とヒト疾患との発症の関係を網羅的に検討する、遺伝統計解析手法)により疾患や形質との関連が示唆された数十~数千の遺伝的変異の重み付きの和を個人ごとに計算したスコア。このスコアは実際の疾患発症リスクと相関することが示されており、集団内でスコアの分布を調べることで、特にその疾患のリスクが高い個人を特定することができる。
 〇ポリジェニック(polygenic)
 糖尿病、高血圧など頻度の高い疾患や、身長、体重などの形質では、多数の(ポリ)遺伝的変異の影響(ジェニック)が組み合わされ足し合わされて全体の遺伝的な影響が説明されるということ。
 〇観察研究(observational study)
 研究のための治療などの介入を行わず、血液検査値などのある時点での観察値とアウトカムとの関連を調べる研究のこと。値とアウトカムに相関を認めても、どちらが原因でどちらが結果かの判断が困難な場合がある。(例: 体重が少ない方が寿命が短い相関が出たとき、痩せているせいで死亡率が高いのか、もともと持病があり痩せてしまったのか、判断できない。)
 〇ランダム化比較試験(randomized controlled trial; RCT)
 ある要因がアウトカムに与える影響を示すために、要因に対して投薬などの医学的な介入で変えてアウトカムへの影響を調べる方法の一つ。集団をランダムに介入群と非介入群に割り付け、アウトカムへの影響を比較することで、未知の交絡因子のない因果関係を明らかにすることができる。(例:LDLコレステロールの値が高いことが心筋梗塞のリスクを高めることを示すために、LDLコレステロールを下げる薬を与える群と与えない群での心筋梗塞の発生を追跡比較する。)
 〇バイオバンク・ジャパン(BioBank Japan)
 日本人集団27万人を対象とした生体試料バイオバンクで、ゲノム解析が終了した人数は約20万人とアジア最大である。オーダーメイド医療の実現プログラムを通じて、ゲノムDNAや血清サンプルを臨床情報と共に収集し、研究者へのデータ提供や分譲を行っている。
 〇UK バイオバンク(UK Biobank)
 英国で実施されている国家的バイオバンク機構。中高年のボランティア約50万人を対象に、ゲノム情報や2千以上の多彩な臨床情報、追跡情報を収集し、ほぼ無償で世界の研究者にデータの公開や分譲を行っている。
 〇フィンジェン(FinnGen)
 フィンランドで実施されている国家的バイオバンク機構。フィンランドの大学、既存のバイオバンク、病院、国際的な製薬会社が手を取り、50万人を目標にゲノムデータの収集を行っている。更にフィンランド政府のhealth registryとの紐付けにより豊富な臨床情報の入手が可能である。
 〇不安定狭心症
心臓に血液を送る冠動脈の流れが悪くなり、心筋に送り込まれる血液が不足し心筋が酸素不足に陥る病気を「狭心症」という。このうち、完全に血流が途絶えて閉塞した状態となるのが急性心筋梗塞で、その一歩手前で閉塞が不完全な状態でとどまっているのが、不安定狭心症。急性心筋梗塞に移行する可能性が高く、安静時にも胸痛などの症状を認める。

 晴れ。朝はまだ寒いと感じたが、昼近くから暖かくなってきた。最高気温は18℃・・暖かい。
 散歩道沿いの”ボケ”。やっと花が咲き出した。赤い花・・可愛い、小さな赤い球の蕾も多い・・満開になったらとても綺麗だ。
 名(ボケ:木瓜)の由来は、木になる瓜だから木瓜(もけ、ぼっくわ)で、これが転訛して”ボケ”となったと言う。本草和名(ほんぞうわみょう、日本現存最古の薬物辞典、延喜年間(901年-923年)に編纂)では、”もけ”と収録されている。
 花色は基本的に紅・淡紅で、白や白と紅の斑などがある。花色や由来・季節などによって色々な名で呼ばれる。
  唐木瓜:ぼけ(木瓜)の異名・・中国から渡来したから
  緋木瓜:花色が緋色から
  寒木瓜:冬(11月)に咲くボケ
  淀木瓜:真紅で小輪
  白木瓜:花色が白色
  更紗木瓜:花色が紅地に白
  広東木瓜:淡紅色で大輪
  長春木瓜:四季咲き
 ボケ(木瓜)
 別名:放春花(春を呼ぶ花)
 学名:Chaenomeles speciosa
 バラ科ボケ属
 落葉低木(樹高は1m~2m)
 中国原産、平安時代に渡来
 開花時期は3月~4月
 花の径は3cm前後、花色は紅・淡紅、白、白と紅の斑など
 ◆ボケと言えば「もの忘れ」の事でもある
 「もの忘れ」には加齢によるものと病気が引き起こすものがある。加齢によるものとは自然な老化による記憶力の低下である・・これが本来のボケ。自分が忘れたと言う自覚があれば”ボケ”で、自覚がなければ”認知症”となる。因みに、年齢と共に記憶力は低下し、20代と比べて50代では半分、70歳以上では4分の3まで失われるとの事。
 ある研究によると、70歳~90歳を対象に1日3km(歩数で約4千歩)以上歩く方と殆ど歩かない方を比較したら、歩かない方の認知症の発症率が2倍といわれる。・・歩けば楽し。


アルコール依存症の疑いがある人は全国で推計113万人

2020-03-25 | 参考資料
 厚生労働省の調査によると、国内のアルコール依存症患者数は2003年の80万人から13年に100万人に増加したとされる。2013年の調査によると、アルコール依存症の疑いがある人は全国で推計113万人おり、女性はこのうち1割強となっている。
 アルコール依存症は中年問題だったが、現在は高齢者問題となった。アルコール依存症の専門治療施設として日本最大の久里浜医療センターの新規患者に占める65歳以上の割合は、2012年に過去最高の24.3%に。10年間で9ポイント上がり、65歳以上人口の伸びを大きく上回っている。
 アルコール依存症は飲酒量や飲酒の仕方によって決定づけられるものではない。
 飲酒の仕方は常習飲酒・周期飲酒・機会飲酒に分けられ、一般には常習飲酒者のみが本症患者であるかのような誤った概念がある。確かに常習飲酒者が圧倒的に多いことは事実であるが、周期飲酒者の中にも本症患者の1/3~1/4の人々が含まれている。 渇酒症と呼ばれる患者の多くはこのタイプである。
 病的酩酊と呼ばれるものは極めて稀にしか飲酒しない機会飲酒であるが、ひとたび飲酒すると突然に意識障害が現わ、急激な興奮・攻撃的態度となり、周囲の状況の認識を欠く状態となり完全健忘を認めることが多い。
 このような人々も断酒をしなければ社会生活をスムースにおくることはできないし、医療の対象となる。
 - - -
 WHOが掲げるAUDIT(オーディット:飲酒習慣スクリーニングテスト)
 診断はできないが、飲酒問題の程度が分かる(垣渕さん:久里浜医療センター)。AUDITは厚生労働省や大手酒造メーカーのサイトなどでも公開されており、簡単に試すことができる。
 質問は全部で10個。過去1年までを対象に、普段の飲酒状況に答えるだけで数分で結果が出る。
 あくまでも目安であるが、9点以下はローリスク、10~19点はハイリスク(=予備群)、20点以上はアルコール依存症を疑う、という判断となる。

 ◆アルコール依存症
 一般にアルコール依存症と呼ばれているものは急性中毒症を含まない。
 英語のアルコホリズム「Alcoholism」の訳語としては「アルコール依存症」が一般化しつつあるといえる。
 WHOにおいては、本症を薬物依存のひとつとしてとらえ、特に「依存」という概念を重視している。
 1968年WHO薬物依存専門委員会では「薬物依存とは,生体と薬物との相互反応から生ずる精神状態および身体状態であって、行動上その他の反応がつねに強迫的であるという特徴をもっている。この強迫とは薬物の精神効果を経験したいことや、ときには薬物がないと生ずる不快を避けたいために持続的か周期的に薬物を使用することである」としている。すなわち、強迫的飲酒とは個人の自由意志によって選ばれ楽しまれる飲酒ではなく、いやおうなしに周期的または持続的に飲まなければならない渇望状態に陥ったことを意味している。
 そして、飲酒をやめると、精神的、身体的に何らかの不快な異常(障害)を生じるような状態をアルコール依存症の概念としてとらえることができる。

 天気は晴れ。風が少しあり、最高気温13℃・最低気温1℃とあり、少し寒い。
 小さなお庭の”ヒヤシンス”に花が咲いている。短い花茎に沢山の小花を付け、甘い香りが漂う。”ヒヤシンス”が咲くころには、チューリップ、スイセン、キバナサフラン(クロッカス)が咲きだす。
 ”ヒヤシンス”の花色は、本来(野生種)青紫色。同じ頃に咲く”ムスカリ”も青紫色で、この色などから、別名ブドウヒアシンスとも言われる
 原産地は地中海東部沿岸で、オスマン帝国(現トルコ)で栽培され園芸化されたと言う。その後16世紀に欧州・英国に渡り、江戸末期(1863年頃)にチューリップとともに日本に来た。園芸品種は花色も豊富で、赤・ピンク・白・黄・青・紫色など。
 ヒヤシンス(風信子、飛信子)
 別名:錦百合(にしきゆり)
 学名:Hyacinthus orientalis
 ユリ科(ヒアシンス科)ヒヤシンス属
 原産地はギリシャ地方
  江戸末期(1863年頃)にチューリップとともに渡来した
 耐寒性秋植え球根(春に花咲く秋植え球根)
   球根の表皮が花色と同じ様な色となっている(球根で花色が判る)
 開花時期は3月~5月


高変換効率と長期保管安定性を両立する超薄型有機太陽電池の開発に成功

2020-03-23 | 科学・技術
 理化学研究所開拓研究本部染谷薄膜素子研究室の福田憲二郎専任研究員、染谷隆夫主任研究員、創発物性科学研究センター創発機能高分子研究チームの伹馬敬介チームリーダーらの国際共同研究グループは、高いエネルギー変換効率と長期保管安定性を両立する超薄型有機太陽電池の開発に成功した。
 本研究成果は、ウェアラブルエレクトロニクスやソフトロボット用のセンサーやアクチュエータなどに安定的に電力を供給できる、軽量で柔軟な電源として応用されると期待できる。
 国際共同研究グループは、発電層を改良するために高エネルギー交換効率と熱安定性を併せ持つバルクヘテロ接合構造の素子を新たに作製した。さらに、発電層と正孔輸送層の界面における電荷輸送効率向上のため、この素子に対してポストアニール処理(150℃)を施した。その結果、13%の高いエネルギー変換効率と、大気中保管3,000時間で劣化5%以下という長期保管安定性を両立する、超薄型有機太陽電池(厚さ3マイクロメートル)を実現した。これは過去の最高値と比較して、エネルギー変換効率は約1.2倍向上し、長期保管安定性は15倍改善したことになる。
 本研究は、米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン版に掲載。
 背景
 有機太陽電池は、従来のシリコン型太陽電池に比べ極めて薄い有機半導体薄膜で形成されるため、柔軟性・軽量性に優れ、ウェアラブルセンサーを長時間安定に駆動する電源としての応用が期待されている。特に、基板を含めた全体の厚さを数マイクロメートル(μm、1μmは100万分の1メートル)まで薄型化した超薄型有機太陽電池は、衣服や皮膚に直接貼り付けても違和感がないことが特長である。
 福田憲二郎専任研究員らはこれまでに、耐水性、耐熱性を持ち、エネルギー変換効率(太陽光エネルギーを電力に変換する効率)が10.5%に達する超薄型有機太陽電池を実現し、それらを用いたセンサーとの集積化に関する報告を行ってきた。しかし、超薄型有機太陽電池は基板や封止膜に薄い高分子フィルムを使用しているため、十分なガスバリア性の確保が難しく、また安定的に駆動するための発電層や電荷注入層の界面を制御する手法がなかったため、エネルギー変換効率と長期保管安定性の両立は依然として不十分であった。
 研究手法と成果
 今回開発した超薄膜有機太陽電池は、基板から封止膜までの全てを合わせた膜厚が3μmと極薄でありながらエネルギー変換効率は13%に達し、大気中で3,000時間保管した後も95%以上のエネルギー変換効率を保持することができた。これまでの研究では、エネルギー変換効率は10.5%、保持率95%を満たすのは約200時間であった。これと比較すると、エネルギー変換効率は約1.2倍向上し、長期保管安定性は15倍も改善したことになる。
 本研究成果のポイントは、高エネルギー交換効率と熱安定性を両立する新たなドナー・アクセプター材料ブレンド膜の設計による発電層の改良と、ポストアニール処理による発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送の改善を実現したことにある。
 今回ドナー材料に用いたPBDTTT-OFTは、東レ株式会社が近年新たに開発した熱安定性に優れる半導体ポリマーである。これまでの研究では、このPBDTTT-OFTとランダムに混合したバルクヘテロ接合構造の発電層を作製するために、アクセプター材料としてフラーレン誘導体[6]を使用していた。しかし、この組み合わせではPBDTTT-OFTの高効率や熱安定性といった特長を十分に引き出すことができなかった。今回、アクセプター材料として非フラーレン誘導体のIEICO-4Fを用いることで、光捕集性と熱安定性により優れる発電層を作製できた。
 これに加え、素子作製後に簡単な熱処理(150℃)を行うポストアニール処理によって、長期保管安定性が大きく改善することを発見した。微小角入射広角X線散乱法やX線光電子分光法などによる物性評価の結果、この現象は、ポストアニール処理を施すことによって、発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送が改善した結果であることが判明した。さらに、他の発電層材料や正孔輸送層を試したところ、ポストアニール処理後にエネルギー変換効率が低下してしまったことから、今回の素子構成でのみ高いエネルギー変換効率が保持されることが分かった。
 発電層のドナー材料に半導体ポリマーのPBDTTT-OFTを、アクセプター材料に非フラーレン誘導体のIEICO-4Fを用いることで、高エネルギー変換効率と熱安定性を両立できる発電層を作製できた。また、素子作製後にポルトアニール処理(150℃、5分間)を施すことで、発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送が改善され、それに伴い長期保管安定性も改善された。
 今後の期待
 今回、新しい発電層と簡便なポストアニール処理を組み合わせることで、超薄型有機太陽電池の高いエネルギー変換効率と長期保管安定性の両立が可能になった。本研究により、超薄型有機太陽電池がより長期間安定に、大電力を供給することが示された。本成果は、衣服貼り付け型センサーなどのウェアラブルエレクトロニクスへの長期安定電源応用の未来に貢献すると期待できる。
 ◆補足説明
 〇有機太陽電池
 有機半導体を光電変換層として用いた太陽電池のこと。塗布プロセスによる大量生産が適用できると同時に、安価かつ軽量で柔らかいことから、次世代の太陽電池として注目を集めている。
 〇ソフトロボット
 柔軟性のある材料を利用した柔らかいロボット。従来の硬い材料を利用したロボットとは全く異なるロボットが実現されるとして、近年世界中で注目を集めている。
 〇バルクヘテロ接合
 電子供与性(ドナー)と電子受容性(アクセプター)の有機半導体を混合した溶液から薄膜を作成することで、それぞれの材料がランダムに混ざり合い、接合界面が薄膜全体(バルク)に広がっている構造。
 〇ポストアニール処理
 電子素子を作製した後に行う加熱処理のこと。本研究では作製した有機太陽電池を、窒素雰囲気下で150℃のホットプレート上に5分間置くという処理を行った。
 〇半導体ポリマー
 半導体の性質を持つポリマー(高分子の有機化合物)材料。可視光を吸収することができ、有機溶剤に溶けるため、塗ることができる半導体として、有機薄膜太陽電池をはじめとした有機デバイスに応用されている。
 〇フラーレン誘導体
 フラーレンは炭素原子が球状の構造を成している化合物の総称で、ダイヤモンドや黒鉛、カーボンナノチューブと同様に炭素の同素体である。フラーレンは、付加反応などの化学修飾により容易に誘導体を合成することができ、その誘導体の中でも[6,6]-フェニル酪酸メチルエステル(PCBM)が有機太陽電池のアクセプター材料としてこれまで広く使用されてきた。.
 〇微小角入射広角X線散乱法
 薄膜試料に横方向からすれすれにX線を入射して、後方に散乱されるX線を観測することで、薄膜の結晶構造を解析する実験手法。感度が高く、密度の低い有機薄膜でも構造の解析が可能である。
 〇X線光電子分光法
 物質にX線を照射し、試料表面から放出される電子の個数とエネルギーの関係を調べることにより、物質内の電子状態を調べる実験手法。この手法により、物質内の電子のエネルギー分布を直接観測することが可能となる。硬X線光電子分光法、軟X線光電子分光法などがある。

 晴れ、少し雲が多い。風がやや強く、足元・首筋をすくう。
 垣根沿いに植えられている”ウグイスカグラ”に花が咲いている。花冠は細い漏斗形で、先端は5裂して開く。花色は、名の”ウグイスカグラ”からだと「うぐいす色:くすんだ黄緑色」だが、ピンク色である。花後の果実はグミの様な楕円形の液果、初夏に透明感のある赤に熟す。
 名(ウグイスカグラ:鶯神楽)の由来には諸説あるが、鶯が鳴き始める頃に花が咲く、からと言う。
 ウグイスカグラ(鶯神楽)
 別名:ウグイスノキ
 学名:Lonicera gracilipes var. glabra(鶯神楽)
Lonicera gracilipes var. glandulosa (深山鶯神楽)
 スイカズラ科スイカズラ属
 落葉性低木
 原産地は日本(北海道~本州、四国)
 開花時期は3月~5月、深山鶯神楽の開花時期は2月頃
 花色は薄ピンク色、花冠は細い漏斗型で先は5裂して開く
 初夏(6月頃)に1cm程の果実が透明感のある赤に熟す、食べれる


幹細胞治療による血管再生メカニズムを解明

2020-03-22 | 医学
 神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター脳循環代謝研究部の研究グループは、投与した造血幹細胞が血管内皮細胞に「細胞内で欠乏しているエネルギー源(グルコースなど)」をギャップ結合を介して直接供給することが、障害されている血管内皮細胞の再生をスタートさせるトリガーであることを発見した。
 成果は、幹細胞が障害された細胞に分化あるいはサイトカインなどで「命令」を与えて再生をスタートさせているのではなく、幹細胞が障害された細胞で欠乏している「エネルギー源」を直接供与することが再生をスタートさせる鍵であることを示しており、再生医療において全く新しいパラダイムが存在することを明らかにした。
 研究成果は、2020年2月21日に、国際学術誌「Stroke」にオンライン掲載。
 背景
 造血幹細胞を使った再生医療は、四肢虚血、心筋梗塞、脳梗塞、新生児脳性麻痺など、多くの治療困難な疾患を対象に行われてきた。私達のグループでも、難治性四肢虚血患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2003)、重症心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Stem Cells Dev. 2015)を行い、その治療効果を示してきた。しかしこれらの造血幹細胞移植がどのように血管再生を促進し、脳神経の回復まで行うのかについて、造血幹細胞の血管内皮細胞への分化や、サイトカインのパラクライン効果などが提唱されてきたが、否定的な結果も数多く報告されており、その本質は全く不明であった。
 研究手法・成果
 まず、血管内皮細胞と造血幹細胞を一緒に培養することで、血管内皮細胞にどのような変化が起こっているのかを検討した。その結果、血管内皮細胞と造血幹細胞が接する状態で培養した場合のみ、血管内皮細胞の活性化が見られ、細胞同士が直接接することで、何らかの影響を与えていることがわかった。
 次に、骨髄組織における造血幹細胞と血管内皮細胞の直接的な接着に重要であるギャップ結合に着目した。細胞と細胞は、各々の細胞が細胞膜で区切られているため、細胞の中身(細胞質)が直接的に移動することは基本的にはない。しかし、ギャップ結合は細胞質と細胞質を直接つなぐ細いトンネルのような働きを有しており、細胞間がギャップ結合で繋がると、分子量1500以下の低分子であれば濃度勾配に従って移動することが知られている。そこで造血幹細胞に低分子の蛍光物質を封入し、脳梗塞モデルマウスに投与したところ、造血幹細胞に封入した蛍光物質が脳梗塞巣の障害された血管に移行していることがわかった。さらに、造血幹細胞から血管内皮細胞へギャップ結合を通って流れる分子の一つがグルコースであり、グルコースの供給がトリガーとなり、血管内皮細胞では低酸素誘導因子(HIF1-α)の活性化が起こり、その後の血管再生起点となっていることを明らかにした。
 波及効果
 我々が発見したメカニズムは、宇宙ステーション/宇宙船に例えるなら、ダメージを負った宇宙ステーション(障害を受けた脳組織)の救助に小さな宇宙船(造血幹細胞)を派遣→宇宙ステーションとドッキング→狭いハッチ(ギャップ結合)を開けて連結→ハッチから修復に必要物資を搬入→ダメージを負った宇宙ステーションの修復(再生)を促進、という救助システムと全く同じであった。幹細胞を使った再生医療のメカニズムが、このような合理的な修復システムに基づいていたことは、大きな発見で、再生医療に新しいパラダイムを提示するものである。
 今回の研究では、幹細胞による障害細胞への直接的な低分子化合物供給の重要性が明らかになり、投与幹細胞の品質管理や細胞機能の向上、さらにメカニズムの解明により、幹細胞が不要な再生医療の可能性も開かれたと考えている。
 今後の予定
 今回の研究は、理化学研究所(神戸市)、日本赤十字社/医薬基盤研(箕面市)、フラウンホーファーIME研究所(ドイツ)、ウォーリック大学(英国)との共同研究の成果である。今後も、これらの研究者らと①幹細胞の機能向上研究、および②幹細胞が不要な再生医療開発を行い、脳梗塞患者および認知症患者に対する新規治療法開発を続けていく予定である。
 ◆用語解説
 〇ギャップ結合
 接触する細胞同士をつなぎ分子量1500以下の小さい分子やイオンを通過させる細胞間結合。細胞の細胞膜にはコネクソンと呼ばれるトンネルのようなタンパクが存在し、接触する細胞のコネクソン同士が繋がると、小さい分子やイオンが隣接細胞の細胞質から細胞質へと直接移動する。
 〇低酸素誘導因子(HIF1-α)
 細胞が酸素不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質。ヒト遺伝子の約2%が直接あるいは間接的に制御されており、血管再生にも重要な役割を果たしている。

 今日の天気は、曇り~小雨~曇り、時々晴れ。ハッキリしない天気だな。
 散歩道沿いの玄関前の小さなお庭に、”フッキソウ”の花が咲いている。今年の冬は暖冬だから早く咲きだしたのかな。
 茎頂に穂状花序の雄花、雌花が付く。雄花・雌花ともに白色で花弁が無く、雄花は茶色の太い4本の雄蕊を持ち、雌花は2本の花柱を持った子房がある。雄花は花序の先に沢山で、雌花はその下に付く。多数の葉が茎にラセン状に付き、荒い鋸歯を持つ光沢のある革質の葉で、密に互生して輪生に近く見える着き方である。
 名(フッキソウ:富貴草)の由来は、青葉が絶えない常緑性から、その姿を繁栄に擬えたとされる。別名は、キッショウソウ(吉祥草)、キチジソウ(吉事草)と縁起が良い。因みに、ユリ科には”キチジョウソウ”がある・・吉祥草:草・常緑、学名:Reineckea carnea、赤い実を付ける。
 ツゲ科フッキソウ属は東アジアと北アメリカに5種が分布する匍匐性の常緑の小低木である。”草”のように見えるが、地下茎が横に這って繁茂する小低木である・・木だ!!。
 フッキソウ(富貴草)
 別名:吉祥草(きっしょうそう)、吉事草(きちじそう)。
 学名:Pachysandra terminalis
 ツゲ科フッキソウ属
 常緑小低木
 原産地は日本、中国
 開花時期は4月~5月


外部から固体触媒に電位を与えると低温で化学反応が速く進む手法を発見

2020-03-21 | 科学・技術
 早稲田大学大学院先進理工学研究科博士2年の村上洸太氏および理工学術院の関根泰教授らの研究グループは、外部から固体触媒に電位を与えることで、低温で化学反応が速く進む手法を世界で初めて発見した。これまで化学反応は高温ほど速く進むというアレニウスの法則が一般的であったが、その法則を打ち破る新しい概念である。本研究成果は、2020年3月13日(英国時間)にイギリス王立化学会のジャーナル「Chemical Communications」のオンライン版で公開。
 本成果は、JST未来社会創造事業 研究課題名「電場中での低温オンデマンド省エネルギーアンモニア合成」(研究開発代表者:関根 泰)の支援により実施された。
 ポイント
 〇化学反応は高温ほど速く進むというアレニウスの法則がこれまで一般的だった
 〇外部から固体触媒に電位を与えることで、低温で化学反応が速く進む手法を世界で初めて発見した
 背景
 スウェーデンのスヴァンテ・アレニウスは、1884年に化学反応は高温になるほど速く進むことを明らかにし、アレニウスの法則として高校の教科書にも記載されるほど有名な原理となった。本研究グループは、外部から固体触媒に電位を印加すると、この法則に反して低温ほど反応が速く進むことを発見し、その原因を探ってきた。
 研究の内容
 化学品や水素運搬体として期待されるアンモニアを、窒素と水素から作る反応はハーバーボッシュ反応として知られ、大規模に工業化されており、400度程度の高温と250気圧程度の高圧が必要である。
 本研究グループは、半導体性を有する固体触媒に、外部から電位を与えることで、この反応が200度以下の低温でも速やかに進むことを見いだした。さらに、200度以下の領域では、温度を下げたほうが反応速度が速くなる現象を発見した。一般的に、反応速度が低温で優勢になるのはアレニウスの法則に従い吸着現象のみである。しかし反応速度と吸着の相関を検討したところ、触媒表面でイオンが動く際に、吸着が多くなる低温で反応速度が速くなるというメカニズムが明らかになった。これは化学反応速度がアレニウスの法則に従うという過去の常識を打ち破る、新しい概念である。
 温度を自在に制御できる反応装置に、独自の固体触媒を設置し、外部から電場を与えて反応速度を評価し、非アレニウス法則(アレニウスの法則に従わない)型の反応となることを示した。続いて、赤外スペクトルにおいて、透過法と反射法を駆使して、固体触媒表面への吸着量を電場の有無、温度の違いで丁寧に評価し、科学的なモデルを構築した。最後にモデルによる計算結果と実験結果を照らし合わせたところ、見事に整合することが実証され、非アレニウス法則型の反応がどうして、どのように起こるのかを、吸着と速度の関係から明らかにした。
 研究の波及効果や社会的影響
 再生可能エネルギー由来の電力を利用し、低温で欲しいときに欲しいだけ化学反応が進められ、さらに温度が低い方が反応速度は上がるという現象は、これまでにない新しい特徴を有している。欲しいときに欲しいだけ、室温などの低い温度で物質変換が可能になるという、化学反応の世界にパラダイムシフトをもたらすものになる。
 このようなメカニズムで反応が進む例はまだ限られているため、再生可能エネルギーを生かして、エネルギーや物質を創り出す多様な反応を、低温で選択的に進められるような材料を探索し、展開を進めていく。
 ◆用語解説
 〇赤外スペクトル
 測定対象となる物質に対して赤外線を照射して、透過した光、あるいは反射してきた光を、波長ごとに分光することでスペクトルを得て、対象となった物の特性を知る方法。
 〇ハーバーボッシュ法
 ハーバー・ボッシュ法は鉄を主体とした触媒上で水素と窒素を反応させ、アンモニアを生産する方法である。1906年に開発されたこの方法は、1世紀以上が経過した現在でも肥料生産をはじめとするさまざまな工業プロセスに使用されている。
 しかし、ハーバー・ボッシュ法は大量のエネルギーを消費する手法である。世界で消費されているエネルギーの2%はハーバー・ボッシュ法の反応に使用されており、世界の二酸化炭素排出量のうち1%を占めている。

 晴れ。雲が少し多く、風も少し強い。最高気温が17℃とあるが、それほど温かさを感じない。
 近所の畑で、”ナノハナ(菜の花)”が咲いている。
 ”ナノハナ(菜の花)”は、”野菜(菜っ葉)の花”から”菜の花”になったもので、おひたしや和え物で食べられる葉や茎頂部の花芽や花である。大雑把にいえば、アブラナ科アブラナ属の蕾・花である。この畑の花は、”チンゲンサイ:アブラナ科アブラナ属)かな・・取り残したようだ。
 ナノハナ(菜の花)
 別名:花菜(はなな)、菜花(なばな)、菜種(なたね)
 アブラナ科アブラナ属
 開花時期は、2月~5月
 花弁数は4枚、黄花
 菜の花は春に見かける黄色い花の総称として使われる
 西洋油菜(せいようあぶらな)を「菜の花」と呼ぶことも多い


2019年度芸術院賞に幸四郎さんら5人に、杵屋勝国さんら2人は恩賜賞も

2020-03-20 | アート・文化
 日本芸術院(黒井千次院長)は、芸術分野で顕著な業績があった人に贈る2019年度の日本芸術院賞に、歌舞伎俳優の松本幸四郎さんら5人を選んだと発表した(3月19日)。長唄三味線方の杵屋勝国さんと日本画家の村居正之さんには特に顕著な業績を認め、恩賜賞も併せて贈る。
 恩賜賞・日本芸術院賞
 村居正之(むらい・まさゆき)日本画家。72歳。日展出品作「月照」。京都府出身。
 杵屋勝国(きねや・かつくに、本名牟田口照國=むたぐち・てるくに)長唄三味線方。74歳。長年にわたり長唄界と歌舞伎長唄に貢献、後進を育成。福岡県出身。
 日本芸術院賞
 藤森照信(ふじもり・てるのぶ)建築家。73歳。「ラ コリーナ近江八幡 草屋根」。長野県出身。
 藤間蘭黄(ふじま・らんこう、本名田中裕士=たなか・ひろし)日本舞踊家。57歳。日本舞踊の古典を継承するとともに、発展・普及に寄与。東京都出身。
 松本幸四郎(まつもと・こうしろう、本名藤間照薫=ふじま・てるまさ)歌舞伎俳優。47歳。近年の歌舞伎俳優としての活躍。東京都出身。
 ◆日本芸術院賞
 芸術上の功績が顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関、日本芸術院が毎年授与する賞。第1回目の実施は1941年。日本芸術院の会員以外で、優れた芸術作品を制作した人、および明らかに芸術の進歩に貢献する業績がある人に贈られ、賞状、賞牌、賞金が出る。
 戦前は帝国芸術院賞と呼ばれた。日本芸術院賞を受賞した人の中からさらに選ばれる恩賜賞がある。恩賜賞、日本芸術院賞ともに、授賞式は毎年6月に行われ、天皇皇后両陛下も出席する。戦中、戦後の一時期を除いて毎年授与されている。
 毎年1月中に日本芸術院の会員が候補者を推薦し、やはり会員で構成される選考委員会でさらに選考が行われる。選ばれるジャンルは日本画、舞踊、音楽、建築、彫塑、小説など幅広い。

 天気は晴れ。風が強く時々突風が吹く・・帽子が飛ばされる。最高気温は13℃と寒い・・この寒さは今日だけかな。
 今日は3月20日で、春分の日:昼と夜の長さが等しくなる日、といわれるが、実際は昼の方が少し長い。
 梅田川沿いの”サンシュユ”。葉が出る前に黄色の小さい花を咲かせ、枝先に花が満開だ。春の到来を知らせる。木全体を覆う花が早春の光を浴びて黄金色に輝くことから、別名に春黄金花(はるこがねばな)がある。
 秋に果実を付ける。果実はグミに似た楕円形で赤い色で光沢がある。この様子から、別名に秋珊瑚(あきさんご)がある。。江戸中期に朝鮮から渡来し、薬用植物として栽培された。今でもそのまま食べられ、滋養・強壮の薬効がある山茱萸酒を作る。名の”サンシュユ”は中国名「山茱萸」を音読みしたもの。茱萸とはグミのこと。
 サンシュユ(山茱萸 )
 別名:春黄金花(はるこがねばな)、秋珊瑚(あきさんご)、山茱萸(やまぐみ)
    Japanese cornel(ジャパニーズ・コーネル)
 学名:Cornus officinalis Siebold et Zucc
 ミズキ科ミズキ属
 原産地は中国・朝鮮、薬用植物として
  江戸中期(享保七年:1722年)に朝鮮から渡来
 落葉小高木
 開花時期は2月~4月
 秋(11月頃)にグミのような赤い実に熟す


がん10年生存率57%に、技術進歩で改善続く

2020-03-19 | 健康・病気
 国立がん研究センターはがんと診断された人の10年後の生存率を発表した(3月17日)。
 2003~06年にがんと診断された人の10年後の生存率は、がん全体で57.2%だった。昨年の集計に比べて0.8ポイント上昇し、データを取り始めた1990年代末から伸び続けている。特定のがん細胞を狙い撃ちする分子標的薬の登場や、早期発見につながる診断技術の進歩が貢献したとみられる。
 10年生存率の発表は5回目で、全国約20のがん専門病院で診断、治療を受けた約8万人を集計した。調査を担当した千葉県がんセンター研究所の永瀬浩喜所長は「最新の研究や治療法の進歩によって生存率が上がっていることが示された。今後も、がんゲノム医療やオプジーボをはじめとする『免疫チェックポイント阻害剤』の効果で上昇するだろう」と話した。
 また2009~2011年にがんと診断された約14万3千人の5年生存率は、がん全体で68.4%で、前年集計よりも0.5ポイント高かった。
 部位別で生存率(10年生存)が高かったのは前立腺がん(97.8%)乳がん(85.9%)甲状腺がん(84.1%)。最も低かったのは膵臓(すいぞう)がん(5.3%)で、肝臓がん(15.6%)胆のう胆道がん(18%)が続いた。
 ◆がん生存率
 がんと診断された人が、一定期間経過した後に生存している割合。がん医療を評価する指標の一つで、100%に近いほど治療の効果が高いことを示す。がんの部位や進行度、治療法ごとに集計し、がん以外の死亡の影響を除いた「相対生存率」がよく使われる。
 早期発見や治療効果の検証に役立てる目的で長期間の健康状態を見る10年生存率や、新たな治療法の影響を短期間に探る3年生存率などがある。
 ◆主ながんの5年・10年生存率(%)
        (国立がん研究センター)
 5年生存率は2009~2011年
 10年生存率は2003~2006年に診断された患者
       5年   10年 (1期 2期 3期 4期)
 前立腺がん 100.0   97.8(100.0 100.0 94.7 53.8)
 乳がん   93.7   85.9(97.6 87.4 61.9 18.3)
 甲状腺がん 92.4   84.1(99.2 100.0 94.7 53.8)
 子宮体がん 96.4   81.2(92.4 87.0 58.8 12.1)
 子宮頸がん 76.8   68.8(88.6 67.6 47.7 18.3)
 大腸がん  76.8   67.8(92.9 81.0 73.5 12.7)
 胃がん   74.9   65.3(90.7 54.9 35.5 4.4)
 腎臓など  69.4   64.0(90.9 68.7 52.4 13.1)
 卵巣がん  66.2   45.3
 肺がん   45.2   30.9(4.8 28.4 12.0 1.7)
 食道がん  46.0   30.9(68.3 33.7 21.3 7.1)
 肝臓がん  37.0   15.6(27.3 17.5 6.7 2.4)
 胆のう胆道がん 28.6 18.0
 膵臓がん  9.9    5.3
 ◆調査結果
 今回の詳しい調査結果の閲覧は、
 全国がんセンター協議会のウェブサイト(http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/)

 今日の天気は晴れ。心は曇りor雨・・プリンターが壊れ、新機を購入した・・。
 散歩で見つけた”ヒマラヤユキノシタ”の花。大きなシャモジの様な丸い葉で、花茎を伸ばしてピンク色の花径1cm程の花が纏まっている。
 名(ヒマラヤユキノシタ:ヒマラヤ雪ノ下)の由来は、ヒマラヤやシベリア地方に多く、寒さに強く、雪でも常緑の葉だから、の説がある。葉は革質で固く、タンニンを多く含むので、ロシアではこのタンニンを製革に使用する・・とか。
 ”ヒマラヤユキノシタ”が属するユキノシタ科ベルゲニア属は10種程が知られており、種間雑種も多い。”ヒマラヤユキノシタ”はベルゲニア・ストレイチー(Bergenia stracheyi)に付けられた名であるが、交雑種も含めてヒマラヤユキノシタと呼んでいる事が多い。
 ヒマラヤユキノシタ(ヒマラヤ雪ノ下)
 別名:大岩軍配(おおいわぐんばい)、桜鏡(さくらかがみ)
   ウインター・ベゴニア(Winter begonia) 、ベルゲニア(Bergenia)
 学名:Bergenia stracheyi
 ユキノシタ科ベルゲニア属
 耐寒性常緑多年草
 原産地はヒマラヤ山脈周辺、明治初期に渡来
 開花時期は3月~5月
 花色には赤色・白色がある


廃水中などに含まれるアンモニウムイオンの炭酸塩類から尿素を合成

2020-03-18 | 科学・技術
 東京工業大学物質理工学院応用化学系の眞中雄一准教授と本倉健准教授らは、有機塩基触媒を用いることで廃水中などに含まれるアンモニア(以下アンモニウムイオン)の炭酸塩類から尿素を合成できる。従来の下水処理場のアンモニウムイオンの無害化処理(窒素への分解)とは異なり、アンモニウムイオンを有用物質に変換することにより、資源として用いることができるようになる。
 この研究結果は有機塩基触媒が触媒反応中にイオン交換反応を介することが特徴であり、高価な遷移金属を含まない有機合成的なアプローチにより達成された。今後は廃水処理のプロセスとの組み合わせを検討する。合成された尿素は、様々な化成品の原料となる基礎化成品として活用可能であり、近年は固体で安定な水素キャリアとしても注目されている。
 研究成果はネイチャーリサーチ社の科学誌「Scientific Reports」に2月18日に公開。
 要点
 〇有機塩基触媒を用いてアンモニアの炭酸塩類から尿素を合成することに成功
 〇水質汚濁防止法の有害物質である廃水中のアンモニアを資源として再利用可能
 〇尿素は基礎化成品として活用、固体で安定な水素キャリアとしても注目される
 研究成果
 眞中准教授らは有機塩基触媒を用いることでアンモニウムイオンの炭酸塩類から尿素を合成できることを見出した。特に原料にカルバミン酸アンモニウムを用い、有機塩基触媒として1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene(ジアザビシクロウンデセン)を用いて反応条件を最適化すると、最大35%の収率で尿素を得ることができた。
 尿素は一般的には、ガス状態のアンモニアと二酸化炭素を150 ℃以上の高温・20気圧程度の高圧の条件下におくことで合成されている。今回の発見では、アンモニアよりも反応させにくいと考えられているアンモニウムイオンを用い、70~140 ℃で加圧することなく尿素の合成に成功した。
 一定の強さ以上の塩基性(今回の検討ではアセトニトリル中での共役酸のpKaが20以上)を持つ有機塩基触媒を用いることで、有機塩基触媒とアンモニウムイオンがイオン交換を起こし、反応が進みやすい中間体が生成することが効率的な反応の鍵となっていると推測される。
 また、カルバミン酸アンモニウム以外の炭酸塩として、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムを用いても尿素を合成することに成功した。これらは、アンモニウムイオンの存在する水中に二酸化炭素を吹き込むことで生成される化合物群であり、アンモニウムイオンの安価な濃縮の一助になると考えられる。
 研究の背景
 廃水処理場では、悪臭物質であり劇物でもあるアンモニア(もしくはアンモニウムイオン)を硝化・脱窒という工程を経て無害な窒素分子に変えている。この処理方法では、無害化のためにエネルギーを多く投入しており、副生成物として温室効果ガスの亜酸化窒素が発生する可能性もある。
 一方で見方を変えると、アンモニウムイオンは、窒素分子の強固な三重結合が破壊された形であり、窒素分子に戻して三重結合を復活させるよりも、アンモニウムイオンの状態で何らかの分子に変換できると、投入エネルギー的に有利になる。つまり、アンモニウムイオンを活かした有機合成が可能になると、エネルギー削減をしつつ、有害物質を減少させ、有用な物質を供給することが可能になる。
 展望および意義
 今回の研究では、有機塩基触媒を用いることでアンモニウムイオンからでも有用な分子が合成できることを示した。実際の廃水処理に組み込むために適した触媒の形状や反応系、反応率の向上などの検討を経て、アンモニウムイオンの活用を行う予定である。また、今回合成した尿素以外の付加価値の高い分子への転換も検討していく。
 ◆用語説明
 〇有機塩基触媒
 触媒として働く有機塩基。触媒とは、化学反応に添加することで、反応速度を変化させる物質。その際に自身は変化しない。有機塩基とは塩基性を示す有機化合物。
 〇アンモニウムイオン
 NH4+で表されるイオン。アンモニア(NH3)にプロトン(H+)が付加することで生成される。アンモニアが水に溶けると一部がアンモニウムイオンになる。
 〇炭酸塩類
 本稿では炭酸塩類として炭酸イオン、重炭酸イオン、カルバミン酸イオンを含む塩と定義する。
 〇尿素
 哺乳類の尿中に含まれる窒素化合物。体内でタンパク質が分解して生成される。化学式(NH2)2CO 。工業的にはアンモニアと二酸化炭素とから合成される。無色の柱状結晶で、肥料・尿素樹脂・医薬・接着剤の原料となる。1828年に初めて化学的に合成された有機化合物として有名。
 〇遷移金属
 周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の総称。
 〇カルバミン酸アンモニウム
 カルバミン酸イオンとアンモニウムイオンから構成される塩。アンモニアと二酸化炭素から尿素を合成する際の合成中間体と考えられている。
 〇1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene
 強塩基性を示すアミジン骨格(炭素に窒素が二重結合で一つ、単結合で一つ結合した構造)を持ち、かつ環状の分子形状と大きさから求核性が低い有機塩基化合物。有機化学の反応に用いられる。
 〇塩基性
 塩基として働く性質。塩基とは、OH-を放出する物質(アレニウスの定義)、プロトンを受け取る物質(ブレンステッド-ローリーの定義)、電子対を与える物質(ルイスの定義)などにより決められる。
 〇pKa
 酸解離定数。酸の強さを表す値で、小さいほど強力な酸になる。共役酸のpKaが大きいほど強力な塩基になる。
 〇硝化・脱窒
 廃水中の窒素化合物を微生物の力で窒素分子に変換する過程の名称。硝化過程では、アンモニアを亜硝酸に変え、亜硝酸を硝酸に変える。脱窒過程では硝酸もしくは亜硝酸を窒素分子へ変え、2つの過程を併せて窒素化合物を無害化する。

 お天気は晴れ。3月も半ばとなると春が来た、と感じる。今日の最高気温は15℃・・温かくなってきたけど、風が強いな。
 お隣の畑を見たら、雑草の中に花が咲いている。”ホトケノザ:仏の座”の花だ。
 名(ホトケノザ:仏の座)の由来は、対生する半円形の葉が茎を囲む様子を蓮華座(れんげざ)に見立てたことからと言う。花が付く茎の上では葉が茎を抱いて葉柄がないが、下の方の葉は長い葉柄がある。葉が段々と付いているので、三階草(さんがいぐさ)とも呼ばれる。
 ホトケノザ(仏の座)
 別名:三階草(さんがいぐさ)
 シソ科オドリコソウ属
 一年草あるいは越年草
 古い時代にヨーロッパから渡来した帰化植物と考えられている
 開花時期は2月~6月(秋にも咲く)
 上部の葉脇に長さ2cmほどのピンク色で唇形状の花を付ける
 この花より小さくて濃赤色をしたつぼみの様に見える花がある。これは閉鎖花と呼ばれるもので、開花することなく受粉して結実する
 白色の花色もあり、”シロバナホトケノザ”と呼ばれる


安定で高活性な白金の単原子触媒の開発に成功

2020-03-16 | 科学・技術
 東京工業大学 元素戦略研究センター長の細野秀雄栄誉教授、同センターの叶天南特任助教、北野政明准教授らは、カルシウムとアルミニウムの酸化物C12A7(12CaO・7Al2O3)がサブナノサイズのケージから構成されていて、その最表面ではケージ構造が破れていることに着目し、その部分に白金原子を入れ込んで安定的に固定した単原子触媒の開発に成功した。
 遷移金属の単原子触媒は、原子の周りの結合が不飽和なために、バルクの金属に比べて圧倒的に触媒活性が高いことや、金属原子の利用効率が極めて高いことから、活発な研究がおこなわれている。しかし、高温にすると担持された単原子金属が凝集してしまい、活性が低下することが問題であった。本研究成果は、この課題を克服するものである。
 この成果は英国科学誌Nature Communicationsにて2月24日にオンライン公開。
 要点
 〇白金原子を担持体表面のケージ構造の破れ部分に入れ込むことで安定に固定した、新たな単原子触媒の開発に成功
 〇従来の単原子触媒で問題とされていた、高温で原子が凝集してしまうという欠点を克服
 〇担持体として12CaO・7Al2O3を用いることで、CaOやAl2O3より桁違いに高い活性と安定性を実現
 背景
 触媒として有効に機能する物質には、白金やロジウムなど高価な貴金属が多い。そうした金属の使用量を大幅に減少させる方法として、単原子として固体表面に固定(担持)する単原子触媒が熱心に研究されている。この単原子触媒は、バルクの金属と比べて原子の周りの結合が不飽和なので、高い活性が得られる。しかしほとんどの場合、担持された単原子は温度をあげると凝集し、通常の金属ナノ粒子触媒と同じになってしまうという欠点がある。いかにして単原子金属を固体表面に安定的に固定するかが技術的課題となっていた。
 本研究のアプローチ
 この課題に対して本研究では、単原子がちょうど収まる大きさの極小のケージに、目的とする金属の単原子を入れ込むことを目指した。対象とする金属には、最も代表的な貴金属触媒である白金を、そして触媒性能を左右する、白金を担持する固体(担持体)には、12CaO・7Al2O3(以下「C12A7」)を選択した。C12A7は、直径がサブナノメートルサイズの正に帯電したケージが3次元的に繋がった結晶構造をしており、これまでの基礎的研究によって、その最表面はゲージが破れた構造をしていることがわかっている。今回の研究の鍵となったのは、この破れたケージに白金原子を入れ込むことであった。そこで、[PtCl4]2-というアニオンの大きさが、破れたケージの入り口の大きさよりも少し小さいことに注目し、まずこのアニオンをケージの入口に入れ込んで、その後熱還元によってPt原子にして、単原子触媒を調製する方法を考えた。
 単原子白金触媒の確認
 調製した触媒について、高分解能電子顕微鏡(STEM)と広域X線吸収微細構造(EXAFS)によって、目指した通りに白金原子がC12A7表面に担持されていることが確認された。ケージのサイズより大きなPt錯体分子アニオンを用いた場合には、このような単原子構造は確認できなかった。また、通常の単原子触媒では金属の凝集が生じてしまう600 ℃という高温で加熱処理を行っても、単原子構造が保持されていることがわかった。
 触媒性能
 触媒反応としては、工業的に重要な様々な置換基を有するニトロベンゼン分子のNO2基の選択的還元を検討した。この水素化反応では、水素分子の開裂が律速段階となるが、C12A7骨格の酸素イオンによって配位された白金原子の環境は、水素が2つの水素原子になるよりも、H+とH-にヘテロリティックに解離するのに有利であると考えられる。実験では予想通り、分極したNO2基が H+とH-によって選択的に水素化され、目的分子が高収率で得られた。また、触媒の活性サイトの性能を示す指標であるTOF(Turnover Frequency)は、C12A7の構成成分であるCaOやAl2O3の上に担持した場合よりも桁違いに高い活性を示し、さらにこの触媒が熱的にも格段に安定なことがわかった。
 今後の展開
 C12A7は、市販のアルミナセメントの主な構成成分の一つで、安価でしかも環境調和性に優れている。これまでの走査トンネル顕微鏡観察による表面構造に関する研究で、ケージの破れを修復する処理方法も確立されている。また、表面再構成を伴う電子状態の変化についても研究が既に終了している。よって今後は、用途に応じた単原子触媒の設計が可能になる段階に進んでいけると期待している。本研究は、ありふれた元素からなる安価な物質と高価な貴金属の効率的利用を可能にしたものであり、「元素戦略」に対応した成果だといえる。
 ◆用語説明
 〇広域X線吸収微細構造(EXAFS)
 原子によるX線の吸収端から50 eV~1,000 eV程度までの範囲に観測される振動のこと。吸収端を与える原子から飛び出した電子(光電子)があちこちに衝突した結果、電子の波が重なりあって生じる。これを解析することで、どんな元素が、どのくらいの距離に、どのくらい存在するかなどの情報を得ることができる。
 〇HAADF-STEM像
 細く絞った電子線を試料に走査させながら当て、透過した電子のうち、大きな角度で散乱したものを環状の検出器で検出した像。原子番号に比例したコントラストが得られる。この試料ではカルシウム、酸素、アルミニウムに比べ、白金の像が強調されて観測される。
 〇TOF(Turnover Frequency、触媒回転数)
 1つの触媒サイトにおいて、単位時間あたりに生成物に変換できる分子数の最大値を表す。活性サイト当たりの触媒の活性の大きさの指標。
 ◆白金(Pt)の埋蔵量はわずか8万t
 Ptは希少金属であり,世界全体の推定埋蔵量は約8万t程度と見られる。価格も3000円/gと高価な貴金属である。
 自動車向けの現状の白金使用量のままでは、1000万台の燃料電池車を作るとなると、世界中の白金を使っても足りない、という試算されている。

 天気は晴れ。少し風が強く寒い。
 コンクリート塀際の小さな花壇。”ミチタネツケバナ”が小さな白い花を付けている。茎に沿って鋭角に細長い棒状の実(長角果)、小葉は小さく楕円形から円形。
 タネツケバナ(種漬花)の名の由来は、種籾(たねもみ)を水に浸ける頃に花が咲くからとの説と、実が熟すと種を四方に飛ばして発芽させて繁殖力が強から(種付花)の説がある・・前者説が有力かな。田圃などの湿った所で多く見られるのは”タネツケバナ(種漬花)”、道(路傍)などのやや乾燥した所で育つのは”ミチタネツケバナ(道種漬花)”。見た花は、雄蕊が4本で、茎にほとんど毛がないので、”ミチタネツケバナ(道種漬花)”・・と思う。
 ミチタネツケバナ(道種漬花、路種漬花)
 アブラナ科タネツケバナ属
 越年草または一年草
 ヨーロッパ原産の帰化植物
 渡来したのは新しく、1970年代と言われる
 タネツケバナ(種漬花)は江戸時代に渡来したと思われる
 開花時期は2月~3月
 花は小さく白色、アブラナ科特有の四弁花(十字花)
 果実は直立して花を挟んでいる


次世代のFPGAチップにトランジスタを用いず12倍の高密度化実装に成功

2020-03-15 | 科学・技術
 大阪大学大学院情報科学研究科の橋本昌宜教授らの研究グループは、新ナノデバイスであるビアスイッチをFPGA(Field Programmable Gate Array)のプログラム機能実現に利用することで、FPGAチップの12倍の高密度化実装に世界で初めて成功した。また、AIアプリケーションに適したFPGAアーキテクチャを開発し、5倍のエネルギー効率向上が期待できること、半導体微細プロセスの採用により継続的な性能向上が期待できることを明らかにした。
 これまでのFPGAは、プログラム機能の実現にトランジスタを多数利用しており、チップの低密度化、低性能化を招いていた。今回、橋本教授らの研究グループは、トランジスタを用いずに配線層内に配置したビアスイッチを用いてプログラム機能を実現するビアスイッチFPGAチップの開発に成功し、12倍の実装密度向上を達成した。最小線幅65nmのシリコンCMOSプロセスを用いた試作FPGAチップに所望のプログラムができることを確認した。最先端AIアルゴリズムを短期間で高性能に実装できるプラットフォームとしての利用が期待される。
 本技術の詳細は、2月19日(米国太平洋時間)に米国サンフランシスコで開催される半導体技術に関する最大の会議である「国際固体素子回路会議ISSCC 2020(IEEE International Solid-State Circuits Conference 2020)」で発表。
 ポイント
 〇新ナノデバイスをFPGAのプログラム機能実現に利用することで12倍の実装密度向上に成功
 〇FPGAは、ユーザーが論理機能を自由にプログラムできる半導体チップである。機能実現までに必要な設計期間が短く、日進月歩で開発が進むAIアプリケーションの実現プラットフォームとして注目
 〇従来のFPGAでプログラム機能実現に必要だったシリコン面積を不要に
 〇最先端AIアルゴリズムの短期間・高性能実装プラットフォームとして期待
 研究内容
 これまでFPGAは、短期間で機能実現でき、少量多品種の製品に適するという特徴により利用拡大が進んできた。しかし、チップ内のプログラミング機能の実現に多数のトランジスタを利用するため、チップの実装密度が低く、動作速度や消費電力などの性能が低いという課題があった。
 橋本教授らの研究グループでは、ビアスイッチと呼ぶ新しい不揮発スイッチデバイスの開発を進めてきた。今回、ビアスイッチを用いたFPGAの試作に世界で初めて成功し、従来のトランジスタでプログラム機能を実現するFPGAに対して、12倍の実装密度向上を実証した。実装密度はFPGAチップの価格に直結するため、大幅なコスト低減が期待できる。また、プログラム機能の実現にトランジスタを利用しなくなったため、全てのトランジスタをコンピューティングに利用できるようになり、高いコンピューティング性能の実現も可能となる。最小線幅65nmのシリコンCMOSプロセスを用いて製造したFPGAチップをプログラミングし、期待通りの機能が実現できていることを確認した。ビアスイッチが次世代のFPGAに適したデバイスであることを明らかにした。
 さらに、AIアプリケーションが効率的に実現できるFPGAアーキテクチャを開発し、その性能予測を行った。トランジスタを用いてプログラミング機能を実現したFPGAに対して、5倍のエネルギー効率向上が可能であることもわかった。最小線幅7nmのシリコンCMOSプロセスで製造した場合、さらに11倍のエネルギー効率向上が期待できる。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 本研究成果により、AIアプリケーションを実現するプラットフォームとして期待が集まるFPGAデバイスの性能並びにエネルギー効率を向上させることができる。さらに高密度化により、FPGAデバイスの低価格化も期待できる。
 ◆用語解説
 〇ビアスイッチ
 配線層内に実現された不揮発スイッチ(原子スイッチ)とプログラム用の選択デバイス(バリスタ)からなるデバイス。プログラムを制御するためのアクセストランジスタが不要のため、配線層内に小面積で実装できる特徴を持つ。
 〇実装密度
 チップの単位面積あたりにプログラムできる量。ユーザーが論理機能を自由にプログラムできる半導体チップ。機能実現までに必要な設計期間が短く、日進月歩で開発が進むAIアプリケーションの実現プラットフォームとして注目が集まっており、各社が提供するクラウドサービスでも活用が進んでいる。
 〇原子スイッチ
 スイッチ機能と不揮発メモリ機能を合わせ持ったスイッチデバイス。金属原子が固体電解質内を移動してスイッチするため、低抵抗で低入力容量という特徴を持つ。
 〇バリスタ
 格子構造上に配置されたビアスイッチアレイに対して、選択したビアスイッチのみをプログラムするために導入された素子。低電圧印加時に抵抗が高く、高電圧印加時に抵抗が低くなる。
 ◆FPGA
 FPGA(英: field-programmable gate array)は、製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路であり、広義にはPLD(プログラマブルロジックデバイス)の一種である。現場でプログラム可能なゲートアレイであることから、このように呼ばれている。
 特定の処理を実行する論理回路を実装したICチップにはASIC(Application Specific IC)もあるが、これは製造時に固定的に回路を形成するもので、消費者向け電子機器など大量生産する場合には一個あたりの製造コストはASICの方が低くなるが、例えば企業内の特定の業務のために数十台、数百台のコンピュータに組み込むといった用途ではFPGAのほうが低コストとなる。また、FPGAは回路データを作成すれば即座にチップに実装して実行してみることができるが、ASICは通常の半導体製造工程で生産されるため設計が完了してから製品が完成するまで最短で数週間かかるという違いもある。電子製品の開発・試作段階ではFPGAを用い、本生産時には同じ回路設計でASICを製造するといった使い分けが行われることもある。

 天気は晴れ、雲が少ない。気温は最高気温11℃、桜はまだ咲かない。
 畑に作った花壇、菊を昨年植え替えた。その中に、1輪”クロッカス-ハナサフラン”が咲いている。どこから紛れ込んだのか?。
 ”クロッカス(Crocus)”の名は、ギリシャ語の”croke:クロケ、糸の意味”からで、雌しべが糸状に長く伸びることに由来する。雌しべは薬用やスパイスとして用いられるが、このクロッカスは、春咲きで観賞用だけに栽培されるものである。因みに、雌しべを用いるのは、クロッカスの一種の”サフラン”で、晩秋に咲くので、秋咲きクロッカスの別名がある。
 クロッカス
 別名:花サフラン、春サフラン
 アヤメ科クロッカス属
 耐寒性秋植え球根(春咲き球根)
 原産地はヨーロッパのアルペン地域
 開花期は2月~4月
 花色は白・黄・紫・藤、網目状に模様が入る絞り咲きもある