国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称NEDO)と関西大学は、高機能な有機ケイ素材料を製造するための酸化鉄ナノ粒子触媒を開発した(4月15日)。
従来の白金触媒からの代替により、シランカップリング剤などの有機ケイ素材料の製造プロセスの大幅な省エネルギー化とコスト低減を実現する。開発した触媒は、少量でも高い活性を持つほか、簡便な操作によるリサイクルや、温度変化による反応制御が可能である。また、自動車の低燃費タイヤ用添加剤向けなど、さまざまな種類のシランカップリング剤の合成触媒として使用することもできる。
1、概要
シランカップリング剤やシリコーンなどの有機ケイ素材料は、汎用的な炭素系ポリマー材料に比べて、耐熱性や耐寒性、耐光性、電気絶縁性、離型性、撥水性に優れており、シャンプーや化粧品、キッチン用品、コンタクトレンズ、低燃費タイヤ、LED電球などの生活に身近な製品から、絶縁性グリース、剥離剤、シーリング剤、コーティング剤などの工業製品まで、さまざまな場面で使用されてる。
現在、有機ケイ素材料の製造プロセスには、一般的に白金触媒を使用しているが、白金が高価な希少金属であること、残留した白金による材料性能の低下などを理由に、製品用途が制限されることが課題となっていた。
NEDOのプロジェクト「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」において、関西大学は、有機ケイ素材料の高機能化と安価提供を実現させる革新的な触媒技術の開発に取り組んできた。今般、高機能な有機ケイ素材料を製造するための酸化鉄ナノ粒子触媒を開発した。従来の白金触媒からの代替により、シランカップリング剤などの有機ケイ素材料の製造プロセスの大幅な省エネルギー化とコスト低減を実現する。
開発した触媒は、少量でも高い活性を持つほか、簡便な操作によるリサイクルや、温度変化による反応制御が可能である。また、自動車の低燃費タイヤ用添加剤向けなど、さまざまな種類のシランカップリング剤の合成触媒として使用することもできる。
2、酸化鉄ナノ粒子触媒
開発した酸化鉄ナノ粒子触媒は、酸化鉄がクラスター化した直径数nmのナノ粒子の周囲を、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)で被覆した構造となっている。
触媒反応過程におけるナノ粒子触媒の凝集と会合、構造と組成などの変化が触媒活性に与える影響を詳細に解析することで、有機ケイ素材料の合成法の中で最も一般的なヒドロシリル化反応に高い活性を持たせることに成功しました。一般的な触媒で要求される保護剤、分散剤、還元剤を必要とせず、DMF溶液中での加熱攪拌のみの操作で反応が進行するため、触媒合成が容易に行えるという特徴がある。
3、有機ケイ素材料製造プロセスへの応用
有機ケイ素材料の製造で課題となっていた温度変化による反応制御に関して、60℃の温度では反応せずに100℃で反応が効率的に進行するという、温度刺激応答型触媒として利用できる特徴がある。これにより、白金など従来のヒドロシリル化触媒を使ったプロセスで課題となっていた過剰反応、副反応、変色などを効率的に抑制することができ、触媒を活用した生成物反応を、高い安定性で高度に制御することができる。
有機ケイ素材料の製造で生成する目的反応物と副生成物を、ヘキサン溶液を用いた抽出操作で簡便に分離、回収できるため、リサイクルによる触媒コスト削減につなげられるほか、生成物への触媒残留(混入)も抑制でき、有機ケイ素材料の性能向上も図れます。なお、触媒の抽出分離により、これまで多大なエネルギー消費の要因になっていた有機ケイ素材料の蒸留分離が不要となるため、大幅な省エネルギー化と製造コストの低減が可能になる。
4、今後の方針
今後、実用化に向けて、さらに高度な有機ケイ素製造プロセスの制御が可能となるナノ粒子触媒の開発を進めていく。
◆注釈
〇シランカップリング剤
シランカップリング剤は分子内に有機材料と反応結合する官能基と、無機材料と反応結合する官能基とを同時に有する有機ケイ素化合物で、一般的な構造式は、Y-R-Si-(X)3で示される。Yは有機材料と反応結合する官能基で、ビニル基、エポキシ基、アミノ基などが代表例として挙げられる。Xは無機材料と反応する官能基でアルコキシ基、アセトキシ基、クロル原子などが挙げられる。
シランカップリング剤は有機材料と無機材料の界面における接着性の改良に効果的で、ガラス繊維強化プラスチックの強度向上、性能改良などに利用されている。近年では、プリント基板、人工大理石、プラスチック磁石、生理活性物質を固定したシリカなど、無機-有機ハイブリッド材料の製造に利用されている。
〇シリコーン
シロキサン結合(-Si-O-Si-)を主骨格とし、ケイ素原子にさらにアルキル基、アリール基などの有機基が結合した高分子化合物の総称。ガラスや石英などの無機物もこの結合を主骨格とする。一般的な炭素同士のC-C結合や炭素と酸素のC-O結合よりも結合のエネルギーが大きく、化学的に安定な構造であり、これがシリコーンの持つ耐熱性、耐候性につながっている。重合度、有機基、高次構造などにより、オイル、グリース、ゴム、樹脂などの形態をとる。耐熱性が高く、撥水性、電気絶縁性、耐薬品性に優れるため、電気・電子、自動車、化粧品・トイレタリー、建築・土木などさまざまな産業分野で使用されている。
〇「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」
概要:有機ケイ素工業が抱えるエネルギー面、コスト面の問題を解決し、安定的に高機能な有機ケイ素部材を提供するための革新的触媒技術と触媒プロセス技術の確立を目的として、砂からの有機ケイ素原料製造プロセス技術開発と、有機ケイ素原料からの高機能有機ケイ素部材製造プロセス技術開発を実施する。
実施期間:2012年度~2021年度。2012年度~2013年度は経済産業省、2014年度からNEDOプロジェクトとして実施中。
実施先:国立研究開発法人産業技術総合研究所、公立大学法人大阪 大阪市立大学、学校法人早稲田大学、国立大学法人群馬大学、学校法人関西大学、昭和電工株式会社、コルコート株式会社、信越化学工業株式会社
〇DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)
分子式C3H7NOの構造で、アミン臭を有する無色透明の液体である。水、エーテル、アルコール、ケトン、エステルなどに可溶な有機溶剤である。加熱すると分解し、一酸化炭素を発生させる。
〇ヒドロシリル化反応
不飽和結合(アルケンやアルキンは炭素間不飽和結合をもつ化合物)部位にヒドロシランのSi-H結合が付加し、C-Si結合ならびにC-H結合が形成する反応。この反応は通常は触媒を必要とする。代表的な遷移金属触媒として白金錯体であるSpeier触媒やKarstedt触媒が知られている。
天気は晴れ。気温は最高気温21℃程と暖かくはない。早朝の畑作業は、枝豆の苗を植える。
散歩道の沿いに植えられている”ヒメライラック”に花が咲き出した。花の近くに寄ると、とても良い香りがする。名(ヒメライラック)の如く、”ライラック”より花も房も小振りで木も小さい。和名は”ハシドイ”(ライラックと同属)より小さい(低木)ので”チャボハシドイ(矮鶏丁香花)”。
モクセイ科だから香りも花形も”キンモクセイ(金木犀)”に似ている。花色は違うけど、「春の金木犀」と呼ぶ方がいる。
ヒメライラック(姫ライラック)
別名:矮鶏丁香花(ちゃぼはしどい)
モクセイ科ハイドイ属(シリンガ属)
落葉低木、丈は1~1.5m位
原産地は中国
開花時期は4月~6月
円錐花序を出し、小花を密に付ける
花は先が4裂したラッパ形
花色は薄紅~濃紅色を見かけるが、白・青・紫色種もある
葉は円形に近い広楕円形で、葉柄を持ち枝に十字対生する