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   健康を歩いて増進

平均寿命と健康寿命

2020-02-29 | 日記・エッセイ・コラム
 後期高齢者になると、平均寿命が気になるが、健康寿命も気になる。
 ある食品会社のパンフレットを見ていたら、「平均寿命と健康寿命のギャップ」の記事が載っていた。
 ◇平均寿命と健康寿命
  (内閣府、平成30年版高齢者社会白書より)
  (健康寿命:介護を必要とせず自立して過ごせる期間)
 女性 平均寿命:87.14年
    健康寿命:74.79年 約12年
 男性 平均寿命:80.98年
    健康寿命:72.14年 約9年
 「健康寿命」は現代人にとっての共通の目標です。とくに日々の食生活の役割は重要です。・・とある。食生活のポイントは、高齢期では、栄養、とくにたんぱく質の不足の対策が必要。
 ◇野菜摂取量
 年代別野菜摂取量は350g(厚生労働省、健康日本21より)
 年代別 7歳~39歳 野菜摂取量250g
     40歳~  野菜摂取量250g~300g
     60歳~69歳 野菜摂取量300g~350g
 ◇たんぱく質の1日の摂取基準量
 日本人の食事摂取基準によると、一日に必要なたんぱく質は摂取エネルギーの13~20%が理想とされている。
 推奨量は、成人男性は一日60g、成人女性は一日50gとなっている。
 近年(2010年代)では、65~70gとなっているが、1975年~1995年では80g前後の摂取量であり、年々減少傾向にある。

 今日の天気は晴れ。最高気温8℃とか。風弱い、が寒い・・まだ春が来ない。
 アセビ”に釣鐘のような小さな花が咲いている。始めに白花が開き、次いで赤い花が咲く。”アセビ(馬酔木)”の花は基本的に白色だ。赤い花もあり、園芸種に、より赤みが強い花の”アケボノアセビ(曙馬酔木)””ベニバナアセビ(紅花馬酔木)”がある・・見たいね。
 ”アセビ”は、葉・花・樹皮に強い毒(神経毒-アセボトキシン)を持つ有毒植物である。”アセビ”を「馬酔木」と書くのは、牛馬が葉などを食べると麻痺(酒を飲んだ様な酩酊状態)するからと言う。
 名(アセビ)の由来にも、足廃(あしひ、あしい)や悪実(あしみ)からなどの説がある。足廃(あしひ)とは足が病気になった状態で、これも誤食による麻痺から。
 アセビ(馬酔木)
 別名:馬酔木(あしび)、馬酔木(ばすいぼく)
 学名:Pieris japonica
 ツツジ科アセビ属
 原産地は日本
 常緑広葉樹低木・中高木
 開花時期は3月~5月
 秋に花穂ができ、翌春に花が咲く、蕾から~開花までは期間が長い


妊娠中の食物繊維摂取は胎児の代謝機能の発達を促し、出生後、子の肥満になりにくい体質をつくる

2020-02-28 | 健康・病気
 東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学部門の木村郁夫教授らと慶應義塾大学薬学部の長谷耕二教授らの研究グループは、妊娠中の母親の腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が胎児の発達に影響を与えることによって、出生後の子の代謝機能の成熟に関与し、その結果、肥満発症の抑制に繋がることを明らかにした。周産期における母体の食生活や腸内環境の改善など、母体の栄養管理を介した先制医療や予防医学による新たな治療法の確立に向けて、今後、本成果の応用が期待される。本研究成果は、米国科学誌「Science」(2月28日付)に掲載。
 現状
 近年の抗生物質の使用拡大や、欧米食に代表される高糖質・高脂肪な高カロリー食、食物繊維の摂取不足のような食生活の変化は、腸内細菌叢に異常をきたし、その結果、肥満や糖尿病に代表される生活習慣病を含むさまざまな病気の罹患率を高めることが分かってきている。このように、成人の生活環境に対する腸内細菌叢の影響についてさまざまな報告がなされてきているが、胎児期での腸内細菌叢の影響に関してはあまり知られていませんでした。また、将来の健康や特定の病気への罹りやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定されるというDOHaD仮説に関しても、コホート研究等により、低出生体重児は成人期に糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病を発症するリスクが高い等の報告がされてきたが、その根底にあるメカニズムは未だ不明なままであった。
 本研究グループは、母体の腸内細菌叢が胎児の発達と出生後の疾患への感受性に及ぼす影響についてマウス実験により詳細な研究を行った。
 また、短鎖脂肪酸に代表される腸内細菌叢由来の代謝産物は、宿主のエネルギー源として利用されるだけではなく、シグナル伝達分子として脂肪酸受容体であるGPR41やGPR43のような宿主側の受容体を介して、宿主の生理機能にまで影響を及ぼす。我々は以前から、食由来成分や腸内細菌叢由来の代謝産物との相互作用を通じて、エネルギー代謝におけるこれら脂肪酸受容体の生物学的重要性を明らかにしてきた。
 研究成果
 本研究グループは、始めに、妊娠マウスを通常環境下、および無菌環境下で飼育した。分娩後は成長環境を同一にするために、両群の出生仔を通常環境下で仮親によって成育させた。離乳後、高脂肪食を摂取させたところ、 無菌母親マウスの仔は、成長に伴って重度の肥満になり、高血糖・高脂血症などのメタボリック症候群の症状を示した。また、妊娠中に食物繊維をほとんど含まない餌を与えた母親マウスの仔でも、同様な症状が観察された。一方で、食物繊維を豊富に含む餌を妊娠母親マウスに与えた場合には、生まれてきた仔マウスは肥満になりにくいことが分かった。このとき、母体の腸内細菌によって食物繊維が分解されて、短鎖脂肪酸が多く産生されることで、その一部は血液を介して胎児に届けられていることが分かった。
 そこで、無菌飼育した妊娠マウスや低食物繊維の餌を与えた妊娠マウスの餌に、短鎖脂肪酸の1つであるプロピオン酸を補充したところ、生まれてきた仔マウスの肥満が抑制された。このことから、妊娠中の母親の腸内細菌叢が産生する短鎖脂肪酸は、生まれてきた仔の肥満を予防することが分かった。
 興味深いことに、胎児の交感神経、腸管、膵臓には短鎖脂肪酸の受容体であるGPR41とGPR43が高発現していました。胎児は腸内細菌を持たないため、自分では短鎖脂肪酸を多く作ることはできない。よって、胎児組織のGPR41とGPR43は、母体の腸内から届けられた短鎖脂肪酸を感知していると考えられる。短鎖脂肪酸によって胎児のGPR41とGPR43が活性化すると、神経細胞、GLP-1陽性の腸内分泌細胞、膵β細胞の分化を促進することが分かった。その結果として、生後の仔の代謝・内分泌系が正常に成熟し、成長時のエネルギー代謝を整えることで、肥満になりくい体質を作ることを明らかにした。
 今後の展開
 本研究により、妊娠中の母体の腸内細菌叢は、短鎖脂肪酸を産生することにより、胎児の短鎖脂肪酸受容体を介して、出生後、子の肥満に対する抵抗性を与えることを明らかにした。これらの発見は、妊娠中の母体の腸内環境が、生活習慣病を防ぐために子孫の代謝プログラミングの決定に重要であることを示している。したがって、今回の発見は、母体の腸内環境と子の生活習慣病というDOHaD仮説の新たな連関を提唱するものである。
 また、本研究の成果は、母体への食事介入や栄養管理を介した先制医療や予防医学、更には腸内代謝産物や、その生体側の受容体を標的とした新たな代謝性疾患の治療薬の開発に寄与する可能性が大いに期待される。
 ◆用語解説
 〇DOHaD仮説
 Developmental Origins of Health and Diseaseの略。胎児期や生後直後の健康・栄養状態が、成人になってからの健康に影響を及ぼすという概念のこと。
 〇コホート研究
 介入を行わず対象者の生活習慣や疾患などを一定期間に渡り調査・観察する「観察研究」の一つ。
 〇短鎖脂肪酸
 炭素数6以下の脂肪酸の総称。主に酢酸、プロピオン酸、酪酸がありエネルギー源や脂肪合成の基質として使用される。最近では、受容体を介したシグナル分子としての作用やエピジェネティック(DNAの配列変化によらず遺伝子発現を制御するシステム)な作用なども報告されている。
 〇脂肪酸受容体
 GPCR(G蛋白質共役型受容体:G-protein coupled receptor)群の一つ。脂肪酸をリガンドとする細胞膜を7回貫通する細胞膜上受容体の一つであり、三量体のGタンパク質を介して細胞内にシグナルを伝達する。短鎖脂肪酸受容体(GPR41やGPR43)、中鎖脂肪酸受容体(GPR84)、長鎖脂肪酸受容体(GPR40やGPR120)が知られている。
 〇無菌環境
 空気中の細菌や宿主の共生細菌が存在しない環境のこと。
 〇GLP-1
 Glucagon like peptide-1の略。腸内分泌細胞のL細胞から分泌される腸管ホルモンの一種であり、摂食調節やインスリン分泌の促進に関与する。
 〇膵β細胞
 膵臓のランゲルハンス島(島状に散在して内分泌を営む細胞群)内に局在するインスリン分泌細胞のこと。グルコース濃度に応じてインスリン分泌を促す。
 〇代謝プログラミング
 胎児期や生後早期などの臓器形成・成熟の感受性が高い時期における栄養環境などにより、代謝システムの形成に影響を及ぼすこと。

 今日は2月28日。でも今年は閏年(うるうどし)だから明日1日(2月29日)がある・・得したのか?損したのか?・・と考えてサリーマン生活を送っていた。
 天気は晴れ~曇り、朝はチラチラと小雪が舞う。
 今日も畑。”オオイヌノフグリ”の花が咲き出している・・春近し。
 緑葉が絨毯の様に広がり、これに白青の水玉模様を散らした様に花が咲く。花は4枚の萼・4枚の青紫色の花弁(根元で纏まり、一つの花冠となる)で、ゴマノハグサ科クワガタソウ属の特徴である、2本の雄しべ・1本の雌しべ。
 ”オオイヌノフグリ”は、花が小さい”イヌノフグリ”より大きい花なので名付けられたようだ。”イヌノフグリ(犬陰嚢)”は”オオイヌノフグリ”と同科同属で、春に薄桃色の小さな花(径3mmほど)が咲く。かつては道端などで普通に見られた雑草であったが近年大幅に減少し、レッドデータブックでは絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)に指定されている。
 ”イヌノフグリ”の名は、二つ付いた果実の様子が犬のフグリ(陰嚢:いんのう)に似ているから・・とても小さなフグリ。
 オオイヌノフグリ(大犬陰嚢)
 別名:天人唐草(てんにんからくさ)、星の瞳(ほしのひとみ)、瑠璃唐草(るりからくさ)
 英名:Bird's eye
 学名:Veronica persica Poiret
 ゴマノハグサ科クワガタソウ属
 越年草
 ヨーロッパ原産、明治初期に渡来した帰化植物
 開花時期は2月~6月
 花色はコバルトブルー、花径は8mm程
 花は日が当たると広げ、日が陰ると閉じる


2019年の韓国合計特殊出生率は0.92、OECDで唯一の「1人未満」国家

2020-02-27 | 社会・経済
 韓国統計庁が発表した韓国の2019年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)は0.92となった(2月26日発表)。2018年に初めて1.0を下回り(0.98)世界最低水準となったが、低下に歯止めがかからない。
 韓国の出生率は80年代に2.0を割り込み、2018年には0.98と、初めて1.0を下回った。経済協力開発機構(OECD)平均(17年=1.65)を大きく下回り、日本(2018年=1.42)と比べても格段に低い。
 2019年に生まれた子どもの数は前年比7.3%減の30万3100人と、4年連続で前年を下回った。女性1000人あたりの出生児数は20代が前年比13%減、30代前半が同6%減と、若い世代で大きく減っている。
 韓国の出生率が低いのは複合的な要因が絡んでいる。漢陽大の河教授は「出産すると職場復帰しにくい労働環境、重い教育費負担、住宅価格の高騰などで、女性が出産をためらっている」と指摘する。女性の社会進出が進む一方、育児との両立のハードルはまだ高い。実家に支援を仰ぐか、高額のベビーシッターを雇う必要がある。学歴を重視する韓国では塾などの習い事にかかる費用も家計を圧迫する。景気減速も出生率低下に拍車をかけている。河氏は「若年層の所得の伸びは40代後半~50代に比べて低い。造船や自動車部品など製造業では子育て世代の30~40代がリストラ対象になり、出生率にも影響を与えた」と指摘する。
 ◆合計特殊出生率
 1人の女性が一生に産む子どもの数に相当
 人口推計で最も重要な指標が出生率で、2.07が人口維持の目安となる。
 ◆各国の合計特殊出生率
 台湾でも2010年には世界的最低の0.895を記録した。現在では、1.16(推測値)。
 中国では、2010年以降は1.0~1.3で推移し、2016年に1.25。人口を維持できるとされる2.07程度を下回る。
 米国は2017年に30年ぶりの水準に落ち込んだが、1.76にとどまる。
 日本の2018年の出生率は1.42。

 今日の天気は、曇り~晴れ。気温は、最高気温7°と平年並み・・でも寒く感じる。
 畑に行く。雑草が生い茂っている・・草取りしなくては。その中で、”ハコベ”に花が咲いている。小さな、白い花だ。”ハコベ”は、ナデシコ科ハコベ属の総称で、世界に約120種、日本には約18種あると言う。よく見られる”ハコベ”は、在来種の「ミドリハコベ」、近年の帰化種とされる「コハコベ」・・史前帰化植物との説あり、大柄の「ウシハコベ」の3種で、これらの区別はなかなか難しい。 この花が咲いている”ハコベ”は”コハコベ”のようだ。ハコベの花の花弁は5枚だが2深裂しているので10枚の様に見える。花柱(雌蕊の茎)はウシハコベは5本、他は3本で、茎が緑色なのはミドリハコベ、茎が淡褐色なのはコハコベ・・との区別から”コハコベ”(と思う)。
 ”ハコベ(ミドリハコベ、コハコベ)”は、日本では春の七草として食用にされてきた。しかし、世界的には小鳥が好む餌として利用され、英名:chick weed(ヒヨコの雑草)、別名:スズメグサ、ヒヨコグサとも呼ばれる。
 ハコベ(繁縷)
 別名:朝しらげ(朝日が出ると花が開くから)
 ナデシコ科ハコベ属
 一年草(越年草)
 開花時期は2月~9月


1滴の水滴から5Vの発電をする技術を開発

2020-02-25 | 科学・技術
 名古屋大学未来材料・システム研究所のアジ・アドハ・スクマ研究員と大野雄高教授ら及び九州大学グローバルイノベーションセンターの吾郷浩樹教授の研究グループは、一滴の水滴から5ボルト以上の発電をする技術を開発した。
 この発電装置は、プラスチックフィルム上に成膜された原子レベルで薄い二硫化モリブデンから構成されており、その表面を水滴が滑り落ちる時に発電する。従来、原子層材料の一種であるグラフェンを用いて同様の発電現象が報告されていたが、出力電圧は0.1ボルト程度にとどまっていた。
 研究では、半導体の原子層材料である二硫化モリブデンを用いることで、センサデバイスを駆動するのに十分な高い出力電圧を得ることに成功した。この技術は、工場排水のモニタリングのための自己給電型水質センサなどのIoTデバイスへの応用が期待される。
 ポイント
 〇1層の二硫化モリブデンをプラスチックフィルム上に大面積に成膜する技術を開発
 〇一滴の水滴から5ボルト以上の高い電圧を発電
 〇流体の存在する環境における自己給電型 IoTデバイスへの応用に期待
 成果の内容と意義
 1. 1層の 二硫化モリブデンをプラスチックフィルム上に大面積に成膜する技術を開発
 二硫化モリブデンは層状物質であり、極限的に薄くすると1原子レベルまで薄くすることができる。発電装置の実現には、プラスチックフィルム上に、大面積かつ1層の二硫化モリブデンを成膜する技術が必要であった。従来、原料となる酸化モリブデンと硫黄を成長装置の上流側に設置し、高温に加熱した基板に供給する方法がとられていたが、大面積の基板に均一に硫化モリブデンを成長させることは困難であった。
 本研究では、酸化モリブデンを基板に対向して設置するとともに 、均一に供給する 工夫を行うことにより、大面積で1層の二硫化モリブデンを成膜することに成功した。また、サファイア基板を用いることにより、高品質化も実現した。
 さらに、サファイア基板上に成長した二硫化モリブデンをプラスチックフィルム上に転写する技術も開発した。転写工程において、極めて薄い二硫化モリブデンを支持するため 、従来、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)フィルムが用いられていたが、大面積で転写するのは困難であった。本研究では、ポ リスチレンフィルムを支持材料として用いることにより、表面エネルギーの違いを利用して、簡便に大面積の二硫
化モリブデンを転写することに成功した。
 二硫化モリブデンは極めて薄い半導体材料であり、開発した成膜技術は発電装置のみならず、集積回路やフレキシブルエレクトロニクスなどへの半導体応用も期待できる。
 2. 一滴の水滴から5ボルト以上の高い電圧を発電
 プラスチックフィルム上に成膜した二硫化モリブデンを用いることにより、たった一滴の水滴から5ボルト以上の高い電圧を発生させることに成功した。
 発電装置は、二硫化モリブデンの両端に電極を形成した単純な構造である。発電装置を45°に傾け、水滴を表面に落とし、二硫化モリブデンの表面を滑らすと、電圧が発生する。1滴の水滴を落とすごとに、パルス状の5ボルトから8ボルトの電圧が発生した。
 従来、炭素の原子層材料であるグラフェンを用いることで同様の発電現象が知られていたが、発電電圧は数十ミリボルトから数百ミリボルトにとどまっており、センサなどの電子デバイスを動作させるには電圧が不十分であった。
 本研究では、半導体の原子層材料である二硫化モリブデンを用い、発電装置内で還流する電流を抑制することにより、センサ駆動に十分な高電圧化を実現した。さらに、3つの発電装置を直列接続し、3滴の水滴を同時に滴下することにより、15ボルトの発電にも成功した。
 3. 流体の存在する多様な環境における自己給電型IoT デバイスへの応用に期待
 この発電技術は、流体の存在する様々な環境において、自己給電型IoT デバイスの電源として利用することが想定される。 発電装置はプラスチックフィルム上に形成されており、柔軟性があるため、配管の内側の曲面などに設置することも可能であり、高い設置自由度をもつ。例えば、雨滴から発電する自己給電型の雨量計や酸性雨モニタ、工場排水から発電し、同時に排水の水質モニタリングを行う自己給電型水質センサなどのIoT デバイスへの応用が考えられる。
 ◆用語説明
 〇二硫化モリブデン
 層状の結晶構造を持ち、力が加わると容易に層間が滑るため、粉末は潤滑剤として用いられている。極限的に薄くすると1原子レベルまで薄くすることができる。1層まで薄くすると半導体材料として用いることができる。
 〇グラフェン
 炭素の層状物質であるグラファイトを1層まで薄くしたもの。金属的な材料であり、電池や透明導電膜など、多様なエレクトロニクス応用が期待されている。
 〇環境発電(エネルギーハーベスティング)
 身の回りに存在する微小なエネルギー(光、熱、振動など)を電力に変換する技術。身近なところでは、ソーラー腕時計などがある。
 〇フレキシブルエレクトロニクス
 柔軟性をもち、曲げられる電子デバイスを提供する技術。例えば、曲面に設置可能な IoTデバイスや人体に設置可能な電子デバイス(ウェアラブルデバイス)への応用が期待されている。

 天気は晴れ。気温は、最高気温13°と寒くはない。
 街路樹に”イチョウ”が植えられている。葉は既に落ち、実が樹の周辺に散り落ちている。”イチョウ”は雌雄異株、実は雌株にのみになる。・・実をだれも拾わない・・匂いが気にならないのかな。日本語では”イチョウ”の実を指して「ぎんなん」と呼ぶ、これは「銀杏」の唐音読み「ぎん・あん」が、連声と呼ばれる現象によって転訛したもの、と言う。
 因みに、”イチョウ”は「生きている化石」植物の一つである。イチョウ類は、約3億年前(古生代後期)に出現し、中生代に最も繁栄した。
 イチョウ(銀杏、公孫樹、鴨脚樹)
 イチョウ科イチョウ属
  裸子植物門イチョウ綱の中で唯一の現存している種
 雌雄異株 実は雌株にのみになる
 落葉高木
  広葉樹にも針葉樹にも属さない
 中国原産、鎌倉時代の渡来説が有力
 開花時期は4月~5月
  花粉は風で運ばれる(風媒花)。結実は9月~10月


ハイスループット実験で触媒インフォマティクスを実現する

2020-02-24 | 科学・技術
 北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科物質化学領域の谷池俊明准教授、西村俊准教授らは北海道大学の髙橋啓介准教授、熊本大学の大山順也准教授らと共同で、ハイスループット実験、材料ビッグデータ、データ科学を基盤とした触媒インフォマティクスを実現することに成功した。本成果は、2019年12月25日(米国東部時間)にACS Publications発行「ACS Catalysis」のオンライン版に掲載。
 ポイント
 〇ハイスループット触媒評価装置による材料ビッグデータの取得
 〇データ科学に立脚した触媒とプロセスの同時設計
 近年、自然科学においても人工知能(AI:artificial intelligence)という言葉が頻繁に聞かれるようになった。特に、機械学習などのデータ科学的な方法論を駆使し、材料科学の研究開発を飛躍的に加速せんとする試みをマテリアルズインフォマティクス(MI:Materials Informatics)と呼ぶ。
 研究グループは、MIを触媒開発に利用することを試み、メタンの酸化カップリング反応(OCM)において、日に4000点もの触媒データを自動取得可能なハイスループット触媒評価装置を設計し、これを用いて過去30年で蓄積されたデータ数を一桁上回る12000点ものデータをわずか3日で取得することに成功した。さらに、得られた触媒ビッグデータを機械学習などによって分析し、その結果に基づいて固体触媒や反応プロセスを通してOCMの反応収率を大きく改善することに成功した。
 MIは概念的な意味ではよく研究されてきたが、これが真に材料科学に革新をもたらすか否かは、質・規模ともに十分な材料データが用意できるかどうかにかかっていた。これまで研究者らが科学論文という形で積み上げてきたデータは、研究者の実験方法や興味を強く反映しており、また、性能の低い材料データを含まず、機械学習には不向きであった。ハイスループット実験によってこの問題を突破し、30年の研究が、実働1ヵ月に満たない短期間で実施できることを実証した。
 今後、同様な方法論がさまざまな材料分野における研究開発を飛躍的に加速させ、人類社会の持続的な発展に大きく貢献する材料を次々と生み出していく時代が来ると期待している。
 ◆用語解説
 〇メタンの酸化カップリング反応(OCM)
 普遍的に存在するメタンはそのままでは化学的な有用性が低く、これを触媒によって別の有用化合物へ変換することが望ましい。メタンの酸化的カップリングとは、メタンと酸素分子の反応を通してエタンやエチレンを直接合成する高難度反応である。
 〇ハイスループット触媒評価装置
 実験の回転速度をスループットと呼ぶ。ハイスループット実験装置とは高度な並列化や自動化によってスループットを劇的に改善する装置を指す。

 朝から晴れた。気温は上がらず、寒い。
 小さな花壇を区切る様に塀で囲まれている。その中に、黄色の花が咲いている。霜にも雪にも負けずに咲いている。”キンセンカ”だ。この花を見ると、チョット寒さを忘れる。
 主な開花期は春~初夏だが、暖冬だから咲いたのかな。
 名(キンセンカ:金盞花)の由来は、花の姿が「金の盃」からと言う。因みに、矮性種に雪が残る早春に咲く”冬しらず”がある。
 キンセンカ(金盞花)
 別名:カレンデュラ
   (Calendula)
   ポット・マリーゴールド
 キク科カレンデュラ属
 一年草、半耐寒性
 南ヨーロッパ原産、江戸末期に中国から渡来
 主な開花時期期は3月~6月
 花は径4cm~12cm
 花色は黄・橙色など


鉄腐食細菌は黒サビを使って腐食を加速させていた

2020-02-23 | 科学・技術
 国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクスの岡本章玄独立研究者と、Xiao Dengポスドク研究員 (現オーストラリア連邦研究所所属) 、理化学研究所 環境資源科学研究センターの堂前直ユニットリーダーらからなる研究チームによる、「鉄腐食菌が原因で発生する黒サビの導電性が、細菌活性を高め腐食を促進する役割があることを発見した。これまで細菌自身にとってゴミのようなものだと考えられてきた黒サビが、鉄腐食を促進することが分かったことで、今後細菌による腐食の新たな防止策として、黒サビの導電性を低下させる鉄合金材料の開発などが期待される。」本研究成果は、Angewandte Chemie International Edition誌にて同誌TOP 5%のVery Important Paper として2020年1月29日にオンライン掲載された。
 概要
 1.鉄腐食菌が原因で発生する黒サビの導電性が、細菌活性を高め腐食を促進する役割があることを発見した。
 これまで細菌自身にとってゴミのようなものだと考えられてきた黒サビが、鉄腐食を促進することが分かったことで、今後細菌による腐食の新たな防止策として、黒サビの導電性を低下させる鉄合金材料の開発などが期待される。
 2.石油パイプラインなどのインフラにおいて、硫酸還元菌と呼ばれる細菌による鉄の腐食が深刻な問題になっている。
 この細菌が代謝で生成する硫化水素が、鉄と反応して硫化鉄 (黒サビ) に変わり腐食が進行するが、鉄の表面が硫化鉄で覆われた後も腐食が進行する理由が不明で、効果的な防食法がなかった。研究グループは、細胞膜表面に特殊な酵素をもつ硫酸還元菌が、硫化鉄越しに鉄から電子を直接引き抜くことで腐食を加速させる可能性を明らかにした。ただその酵素を持たない硫酸還元菌でも高い腐食能を持つ場合があり、膜酵素を用いずに電子を引き抜いて腐食を進行させる仕組みがあることが示唆されていた。
 3.研究チームは、黒サビの主成分である硫化鉄の持つ導電性に着目した。
 硫化鉄のナノ粒子は細胞内や表面にも蓄積するが、今回、細菌の表面に形成された硫化鉄ナノ粒子を詳細に分析したところ、高い導電性をもつ結晶構造を持つことが分かった。さらに、硫化鉄ナノ粒子の有無で細菌の活性を比較したところ、硫化鉄ナノ粒子を持つ細菌のみが細胞外の固体電子源から電子を細胞内に取り込み、代謝が活性化されていることが分かった。この結果は、これまで単なる代謝副産物でゴミのようなものと考えられてきた黒サビが、重要な生化学機能を有することを示しており、硫酸還元菌であれば特殊な膜酵素がなくても電子の引き抜きによって鉄腐食を進行させることが可能であることを示唆している。
 4.今後は、導電性の低い結晶構造を持つ黒サビを発生させる鉄合金材料を開発する。
 細菌による腐食の進行を抑制するなど、環境に有害な殺菌剤を用いることなく細菌による鉄腐食を防ぐ技術の開発を目指していく。

イネの光合成機能を増強、最大28%の増収効果がある

2020-02-22 | 園芸
 東北大学大学院農学研究科牧野周教授、石山敬貴助教らの研究グループは、岩手大学農学部および国際農研との共同研究で、遺伝子組換え技術によって光合成の炭酸固定酵素ルビスコが約1.3倍量に増強されたイネ(ルビスコ増強イネ)を作出し、東北大学内にある隔離水田ほ場において収量評価試験を行った。その結果、ルビスコ増強イネは、同じ窒素施肥量において、玄米収量が最大で28%増加した。高い窒素利用効率と光合成の機能改善により、穀物の増収に結び付いた実例は、世界で初めてである。この研究成果は、世界的な食糧危機回避と地球環境保全に大きく貢献するものと評価されている。本研究の成果は、2020年2月18日、国際科学誌「Nature Food 1巻2月号」に発表。
 今世紀半ばには、世界の人口は100億人に達すると言われている。国際連合食糧農業機関は、人口の急激な増加と中国やインドなどの経済発展に伴う食生活の変化が、穀物の需給バランスを逼迫させ、世界的な食糧危機を到来させると警鐘をならしている。一方で、人類は1960年代に「緑の革命」と呼ばれる穀物の短稈種の開発に成功し、多量の窒素施肥に依存する食糧増産を図ってきた。しかし、多量の窒素施肥は、地球生態系の富栄養化や河川・海洋・大気汚染などの原因となり、大きな社会問題となっている。今後、さらに穀物の増収を図るためには、単に高い収量性を示す穀物を育種するのではなく、同じ窒素施肥量に対してもより高い収量性を示す「窒素肥料の利用効率の高い穀物」を開発する「第二の緑の革命」が求められる。
 本研究では、稲品種、能登ひかりを親品種に遺伝子組換え技術を用いて、炭酸ガス同化を担う光合成酵素ルビスコが約1.3倍量に増強されたイネ(ルビスコ増強イネ)を作出した。日本においては、遺伝子組換え技術を用いて作出された穀物を野外のほ場で栽培するには、文部科学省および環境省から承認を得なくてはなりません。数年におよぶ生物多様性評価試験を行い、その後一年間両省の審査を経て、「ルビスコ増強イネが他の生態系へ影響を与えない」との判断が下され、2016年4月に、ほ場における栽培が承認された。承認後の2016年から2019年までの4年間、宮城県農政部の視察のもと、厳密に管理された東北大学の「遺伝子組換え植物隔離ほ場」で栽培試験を行った。なお、日本の大学機関および文部科学省管轄の研究機構の中で、「遺伝子組換え隔離水田ほ場」を所有するのは東北大学附属川渡フィールドセンターのみです。
 その結果、10 g N m-2(10 kg N/10a)以上の窒素施肥区において、親品種の能登ひかりと比較してルビスコ増強イネの玄米収量が17%から28%増加した。詳細な収量構成要素および生化学的解析を行った結果、組換えイネの葉のルビスコ量およびその活性が増加し、それに伴い光合成速度の向上が観察された。この光合成機能の改善が、組換えイネの登熟歩合および稔実籾数増加につながり、収量増加に結び付いたことがわかった。
 この研究の学術的成果は、自然環境下のほ場において、遺伝子組換え技術を用いて作出された穀物の光合成機能の改善が、収量増加に結び付くことを実証した世界で初めての報告である。また、この研究の社会的意義として、本研究で使用したルビスコ増強イネは、遺伝子組換え技術を用いて作出されているため、すぐに農業現場に応用することはできないが、光合成の増強が新しいイネの新品種の開発に応用できることを示したことである。さらに、世界的な食糧危機回避と地球環境保全に貢献する研究成果と高い評価を受けている。
 ◆用語解説
 〇「緑の革命」と「短稈種」
 1960年代、人類の主要作物であるイネとコムギにおいて、短稈育種が行われた。人間の背丈ぐらいあった両作物は腰の高さぐらいまで小型化された短稈種の開発に成功、短稈種は倒伏に対して耐性を持ったことから、多量の窒素施肥を可能とした。今日までのイネとコムギの増収は、短稈種の導入による多肥に依存したもので、緑の革命と呼ばれている。ハーバー・ボッシュ法の普及により、空気中の窒素から安価なアンモニア肥料が生産可能となった背景も見逃せない。多量の窒素施肥は、葉の窒素含量を増加させ、その窒素含量の増加によって光合成能力を増大にさせる効果があり、同時に穂数や籾数の増加効果もあるため、イネやコムギの増産に直接結びつくものであった。
 〇ルビスコ
 光合成のCO2固定を触媒する酵素で、現在の大気CO2濃度では、植物の光合成全体の速度を決定していると考えられている。一般的に植物の葉の可溶性タンパク質の50%ほどを占め、地球上で最も多く存在するタンパク質であると推定されている。

 朝から昼頃まで、雨が降りそうな曇り空、午後からは晴れて、お日様が顔を出した。
 散歩で見つけた”プリムラ・ジュリアン”のミニミニ花園。
 ”プリムラ”はサクラソウ科サクラソウ属の耐寒性一年草で、世界で500種以上あると言われるほどに種類が豊富であり、花色も橙・黄・赤・・桃・白・青・紫などと多色である。プリムラの代表的な品種としては、プリムラ・ポリアンサ、プリムラ・オブコニカ、プリムラ・マラコイデスなどがあり、プリムラ・ジュリアンはポリアンサとシュリエの交雑種。
 プリムラ・ジュリアン
  (Primula juriana hybrid)
 サクラソウ科サクラソウ属
 耐寒性一年草
 ポリアンサとシュリエの交雑種の小輪矮性品種
 開花時期は12月~4月
 花は径3cm~7cm 
 花色は橙・黄・赤・桃・白・青・紫など


ハニカム構造による新規光閉じ込め現象を発見、優れた指向性を示す微小レーザーの作製に成功

2020-02-21 | 科学・技術
 物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (WPI-MANA) の古月暁MANA主任研究者、王星翔NIMSジュニア研究員と、中国北京大学Renmin MA教授のグループからなる研究チームにより、「ハニカム型フォトニック結晶のトポロジカル特性による新規光閉じ込め現象を発見し、優れた指向性を示す微小レーザーの作製に成功した」。本成果は、「Nature Nanotechnology誌」にて英国時間2019年12月16日16時にオンライン掲載。
 物質の性質が系の形状の変化に影響されない「トポロジカル特性」に関する研究が盛んに繰り広げられ、量子コンピューターの実現など、優れた新規機能開発につながることが期待されている。一般的に物質の持つトポロジカル特性は、系の表面や縁に局所的に現れる(バルク-エッジ対応)。それらを利用すれば、抵抗を伴わない電流や欠陥にも散乱されない光・電磁波伝播が実現できる。しかし、トポロジカル特性が、表面や縁だけでなく、系全体の性能の向上に役立つか否かは解明されてなかった。
 研究チームは、トポロジカル特性を示す発光性半導体フォトニック結晶の周辺を、トポロジカル特性を持たないフォトニック結晶で囲むことで、その境界で光が反射され、中心部に閉じ込められた光モードが増幅する現象を発見した。このアプローチのユニークな点として、フォトニック結晶がトポロジカル特性を持つか持たないかは、三角空孔のハニカム配列をベースに、三角空孔の位置を、ハニカム配列の単位胞の中心からわずかに遠ざけるか近づけるかで作り分けることが可能である。このデバイスを用いた室温下での光照射レーザー発振は、微小なデバイスサイズにもかかわらず、共振器面に垂直な方向への優れた指向性を示す。さらに発光閾値などレーザー特性の指標も、IEEEやその他の工業規格を満たすことが確認された。
 今後の展開
 今回の研究によって、トポロジカルフォトニック結晶の全体にわたるレーザー発振が確認され、物質のトポロジカル特性が、系全体の性能の向上に役立つことが証明された。トポロジカル特性由来のレーザー発振原理は、マイクロレーザーのさらなる小型化、出力パワー向上や、光渦などの優れたレーザー性能探索などの研究開発の新しい指針になる。極小で優れた固体レーザー光源の開発は、近接場光学顕微鏡や、昨年ノーベル物理学賞の受賞で大きく注目された光ピンセットなど、ミクロな世界のレーザー技術をはじめ、医療・生命科学技術の革新にも寄与するものと期待される。トポロジカル特性由来の新しい反射機構は、光現象のみならず、電子系や弾性波を含む多くの振動現象にも応用でき、今回の研究成果は幅広い新規機能探索とデバイス開発につながると思われる。
 ◆用語解説
 〇フォトニック結晶
 誘電率や透磁率の異なる材料が周期的に並んでできた光の人工媒体のこと。材料の特性、構造の形状や周期配列の対称性など、さまざまなパラメーターの制御が可能であり、新規光機能の開発に利用されている。
 〇トポロジカル特性
 物体のつながり方を分類するための数学概念として、トポロジーが知られている。例えば、コーヒーカップとドーナッツに共に1つの空孔があるため、見かけ上違っているにもかかわらず、その二者はトポロジー的に同類である。連続変形に対して、空孔の数が変わらないからである。近年、一部の物質結晶中の電子やフォトニック結晶中の光モードの波動関数が、逆格子空間において特異なつながり方を示すことが明らかになった。その結果として現れる、サンプルの変形や欠陥からの影響を受けない輸送現象などがトポロジカル特性と呼ばれている。
 〇バルク-エッジ対応
 系全体の波動関数が非自明なトポロジカル特性を示す場合、必ずその表面や縁に新たな状態が現れる。表面や縁にある状態の強靭性は、系全体のトポロジカル特性によって担保されることが特徴である。
 〇多重量子井戸構造
 異なる物質の超薄膜の積層によって、垂直方向における電子の移動が束縛され、そのエネルギーが離散化される状態を得るための構造。レーザーなどでは、その構造を多重に繰り返すことによって発光効率が改善される。
 〇トポロジカルフォトニック結晶
 非自明なトポロジカル光特性を示すフォトニック結晶のことで、その表面や縁に、欠陥や鋭角経路にも散乱されない光・電磁波伝播経路が現れる。その実現方法として、磁場中で磁気光学特性を示すジャイロ物質を利用するものや、誘電体フォトニック結晶の対称性を利用するものが知られている。本研究は、発光性半導体のハニカムフォトニック結晶にわずかな変形を加え、モード反転を誘起することによって得られる光トポロジカル特性を利用している。
 〇双極子モード、四重極子モード
 方位角が一周するのに伴い、波動関数の値が正から負に変わった後に正に戻る、1回振動するモードのことが双極子モードと呼ばれる。この場合、波動関数が2つの方位角でゼロになっている。これに対して、四重極子モードでは、方位角が一周するのに伴い、波動関数が2回振動し、4つの方位角でゼロになっている。空間反転操作に対して、双極子モードの波動関数は符号を変えるのに対して、四重極子モードでは符号が変わらない。
 〇モード反転
 通常、波動関数のゼロ点を多く含むモードがより高いエネルギーや周波数を持つ。結晶の対称性や内部構造の設計によって、逆格子空間の一部において、ゼロ点の多いモードが逆に、ゼロ点の少ないものより低いエネルギーや周波数を取るようになることがモード反転と呼ばれる。ハニカム格子では、空間反転対称性の異なる双極子モードと四重極子モードが、同じエネルギーや周波数を示す。このため、ハニカム構造に微小な変形を加えることによって、容易にモード反転を引き起こすことができ、トポロジカル状態の創成に利用できる。

 今日の天気は晴れ。でも気温は低くまだ春は来ない。
 散歩での風景。田圃の中の神社、近くを走る新幹線、休耕田に作られたソーラーパネル・・現在の日本を象徴している様な風景だ。
 小さな神社は、羽山神社。五穀豊穣の神社として遷座され、鎌倉・江戸時代には羽山権現社として奥州各地より参拝者があったと言われる。現在、周囲は田園であるが、藩政時代は奥の院もあり広い社地が鬱蒼とした杉に包まれていた様だ。

高活性・高耐久性のエステル化に有効な固定化高分子酸触媒の開発に成功

2020-02-20 | 科学・技術
 理化学研究所環境資源科学研究センターグリーンナノ触媒研究チームの山田陽一チームリーダー、自然科学研究機構分子科学研究所の魚住泰広教授らの共同研究チームは、既存の固定化高分子酸触媒よりも高収率(高活性)で、かつ工業的に重要なフロー型反応に適用可能な高耐久性のエステル化に有効な固定化高分子酸触媒の開発に成功した。本研究は、米国の科学雑誌「Organic Letters」のオンライン版に12月16日付で掲載。
 背景
 カルボン酸とアルコールから得られるエステル化合物は、化成品、医薬品などさまざまな化学製品に用いられる重要な有機化合物である。これまで化学プロセス業界、医薬品プロセス業界から高収率(高活性)で耐久性に優れ、水にも有機溶媒にも溶けない高堅牢性の固定化高分子酸触媒の開発が求められてきた。
 山田陽一チームリーダーらは、2013~16年にかけて第一世代型の高分子酸触媒(ポリフェノールスルホン酸樹脂触媒)の開発を行い、エステル化反応に適用してきた(*)。しかし、この第一世代型固定化高分子酸触媒は、触媒調製時とエステル化反応時のいずれにおいても、高温条件下ではパラ位のフェノール基の関与による脱硫酸が生じるという問題があり、活性・耐久性・堅牢性などの面において十分とはいえず、さらなる改良が必要であった。
 (*)2016年5月18日プレスリリース「副生成物処理が不要なエステル化反応の触媒を開発」
 研究手法と成果
 共同研究チームは、フェノール基の関与が低いと考えられるメタ位にフェノール基を持つメタフェノールスルホン酸を原料として用い、ホルムアルデヒドと重合させることにより、第二世代型ポリフェノールスルホン酸樹脂触媒を合成。この高分子酸触媒は堅牢性と化学的安定性に優れる高分子化合物であることが確認された。
 次に、第二世代型触媒の耐久性を検証するため、アクリル酸とメタノールのフラスコを用いたバッチ型反応を繰り返しおこなった。その結果、第一世代型触媒では数回の使用で触媒活性が低下したのに対し、第二世代型触媒では10回繰り返し使用しても触媒活性は低下することなく、アクリル酸メチルが生成された。また、一般的な触媒ではエステル化反応を進行させるために、エステル化で生成する水を除去し、化学平衡を右にずらす必要があるが、第二世代型触媒も第一世代型触媒と同様に、この操作が不要であった。
 さらに、第二世代型触媒を工業的に重要なフロー型エステル化反応に適用した。カラムカートリッジに充填した触媒を用いて、アクリル酸とエタノールのエステル化反応を行ったところ、市販の各種高分子酸触媒よりも高い収率でアクリル酸エチルが生成されることが分かった。また、さまざまなカルボン酸とアルコールの組み合わせでフロー型反応を行った結果、いずれの場合も高い収率で対応するエステル化合物が生成された。
 加えて、オレイン酸とリノレン酸をそれぞれメタノールとフロー型で反応させた。どちらも15日間ずつ稼働させた結果、触媒活性が低下することなく、対応するバイオディーゼル燃料が90%以上の収率で得られた。
 今後の期待
 今回開発した第二世代型高分子酸触媒を用いたフロー型エステル化合物合成システムでは、さまざまなエステル化合物が高い収率で効率的に得られます。今後、より効率的な化学プロセス、医薬品合成プロセスの開発が期待できる。
 ◆補足説明
 〇高分子酸触媒
 高分子に酸(ここではスルホン酸)が導入された触媒。
 〇フロー型、バッチ型
 フラスコやタンクなどの閉鎖系で行う反応のバッチ型に対し、フロー型の反応は連続的に反応液を流通させて行う。フロー型は連続運転が可能なため、連続的に生成物が得られる利点がある。
 〇エステル化
 カルボン酸とアルコールが反応して、エステルと水が生成する反応。
 〇エステル化合物
 エステル (ester) は、有機酸または無機酸のオキソ酸とアルコールまたはフェノールのようなヒドロキシ基を含む化合物との縮合反応で得られる化合物である。単にエステルと呼ぶときはカルボン酸とアルコールから成るカルボン酸エステル (carboxylate ester) を指すことが多く、カルボン酸エステルの特性基 (R-COO-R') をエステル結合 (ester bond) と呼ぶ事が多い。エステル結合による重合体はポリエステル (polyester) と呼ばれる。また、低分子量のカルボン酸エステルは果実臭をもち、バナナやマンゴーなどに含まれている。
 〇固定化触媒
 触媒反応部位が不溶性の担体に固定化された触媒のこと。ここではスルホン酸が高分子担体に固定されている。
 〇バイオディーゼル燃料
 脂肪酸メチルエステルのこと。オレイン酸などの植物油とメタノールから合成される脂肪酸メチルエステルは、ディーゼル燃料と似た燃料特性を持つためバイオディーゼル燃料と呼ばれている。
 〇パラ位、メタ位
 ベンゼン環の置換基(ここではOH)の隣をオルト位、炭素を一つ挟んだ隣をメタ位、さらにその隣をパラ位と呼ぶ。

 今日の天気は晴れ。気温は、最高気温10°・最低気温0°・・3月上旬の天気だ・とか。
 街中の公園の入り口に”サザンカ”が植えられている。赤い花が咲いている。青い空、緑の葉、赤い花・・綺麗だ。
 冬の季節に咲く花は少ない。”サザンカ”は晩秋から初冬にかけて咲き始め、翌年の1月・2月までと長い間咲いている。同じツバキ科ツバキ属のツバキ(椿)は2月頃より咲き出す。
 ”サザンカ”を「山茶花」と書くが、「山茶花」は椿(つばき)の漢名、なので誤用なのだ、と言う。”サザンカ”の名は、山茶花(さんさか)→茶山花(ささんか)→さざんか、からと言う。
 因みに、”サザンカ”は同属同科の椿(つばき)良くと似ているので見分け方が難しい。”サザンカ”は葉縁がギザギザして、花びらがバラバラに散る。”ツバキ(椿)”は葉が細長と少し大きくでギザギザがなくて、花は首から落ちる。
 サザンカ(山茶花)
 別名:岩花火(いわはなび)、姫椿(ひめつばき)、藪山茶花(やぶさざんか)
 学名:Camellia sasanqua
 ツバキ科ツバキ(カメリア)属
 常緑小高木
 原産地は日本
 開花時期は10月~翌2月
 花径は5cm~7cm、花色は白・桃・赤など
 沢山の園芸品種があり、サザンカ系、ハルサザンカ系、カンツバキ系の3大グループがある


微生物(大腸菌)に糖を目的別に使い分けさせる新技術でポリマー原料の生産性向上

2020-02-18 | 科学・技術
 神戸大学大学院工学研究科の藤原良介博士後期課程学生(日本学術振興会特別研究員DC1)、田中 勉准教授、理化学研究所 環境資源科学研究センターの野田修平研究員らの研究グループは、バイオ生産に利用する微生物を代謝工学により改変し、取り込んだ糖の種類を目的別に使い分けさせることで、生産性の向上に成功した。研究成果は、2020年1月14日(英国時間)に英国科学誌「Nature Communications」に掲載。
 ポイント
 〇糖を使い分けることで微生物の増殖と物質生産を独立してコントロールする「Parallel Metabolic Pathway Engineering(PMPE)」という技術を開発し、ムコン酸収率の向上に成功。
 〇芳香族化合物やジカルボン酸などのさまざまな化成品原料や医薬品原料の生産にも利用が可能。
 〇実際のバイオマスなど複数の糖類が入っている原料も効率よく利用できると期待される。
 研究の背景
 私たちの社会では石油を原料として様々な製品が作られている。しかし、石油由来製品は大気中のCO2の量を増やし、地球温暖化などの様々な環境問題を引き起こしている。そこで、自然界に大量に存在する安価な草や木などの再生可能資源(バイオマス資源)を原料として、微生物を用いたモノづくりを行うバイオリファイナリー技術の開発が求められている。バイオマス由来の製品は大気中のCO2を増加させないカーボンニュートラルという特長をもっており、このバイオマスから様々な有用物質を生産する技術を開発することで、大気中のCO2を減らした低炭素社会の構築が期待できる。
 ムコン酸はナイロンの原料となるアジピン酸に容易に変換できる有用化合物であり、他にも様々な医薬品や化成品原料として利用できる。しかし、その生産は化石資源を原料に用いた化学合成に依存しているのが現状である。そこで、より穏和な反応条件で副生成物も少ない微生物による再生可能な植物資源からの発酵生産方法が望まれてきた。
 微生物を用いたモノづくりでは、原料のバイオマスを微生物が自身の増殖に利用してしまうことが問題となっている。微生物がバイオマスを取り込んでも、目的のモノが作られずに微生物自身が増えてしまうだけ、ということがよくある。しかし微生物が増えないように代謝を改変してしまうと、微生物は元気がなくなりモノを作らなくなる。この増殖とモノづくりの間のジレンマがこれまでの大きな問題であった。
 本研究では、糖を使い分けることで微生物の増殖とモノづくりをそれぞれ独立してコントロールする技術(PMPE: Parallel Metabolic Pathway Engineering)を新たに開発し、このジレンマの解決に取り組んだ。
 研究の内容
 食料生産と競合しないリグノセルロース系バイオマスは、主にグルコースとキシロースからできている。このグルコースをモノづくりに、キシロースは微生物の増殖に使えるような代謝デザインを施した大腸菌を構築した。
 通常の微生物では、取り込まれたグルコースとキシロースは同じ1つの代謝系で代謝され、目的物質を生産するとともに微生物が生きるために使われる。微生物はこの取り込んだ糖類を自分が生きるためのエネルギー生産や構成要素の合成、維持に使ってしまうため、目的生産物の生産量は低下する。
 そこで本研究では、PMPEという新しい技術を開発した。微生物の代謝を分けてそれぞれ独立させることにより、グルコースは全て目的物質の生産に、キシロースは微生物の生育、維持のために使われる。グルコースは生育、維持のためには一切使われないため、収率を大きく向上させることができる。
 本研究では、改変した大腸菌にムコン酸生産経路を導入し、グルコースとキシロースからムコン酸生産を行った。最終的にムコン酸を4.26 g/L生産することに成功し、その収率(理論上の最大収量に対する実収量)は0.31 g/g-glucoseとなった。この収率は世界最高値であり、本技術が有効であることを示している。
 さらに、PMPE技術をムコン酸以外の目的生産物への応用を検討した。その結果、芳香族化合物であり必須アミノ酸でもあるフェニルアラニンや、食品や医薬品の添加剤として用いられる1,2-プロパンジオールの生産性を向上することに成功した。これらの結果は、PMPE技術が様々な物質の生産性・収率の向上に有効である、汎用性の高い技術であることを示している。
 今後の展開
 本研究で開発されたPMPE技術を用いることで、ムコン酸以外にも芳香族化合物やジカルボン酸などの様々な医薬品、化成品原料の生産性・収率の向上が期待される。また、糖を使い分けさせることで微生物の代謝を制御するという本研究の成果は、様々な糖類が混在する実バイオマスの有効利用にも大きく貢献できると考えられる。
 ◆用語解説
 〇バイオフリファイナリー技術
 再生可能な資源であるバイオマスを原料として、バイオ燃料やバイオプラスチック、医薬品原料などを生産する技術。
 〇カーボンニュートラル
 化石燃料の代わりにバイオマスを使うことで二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロとなり、大気中のCO2の量は変化しないという概念。
 ◆人工遺伝子で大腸菌を作製、英研究所など
   (2019/5/26付日本経済新聞 より)
 英国の分子生物学研究所を中心とするグループは、塩基配列を全面的に組み換えた遺伝子をもつ大腸菌を作製した。
 合成するアミノ酸の種類を決める遺伝情報は通常61種類あるが、59種類にしてもこの大腸菌は生きていた。人工細菌を設計する研究に向け有望な手がかりになるという。
 大腸菌の遺伝子は約400万個の塩基対でできている。アミノ酸を合成する遺伝情報に重複があることに注目し、ゲノム編集技術を使って情報が重なった2種類の遺伝子を集約した。約100万塩基対の遺伝子を合成した酵母がすでに作製されている。

疑似量子計算チップを開発

2020-02-17 | 科学・技術
 今日の新聞記事で、「疑似量子計算チップ開発、渋滞解消・創薬に応用」とあった。
 東京工業大学・北海道大学・日立製作所・東京大学などは共同で、量子コンピューターの計算を疑似的に再現して、組み合わせ問題を高速で解くことのできる半導体チップを開発した。成果は米サンフランシスコで開催される半導体の国際会議「ISSCC」で発表する。
 既存のコンピューターを超える計算能力を持つ次世代計算機として量子コンピューターが注目される。現状では極低温まで冷やしたり複雑な配線が必要だったりするため、装置が大がかりで計算も安定しない。
 既存のコンピューターを使い、量子コンピューターの計算方法をまねる技術が注目を集める。様々な組み合わせの中から最適解を探す「組み合わせ最適化問題」の計算を得意とする。従来のコンピューターでは計算量が多すぎて効率よく計算するのは難しい。装置の小型化や安定した計算、より大規模な計算に対応できると期待されている。
 研究チームは量子力学をもとにした計算を並列処理できる新たな理論を提案した。一般的な半導体の製造法を使い、理論を実現した大きさ縦3ミリメートル、横4ミリメートルの半導体チップを試作した。組み合わせ問題を解く性能を調べると、従来法よりも約4倍速く、消費電力は約60分の1の約650ミリワットとわずかだった。
 これは、量子コンピューターよりも先に、渋滞の解消や創薬、材料開発などで応用できるとみている。
 ◆新聞記事から (2019/10/23 日本経済新聞)
 米グーグルは10月23日、量子コンピューターを使い、複雑な計算問題を最先端のスーパーコンピューターよりも極めて短い時間で解くことに成功したと発表した。理論上、量子コンピューターはスパコンを上回る性能を持つと考えられてきたが、世界で初めて実験で証明した。人工知能(AI)などに続く革新的技術として期待される量子コンピューターの実用化へ、大きく前進する。同日付の英科学誌「ネイチャー」で成果を報告した。
 発表によると、同社の量子コンピューターが従来のコンピューターでは困難な問題を解く性能を示す「量子超越」を達成した。乱数をつくる計算問題を用意して検証したところ、最先端のスパコンが約1万年かかるのに対し、量子コンピューターは3分20秒で解くことができたという。一般的に乱数は暗号技術などで使われることが多い。

従来の1/10の時間で大腸菌数を測定する手法を開発

2020-02-16 | 科学・技術
 北海道大学大学院工学研究院の佐藤久教授、セルスペクト株式会社の平野麗子研究員らの研究グループは、一度に多数のサンプル中の大腸菌数を早くて安価な上、簡単に測定できる技術の開発に成功した。本研究成果は、2020年1月25日(土)「Science of The Total Environment」誌に掲載。
 ポイント
 〇大腸菌が分解できる蛍光色素の蛍光強度を高感度で測り、大腸菌数を測定する技術を開発。
 〇測定時間はわずか2時間、測定コストは約2円の上、一度に96サンプルも測定可能。
 〇浄水場や食品加工場、開発途上国の井戸といった実際の現場での利用に期待。
 背景
 大腸菌は本来、その名のとおり大腸の中に存在する細菌であり、自然界や食品には存在しない。そのような大腸菌が河川や地下水・飲料水や食品に存在することは、それらが大腸の中にあるもの、すなわち糞便で汚染されていることを示している。ほとんどの大腸菌はヒトにとって無害であるが、糞便中には多種多様な病原菌が存在する可能性が極めて高く、糞便で汚染されたものを口にすることは好ましくないため、水や食品中の大腸菌数の測定が法律で定められている。また、大腸菌数の調査結果が出るまで安全性を保証できず水や食品を出荷できないため、製品が汚染されているかどうかをできるだけ早く調査する必要がある。
 研究手法・研究成果
 現在、大腸菌数は寒天培地や液体培地を用いて測定しているが、従来の方法では結果を得るまでに24時間程度かかる。研究グループは、大腸菌が持つ酵素を蛍光色素により高感度に検出することで、測定時間をわずか2時間に短縮することに成功した。また、蛍光強度は大腸菌数と比例するため大腸菌数も測定できるほか、一度に96サンプルも測定できるため1サンプルあたりの測定コストは約2円と非常に安価であることも特徴である。
 今後への期待
 本研究では下水しか測っていないが、研究グループは大腸菌数が 1 MPN/L程度という低濃度のサンプルの測定や河川水や牛乳中の大腸菌数の測定にも成功している。実験室での検証は終わっているため、今後は浄水場や食品加工場・開発途上国の井戸などの実際の現場で使用していく考えである。
 ◇新手法開発
 この手法は大腸菌が持つ酵素に着目した点にある。この酵素は基質のみを分解する働きを持っているため、酵素に分解される前は蛍光を発せず、分解後にのみ蛍光を発する基質を用いることで、大腸菌の存在を知ることに成功した。
 新手法では、下水のような汚れたサンプルでも事前の処理なく測定できた。新手法では10~10,000 MPN/mLの範囲であれば希釈しなくても測定できる。
 本研究で用いた高感度の装置により、大腸菌が 増殖する前の培養開始直後の微弱な蛍光も30分以内に検出できた。そのため、わずか2時間で大腸菌の数を測定できた。また、分解能は高く80 MPN 6/mLと96 MPN/mLの差も十分判別できた。
 ◆用語解説
 〇培地
 微生物の培養に用いられるエサを含んだ液体や固体のこと。
 〇コロニー
 24時間程度微生物を培養すると目に見えるようになる微生物の塊のこと。
 〇基質
 ある酵素が分解できる特定の物質のこと。蛍光基質はこれに蛍光色素が付いたもの。
 〇マイクロプレート
 縦8cm×横13cm×高さ1.5cm程度の板状のプラスチック容器。0.2mLの液体が入る小さなくぼみが96個ある。
 〇マイクロプレートリーダー
 マイクロプレートの一つ一つのくぼみの中の蛍光強度を測る装置。
 〇MPN
 微生物の数の単位。正確には匹ではないが 1MPNは 1匹 1cfu と考えて差し支えない。

超微量硫黄同位体比分析を考古学に応用する

2020-02-15 | 科学・技術
 理化学研究所仁科加速器科学研究センター雪氷宇宙科学研究開発室の高橋和也専任研究員、望月優子室長、近畿大学理工学部の南武志教授(研究当時)らの共同研究グループは、独自に開発した試料採取法と高感度な硫黄同位体比分析法を組み合わせ、島根県出雲市の京田遺跡(約3,500年前の縄文時代後期中葉に営まれた大規模な集落跡)から出土した超微量の赤色顔料(朱:組成は硫化水銀)の産地同定に成功した(2019年11月26日発表)。
 本手法は、世界中の壁画や遺物表面に存在する朱の解析に広く適用可能であり、今後、文化財科学の分野で一般化するものと期待できる。
 背景
 鮮やかな赤色を呈する朱は、古代社会において壁画や土器などの装飾に広く使用された。なかでも古代日本では、辰砂(しんしゃ)鉱石から得られる朱を用いていた。辰砂鉱石の産地である鉱山は日本および中国に多数存在し、日本のいくつかの鉱山は縄文時代から朱の採取に利用されてきたと推定されている。朱の産地を知ることで、古代における朱の流通状況が明らかになり、当時の日本社会の貴重な情報を得ることができる。
 朱の産地を特定するには、朱の構成成分である硫黄(S)の同位体比を調べる方法が用いられる。硫黄の同位体のうち、中性子数が16、17、18、20のものが自然界に存在し、自然界に多いのは32Sと34Sであるため、硫黄同位体比は34S/32Sを測定し、それを標準物質であるキャニオン・ディアブロ隕石中の硫化鉱物の割合と比較する方法で得る。標準物質との偏差の千分率(パーミル:‰)として表し、δ34Sと表記する。
 δ34S (‰) ={(34S/32S)試料/(34S/32S)標準物質-1}×1000
 δ34Sは辰砂鉱石の産地で差がみられる。また、辰砂は化学的には非常に安定であるため、δ34Sは古代から変化なく現在に至っていると考えられ、試料のδ34Sを分析し、各地の鉱山の辰砂のδ34Sと比較すれば、産地を推定できる。
 考古学に応用するに、硫黄同位体分析の高感度化と対象物を傷つけない試料採取法、両方の開発に取り組んだ。
 研究手法と成果
 硫黄同位体比(δ34S)分析では、まず試料から取り出した硫黄化合物を酸化的条件で燃焼させ、硫黄酸化物として取り出し、純銅を詰めた還元管に通すことで、二酸化硫黄ガスとする。この二酸化硫黄ガスをガスクロマトグラフィーに通して窒素や二酸化炭素を分離した後、安定同位体比分析用質量分析計に導入すれば、試料のδ34Sの値を得ることができる。
 従来の硫黄同位体比分析では、朱として50~100マイクログラム(μg、1μgは100万分の1グラム)程度の量を必要としていた。この量は硫黄としては200ナノモル(nmol、1nmolは10億分の1モル)程度に相当する。これに対し、高橋専任研究員らは2018年に、試料から取り出した二酸化硫黄ガスを高感度化する装置を開発し、従来の1/100程度の量の0.5μg(硫黄として2nmol)の朱のδ34Sを分析できる技術を開発しました。これは、試料から発生した二酸化硫黄ガスをいったん液体窒素温度(-198℃)に冷却・凝縮させることで、実質的に濃縮する効果を利用している。この結果、まさに「目に見える程度の一粒」の朱でも、δ34S分析が可能な感度を得ることに成功した。
 今後の期待
 近年、考古学分野における科学技術を利用した解析の果たす役割は非常に大きくなっている。分析技術の発展と共に、次々と新たな知見が得られるようになってきた。本研究で用いた、高感度硫黄同位体分析とユニークな試料採取法を組み合わせた分析手法は、現時点では理研独自のものです。
 今後、この高感度硫黄同位体分析手法が同位体分析法として一般化することで、さまざまな時代の遺物、壁画などの文化財に使用された朱の産地同定に役立てられ、考古学分野へ貴重な知見をもたらすものと期待できる。また、理研では硫黄に限らず、窒素、鉛などのさまざまな元素の同位体分析の高度化に努めており、宇宙、原子核などの分野への応用を目指す研究を進めている。
 ◆補足説明
 〇同位体
 同じ元素であって、質量数(陽子数+中性子数)が異なる原子のこと。例えば、酸素(原子番号8)の場合、質量数が16、17、18の三つの同位体が天然に安定に存在している。
 硫黄(原子番号16)は原子核に陽子が16個存在する。硫黄の同位体のうち、中性子数が16、17、18、20のものが自然界に存在し、その存在比は32S:33S:34S:35S = 95.02:0.75:4.21:0.02である。自然界に多いのは32Sと34Sであるため、硫黄同位体比は34S/32Sを測定し、それを標準物質であるキャニオン・ディアブロ隕石中の硫化鉱物の割合と比較する方法で得られる。式により、標準物質との偏差の千分率(パーミル:‰)として表し、δ34Sと表記する。
 〇辰砂(しんしゃ)
 英語名、cinnabar。化学組成がHgS(硫化水銀)で表される鉱物。鮮やかな赤い色をしており、日本では古来より、「丹(に)」と呼ばれていた。
 〇キャニオン・ディアブロ隕石
 地球上のクレーターとして有名なアメリカ・アリゾナ州のバリンジャークレーターが形成される原因となった隕石と考えられている。この隕石に含まれるトロイライトと呼ばれる鉱物(化学組成:硫化鉄)の硫黄の同位体比が硫黄同位体比分析における基準の値となっている。
 〇千分率
 1000分の1を1とする単位。パーミルと読み、記号は‰で表す。1‰=0.001=0.1%である。
 〇ガスクロマトグラフィー
 主として気体の成分をその化学的、物理的性質を利用して、分離しながら分析する手法。気体の成分分析に用いる。本研究では、二酸化硫黄を他の成分(窒素や二酸化炭素など)から分離するための技術として用いられた。
 〇安定同位体比分析用質量分析計
 質量分析装置は、分子の大きさ、構造の分析や元素組成の分析など、さまざまな用途に用いられるが、特に炭素、窒素、酸素、硫黄などの元素の同位体比を分析する質量分析装置を安定同位体比分析用質量分析装置と呼んでいる。

 今日の天気は晴れ~曇り。風が弱く、気温が高いので、寒くはない。最高気温は15℃、と初春の気温か?。
 榴岡天満宮の梅が咲いている、との報があった。早速、花見に出かける。
 榴岡天満宮の祭神は菅原道真(すがわらのみちざね)。菅原道真公と梅には深い繋がりがあり、神紋(しんもん、神社の紋)は梅。
 奈良時代に「花」と言えば梅(の花)と言うほどに古来から親しまれた花である。別名も、風待草(かぜまちぐさ)・好文木(こうぶんぼく)・春告草(はるつげぐさ)・・などと多い。平安時代中頃から、梅より桜(の花)が好まれるようになり、江戸時代以降は花といえば「桜」となった。
 ウメ(梅)・・(梅の果実も梅と言う)
 学名:Prunus mume
 バラ科サクラ属、落葉高木
 原産地は中国、奈良時代の遣隋使か遣唐使が持って来たと言う
 開花時期は1月~4月
 種類により開花期が異なる
 梅には300種以上の品種があり、野梅系・紅梅系・豊後系の3系統に分類され、梅の実を採るのは主に豊後系
 ◇榴岡天満宮
 榴岡天満宮は、天延2年(974)に平将春が陸奥国宇多郡(福島県)に勧諸したのが始まり。その後、宮城県柴田郡川内村に遷座、天文20年(1551)に国分小俵玉手崎(現在の仙台市青葉区東照宮)に移し、寛文6年(1666)に三代藩主・伊達綱宗により榴ヶ岡に遷座。寛文7年(1667)7月に丹塗りの社殿・唐門を新たに造営し、菅原道真公の真筆が奉納された。


葉酸受容体を発現する細胞だけを検出できる蛍光試薬の開発

2020-02-14 | 医学
 東京大学の研究グループは、動物体内で葉酸受容体を高発現しているがん部位を短時間にはっきりと蛍光検出できる近赤外光領域の蛍光試薬を開発した。本成果は、国際科学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で2020年1月26日付で公開された。
 ポイント
 〇生体深部での観察が可能な近赤外光領域の蛍光を発し、がん治療の標的分子として注目される葉酸受容体を発現する細胞だけを検出できる蛍光試薬を開発した。
 〇正常な生体組織への吸着を抑え、蛍光試薬の投与後わずか30分以内で、はっきりとがん部位を蛍光検出できた。
 〇培養細胞およびマウス摘出胚でも、選択的に葉酸受容体の発現を観察できた。
 葉酸受容体は、卵巣がんや子宮内膜がんにおける過剰発現やマウス胚における神経管閉鎖部位での特異的な発現が報告されており、臨床医学および生命科学研究において重要な標的分子である。実際に近年、葉酸受容体の発現を可視化する蛍光試薬を用いた臨床試験で、がん摘出手術中に目では見分けにくいがん部位を見つけるための利用が報告されている。また、がん治療における抗体の標的分子としても注目されている。
 研究グループは、動物体内で葉酸受容体を高発現しているがん部位を、短時間にはっきりと蛍光検出できる近赤外光領域の蛍光試薬を開発した。
 この蛍光試薬を、葉酸受容体を発現しているがんを持つモデルマウスに静脈内投与したところ、わずか30分以内ではっきりとがん部位を蛍光検出することができた。既存の蛍光試薬は動物個体への投与後、標的がん部位を明確にするために、それ以外の部位に吸着した余剰な蛍光試薬が排泄されるまで、数時間から1日程度の長い時間待つ必要があることが問題であった。
 そこで、蛍光試薬の正常組織に対する非特異的な吸着を抑えることで、蛍光試薬の排泄を待つ時間を短縮し、リアルタイムかつ高感度に蛍光観察ができると考え研究に着手した。
 研究グループは、これまで多くの蛍光色素の開発に成功している。その技術力をもとに、葉酸受容体に対するリガンドである葉酸とさまざまな蛍光団とを水溶性の高いペプチドリンカーで結合させた分子をデザイン、合成した。培養細胞で評価したところ、正常細胞への取り込みが見られなかった近赤外蛍光を発する蛍光試薬、FolateSiR-1を見いだすことに成功した。また、その分子構造が類似した蛍光試薬であるFolateSiR-2をコントロール(対照)化合物として、さらなる評価を行った。両蛍光試薬を葉酸受容体が過剰発現しているKB細胞(ヒト口腔がん細胞)に応用した結果、FolateSiR-1は細胞膜上のみから蛍光が観察された。また、この蛍光は過剰の葉酸による競合阻害によって消失したため、FolateSiR-1は葉酸受容体を選択的に可視化していると考えられた。FolateSiR-2は細胞膜上の蛍光に加え、細胞内からも点状の蛍光が観察された。この点状の蛍光は葉酸競合実験においても消失しないことから、一部のFolateSiR-2は葉酸受容体以外の細胞内部位にも取り込まれていると考えられた。
 これら蛍光試薬をマウス胚の染色へと応用したところ、FolateSiR-2においては胚全体から点状の蛍光が観察されたのに対し、FolateSiR-1は葉酸受容体が高発現していると報告されている神経管閉鎖部位において強い蛍光が観察された。また、KB細胞を用いたがんモデルマウスへと応用したところ、FolateSiR-2は投与後6時間経過後も正常細胞への吸着に由来するバックグラウンド蛍光が観察された一方で、FolateSiR-1はバックグラウンド蛍光の消失が早く、蛍光試薬投与後30分以内に高感度でがんの蛍光観察が可能であった。
 さらに、ヒト卵巣がんの凍結組織マイクロアレイへと応用した結果、正常組織サンプルからは蛍光は観察されず、葉酸受容体が発現したがん部位から蛍光を観察することに成功した。
 これらのことから、これまでの蛍光試薬の問題点を克服した高感度で葉酸受容体を発現した細胞を検出できる実用的な蛍光試薬であることが示された。
 開発した蛍光試薬を用いることで、手術中における目では見つけにくかった卵巣がんの蛍光検出などの臨床医療への応用が期待される。また、蛍光試薬の投与後、短時間でがんを高感度で検出できることから、手術直前および手術中での蛍光試薬の投与ができる可能性があり、よりその応用範囲が広がると期待される。さらに、生命科学研究では、マウス胚の神経管閉鎖部位における葉酸受容体の蛍光イメージングのように、葉酸受容体に関わる生命現象を明らかにすることができ、基礎研究においても有用なツールになると考えられる。
 本研究の成果は、将来、臨床医療と基礎研究の両面において、その進展に大きく貢献することが期待される。
 ◆用語解説
 〇葉酸受容体
 水溶性ビタミンである葉酸を細胞内に取り込む役割を担うたんぱく質のこと。
 〇胚
 動物の個体発生におけるごく初期の段階の個体のこと。
 〇蛍光
 紫外線や可視光線といった光が照射されることで、そのエネルギーを吸収し、分子(蛍光色素)が励起状態となり、それが基底状態に戻る際に放出される光のこと。
 〇近赤外光領域
 650から900nm(ナノメートル)の光の波長領域で、高い生体組織透過性と自家蛍光の低さから、動物個体での蛍光イメージングに向いている波長領域である。
 〇ヌクレオチド
 DNAやRNAの基本単位で、リン酸および糖、塩基で構成されているもの。
 〇神経管形成
 脳や脊髄などの中枢神経系を作り出す重要な過程のこと。
 〇mRNA
 核内でDNAから転写される、たんぱく質に翻訳され得る塩基配列情報を持ったRNAのこと。
 〇蛍光イメージング
 目的とする分子だけを蛍光で光らせて、蛍光顕微鏡を用いて観察するもの。

がん細胞排除の過程で生じるカルシウムウェーブの存在を発見

2020-02-13 | 医学
 北海道大学遺伝子病制御研究所の藤田恭之教授らの研究グループは、がん化の超初期段階において変異細胞が正常細胞層から排除される際に、変異細胞から周囲の正常細胞に向かってカルシウムイオンが花火のように同心円状に伝播することを突き止めた。このカルシウムウェーブを受けた正常細胞が変異細胞に向かって押し寄せるように動くことによって、変異細胞の排除を促進していることがわかった。変異細胞の排除に伴うカルシウムウェーブは,哺乳類培養細胞層及びゼブラフィッシュの皮膚細胞層の両者で同様に観察されることから、進化の過程で保存された普遍的な現象であることが示唆される。これらの研究成果は,これまでブラックボックスであったがんの超初期段階で生じる現象を明らかにするものであり、「世界初のがん予防薬」の開発につながることが期待できる。本研究成果は、 2020年1月31日公開のCurrent Biology誌にオンライン掲載。
 ポイント
 〇これまでブラックボックスであった、がん化の超初期段階で起こる現象を解明。
 〇変異細胞から周囲の正常細胞に伝播するカルシウムの波が変異細胞の排除を促進。
 〇新たながん研究分野の開拓、「世界初のがん予防薬」の開発につながることが期待。
 研究手法
 独自に確立した培養細胞系とマウスモデルを用いて、変異細胞が 正常細胞 層から排除される時の細胞内のカルシウムイオン濃度を解析した。
 研究成果
 変異細胞が正常細胞層から排除される際に変異細胞から周囲の正常細胞に向かってカルシウムイオンが同心円状に波のように伝播することを突き止めた。さらに、カルシウムウェーブを受けた正常細胞に様々な変化が生じ、その結果 正常細胞が変異細胞に向かって押し寄せるように動くことによって 変異細胞の排除を 押し出すように促進していることがわかった。
 今後への期待
 これらは,これまでブラックボックスであったがんの超初期段階で起こる現象を明らかにした研究成果であり、新たながん研究分野の開拓につながる可能性がある。この研究成果をさらに発展させることによって、世界初の「がん予防薬」の開発へつながることが期待される。
 ◆カルシウム
 カルシウムは原子番号20の金属元素。元素記号はCa。周期表第2族アルカリ土類元素の一種。
 人体に最も多いミネラルで、体重の約2%(約1kg)を占めている。生体ミネラルの中でCaが最も多く、生体の構造維持に必要な骨格を形成している。骨以外(体液中や細胞内)でCaはカルシウムイオン(Ca2+)として存在し、細胞内シグナル伝達を担う代表的なセカンドメッセンジャーの一つであり、広範な細胞機能の制御に関与している。
 体内のカルシウム濃度はビタミンD、副甲状腺ホルモン、カルシトニンの3つによって調節されている。カルシウム全体の99%は骨や歯の成分(ハイドロキシアパタイト)として存在する。脳神経系においても、神経伝達物質放出、シナプス可塑性、神経細胞死のトリガーとなるものであり、また各種グリア細胞機能の制御に不可欠である。