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世界の乾燥地域では、農地土壌の炭素量増加により穀物生産の干ばつ被害が軽減

2020-05-27 | 学問
 農研機構は、世界の穀物収量と土壌データを解析し、乾燥地域を中心とする世界の7割の農地では、農地の土壌に含まれる炭素量が多い場所で、干ばつ被害が抑えられていることを明らかにした。また、農地管理により土壌炭素を増やすことで、干ばつ年の穀物生産額を最大16%増加すると試算した。本成果から、農地土壌の炭素量を増やすことは、土壌保全に加え、大気中の二酸化炭素(CO2)減少を通じて温暖化の緩和につながり、さらに乾燥地域の食料安全保障を高めることが示された(2月6日発表)。この研究成果は科学国際誌「Scientific Reports」に掲載。
 研究の社会的背景と経緯
 開発途上国の農業生産の多くは雨水に依存しており、常に干ばつの危険に晒(さら)されている。また、開発途上国では、輸送インフラや貯蔵施設が脆弱なため、生産された食料の大部分が生産地域とその近傍で消費される。ひとたび干ばつによる生産低下が起こると食料安全保障が急激に損なわれる恐れがある。
 土壌中の炭素量が多いと干ばつによる作物収量の低下がある程度軽減されることが知られている。土壌に含まれる有機物(主に有機炭素)が水分保持と多孔質な土壌構造の発達に寄与するため、干ばつ時にも作物が土中から水をある程度、得られるためである。また、有機物が豊富な土壌は、多様な土壌生物を育み、作物への養分供給が緩やかに行われ、風雨や耕作に伴う土壌侵食を低減するといった土壌保全効果が高いことも知られている。
 また、農地土壌への炭素貯留による温暖化緩和効果が広く認識されている。世界の土壌に含まれる炭素量は大気中にCO2として存在する炭素の量に比べて2~3倍多く、世界の陸地面積の4割近くを農地(牧草地を含む)が占める。このため、農地土壌への炭素貯留を通じて温暖化緩和と食料安全保障の達成を目指す「4パーミルイニシアチブ」が2016年から国際的に推進されている。一方で、限られた政策的な介入で大きな効果を得るためには、土壌への炭素貯留がもたらすさまざまな便益(co-benefit)を考慮し、炭素貯留が複数の効果(例えばSDGsの達成)に同時に寄与する地域を明らかにすることが有効と考えた。
 そこで農研機構は、世界の主要穀物(トウモロコシ、コメ、コムギ、ダイズ)の収量と土壌データから、農地土壌に含まれる炭素量と穀物の干ばつ被害との関係を解析し、炭素貯留による干ばつ被害の軽減効果を具体的に推定した。
 研究の内容・意義
 1.干ばつ被害の受けやすさを表す指標として、「干ばつ耐性ギャップ」を定義した。農研機構が開発した、50kmメッシュ別の全球作物収量データベース(うち1992-2008)を解析し、主要穀物(トウモロコシ、コメ、コムギ、ダイズ)の干ばつ年の収量データを抽出し、平年収量に対する割合で表したものを、各メッシュの「干ばつ耐性(%)」とした。干ばつ耐性(%)が大きいほど干ばつ被害が小さいことになる。次に、気候条件が同じ地域のなかで、最も大きい干ばつ耐性(%)を「その気候条件の干ばつ年の潜在的な実現可能レベルa(%)」と仮定し、残りのメッシュについて、aと干ばつ耐性(%)の差を「干ばつ耐性ギャップ(ポイント)」として、世界地図上に示しました。干ばつ耐性ギャップは、与えられた気候条件の中で、干ばつ耐性を向上できる余地があるか調べるのに有効である。
 2.干ばつ耐性ギャップと土壌炭素量との関係を調べたところ、乾燥地域の農地では表層土壌中の炭素量が少ないほど干ばつ耐性ギャップが大きく、炭素量の増加に伴いギャップが小さくなり、炭素量が4~9キログラム/平方メートル以上ではギャップの値がほぼ一定となることが明らかになった。この結果から、土壌中の炭素量がもともと少ない乾燥地域の農地では、干ばつ耐性ギャップが大きく、農地管理により炭素量を増やすことで、干ばつによる収量低下を抑えられる(=干ばつ耐性ギャップを減らせる)と推定された。一方湿潤地域では、乾燥地域で見られたような干ばつ耐性ギャップと土壌炭素量の関係は見られなかった。
 3.干ばつ被害の軽減効果が見込める最大水準まで土壌炭素量を増やすと仮定すると、農地に追加で蓄えられる炭素量は世界全体で48.7億トンに上る。この土壌炭素量は、世界の2016年の年間CO2排出量の55%に相当し、世界の平均気温の上昇を0.011℃ (不確実性:0.008-0.014℃ )抑制できると見積もられた。
 4.上記の規模で農地土壌への炭素貯留が実現した場合、干ばつ年の世界の穀物生産額は、現状に比べ16%まで増加可能と試算された。土壌炭素管理が特に効果的な地域としては、干ばつ年の生産額の増加の観点からは中東・北アフリカが、また土壌の炭素量増加の観点からは、東南アジア・オセアニアと示唆された。
 5.本成果から、世界の乾燥・半乾燥地域における農地土壌の炭素貯留が、温暖化の緩和、食料安全保障、土壌保全、といった複数のSDGsの達成に同時に寄与できることが、具体的な数値とともに示された。
 今後の予定・期待
 本成果は、土壌炭素を増やすような農地管理が、特に土壌炭素に乏しい乾燥地域において、SDGsの複数(2飢餓をゼロに、13気候変動対策、15陸の豊かさを守る)の達成に同時に寄与できることを示しており、国際機関や各国での施策決定に役立つことが期待される。SDGsの推進にあたり、限られた資源・労力をどのSDGsに優先的に割り当てるかは常に問題になる。そのため、本成果のような複数のSDGsに寄与する方策を見出すことは重要である。
 今後は、ALTENA(アジア農耕地長期連用試験ネットワーク)7)などを活用し、気候や土壌条件ごとに炭素貯留に適した農地管理技術とその効果について検証を進める予定である。
 ◆用語の解説
 〇乾燥地域
 本研究では地域区分に年間の潜在蒸発散量に対する降水量の比を用いた。この比が0.45を下回ると乾燥地域、1.0を上回れば湿潤地域、両者の間は半乾燥地域と呼ぶ。
 〇土壌炭素
 土壌には炭酸塩などの無機炭素と枯死根や腐植といった有機炭素が含まれる。後者には有機態窒素やリン等の養分も多く含まれ、土壌有機物と呼ばれる。
 〇持続可能な開発目標(SDGs)
 SDGsは国連のミレニアム開発目標の後継である。ミレニアム開発目標では2015年までに達成すべき8つの目標を定められていが、SDGsでは2030年までに達成すべき17の目標が掲げられている。
 〇炭素貯留
 ここでは農地における炭素貯留を指します。農地で、堆肥や植物残渣などの有機物を土壌に入れると、徐々に微生物により分解され、一部は土壌有機炭素として土壌に留まる。この微生物の分解を受けにくい土壌有機炭素の増加を土壌炭素貯留と呼ぶ。京都議定書第3条4項において、各国が選択可能なCO2の吸収源活動として、炭素の貯留を高める農地管理が位置付けられているところである。土壌肥沃度が低く、温暖化に対して脆弱な乾燥地域の農地において炭素貯留に寄与する土壌管理技術には、不耕起・省耕起(蒸発散を抑え、節水になる)、土面被覆、アグロフォレストリー(樹木の間で農作物を栽培)、緑肥(カバークロップ)、堆肥やコンポスト、バイオ炭といった有機資材の投入などがある。
 〇4パーミルイニシアチブ
 4パーミル(4‰)とは1000分の4のことである。全世界の土壌中に存在する炭素の量を毎年1000分の4ずつ増やすことができたら、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を相殺できるという計算に基づき、土壌炭素を増やす活動を推進している国際的な取り組みである。2015年にパリで行われた気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の際にフランス政府主導で始まり、2019年12月現在、日本を含む413の国や国際機関、NPOなどが参加している。
 〇全球作物収量データベース
 主要穀物(トウモロコシ、コメ、コムギ、ダイズ)について世界の生産地域における50kmメッシュごとの推定収量が収録されたデータベース。メッシュ別の収量は統計収量データと衛星データを組み合わせて推定されている。初出は農業環境技術研究所(現:農研機構)『平成25年度 研究成果情報(第30集)』(http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/result/result30/)の「世界の主要生産地域における過去25年間の主要作物の推定収量データベース」。当初は120kmメッシュ・1982-2006年のデータのみで、その後、50kmメッシュ・1981-2011年のデータに更新された。
 〇ALTENA(アジア農耕地長期連用試験ネットワーク)
 炭素貯留、肥沃度等の土壌特性は長い時間をかけて変化する。その変化を捉え、農業の持続性を高めるためは、同一の農地管理を数十年以上モニタリングする長期連用試験が必須である。アジア各地で行われている長期連用試験を維持し情報を集約することが、アジアの食糧生産とその持続性に重要であるため、農研機構の研究者が中心となり長期連用試験に関わる研究者達のネットワークが2015年に設立された。

 今日の天気は曇り~晴れ。気温が高く、最高気温24℃・最低気温16℃とか。
 遠出の散歩で”カラー”畑を見つけた。魅力的な純白の仏炎苞が特徴的だ。
 ”カラー”は2タイプに分けられ、湿地でよく育つ「湿地性」と、乾燥した土地を好む「畑地性」があると言う。このカラーはどちらなのかは判らないが、たぶん「畑地性」かな。
 数十cmの花茎を伸ばし、茎の頂部に漏斗状の巻いた純白の仏炎苞(ぶつえんほう)をつける。花は黄色で花序軸上に密集し、仏炎苞に包まれる肉穂花序(にくすいかじょ)。
 ・・仏炎苞
  苞が大型に変化して、花弁(はなびら)の様になったもの
  仏像の背にある光背に、形・雰囲気が似ていることから
  苞には白・赤・黄・紫などの色があり、とても綺麗
 葉は楕円形・矢じり型・ハート型などがあり、白い斑点があることが多い。柄は太長く、基部は鞘状になる。名(カラー)の由来に、仏炎苞がワイシャツの襟(Collar)に似ていることから、との説がある。
 カラー
 別名:海芋(かいう)、オランダカイウ
 英名:Calla、Calla lily
 サトイモ科オランダカイウ属
 多年草(球根)
 原産地は南アフリカ、日本には江戸末期にオランダから渡来
 開花時期は5月~7月
  畑地性のカラーは春に植え、5月~7月に花が咲く
  11月ごろに葉が黄色くなって枯れ、1月~3月まで休眠する



第40回猿橋賞に京都大の市川温子准教授

2020-05-24 | 学問
 「女性科学者に明るい未来をの会」は、自然科学分野で優れた業績をあげている女性研究者をたたえる「猿橋賞」の2020年の受賞者に京都大の市川温子准教授(49)に贈ると発表した(5月23日)。
 市川氏は、謎に包まれた素粒子ニュートリノを研究。茨城県から飛ばしたニュートリノが、岐阜県の観測施設「スーパーカミオカンデ」にたどり着くまでに種類を変えて変身しているのを世界で初めて観測した。ニュートリノが変身する割合を詳しく調べるT2K実験の代表として、宇宙が誕生したときに物質と同じだけあったはずの反物質がなぜ消え、銀河や私たちといった物質が生き残ったのかという謎に挑んでいる。
 市川温子氏の研究業績要旨 (「女性科学者に明るい未来をの会」のHPから引用)
 「加速器をもちいた長基線ニュートリノ実験によるニュートリノの性質の解明」
 “Unraveling the nature of neutrino by accelerator-based long baseline neutrino experiment”
 宇宙初期にエネルギーの塊から物質と反物質が等しく生成されたはずであるのに、なぜ現在の宇宙 には反物質がほとんどなく、物質のみが存在するようになったのかという根源的な謎の解明が待たれている。素粒子物理学の世界では、粒子と反粒子の性質の違い(CP対称性の破れ)が探求され、これまでにクォークにおけるCP対称性の破れが発見されている。しかしその破れは物質優勢宇宙を説明できるほど大きくはない。ニュートリノにおいてCP対称性の破れを発見できれば、物質優勢宇宙成り立ちの 謎を解く鍵になると期待されている。市川温子氏はこのニュートリノの性質解明を目指し、加速器を用いたニュートリノ振動実験であるT2K(Tokai to Kamioka)実験に設計段階から携わって、ニュートリノ・ビームラインの建設と実験データ解析の両面で大きな貢献を成した。
 T2K実験では大強度陽子加速器J-PARCを用いて生成したミュー型ニュートリノを295km離れた検出器スーパーカミオカンデに向けて出射する。市川氏はこの長基線の高強度ニュートリノビームの生成と、 ニュートリノビームの性質を高精度で測定するモニター群の建設について様々な独創的なアイデアを出している。とくに、生成装置の中でも最も厳しい環境で安定に動作させる必要がある標的と電磁ホーンを、研究グループを牽引して予定通りに完成させた。これによりT2K実験は2011年から2013年にかけてミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに変化する「電子型ニュートリノ出現」を世界で初めて観測するという大きな成果を挙げた。電子型、ミュー型、タウ型の3種類のニュートリノが振動によって混合することが確かめられ、ニュートリノにおいてCP対称性の破れを発見できる可能性が開けた。
 市川氏は実験データ解析においても、ニュートリノビームの性質の決定とその誤差の伝搬について 独創的な手法を確立し、CP対称性の破れを探索するデータ解析を中心となって牽引してきた。ミュー 型ニュートリノから電子型ニュートリノへの変化と、反ミュー型ニュートリノから反電子型ニュートリノへの 変化に頻度の違いがあれば、CP対称性の破れが明らかになる。T2K実験は2014年から反ニュートリノビームを用いた実験を開始し、現在までに有意度2σでCP対称性の破れの兆候を捉えている。
 T2K実験では、今後さらに、J-PARC加速器の強度増強やニュートリノ・ビームラインの増強が計画されており、CP対称性の破れが大きい場合に有意度3σで検出することを目標としている。市川氏は優れた研究業績とともに卓越したリーダーシップを示し、2019年3月には約500名からなるT2K 実験の代表者に選ばれ、今後の舵取りを託されている。

 今日の天気は、曇り~晴れ。早朝は雨かな。畑作業は、絹サヤ取り・・沢山取れた。
 畑の隅に小さな花畑。”アイリス”の花が咲いている。”アイリス”はアヤメ科アヤメ属の植物で、アヤメの仲間は似た花が多く、これは根が球根のタイプの”ダッチアイリス”である。他に、全体的に小さい”ミニアイリス”、”ジャーマンアイリス”などがある。
 球根”アイリス”の中で良く栽培されているのが本種”ダッチアイリス”である。”タッチアイリス”は、名前のとおりオランダにおいて品種改良が進められた球根”アイリス”で、イベリア半島原産の”スパニッシュ・アイリス (Iris xiphium)”を基に北アフリカ原産の”ティンギダナ(Iris tingitana)”などが掛け合わせて作られた園芸種、との事。
 ”ダッチ・アイリス(Duch iris)”の別名には、”アイリス””球根アイリス””オランダアヤメ”などがある。”アイリス”と言えば、”ダッチアイリス”を指す様だ。
 アイリス(Dutch iris, Iris)
 別名:ダッチアイリス、オランダアヤメ(オランダ文目)
 学名:Iris hollandica
 アヤメ科アヤメ属
 秋植え球根
  夏に葉が枯れて休眠する
 原産地:地中海沿岸地方
 開花時期:4月~5月
 1つの花茎に数個の花が付く。
 花径は10cm程度。花被片は6個あリ、外側の3個の花被片は垂れ下がり、内側の花被片は直立する
 花色が豊富で色彩も多彩。花色は白・黄・青・青紫など、黄と白、黄と青などの複色花もある


学士院賞に斎藤氏ら9人に、北氏にエジンバラ公賞

2020-04-08 | 学問
 日本学士院は、優れた業績を上げた研究者に贈る日本学士院賞に、哺乳類で生殖細胞が発生する仕組みを解明した斎藤通紀・京都大高等研究院教授ら9人を選んだと発表した(4月6日)。斎藤氏には恩賜賞も贈る。自然保護分野の優れた研究を隔年でたたえる日本学士院エジンバラ公賞に、北潔・長崎大熱帯医学・グローバルヘルス研究科長を選んだ。
 日本学士院賞・恩賜賞
 斎藤通紀:京都大教授、細胞生物学・発生生物学。哺乳類の多能性幹細胞から生殖細胞を作り出す研究で、発生機構を解明。49歳。
 日本学士院賞
 田口正樹:東京大教授、西洋法制史。中世後期ドイツの国王裁判権の実態を、史料に基づき解明。54歳。
 神林龍:一橋大教授、労働経済学。非正規雇用の増加原因の分析などを通じ、日本の労働市場の全体像を提示。48歳。
 川合真紀:分子科学研究所長、物理化学・表面科学。固体表面に吸着した分子の研究で、触媒の機構解明に貢献。68歳。
 小嶋稔:東大名誉教授、地球惑星物理学。希ガスの同位体分析で、地球の大気や海の起源、進化論の基礎を構築した。89歳。
 岡田恒男:東大名誉教授、建築学。鉄筋コンクリート製の建築物の耐震性能を表す指標を開発し、耐震診断や改修に貢献。84歳。
 喜連川優:国立情報学研究所長、情報学。大量のデータ処理を飛躍的に高速化させる手法を開発。64歳。
 佐野輝男:弘前大教授、ウイロイド学。農作物に被害をもたらすウイロイドの病原性を解明し、診断や防除に貢献。64歳。
 間野博行:国立がん研究センター研究所長、ゲノム医科学・分子腫瘍学。肺がんの原因遺伝子を発見。がんゲノム医療の発展に貢献。60歳。
 日本学士院エジンバラ公賞
 北潔:長崎大熱帯医学・グローバルヘルス研究科長、生化学・寄生虫学。細菌や寄生虫、がん細胞などが低酸素環境に適応する仕組みを解明、新薬開発に向けた研究につなげた。69歳。
 〇授賞理由(斎藤通紀) 日本学士院より
 斎藤通紀氏は、マウス生殖細胞の形成機構を解明し、マウス多能性幹細胞から始原生殖細胞様細胞を試験管内で誘導、精子や卵子、健常な産仔を作出することに成功しました。その実験系に基づき、エピゲノムリプログラミングや卵母細胞分化機構・減数分裂誘導機構など、生殖細胞の発生における基幹現象の分子機構を解明しました。斎藤氏は、カニクイザル初期胚の発生機構を解析し、マウス・サル・ヒトにおける多能性細胞系譜の特性や霊長類生殖細胞の発生機構を解明するとともに、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞様細胞、さらに卵原細胞を誘導し、ヒト生殖細胞発生過程の試験管内再構成研究の礎を築きました。斎藤氏の研究は、生命の根源たる生殖細胞の発生機構を解明することでヒトや霊長類の進化機構を明らかにするのみならず、不妊や遺伝病・エピゲノム異常の原因究明につながり、医学に新しい可能性を提示するものです。
 用語解説
 多能性幹細胞
 自己複製能力と、身体を構成するほぼ全ての細胞に分化する能力を持つ細胞。受精卵から発生する胚盤胞を培養することで樹立される胚性幹細胞(embryonic stem cells: ES細胞)や、皮膚等の体細胞に特定因子を導入することで作製される人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells: iPS細胞)の総称。
 始原生殖細胞
 発生初期に形成される、精子や卵子の起源となる細胞。始原生殖細胞は、オスでは前精原細胞を経て精原細胞、精子へと、メスでは卵原細胞を経て卵母細胞、卵子へと分化する。始原生殖細胞様細胞は、多能性幹細胞から試験管内で誘導した、始原生殖細胞によく似た性質を持つ細胞。
 エピゲノムリプログラミング
 DNAの塩基配列を変えることなく、DNAやヒストンタンパク質に付与される様々な化学修飾(メチル化やアセチル化等)を介して遺伝子の働きを制御する仕組みをエピジェネティク制御と呼ぶ。エピゲノムとはエピジェネティク制御が付与されたゲノムの総体のことで、エピゲノムリプログラミングとは、始原生殖細胞の発生中にエピゲノムが大規模に再編成されることをいう。
 減数分裂
 父母由来の一対の染色体を持つ細胞(二倍体:始原生殖細胞、精原細胞、卵原細胞等)から、一倍体の細胞(精子、卵子)を形成する細胞分裂のことで、生殖細胞特異的に起こる。減数分裂前期では父母由来の相同染色体の間で組換えが起こり、その後、2回の細胞分裂により、まず相同染色体が、次に姉妹染色分体が分離され、一倍体の配偶子(精子、卵子)が形成される。相同染色体間の組換えにより新たな遺伝情報の組み合わせを持つ染色体が形成され遺伝的多様性を創り出す。

 朝から晴れ。夕方から夜にかけて雨の予報。・・畑にとっては恵の雨となる。
 道沿いの空き地で咲いている花、スズランの様な・”スイセン”の様な・”スノーフレーク”。フレーク・・小雪のかたまり”の意味らしい。別名は鈴蘭水仙(すずらんずいせん)、スズランに似た白い花の花弁の先に緑色の斑点が特徴だ。
 似た花に、”スノードロップ”があり、緑色の斑点が内冠にあるのが特徴。私は、両者を取り違える事が多い・・何故だろう。”スノードロップ(ガランツス・エルウィジー)”は、ヒガンバナ科ガランサス属、開花期は2月~3月である。
 スノーフレーク(Giant Snowflake)
 別名:鈴蘭水仙(すずらんすいせん)、大待雪草(おおまつゆきそう)
 学名:Leucojum aestivum
 ヒガンバナ科スノーフレーク属
 原産地は地中海沿岸
 多年草(秋植の球根草)
 開花時期は3月~5月
 地際から花茎を1~数本伸ばし、先端に花が数輪咲く
 花径は1.5cm程で釣り鐘状
 花色は白、花びらの先端に緑色の斑点


2020年日本国際賞、情報・符号理論と古代人ゲノム解読研究の欧米2博士に

2020-02-05 | 学問
 国際科学技術財団は、第36回となる2020年の日本国際賞を、デジタル通信に必要な情報理論・符号理論の研究に貢献した米マサチューセッツ工科大学名誉教授のロバート・ギャラガー博士(米国、88歳)と、古代人の骨のDNAを解析して古人類学の研究に貢献したドイツ・マックス・プランク進化人類学研究所教授のスバンテ・ペーボ博士(スウェーデン、64歳)に贈ると発表した(2月4日)。授賞式は4月15日に都内で行われる予定。
 〇「エレクトロニクス、情報、通信」分野
 ロバート・ギャラガー 博士(米国) マサチューセッツ工科大学名誉教授
 ギャラガー博士は、データ通信の際に外部からのノイズなどの影響により生じる誤りを検出して訂正する「LDPC符号(低密度パリティ検査符号)」と呼ばれる方法を考案した。この方法は信頼性や実用性が高く評価されて5G(第5世代移動通信システム)で採用されるなど、高速大容量通信を支える技術として期待されている。
 同財団によると、LDPC符号は、現在これに代わる符号が他に存在せず、今後コンピューター処理能力が飛躍的に向上すると考えられることなどから、適用範囲はさらに広がると予想されている。そして、情報通信の高速化、大容量化、低消費電力化などの課題解決に本質的、基本的な役割を果たすと期待されている。
 〇「生命科学」分野
 スバンテ・ペーボ 博士(スウェーデン)
 マックス・プランク進化人類学研究所 教授
 「現生人類(ヒト)の誕生と進化」の解明は古人類学の大きな課題だが、古人類学では発掘された骨や歯の化石の形態を元にその進化や分類が論じられてきた。ペーボ博士はDNAを抽出して解析する「遺伝学的手法」を取り入れて現生人類の進化の核心に迫る多くの成果を挙げた。
 具体的成果としては、ミトコンドリアDNAでなく、核DNAを解析することにより、アフリカ人を除く現生人類の全DNAの1~4%がネアンデルタール人から受け継がれていることが分かった。このことは、6~7万年前にアフリカを出た現生人類の祖先が、6万年前頃に中東付近で先住のネアンデルタール人と交雑した後に世界中に広がったという現生人類の移動シナリオを描き出しているという。
 ◆日本国際賞(Japan Prize)
 日本国際賞は、「科学技術において、独創的・飛躍的な成果を挙げ、科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献した」人物に対して、国際科学技術財団が授与する賞である。日本にもノーベル賞に匹敵するような賞が必要だとして、松下幸之助が基金(私財など約30億円)を提供。
 受賞対象は「物理、化学、工学」と「生命、農学、医学」の二つの領域で、受賞対象分野は1年に2つの分野である。受賞者には、各分野に賞金5000万円が贈られる。受賞者は生存者のみ。
 1985年に初回の授賞式が行われ、受賞者は今回を含めて13カ国の96人。

 朝焼けの空に鳥の影が一杯。何の鳥か?と思ったら”カー、カー”と。
 朝焼けが綺麗だな、鳥も早起きだな・・今日も1日が始まる。


日本学士院新会員にノーベル賞の梶田隆章さんら7人が選ばれる

2019-12-14 | 学問
 日本学士院(井村裕夫院長)は、梶田隆章さんら7人を新会員に選んだ(12月12日)。業績が大きい科学者から選ばれ、特別職の国家公務員(非常勤)で任期は終身。会員数は新会員を含め第1部(人文科学)が63人、第2部(自然科学)は71人で、会員は計134人となった。
 新会員(敬称略)
 井上正仁(いのうえ・まさひと)東京大名誉教授。70歳。
 刑事手続きでの違法収集証拠の排除や捜査の強制、任意処分を分析。立法や判例にも影響を与えた。
 北川進(きたがわ・すすむ)京都大特別教授。68歳。
 ナノメートルの精度で、規則的な空間構造や形状、機能をもつ多孔性物質を自在に設計、合成できる錯体化学の分野を開いた。
 梶田隆章(かじた・たかあき)東京大教授。60歳
 宇宙から飛来する素粒子ニュートリノを観測し、ニュートリノ振動を発見。ニュートリノに質量があることを証明した。ノーベル物理学賞を受賞した。
 榊裕之(さかき・ひろゆき)豊田工業大常務理事。75歳。
 半導体の超薄膜で電子の量子効果を研究。ナノエレクトロニクスの発展に先駆的に貢献した。
 笹月健彦(ささづき・たけひこ)九州大特別主幹教授。79歳。
 HLAという分子が免疫応答を制御することを証明。アレルギーなどの感受性の基盤を示した。
 垣添忠生(かきぞえ・ただお)日本対がん協会会長。78歳。
 膀胱(ぼうこう)がんで膀胱全摘除後も尿道から自然排尿が可能な術式を開発。世界初の女性の手術に成功した。
 藤吉好則(ふじよし・よしのり)東京医科歯科大特別栄誉教授。71歳
 クライオ電子顕微鏡(細胞などの試料を壊すことなく観察できる)の開発を通して、膜たんぱく質などの立体構造解析に成功。
 ◆日本学士院
 日本学士院は、文部科学省の特別の機関である。会員は、学術上の功績が顕著な科学者から選ばれる特別職の国家公務員。
 法第1条でその目的を、「学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関とし、学術の発達に寄与するため必要な事業を行う」と定めている。
 毎月定例の研究会を開催し、そこで研究発表が行われ、また研究成果は「日本学士院紀要」として公刊される。また、恩賜賞や日本学士院賞、エジンバラ公賞、日本学士院学術奨励賞の授賞も行っている。
 学士院会員は終身で、定員は150名である。年250万円の年金が支給される。死亡により欠員が生じた分科ごとに各部分科会員の投票により毎年12月に新会員が選定される(常に全欠員が補充されるわけではない)。
 1879年(明治12年)に東京学士会院として発足。その後、帝国学士院に改組され、太平洋戦争後に日本学士院となる。

実用数学技能検定1級に兵庫県西宮市の小学4年が合格、最年少記録を更新

2019-12-12 | 学問
 公益財団法人「日本数学検定協会」は、今年10月に実施した実用数学技能検定で、兵庫県西宮市の小学4年、安藤匠吾君(受検当時9歳)が理数系大学の卒業レベルとされる1級に合格したと発表した(12月10日)。昨年(2018年)、小5の11歳で合格した高橋洋翔君の最年少記録を塗り替えた。
 協会によると、安藤君は7歳ごろから数学検定への合格を目標に学習を始めた。2017年10月に小学校2年生(7歳)で中学校1年生程度の「数学検定5級」に合格後、2018年4月には小学校3年生(8歳)で中学校3年生程度の「3級」に、同年10月には高校3年生程度の「準1級」に合格し、2019年4月に1級1次に、今回の10月の検定で2次に合格したことで1級最年少合格の快挙を成し遂げた。
 「学んだ数学の知識を生かして、地球温暖化を止める研究など世の中の役に立てるように貢献したい」とコメントしている。
 1級は記述式で、多変数関数や計量線形空間など幅広い分野から出題される。今回の合格率は14.4%だった。
 実用数学技能検定
 1級
 実施年 受験者数 合格者数 合格率
 2018年  1,216   69    5.7%
 2017年  1,134   74    6.5%
 2016年  1,126   103    9.1%
 2015年  968   63    6.5%
 1級の検定
 1次 計算技能検定(7問):60分
 2次 数理技能検定(2題必須、5題から2題選択):120分
 1~5級の合格基準
 1次:全問題の70%程度
 2次:全問題の60%程度

 天気は晴れ~曇り。雲が多い、時々小雨がパラつく・・天気雨:「狐の嫁入り」かな。
 畑に行ったら、霜が幾度も降りたので、萎れた草木が多い。でも、とても元気で、緑緑の草株がある。
 ”ヒガンバナ(彼岸花)”の葉が大きく育っている。”ヒガンバナ(彼岸花)”は、花が咲く頃は葉がなく、葉があるときは花がなく、花と葉が一緒の時期がない。だから、”ヒガンバナ(彼岸花)”は葉見ず花見ず(はみずはなみず)とも呼ばれる。韓国では「花は葉を思い、葉は花を思う」・・相思華(さんちょ)と呼ぶとか。
 ヒガンバナ(彼岸花)
 別名:曼珠沙華(まんじゅしゃげ)
  異名多く、死人花(しびとばな)・地獄花(じごくばな)・捨子花(すてごばな)などと不吉さを表すものもある
 ヒガンバナ科ヒガンバナ属
 多年草(球根性植物)
 日本の固有種でなく、中国から伝来した史前帰化植物と考えられている
 開花時期は、9月(お彼岸の頃)
 花茎の成長はとても早く、花も数日で終わる
   (写真の花は、10月2日に撮影)


仁科記念賞、岩佐義宏教授、吉田滋教授、石原安野教授の3氏に贈る

2019-11-24 | 学問
 仁科記念財団は、原子物理学とその応用分野での優れた業績をたたえる2019年度(第65回) 仁科記念賞を、電圧を加えると超伝導になる材料を開発した東京大学の岩佐義宏教授と、ニュートリノの観測に貢献した千葉大学の吉田滋、石原安野両教授の計3氏に贈ると発表した(11月11日)。授賞式は12月6日東京都内で行われ、受賞者に賞状、賞牌と副賞が贈られる。
 岩佐氏は東京大学大学院工学系研究科教授の傍ら理化学研究所創発物性科学研究センターのチームリーダーを務めている。同氏の授賞理由は「電界誘起2次元超伝導の発見」。比較的小さな電圧でも加えると、電気抵抗がなくなり電流が流れ続ける超伝導になる材料を開発した。省エネ機器の開発につながる成果などとして評価されている。
 吉田氏は千葉大学大学院理学研究院教授、石原氏は同大学グローバルプロミネント研究基幹兼大学院融合理工学府教授。両氏の授賞理由は「超高エネルギー宇宙ニュートリノの発見」。両氏は、南極で実施中の国際実験に参加。氷上の観測装置で得られたデータの解析方法を考案、理論的に予測された高エネルギーのニュートリノの初検出に貢献するなどした。宇宙誕生の解明に役立つ成果として評価されている。
 ◆仁科記念賞
 仁科記念賞は、原子物理学者の故仁科芳雄博士(1890~1951年)の功績を記念して1955年創設された。
 これまでの受賞者からは、江崎玲於奈、小柴昌俊、小林誠、益川敏英、中村修二、梶田隆章の6氏のノーベル物理学賞受賞者を輩出している。これまで191人が受賞している。
 仁科芳雄(にしなよしお)は、日本の物理学者である。日本に量子力学の拠点を作ることに尽くし、宇宙線関係、加速器関係の研究で業績をあげた。日本の現代物理学の父である。

 今日は朝から小雨、風が少し強い。
 曇り空の日、塀の際で咲いている”ヒメツルソバ”。茎が横に這うように広がり、小さなピンク花(径1cm~1.5cm)が集合して金平糖の様に咲いている・・綺麗で可愛い。葉にはタデ科特有の暗紫色のV字模様があり、ところどころ紅葉している。
 ヒメツルソバ(姫蔓蕎麦)
 別名:寒虎杖(かんいたどり)、ポリゴナム
 タデ科イヌダテ属
 ヒマラヤ原産、明治時代にグラウンドカバー用に導入
 常緑多年草(寒い冬は枯れる)
  種子・株分け・挿し木で殖える
  葉にはタデ科特有の暗紫色のV字模様がある
 匍匐性 広がりは50cm以上となる
 開花時期は7月~11月
 花径は1cm~1.5cm、花色は薄紅
 小球形に小さな花が纏まっている


ノーベル賞経済学賞に貧困の緩和で業績の3氏に

2019-10-15 | 学問
 スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)は、2019年のノーベル経済学賞(Nobel Prize in Economics)を、貧困に関する研究の業績で、インド出身の米国人アビジット・バナジー(Abhijit Banerjee)氏、フランス出身の米国人エスター・デュフロ(Esther Duflo)氏、米国人のマイケル・クレマー(Michael Kremer)氏に授与すると発表した(10月14日)。
 アカデミーは、3氏の「世界の貧困緩和に向けた実験的アプローチ」が評価されたと説明。貧困との闘いにおいて、難問をより細かく、より対応しやすい問いに分割することによって、現場での実験を通じて解決できるようにするという、より効率的な方法を、3氏が見いだしたとたたえている。
 バナジー氏は1961年、インドで生まれた。その妻がフランス出身で46歳のデュフロ氏で、両氏は米マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授を務めている。54歳のクレマー氏は、ハーバード大学(Harvard University)教授。
 因みに、女性が受賞するのは、ノーベル経済学賞の50年の歴史上、2009年のエリノア・オストロム(Elinor Ostrom)氏に次いで、デュフロ氏が2人目となる。

ノーベル賞平和賞にエチオピアのアビー・アハメド首相、国境紛争を平和裏に終結

2019-10-12 | 学問
 ノルウェーのノーベル賞委員会は、2019年のノーベル平和賞をエチオピアのアビー・アハメド首相(43)に授与すると発表した(10月11日)。
 委員会は「平和、国際協力の実現に向けた努力、とりわけエリトリアとの国境紛争の解決に向けた、断固とした取り組み」を授賞理由に挙げた。
 二十年余り続いた隣国エリトリアとの国境紛争を終結に導いたほか東アフリカ地域の平和と安定に向けた取り組みが評価された。
 エチオピアとエリトリアの国境紛争は1998年に始まり、戦闘激化で約3年間で10万人が死亡。2000年代初頭まで断続的に戦闘が続いた。昨年4月に就任したアビー氏の呼び掛けに、エリトリアのイサイアス大統領が応じ、同年7月、和平が実現した。
 エリトリア、ジブチ間の国交正常化、ケニア、ソマリア間の領海争いの仲裁、スーダン国内の軍事政権と反体制派の交渉再開などにも尽力。委員会は、アビー氏がこの地域の和平と調和に「鍵となる役割を担う」と指摘した。
 政治犯の恩赦や野党勢力の合法化、政治への女性登用など、アビー氏が推進した内政改革の実績も評価された。ただ、自由で公正な総選挙はいまだ実現しておらず、民族紛争の悪化、難民の増加など課題は多い。
 アビー・アハメド氏
 1976年8月15日、エチオピア南部オロミア州生まれ。社会主義体制末期に反政府勢力に参加。政権交代後の1993年、国軍に入隊。2001年、マイクロリンク情報技術大卒。2010年に下院議員当選。科学技術相やオロミア州副知事を歴任。2018年4月、首相就任。
 ◆ノーベル平和賞
 ノーベル平和賞は、国家間の友好関係の促進や、軍備の削減・廃止などに貢献した個人や団体に贈られる。
 選考はノルウェーの議会によって任命された5人で構成する委員会が行う。選考委員会は、世界各国の有識者や議員などから1月末までに推薦された候補者のなかから受賞者を絞り込む。候補に挙がった人や団体の名前は50年間公表されないが、候補の数については明らかにしている。ことしはこれまでで4番目に多い301の個人と団体が候補にあがった、という。
 受賞者の決定は委員会の全会一致が原則だが、期限までに決まらない場合は多数決で決める。
 受賞者の発表と授賞式は、ノーベル賞のほかの賞がスウェーデンで行われるが、平和賞はノルウェーの首都オスロで行われる。

ノーベル賞文学賞はオルガ・トカルチュク氏とペーター・ハントケ氏に

2019-10-11 | 学問
 スウェーデン・アカデミー(Swedish Academy)は、2018年と2019年のノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)を、それぞれポーランド人作家のオルガ・トカルチュク(Olga Tokarczuk)氏とオーストリア人作家のペーター・ハントケ(Peter Handke)氏に授与すると発表した(10月10日)。
 ノーベル文学賞は1901年以降、116人に授与されているが、女性の受賞者はトカルチュク氏が15人目である。
 トカルチュク氏(Olga Tokarczuk)
 氏はポーランドにおいて今世代で最も優れた作家とみなされている。
 アカデミーは同氏の受賞理由として、「広範に及ぶ情熱により、生というものの形の境界の超越を表現する物語の想像力」を挙げた。
 ハントケ氏(Peter Handke)
 氏について同アカデミーは、「言語上の創意工夫により、人間の経験の周縁や特異性を探求した影響力のある作品」が受賞理由になったと明かし、「戦後の欧州において最大の影響力を誇る作家の一人という地位を確立した」と評価した。

ノーベル賞化学賞、リチウムイオン電池開発で吉野氏ら3氏に

2019-10-10 | 学問
 吉野彰さん、ノーベル賞化学賞おめでとうございます
 スウェーデン王立科学アカデミーは、2019年のノーベル化学賞を、旭化成の吉野彰名誉フェロー(71)、米テキサス大学のジョン・グッドイナフ教授(97)、米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のスタンリー・ウィッティンガム卓越教授に授与すると発表した(10月9日)。リチウムイオン電池の開発で、小型で高性能の充電池として携帯型の電子機器や電気自動車(EV)に搭載する主導的な役割を果たし、IT(情報技術)社会の発展に大きく貢献した功績が評価された。
 ノーベル委員会は、受賞理由について、「リチウムイオン電池は、軽くて、再充電できる強力なバッテリーでいまでは小型の携帯電話やノートパソコン、電気自動車などあらゆるものに使われている。太陽光や風力などのエネルギーを十分ためることができ化石燃料が必要ではない社会を作り出すことも可能にする」としている。
 日本のノーベル賞受賞は2018年の京都大学の本庶佑特別教授に続き27人目(米国籍を含む)。化学賞の受賞は2010年の根岸英一氏、鈴木章氏に続き計8人となった。
 ノーベル化学賞の受賞は
 吉野彰氏(71)
  1948年1月に大阪府吹田市で生まれ
  1972年に京都大大学院工学研究科修士課程を修了して旭化成に入社
  1992年イオン二次電池事業推進部商品開発グループ長、2001年電池材料事業開発室長、2017年名誉フェロー。
  九州大訪問教授、名城大教授も兼ねる。2004年紫綬褒章、2018年に日本国際賞を受賞している。
 ジョン・グッドイナフ氏(97、John Bannister Goodenough)
  1922年7月25日 にドイツ イェーナで生まれる
  アメリカ合衆国の固体物理学者。テキサス大学オースティン校教授。
  リチウムイオン二次電池開発の第一人者として知られる。
  金森順次郎とグッドイナフ-金森則を発見した。
 スタンリー・ウィッティンガム氏(77、Michael Stanley Whittingham)
  1941年12月22日にイギリスで生まれ
  1964年オックスフォード大学卒業
  1968年オックスフォード大学博士号取得
  1968-1972年スタンフォード大学 博士研究員
  1988年米ニューヨーク州立大学ビンガムトン大学 教授

ノーベル賞物理学賞、宇宙の進化を理論的に解明で欧米の3氏に

2019-10-09 | 学問
 スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)は、2019年のノーベル物理学賞(Nobel Prize in Physics)を、宇宙論における業績で、スイス人科学者のミシェル・マイヨール(Michel Mayor)氏とディディエ・ケロー(Didier Queloz)氏、カナダ系米国人のジェームズ・ピーブルズ(James Peebles)氏の3氏に授与すると発表した(10月8日)。 宇宙は138億年前に大爆発(ビッグバン)で誕生し、膨らみながら冷えていったとされる。誕生から38万年後に、それまで閉じ込められていた光が飛び交えるようになった。この光の名残が、いまも宇宙に満ちている「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれる電磁波である。
 ピーブルス氏は、宇宙が誕生した直後の光の名残から、宇宙の成り立ちを理論的に読み解いた。それにより、星や私たちといった目に見える物質は宇宙の5%ほどに過ぎず、残りのほとんどはダークマターやダークエネルギーだという新たな知見につながった。
 マイヨール氏とケロー氏は1995年、私たちの太陽系以外で初めてとなる惑星を、約50光年離れたペガスス座の方向に見つけた。木星のような巨大な惑星が恒星の周りを高速で回っているというこの発見はそれまでの常識を覆した。その後、これまでに4千を超える系外惑星が発見され、生命が生きられそうな惑星も見つかっている。
 ジェームズ・ピーブルス氏(James Peebles)
 物理宇宙論における理論的発見
 1935年カナダ生まれ。1962年に米プリンストン大で博士号取得後、同大教授を経て現在は名誉教授
 ミシェル・マイヨール氏(Michel Mayor)
 太陽型恒星を周回する太陽系外惑星の発見
 1942年スイス生まれ。ジュネーブ大で博士号取得。同大教授、同大天文台所長などを歴任し、2007年から名誉教授
 ディディエ・ケロー氏(Didier Queloz)
 1966年生まれ。19995年にスイス・ジュネーブ大で博士号取得。同大と英ケンブリッジ大の教授を務める

 朝早く畑に行った。
 見上げて空を見たら、雲少なく青空が広がっている。
 畑を見たら、ひょうたん形の小型南瓜の”バターナッツが実っている。
  バターナッツ・スクワッシュとは、つるになるカボチャの一種。ニホンカボチャの品種の一つ。
  熟した実を秋に収穫する「冬カボチャ」である。 ひょうたん型の実は重さが500g~1kg。
  上部はやや水っぽく、膨れた下部に種が入っている。
 ”シュウメイギク(秋明菊)”も咲いていた。
  シュウメイギク(学名:Anemone hupehensis var. japonica)は、キンポウゲ科の植物の一種。
  別名、キブネギク(貴船菊)。名前にキクが付くが、キクの仲間ではなくアネモネの仲間。


ノーベル生理学・医学賞に米ハーバード大学のウィリアム・ケーリンらの3氏に

2019-10-08 | 学問
 本年(2019年)もノーベル賞が発表される時期となった。
  ノーベル賞の発表日程(すべて日本時間)
  生理学・医学賞 10月7日(月)
  物理学賞 10月8日(火)18:45
  化学賞 10月9日(水)18:45
  文学賞 10月10日(木)20:00
  平和賞 10月11日(金)18:00
  経済学賞 10月14日(月)18:45
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は、本年(2019年)のノーベル生理学・医学賞を米ハーバード大学教授のウィリアム・ケーリン博士、英オックスフォード大学教授のピーター・ラトクリフ博士、米ジョンズホプキンズ大学教授のグレック・セメンザ博士の3名に贈ると発表した(10月7日)。
 業績は、「細胞が低酸素を検知し応答する仕組みの発見」。貧血や心血管疾患、がんなど多くの病気に関わり、治療法の開発にもつながった。
 セメンザ(Gregg Leonard Semenza)
 1956年、米国生まれ。ペンシルベニア大で医学博士号取得後、小児科医となる。1999年からジョンズ・ホプキンス大教授
 高地など酸素の薄い環境では、生物は酸素を運ぶ赤血球を増やすホルモンを分泌するなどして生き延びようとしている。セメンザ氏は細胞内でその指令を出すたんぱく質「HIF」を発見した。
 ケリン(William G. Kaelin)、ラトクリフ(Peter J. Ratcliffe)
 ケリン
 1957年、米国生まれ。デューク大で医学博士号取得。腫瘍内科医。2002年からハーバード大医学部教授
 ラトクリフ
 1954年、英国生まれ。ケンブリッジ大で医学博士号。腎臓内科医。オックスフォード大教授、フランシス・クリック研究所臨床研究ディレクター。
 ケリン氏とラトクリフ氏は酸素が足りている平常時に「HIF」を分解する酵素を見つけた。
 「HIF」は、平常時は細胞内で常に作られては消えているが、低酸素状態になると細胞をそのストレスから解放するために働き出す。研究成果は医療に応用される。慢性腎不全の人は赤血球を増やすホルモンをうまく作れず貧血になる。そこで「HIF」を活性化してホルモンを十分に分泌させる貧血治療薬が開発され、日本でも9月に承認された。

 今日は一日曇り、朝は小雨だった。
 田圃は稲刈りが終わった所が多い。その圃場の水路で、花が咲いている”ミゾソバ”を見つけた。”ミゾソバ”は湿った水辺に生え、群生する。
 ”ミゾソバ”の花は、ピンク色の小さな米粒の様な花で枝先に密集して咲く。花の花弁に見えるものは他のタデ科植物と同様に萼(ガク)である。
 名(ミゾソバ:溝蕎麦)の由来は、生える場所が溝や湿地で、草の姿がソバ(蕎麦)に似ているから。その他に、花の蕾が金平糖(こんぺいとう)のようだから”コンペイトウグサ”とか、葉の形が牛の顔形に似ているから”ウシノヒタイ”とも呼ばれる。
 ミゾソバ(溝蕎麦)
 別名:牛の額(うしのひたい)、金平糖草(こんぺいとうぐさ)
 タデ科イヌタデ属
 一年草
 湿気のある川辺・田の畔などに生える
 開花時期は8月~10月
 花は枝先に淡紅色が混じる白い小花(3~4mm)が密集して咲く
 果実は3~4mmの3稜のある卵球形のそう果


ブレークスルー賞、ブラックホール撮影に

2019-09-09 | 学問
 米グーグルやフェイスブックの創業者らが出資する財団は、優れた科学研究に贈る「ブレークスルー賞」の基礎物理分野に、ブラックホールの輪郭撮影に初めて成功した日本などの国際チームを選んだと発表した(9月5日)。賞金は300万ドルで、チームの347人で均等に分ける。
 チームには国立天文台水沢VLBI観測所(岩手県)や東北大・広島大・工学院大などの約20人の日本人、各国の研究機関が参加している。
 世界各地の電波望遠鏡を連携させ、地球から5500万光年離れた銀河(M87銀河)の中心部にある巨大ブラックホールを精密に観測し、4月に画像を公表した。強い重力のため光さえ逃れられないブラックホールの姿が明らかになったのは初めてで、財団は「重大な科学の謎に答えた」などと評価した。
 ◆ブレイクスルー賞(Breakthrough Prize)
 ブレイクスルー賞は、下記3部門からなる自然科学における国際的な学術賞。
 セルゲイ・ブリンとアン・ヴォジツキ(英語版)夫人、マーク・ザッカーバーグとプリシラ・チャン夫人、ユーリ・ミルナーとジュリア・ミルナー夫人、ジャック・マーとキャシー・チャン(張瑛)夫人により創設された。各賞とも毎年、受賞者を選定し、総額300万ドルが授与される。
  基礎物理学ブレイクスルー賞(Breakthrough Prize in Fundamental Physics)- 2012年創設
  生命科学ブレイクスルー賞(Breakthrough Prize in Life Sciences)- 2013年創設
  数学ブレイクスルー賞(Breakthrough Prize in Mathematics)- 2014年創設
 ブレークスルー賞はトップ科学者をたたえるもので、生命科学で最大5つ、物理学で1つ、数学で1つの賞を贈る。生命科学賞の1つは、パーキンソン病・神経変性疾患の理解に貢献した研究に特別に贈られる。
 これに加えて賞金10万ドルの最大6つのニューホライズンズ賞が基礎物理学、数学の分野の有望な若手研究者に贈られる。

 今日の天気は雨、強く降ったり弱く降ったり。風も強弱、昼頃から強くなる。夕方から回復する見込み。
 畑の”ラッカセイ”、花の盛りは終わったようだ。咲いているのは、1株に1~2個ほど。
 名(ラッカセイ:落花生)の由来は、花が受粉して落ち、地中で実を結ぶから。花が受粉後の花が地面に垂れ下がり、子房が地中に潜って結実する。つまり落花生は、地面の中で実がなる・・良い命名だ。
 ”ラッカセイ(落花生)”には色々な呼び方がある。ある人の説によると(特に根拠なし)、
  落花生:殻がついたもの
  南京豆:殻なしで薄皮が付いたもの
  ピーナッツ:薄皮を剥いたもの・・・??
 日本に来たのは東アジア経由で1706年で、”南京豆(唐人豆)”と呼ばれた。現在で多く栽培されているのは、この舶来種ではなく、明治維新以降に導入された品種である。初めて栽培は1871年、神奈川県大磯町の渡辺慶次郎。
 ラッカセイ(落花生)
 別名:南京豆(なんきんまめ)、唐人豆、ピーナッツ
 英名: peanut、groundnut
 学名: Arachis hypogaea
 マメ科ラッカセイ属
 一年草(地下結実性)
 原産地は南アメリカ大陸
  最も古い出土品は、紀元前2500年前のペルー、リマ近郊の遺跡から出土した大量のラッカセイの殻
 開花時期は6月~7月
 食用になる種子は、10月~11月に収穫
  1株で数十個程が生る


第16回江崎玲於奈賞に東京大学大学院工学系研究科教授の染谷隆夫氏

2019-08-31 | 学問
 茨城県科学技術振興財団は、ナノテクノロジー分野などで優れた業績を上げた研究者に贈る「第16回江崎玲於奈賞」授賞者に、伸縮性と柔軟性に富んだ有機半導体を開発した東京大学大学院工学系研究科教授の染谷隆夫氏を選んだ(掲載日:2019年8月26日)。
 今回の授賞対象になったテーマは「伸縮性と生体親和性をもつ新しい有機半導体エレクトロニクスの開拓」。有機半導体は、極薄で軽い電子部品を作ることができるのが特長だが、染谷氏は、ナノスケールの分子を制御することにより、電気的機能に優れて伸縮性も備えた大面積有機超薄膜とその積層化技術を先駆的に開拓した。そしてその成果を基に人間の皮膚や衣服などに貼り付けて体温などを測定するセンサーを実現。この技術は「ウェアラブルセンサー」「スキンディスプレイ」として医療分野のほか、スポーツ科学など幅広い応用に期待が寄せられている。
 ◆江崎玲於奈賞
 江崎玲於奈賞は、ノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈氏の栄誉にちなみ、優れた業績が科学技術振興や産業の活性化にも寄与することを目的に2003年に創設された。
 授賞者を決める江崎玲於奈賞委員会は、江崎氏を委員長に、白川英樹氏(ノーベル化学賞受賞者)、野依良治氏(同)、小林誠氏(ノーベル物理学賞受賞者)、天野浩氏(同)といった日本人ノーベル賞受賞者が名を連ねている。
 内容
 本賞(賞状)、副賞(1,000万円 協賛:関彰商事株式会社)、記念品
 対象者
 日本国内の研究機関においてナノサイエンスあるいはナノテクノロジーに関する研究に携わり、世界的に評価を受ける顕著な研究業績を挙げた研究者、原則1名
 主催等
 主催:一般財団法人茨城県科学技術振興財団、つくばサイエンス・アカデミー
 共催:茨城県

 早朝は雨か、路面が濡れていた。今日の天気は午前曇り、午後から晴れ。最高気温は30℃とか、まだまだ暑いな。
 朝の散歩で、塀に絡みついた”キカラスウリ”の花。小さな果実も見える。早朝の雨で、葉も花も濡れている。同じ様な花に、”カラスウリ”がある。両者とも夜から咲くが、朝まで咲いているのは、”キカラスウリ”である。
 名(キカラスウリ:黄烏瓜)は、花が”カラスウリ(烏瓜)”に似ており、果実が黄色に熟するから。”カラスウリ”の実は赤く熟し、”キカラスウリ”はやや大きな黄色の実となる。両者の花は、5裂花で花弁の先が糸状であるが、”カラスウリ”は花弁先端が分かれず、”キカラスウリ”は花弁先端が2つに分かれている。
 キカラスウリ(黄烏瓜)
 学名:Trichosanthes kirilowii var. japonica
 ウリ科カラスウリ属
 蔓性の多年草
 雌雄異株
 開花時期は7月~9月
 花は径5~10cm位で白色。花冠は数枚に裂け、その先は糸状となっている
 雌花はつぼみの段階で子房を持つ(雄花は持たない)
 秋に黄色に実が熟す(果実長径8cm~9cm、短径数cm)
 同じ仲間(同属)のカラスウリ(烏瓜・唐朱瓜)と花はとても良く似ており、
 カラスウリは赤い実(果実長径数cm、短径3.5cm位)がなる