筑波大学生存ダイナミクス研究センターの林純一名誉教授らの研究グループは、ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏に、核遺伝子SHMT2が関係していることに注目し、その仕組みをShmt2遺伝子破壊マウスを用いて解明したと発表した(11月8日)。研究成果は、「Scientific Reports」の電子版に掲載。
ポイント
〇Shmt2遺伝子破壊により、主に胎児肝臓で細胞分化遅延と細胞分裂遅延が誘発され、胎児肝臓の85%を構成する造血細胞が枯渇し、貧血になること。
〇この時、胎児肝臓ではグリシンが枯渇し、これがタウリン枯渇とヌクレオチド枯渇を誘発すること、そしてタウリン枯渇はエネルギー欠乏による細胞分化遅延を、ヌクレオチド枯渇は核酸枯渇による細胞分裂遅延を誘発すること。
この結果は、ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏のみならず、老化に伴う細胞分裂遅延の回復にも、グリシン摂取が有効である可能性を示唆している。
ヒトは老化に伴いエネルギー欠乏になるが、その原因についてはさまざまな仮説が提出されている。研究グループはこれまでに、「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏の原因が、突然変異ではなくゲノム修飾による可逆的な遺伝子発現の変化であり、特にSHMT2遺伝子の発現低下が重要である」という新仮説を提出し、この遺伝子を破壊したマウスに、胎児貧血と胚致死が誘発されることも明らかにした。今回は、Shmt2遺伝子破壊マウスの胎児組織を用いた質量分析等により、この新仮説の一部を検証した。
新化説のうち、「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏の原因として、SHMT2遺伝子の発現量低下が重要である」という部分を検証するため、研究グループはまず、Shmt2遺伝子破壊マウスを用いて、胚致死前(13.5日胚)の肝臓と脳のエネルギー産生能を調べた。その結果、肝臓で著しいエネルギー欠乏が生じていることが確認された。エネルギー欠乏は成体の造血組織である骨髄の造血細胞分化を抑制することから、胎児の造血組織である肝臓の造血細胞分化を調べたところ、Shmt2遺伝子破壊マウスの細胞分化も抑制されていた。
さらに肝臓の重量も低下しており、肝臓内にある造血細胞の細胞分裂遅延も明らかになった。マウス13.5日胚の肝臓は85%が造血細胞で構成されていることから、これらの結果は、エネルギー欠乏による造血細胞分化遅延と、造血細胞の分裂遅延が原因で、胎児貧血が誘発されたことを示している。
また、Shmt2遺伝子破壊によりどのような仕組みでエネルギー欠乏と細胞分裂阻害になるのかを質量分析等で調べた結果、グリシン枯渇のみならずタウリン枯渇とヌクレオチド枯渇も誘発されていた。タウリンはエネルギー産生に、ヌクレオチドは核酸合成に必須であるため、両者の枯渇が、それぞれエネルギー欠乏と細胞分裂遅延につながったと考えられる。
Shmt2遺伝子の働きはセリンからグリシンへの変換であるため、Shmt2破壊による胎児肝臓でのグリシン枯渇は予想通りだったが、脳ではグリシン欠乏が見られなかった。これは Shmt2遺伝子とは別の遺伝子(Gcat等)を使ってスレオニンからグリシンを得ているためと考えられる。一方、胎児の肝臓は、活発な細胞分裂と細胞分化で大量の血球を作るためにShmt2遺伝子の発現を高めており、これが原因でShmt2 遺伝子破壊が胎児貧血を誘発したと考えられた。
ヒトSHMT2遺伝子の異常が原因の胎児貧血は、妊婦がグリシンを摂取することで緩和される可能性があるため、研究グループは、これについてShmt2遺伝子破壊マウスで検証していくとしている。また今回の研究により、ヒトSHMT2遺伝子の発現低下が「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏」のみならず、「ヒトの老化に伴う細胞分裂遅延」の原因である可能性が示唆された。したがって、グリシン摂取がこの両方を緩和することが期待される。
一方、SHMT2遺伝子の発現抑制はがん細胞の分裂速度も抑制されるという報告もある。そうだとすれば、ヒトの老化に伴うSHMT遺伝子の発現抑制は、エネルギー欠乏と細胞分裂遅延を来すという負の側面と同時に、老化とともに発症頻度が高まるがん細胞の増殖(細胞分裂)を抑制し、逆に健全な老化(長寿)に貢献している、つまり老化を促進することでがん化を抑制するという別の側面も持つ可能性がある。研究グループは、「グリシン摂取については、今後さらに、がん細胞の増殖を促進する可能性を考慮した研究が必要だ」と、述べている。
◆グリシン
グリシン(glycine) は、タンパク質を構成するアミノ酸の中で最も単純な形を持つアミノ酢酸のこと。別名グリココル。糖原性アミノ酸である。非極性側鎖アミノ酸に分類される。
多くの種類のタンパク質ではグリシンはわずかしか含まれていないが、ゼラチンやエラスチンといった、動物性タンパク質のうちコラーゲンと呼ばれるものに多く(全体の3分の1くらい)含まれる。
化学式:C2H5NO2、平均モル質量: 75.07グラム/モル
早朝~朝は雨。次第に晴れてきた。風も弱く、雨上がりの緑はつやつやと光っている、外の空気が美味しいと感じる。
散歩道で、丸丸とした実を沢山付けた”トウネズミモチ”を見つけた。多くの樹では実はもう鳥に実を食べられているが、沢山残っている樹がある。・・この樹は残っている。
”ネズミモチ”と”トウネズミモチ”は葉・花・実とも良く似ており、判別はチョット難しい。簡単な判別は葉の葉脈で、葉を裏から日に透かして見ると、ネズミモチの側脈は見えないか不明瞭でトウネズミモチは明瞭に見える。遠くからは樹枝の形で、”ネズミモチ”は灌木で”トウネズミモチ”は樹木のようだ。開花時期は、ネズミモチ;6月頃、トウネズミモチ;7月頃である。名(トウネズミモチ:唐鼠黐)の由来は、文字通り中国から来た”ネズミモチ”から。
因みに、種が鳥により運ばれ、野生化したものが多く、在来の植生に影響を与えるとして、”要注意外来植物”に指定されている
トウネズミモチ(唐鼠黐)
学名:Ligustrum lucidum
モクセイ科イボタノキ属
常緑高木(樹高は15m~20m)
中国中南部原産、明治初期に渡来
開花時期は6月~7月
枝先に沢山の白い花を付ける、花は径数mmで長さ3~4mm
実は径1cm位のほぼ球形で、10月~12月に紫黒色に熟し、実の表面に白い粉を帯びる
ポイント
〇Shmt2遺伝子破壊により、主に胎児肝臓で細胞分化遅延と細胞分裂遅延が誘発され、胎児肝臓の85%を構成する造血細胞が枯渇し、貧血になること。
〇この時、胎児肝臓ではグリシンが枯渇し、これがタウリン枯渇とヌクレオチド枯渇を誘発すること、そしてタウリン枯渇はエネルギー欠乏による細胞分化遅延を、ヌクレオチド枯渇は核酸枯渇による細胞分裂遅延を誘発すること。
この結果は、ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏のみならず、老化に伴う細胞分裂遅延の回復にも、グリシン摂取が有効である可能性を示唆している。
ヒトは老化に伴いエネルギー欠乏になるが、その原因についてはさまざまな仮説が提出されている。研究グループはこれまでに、「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏の原因が、突然変異ではなくゲノム修飾による可逆的な遺伝子発現の変化であり、特にSHMT2遺伝子の発現低下が重要である」という新仮説を提出し、この遺伝子を破壊したマウスに、胎児貧血と胚致死が誘発されることも明らかにした。今回は、Shmt2遺伝子破壊マウスの胎児組織を用いた質量分析等により、この新仮説の一部を検証した。
新化説のうち、「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏の原因として、SHMT2遺伝子の発現量低下が重要である」という部分を検証するため、研究グループはまず、Shmt2遺伝子破壊マウスを用いて、胚致死前(13.5日胚)の肝臓と脳のエネルギー産生能を調べた。その結果、肝臓で著しいエネルギー欠乏が生じていることが確認された。エネルギー欠乏は成体の造血組織である骨髄の造血細胞分化を抑制することから、胎児の造血組織である肝臓の造血細胞分化を調べたところ、Shmt2遺伝子破壊マウスの細胞分化も抑制されていた。
さらに肝臓の重量も低下しており、肝臓内にある造血細胞の細胞分裂遅延も明らかになった。マウス13.5日胚の肝臓は85%が造血細胞で構成されていることから、これらの結果は、エネルギー欠乏による造血細胞分化遅延と、造血細胞の分裂遅延が原因で、胎児貧血が誘発されたことを示している。
また、Shmt2遺伝子破壊によりどのような仕組みでエネルギー欠乏と細胞分裂阻害になるのかを質量分析等で調べた結果、グリシン枯渇のみならずタウリン枯渇とヌクレオチド枯渇も誘発されていた。タウリンはエネルギー産生に、ヌクレオチドは核酸合成に必須であるため、両者の枯渇が、それぞれエネルギー欠乏と細胞分裂遅延につながったと考えられる。
Shmt2遺伝子の働きはセリンからグリシンへの変換であるため、Shmt2破壊による胎児肝臓でのグリシン枯渇は予想通りだったが、脳ではグリシン欠乏が見られなかった。これは Shmt2遺伝子とは別の遺伝子(Gcat等)を使ってスレオニンからグリシンを得ているためと考えられる。一方、胎児の肝臓は、活発な細胞分裂と細胞分化で大量の血球を作るためにShmt2遺伝子の発現を高めており、これが原因でShmt2 遺伝子破壊が胎児貧血を誘発したと考えられた。
ヒトSHMT2遺伝子の異常が原因の胎児貧血は、妊婦がグリシンを摂取することで緩和される可能性があるため、研究グループは、これについてShmt2遺伝子破壊マウスで検証していくとしている。また今回の研究により、ヒトSHMT2遺伝子の発現低下が「ヒトの老化に伴うエネルギー欠乏」のみならず、「ヒトの老化に伴う細胞分裂遅延」の原因である可能性が示唆された。したがって、グリシン摂取がこの両方を緩和することが期待される。
一方、SHMT2遺伝子の発現抑制はがん細胞の分裂速度も抑制されるという報告もある。そうだとすれば、ヒトの老化に伴うSHMT遺伝子の発現抑制は、エネルギー欠乏と細胞分裂遅延を来すという負の側面と同時に、老化とともに発症頻度が高まるがん細胞の増殖(細胞分裂)を抑制し、逆に健全な老化(長寿)に貢献している、つまり老化を促進することでがん化を抑制するという別の側面も持つ可能性がある。研究グループは、「グリシン摂取については、今後さらに、がん細胞の増殖を促進する可能性を考慮した研究が必要だ」と、述べている。
◆グリシン
グリシン(glycine) は、タンパク質を構成するアミノ酸の中で最も単純な形を持つアミノ酢酸のこと。別名グリココル。糖原性アミノ酸である。非極性側鎖アミノ酸に分類される。
多くの種類のタンパク質ではグリシンはわずかしか含まれていないが、ゼラチンやエラスチンといった、動物性タンパク質のうちコラーゲンと呼ばれるものに多く(全体の3分の1くらい)含まれる。
化学式:C2H5NO2、平均モル質量: 75.07グラム/モル
早朝~朝は雨。次第に晴れてきた。風も弱く、雨上がりの緑はつやつやと光っている、外の空気が美味しいと感じる。
散歩道で、丸丸とした実を沢山付けた”トウネズミモチ”を見つけた。多くの樹では実はもう鳥に実を食べられているが、沢山残っている樹がある。・・この樹は残っている。
”ネズミモチ”と”トウネズミモチ”は葉・花・実とも良く似ており、判別はチョット難しい。簡単な判別は葉の葉脈で、葉を裏から日に透かして見ると、ネズミモチの側脈は見えないか不明瞭でトウネズミモチは明瞭に見える。遠くからは樹枝の形で、”ネズミモチ”は灌木で”トウネズミモチ”は樹木のようだ。開花時期は、ネズミモチ;6月頃、トウネズミモチ;7月頃である。名(トウネズミモチ:唐鼠黐)の由来は、文字通り中国から来た”ネズミモチ”から。
因みに、種が鳥により運ばれ、野生化したものが多く、在来の植生に影響を与えるとして、”要注意外来植物”に指定されている
トウネズミモチ(唐鼠黐)
学名:Ligustrum lucidum
モクセイ科イボタノキ属
常緑高木(樹高は15m~20m)
中国中南部原産、明治初期に渡来
開花時期は6月~7月
枝先に沢山の白い花を付ける、花は径数mmで長さ3~4mm
実は径1cm位のほぼ球形で、10月~12月に紫黒色に熟し、実の表面に白い粉を帯びる
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