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2025年の正月、SNSに流れてきた毎日新聞の「美術・この1年」を読んで
「そうそう、これだよ。こういうちゃんとした回顧ものを読みたかったし、自分も書きたかったんだよ」
という思いを強くしました。
短い行数の中に、たくさんの情報と要素を盛り込みつつ、単なる羅列に終わらずに1年を振り返っている、読み応えのある記事なのです。
ちなみに、毎日新聞の関連サイトとして「アートの森」というのがあり、「書・この1年」「写真・この1年」もあわせて無料で読むことができます。
昨年は、6月いっぱいで仕事をやめたこともあり、いつになくあちこちに美術展や芸術祭を見に行った年でした。
しかし時間の使い方が下手なのか、遠出した記録の多くは未完のままになっています。
このままでは、筆者自身もどんどん忘れていきそうなので、旅の途中経過をいったんまとめておかなくてはいけません。
●2024年春 東京 3月末。全22回のうち「中平卓馬展」以外は掲載済み。
●4月17~19日、東京・上野→京都。 最後の出張。全20回を予定していましたが、1回もアップできていません。
「雪舟伝説」(京都国立博物館)は、画聖といわれる雪舟はもとより、彼がいかに後世に影響を与えたかという点を重点的に振り返ったユニークな視点で、見せました。
京都国立近代美術館の富岡鉄斎展は、明治維新の影響もあまり受けずに江戸から明治にかけて文人画など多方面に活躍した画家の回顧展。ボリュームはあったけれど、どこが偉大さの肝なのかは筆者には結局わからずじまい
●5月8~10日、横浜・千葉県・東京 概略のみ掲載
横浜トリエンナーレは、まさにいまの世界に向き合ってみせた力業のキュレーティング。2024年のベストワン。いまの日本で見ると、いささか政治的に感じられるかもしれませんが、たぶんこれが現代アートの世界標準なのだと思います。
「100年後芸術祭 内房総アートフェス」は、中﨑透、深澤孝史、草間彌生といった、各地の芸術祭でおなじみの顔ぶれがメインで、楽しめました。ごく一部しか制覇できていませんが。
東京都現代美術館の「翻訳できないわたしの言葉」はテーマは面白いけれど、映像とテキストが多くて疲れるのがいまの現代アートっぽい。同会場の「ホー・ツーニェン エージェントのA」は、シンガポール出身の作家が、東アジアの現代史(すなわちコロニアリズムの歴史ともいえる)に膨大な映像とイメージで切り結んだ力業。
オープニングのゲリラ的パフォーマンスが話題にもなった「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」(国立西洋美術館)。顔ぶれの豊かさと、提起している問題の重要性・多様さは勉強になりましたが、最終的に絵画へと話をもっていくキュレーティングにはいささか強引な印象も抱きました
●7月10、11日関西の旅 旅程のみ。
「没後30年 木下佳通代」(大阪中之島美術館)は、関西前衛アートシーンの一翼を担い、形而上学な問いに真摯に向き合った画家の歩みをとらえ、充実した企画でした。美術館が歴史を発掘し、伝え、残していくという役割を自覚しているからこそできた展覧会だと思います。
兵庫県立美術館で見た「描く人、安彦良和」は、オホーツク管内遠軽町生まれの稀代のアニメーター・漫画家の全貌を紹介した圧巻の展示。あらためて、絵のうまさに脱帽です。全貌といったけれど、これでもごく一部なんだろうなあ。実現しなかった企画がけっこうあったのは意外で、それについても企画書などが展示されていました。
国立国際美術館の梅津庸一展も見ました。
・白老日帰りの旅 7月。最終回の「その9」まで来ているが、実は藤戸竹喜展を詳しく紹介していません
・2024年夏の旅 8月、深川→旭川→東川→札幌→釧路→根室。計28回予定のうち、(18)まで掲載済み。「落石計画」の分などがまだです。すみません
●大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024への旅 9月。掲載予定回数は未定のまま、第12回で中断。第13回はクリスチャン・ボルタンスキーになる見通し。
実に16年ぶりだったが、作品の多様性、芸術祭としてのスケールの大きさは圧巻。札幌の深澤孝史さんが監修を務めた「アケヤマ」、川俣正アーカイヴについては、きちんと書いておかなくては…
「日本が見たドニ|ドニの見た日本」は掲載済み。19世紀末から20世紀にかけてナビ派の主要画家として活躍したモーリス・ドニと日本とのかかわりに焦点を当てた好企画
帰路に東京で見た内藤礼「生まれておいで 生きておいで」は、東博のコレクションを絡ませて構成したインスタレーション。ただ、会場の動線に疑問が残り、空間の完成度という点では同時開催の銀座エルメスのほうが感銘を受けた
・「ROOTS & ARTS しらおい/白老文化芸術共創」、Muroran Art Project 鉄と光の芸術祭 9月。前者は4回ほど、室蘭は8回掲載予定のまま未完
・伊達と函館に行ってきた 10月。「赤光社 百周年記念展」など全5回掲載済み
・十勝日帰りバスの旅 10月。全10回予定のうち、7回目まで掲載済み。引出しアート展と大橋鉄郎展が残っています。ごめんなさい
●2024年秋、東京の旅 初回あらましのみ。
特別展「はにわ」(東博)は、とにかくハニワ推しの展覧会。
これを見た後に「ハニワと土偶の近代」を東京国立近代美術館で見ると、一見客観的な考古学の対象として研究・叙述されてきたと思われがちなハニワ(この展覧会は、土偶は脇役)の表象やテキストが、時代の影響を強く受けていることがよくわかる。いわば、ハニワが、あの戦争に“動員”されてきたことを明らかにした展覧会といえそう。
「日本現代美術私観 高橋龍太郎コレクション」(東京都現代美術館)はとにかくものすごいボリューム。個人のコレクションという分量をはるかに超えている。道内関係で、青木美歌と國松希根太の作品もあったが、冒頭に久保守(札幌出身)の絵画が展示されていたのが印象に残った。ただ、個人コレクションなので、当然好みなどはあり、もの派や李禹煥、川俣正など「モノが残らない系の作家」については脱落している。
・11月15日納内→深川→岩見沢 「紺野修司展」など全6回完了
・晩秋の西胆振・羊蹄山麓をゆく~2024年11月21日 概要はアップ済み。麓彩会展、野生の学舎については未掲載
・2024年12月、釧路へ 連載中。全32回予定のうち「天と地と」(道立釧路芸術館)など、(20)まで掲載済み。展覧会で残っているのは吉野隆幸個展のみで、近く掲載予定
小樽、岩見沢、石狩管内新篠津村、北広島、恵庭、千歳、江別、空知管内浦臼町、同長沼町、同栗山町、夕張、滝川、歌志内、苫小牧、後志管内岩内町、同喜茂別町など近場にも足を運びましたが、省略しました。
上記の毎日新聞の回顧記事では22の展覧会(芸術祭を含む)が言及されています。筆者は5度本州へ行って、22のうち9を見ており、地理的なハンディキャップを考慮すればわれながら健闘していると思います。
しかし、ちゃんとテキストに残している率が低すぎ、これは猛省しなくてはなりません。
「そうそう、これだよ。こういうちゃんとした回顧ものを読みたかったし、自分も書きたかったんだよ」
という思いを強くしました。
短い行数の中に、たくさんの情報と要素を盛り込みつつ、単なる羅列に終わらずに1年を振り返っている、読み応えのある記事なのです。
ちなみに、毎日新聞の関連サイトとして「アートの森」というのがあり、「書・この1年」「写真・この1年」もあわせて無料で読むことができます。
昨年は、6月いっぱいで仕事をやめたこともあり、いつになくあちこちに美術展や芸術祭を見に行った年でした。
しかし時間の使い方が下手なのか、遠出した記録の多くは未完のままになっています。
このままでは、筆者自身もどんどん忘れていきそうなので、旅の途中経過をいったんまとめておかなくてはいけません。
●2024年春 東京 3月末。全22回のうち「中平卓馬展」以外は掲載済み。
●4月17~19日、東京・上野→京都。 最後の出張。全20回を予定していましたが、1回もアップできていません。
「雪舟伝説」(京都国立博物館)は、画聖といわれる雪舟はもとより、彼がいかに後世に影響を与えたかという点を重点的に振り返ったユニークな視点で、見せました。
京都国立近代美術館の富岡鉄斎展は、明治維新の影響もあまり受けずに江戸から明治にかけて文人画など多方面に活躍した画家の回顧展。ボリュームはあったけれど、どこが偉大さの肝なのかは筆者には結局わからずじまい
●5月8~10日、横浜・千葉県・東京 概略のみ掲載
横浜トリエンナーレは、まさにいまの世界に向き合ってみせた力業のキュレーティング。2024年のベストワン。いまの日本で見ると、いささか政治的に感じられるかもしれませんが、たぶんこれが現代アートの世界標準なのだと思います。
「100年後芸術祭 内房総アートフェス」は、中﨑透、深澤孝史、草間彌生といった、各地の芸術祭でおなじみの顔ぶれがメインで、楽しめました。ごく一部しか制覇できていませんが。
東京都現代美術館の「翻訳できないわたしの言葉」はテーマは面白いけれど、映像とテキストが多くて疲れるのがいまの現代アートっぽい。同会場の「ホー・ツーニェン エージェントのA」は、シンガポール出身の作家が、東アジアの現代史(すなわちコロニアリズムの歴史ともいえる)に膨大な映像とイメージで切り結んだ力業。
オープニングのゲリラ的パフォーマンスが話題にもなった「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」(国立西洋美術館)。顔ぶれの豊かさと、提起している問題の重要性・多様さは勉強になりましたが、最終的に絵画へと話をもっていくキュレーティングにはいささか強引な印象も抱きました
●7月10、11日関西の旅 旅程のみ。
「没後30年 木下佳通代」(大阪中之島美術館)は、関西前衛アートシーンの一翼を担い、形而上学な問いに真摯に向き合った画家の歩みをとらえ、充実した企画でした。美術館が歴史を発掘し、伝え、残していくという役割を自覚しているからこそできた展覧会だと思います。
兵庫県立美術館で見た「描く人、安彦良和」は、オホーツク管内遠軽町生まれの稀代のアニメーター・漫画家の全貌を紹介した圧巻の展示。あらためて、絵のうまさに脱帽です。全貌といったけれど、これでもごく一部なんだろうなあ。実現しなかった企画がけっこうあったのは意外で、それについても企画書などが展示されていました。
国立国際美術館の梅津庸一展も見ました。
・白老日帰りの旅 7月。最終回の「その9」まで来ているが、実は藤戸竹喜展を詳しく紹介していません
・2024年夏の旅 8月、深川→旭川→東川→札幌→釧路→根室。計28回予定のうち、(18)まで掲載済み。「落石計画」の分などがまだです。すみません
●大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024への旅 9月。掲載予定回数は未定のまま、第12回で中断。第13回はクリスチャン・ボルタンスキーになる見通し。
実に16年ぶりだったが、作品の多様性、芸術祭としてのスケールの大きさは圧巻。札幌の深澤孝史さんが監修を務めた「アケヤマ」、川俣正アーカイヴについては、きちんと書いておかなくては…
「日本が見たドニ|ドニの見た日本」は掲載済み。19世紀末から20世紀にかけてナビ派の主要画家として活躍したモーリス・ドニと日本とのかかわりに焦点を当てた好企画
帰路に東京で見た内藤礼「生まれておいで 生きておいで」は、東博のコレクションを絡ませて構成したインスタレーション。ただ、会場の動線に疑問が残り、空間の完成度という点では同時開催の銀座エルメスのほうが感銘を受けた
・「ROOTS & ARTS しらおい/白老文化芸術共創」、Muroran Art Project 鉄と光の芸術祭 9月。前者は4回ほど、室蘭は8回掲載予定のまま未完
・伊達と函館に行ってきた 10月。「赤光社 百周年記念展」など全5回掲載済み
・十勝日帰りバスの旅 10月。全10回予定のうち、7回目まで掲載済み。引出しアート展と大橋鉄郎展が残っています。ごめんなさい
●2024年秋、東京の旅 初回あらましのみ。
特別展「はにわ」(東博)は、とにかくハニワ推しの展覧会。
これを見た後に「ハニワと土偶の近代」を東京国立近代美術館で見ると、一見客観的な考古学の対象として研究・叙述されてきたと思われがちなハニワ(この展覧会は、土偶は脇役)の表象やテキストが、時代の影響を強く受けていることがよくわかる。いわば、ハニワが、あの戦争に“動員”されてきたことを明らかにした展覧会といえそう。
「日本現代美術私観 高橋龍太郎コレクション」(東京都現代美術館)はとにかくものすごいボリューム。個人のコレクションという分量をはるかに超えている。道内関係で、青木美歌と國松希根太の作品もあったが、冒頭に久保守(札幌出身)の絵画が展示されていたのが印象に残った。ただ、個人コレクションなので、当然好みなどはあり、もの派や李禹煥、川俣正など「モノが残らない系の作家」については脱落している。
・11月15日納内→深川→岩見沢 「紺野修司展」など全6回完了
・晩秋の西胆振・羊蹄山麓をゆく~2024年11月21日 概要はアップ済み。麓彩会展、野生の学舎については未掲載
・2024年12月、釧路へ 連載中。全32回予定のうち「天と地と」(道立釧路芸術館)など、(20)まで掲載済み。展覧会で残っているのは吉野隆幸個展のみで、近く掲載予定
小樽、岩見沢、石狩管内新篠津村、北広島、恵庭、千歳、江別、空知管内浦臼町、同長沼町、同栗山町、夕張、滝川、歌志内、苫小牧、後志管内岩内町、同喜茂別町など近場にも足を運びましたが、省略しました。
上記の毎日新聞の回顧記事では22の展覧会(芸術祭を含む)が言及されています。筆者は5度本州へ行って、22のうち9を見ており、地理的なハンディキャップを考慮すればわれながら健闘していると思います。
しかし、ちゃんとテキストに残している率が低すぎ、これは猛省しなくてはなりません。