正式名称は
Graduation Exhibition 2007 北海道教育大学札幌校芸術文化過程美術コース卒業制作展
ということのようです。
のっけからきついことを書きます。
道内には美術系の大学や専門学校がいくつもあります。
いまから5年前、10年前は、道教大の学生の力量が群を抜いていて、ほかは束になってもかなわない-という印象があったように記憶しています。
しかし、ことしあちこちの卒展を見ていると、かつてのような「道教大一人勝ち」の時代は終わったような気がしてなりません。
もちろん、他の学校で高水準の作品を発表する学生が輩出してきたことは、歓迎すべきですが、教育大の力量が下がっているのだとしたら、ゆゆしきことです。
まあ、要するに、個々の作家、それぞれの作品が良ければ、それでいいのであって、べつに学校の平均的水準なんて、どうでもいいっていえばいいんですけどね。
油彩研究室
鵜沼範考「Chaon intuition」
先ごろ発表した「S×D×R」の延長線上にある作品。
4人の裸婦のかたちにきりぬいた合板に着彩している。
それぞれの裸婦は、すわったり、立ったりしている輪郭しか描写されていない。そこが、店頭にあるアイドルの等身大広告写真とちがうのだが、達者な枠取りで、バドガールのようにグラマーな肢体がじゅうぶんにわかる。
あらためて平面とはなにかを考えさせつつも、ポップな作品。
玉川桜「帰り道ワンダーランド」
私見では、玉川さんはこれまで「曇天模様」展などを通して「子どもっぽい絵」「中心のない絵」の追求をしてきたように思う。
「リアルであること」が自明ではない現代。「子どものように描くのに長い年月がかかった」というピカソのことばを思い出す。あまりに統一感のない色調と、平坦な色面、ばらばらなモティーフは、作家という一個の人格の統合下に描かれたのとは違う世界観による作品の可能性がそこに萌している現れなのかもしれない。
畠平知「夜は森」
平面的、装飾的に2人の女性を描いている。片方は緑のドレスにピンクの髪、もう片方は反対にピンクの服に緑の髪。ふたりの間には灰色の木のようなものがいっぱい生えている。水玉のような模様が広がるあたり、エゴン・シーレを彷彿とさせるが、構図にメリハリがあると思う。
金属造形研究室
西育美「知らないところ」
あまり太くない鉄の線を自在に折り曲げ、紡錘形をした立像や、渦巻きのような形の床置きなどを配したインスタレーション。力強さとしなやかさが同居したようなおもしろさ。
木材造形研究室
佐藤あゆみ「雨露」
きのこに似たかたちをした2つで1組のオブジェ。教育大の木工は実用的な作品が多く、こういう造形はめずらしい。
視覚映像デザイン研究室
シルクスクリーンが1人、実写メーンの映像が3人、フルアニメが3人。
アニメのほうは、金子友里香「生(あ)る日の潮汐」が切り絵ふう、高橋幸子「めぐりみち」がやわらかいパステル調、室田恵梨「盲(めしい)」がモノトーンで、人体の一部などが虫にメタモルフォーゼするという独特の気味悪い世界…と、それぞれ個性的な表現になっていた。ただし、惜しむらくは「話」が弱い点でも3人は共通している。ただ、映像をつなげるのではなく、起承転結がほしいなあ。
08年2月11日(月)-16日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
Graduation Exhibition 2007 北海道教育大学札幌校芸術文化過程美術コース卒業制作展
ということのようです。
のっけからきついことを書きます。
道内には美術系の大学や専門学校がいくつもあります。
いまから5年前、10年前は、道教大の学生の力量が群を抜いていて、ほかは束になってもかなわない-という印象があったように記憶しています。
しかし、ことしあちこちの卒展を見ていると、かつてのような「道教大一人勝ち」の時代は終わったような気がしてなりません。
もちろん、他の学校で高水準の作品を発表する学生が輩出してきたことは、歓迎すべきですが、教育大の力量が下がっているのだとしたら、ゆゆしきことです。
まあ、要するに、個々の作家、それぞれの作品が良ければ、それでいいのであって、べつに学校の平均的水準なんて、どうでもいいっていえばいいんですけどね。
油彩研究室
鵜沼範考「Chaon intuition」
先ごろ発表した「S×D×R」の延長線上にある作品。
4人の裸婦のかたちにきりぬいた合板に着彩している。
それぞれの裸婦は、すわったり、立ったりしている輪郭しか描写されていない。そこが、店頭にあるアイドルの等身大広告写真とちがうのだが、達者な枠取りで、バドガールのようにグラマーな肢体がじゅうぶんにわかる。
あらためて平面とはなにかを考えさせつつも、ポップな作品。
玉川桜「帰り道ワンダーランド」
私見では、玉川さんはこれまで「曇天模様」展などを通して「子どもっぽい絵」「中心のない絵」の追求をしてきたように思う。
「リアルであること」が自明ではない現代。「子どものように描くのに長い年月がかかった」というピカソのことばを思い出す。あまりに統一感のない色調と、平坦な色面、ばらばらなモティーフは、作家という一個の人格の統合下に描かれたのとは違う世界観による作品の可能性がそこに萌している現れなのかもしれない。
畠平知「夜は森」
平面的、装飾的に2人の女性を描いている。片方は緑のドレスにピンクの髪、もう片方は反対にピンクの服に緑の髪。ふたりの間には灰色の木のようなものがいっぱい生えている。水玉のような模様が広がるあたり、エゴン・シーレを彷彿とさせるが、構図にメリハリがあると思う。
金属造形研究室
西育美「知らないところ」
あまり太くない鉄の線を自在に折り曲げ、紡錘形をした立像や、渦巻きのような形の床置きなどを配したインスタレーション。力強さとしなやかさが同居したようなおもしろさ。
木材造形研究室
佐藤あゆみ「雨露」
きのこに似たかたちをした2つで1組のオブジェ。教育大の木工は実用的な作品が多く、こういう造形はめずらしい。
視覚映像デザイン研究室
シルクスクリーンが1人、実写メーンの映像が3人、フルアニメが3人。
アニメのほうは、金子友里香「生(あ)る日の潮汐」が切り絵ふう、高橋幸子「めぐりみち」がやわらかいパステル調、室田恵梨「盲(めしい)」がモノトーンで、人体の一部などが虫にメタモルフォーゼするという独特の気味悪い世界…と、それぞれ個性的な表現になっていた。ただし、惜しむらくは「話」が弱い点でも3人は共通している。ただ、映像をつなげるのではなく、起承転結がほしいなあ。
08年2月11日(月)-16日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)