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札幌コンサートホール Kitara が所蔵するクラシック音楽家の写真に、札幌芸術の森美術館所蔵の油彩や版画、彫刻などをあわせた展覧会。
写真はふだん、一部がキタラ内のギャラリーに展示されているもの。館外で展覧会が開かれるのは、初めてとのことらしい。キタラが改装のため休館中だから、可能になった企画だろう。
ただし会期は短く、図録などもない。
入り口で、國松明日香の彫刻の大作「水の環」が迎えてくれる。
水の波紋を表現したような、リズミカルで楽しい作品。たしかに、音楽を感じさせる。
展示室の中は、三つの章にわかれている。
第1章は、クラシック音楽家の肖像写真。
ロッシーニやヴェルディ、サン=サーンスといった古いものや、ナダールが撮影したオッフェンバックやリスト、グノー、マン・レイが写したエリック・サティやシェーンベルクなど、貴重なものが多い。
ベートーベンやショパンがないのは、もちろん、写真の発明・普及前の人だったから。
ナダールは、19世紀後半を代表する写真家で、当時の作曲家のみならず、バルザックやドガなど、いろいろな分野のアーティスト写真を残している。彼のパリの写真スタジオが、あの「第1回印象派展」の会場になったことでも有名だ。
それにしても、ロシアを離れてスイス、米国に移り住んだストラヴィンスキー、革命ロシアにとどまりながらも共産党政府とのあつれきに終生苦しんだショスタコーヴィチ、ロシア支配下のリトアニアにユダヤ人として生まれて革命とともに米国へ亡命したハイフェッツ(バイオリン奏者)、スペイン内戦で亡命しついにフランコ独裁下の祖国に帰ることのなかったカザルス(20世紀を代表するチェロ奏者)などなど、20世紀は、音楽家も政治に翻弄された時代であったと、しみじみ。
ナチス幹部と握手して戦中のドイツで権勢を誇った指揮者フルトヴェングラーの写真もあったけど。
もっとも、キャプションではそのあたり、簡単に触れられているだけなのだが、それはスペースの関係で仕方あるまい。
第2章は「Sound of Sapporo -音楽にかこまれて-」と題し、先ごろ亡くなった木之下晃が撮影したPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)の指揮者たちの18枚と、札幌在住の写真家佐藤雅英による、尾高忠明らの写真8枚(いずれも佐藤さん所蔵)。
まあ、正直なところ、クラシック音楽業界に興味のない人には、あまり食指の動かないセクションだろうと思う。
おもしろいのは、チェコの指揮者で、札幌交響楽団(札響)の指揮でも活躍したラドミル・エリシュカの写真が2008年と10年の2枚あるのだが、その08年から佐藤雅英さんがデジタルに切り替えたことがプリントからでも分かること。
05年の岩城宏之はフィルムのように見える。
第3章は、國松さんの彫刻2点(作家蔵)と、小林止良於、渡辺信、渡会純价、井桁雅臣、松島蘇順泉、佐藤武、竹岡羊子、藤野千鶴子、鎌田俳捺子、江川博といった、道内作家の作品。
このうち小林は木彫、渡辺は金工である。
20点と、群を抜いて多いのが渡会さんで、エッチングのほか、複合技法による「Colla-on」シリーズが11点もある。もともと音楽を主題にした版画が多いので、こうなるだろうなあと思う。
個人的には、鎌田さんの194.0×424.1センチという大作油彩「交響詩による」に圧倒された。
若いころのシベリウスが叙事詩「カレワラ」に基づいて作った「クレルヴォ交響曲」にインスパイアされて、一気に描き上げたという。
濃い緑を基調にした、針葉樹林帯を思わせる深い世界は、見る人を吸い込んでいくようだ。
シベリウスは、フィンランドの作曲家で、札響もよく演奏していることもあるし、ここに展示されるには、ぴったりの作品だ。
Jean Sibelius - Kullervo, Op. 7 (1892)
蛇足だが、北海道美術とクラシック音楽といえば、三岸好太郎「オーケストラ」と、米坂ヒデノリ「頌韻(しょういん)」を忘れるわけにはいかないだろう。
(この展覧会に無いことに、文句をつけているわけではありません)
2015年4月4日(土)~4月19日(日)午前9:45~午後5:00(入館は4:30まで)
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森)
一般700円(560円)、高校・大学生350円(280円)、小中学生150円(120円) ※( )内は20人以上の団体
□どうしんウェブの関連記事(出品作のスライドショーが見られます。しばらくたつとリンク切れするかもしれません) http://dd.hokkaido-np.co.jp/entertainment/culture/culture/1-0122783.html
・地下鉄南北線「真駒内駅」で中央バスに乗り継ぎ。駅を出てすぐ、左に曲がり、2番乗り場から出るバスに乗れば「芸術の森入口」に行けます。
(芸術の森センターまで行くと、遠回りです)
写真はふだん、一部がキタラ内のギャラリーに展示されているもの。館外で展覧会が開かれるのは、初めてとのことらしい。キタラが改装のため休館中だから、可能になった企画だろう。
ただし会期は短く、図録などもない。
入り口で、國松明日香の彫刻の大作「水の環」が迎えてくれる。
水の波紋を表現したような、リズミカルで楽しい作品。たしかに、音楽を感じさせる。
展示室の中は、三つの章にわかれている。
第1章は、クラシック音楽家の肖像写真。
ロッシーニやヴェルディ、サン=サーンスといった古いものや、ナダールが撮影したオッフェンバックやリスト、グノー、マン・レイが写したエリック・サティやシェーンベルクなど、貴重なものが多い。
ベートーベンやショパンがないのは、もちろん、写真の発明・普及前の人だったから。
ナダールは、19世紀後半を代表する写真家で、当時の作曲家のみならず、バルザックやドガなど、いろいろな分野のアーティスト写真を残している。彼のパリの写真スタジオが、あの「第1回印象派展」の会場になったことでも有名だ。
それにしても、ロシアを離れてスイス、米国に移り住んだストラヴィンスキー、革命ロシアにとどまりながらも共産党政府とのあつれきに終生苦しんだショスタコーヴィチ、ロシア支配下のリトアニアにユダヤ人として生まれて革命とともに米国へ亡命したハイフェッツ(バイオリン奏者)、スペイン内戦で亡命しついにフランコ独裁下の祖国に帰ることのなかったカザルス(20世紀を代表するチェロ奏者)などなど、20世紀は、音楽家も政治に翻弄された時代であったと、しみじみ。
ナチス幹部と握手して戦中のドイツで権勢を誇った指揮者フルトヴェングラーの写真もあったけど。
もっとも、キャプションではそのあたり、簡単に触れられているだけなのだが、それはスペースの関係で仕方あるまい。
第2章は「Sound of Sapporo -音楽にかこまれて-」と題し、先ごろ亡くなった木之下晃が撮影したPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)の指揮者たちの18枚と、札幌在住の写真家佐藤雅英による、尾高忠明らの写真8枚(いずれも佐藤さん所蔵)。
まあ、正直なところ、クラシック音楽業界に興味のない人には、あまり食指の動かないセクションだろうと思う。
おもしろいのは、チェコの指揮者で、札幌交響楽団(札響)の指揮でも活躍したラドミル・エリシュカの写真が2008年と10年の2枚あるのだが、その08年から佐藤雅英さんがデジタルに切り替えたことがプリントからでも分かること。
05年の岩城宏之はフィルムのように見える。
第3章は、國松さんの彫刻2点(作家蔵)と、小林止良於、渡辺信、渡会純价、井桁雅臣、松島蘇順泉、佐藤武、竹岡羊子、藤野千鶴子、鎌田俳捺子、江川博といった、道内作家の作品。
このうち小林は木彫、渡辺は金工である。
20点と、群を抜いて多いのが渡会さんで、エッチングのほか、複合技法による「Colla-on」シリーズが11点もある。もともと音楽を主題にした版画が多いので、こうなるだろうなあと思う。
個人的には、鎌田さんの194.0×424.1センチという大作油彩「交響詩による」に圧倒された。
若いころのシベリウスが叙事詩「カレワラ」に基づいて作った「クレルヴォ交響曲」にインスパイアされて、一気に描き上げたという。
濃い緑を基調にした、針葉樹林帯を思わせる深い世界は、見る人を吸い込んでいくようだ。
シベリウスは、フィンランドの作曲家で、札響もよく演奏していることもあるし、ここに展示されるには、ぴったりの作品だ。
Jean Sibelius - Kullervo, Op. 7 (1892)
蛇足だが、北海道美術とクラシック音楽といえば、三岸好太郎「オーケストラ」と、米坂ヒデノリ「頌韻(しょういん)」を忘れるわけにはいかないだろう。
(この展覧会に無いことに、文句をつけているわけではありません)
2015年4月4日(土)~4月19日(日)午前9:45~午後5:00(入館は4:30まで)
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森)
一般700円(560円)、高校・大学生350円(280円)、小中学生150円(120円) ※( )内は20人以上の団体
□どうしんウェブの関連記事(出品作のスライドショーが見られます。しばらくたつとリンク切れするかもしれません) http://dd.hokkaido-np.co.jp/entertainment/culture/culture/1-0122783.html
・地下鉄南北線「真駒内駅」で中央バスに乗り継ぎ。駅を出てすぐ、左に曲がり、2番乗り場から出るバスに乗れば「芸術の森入口」に行けます。
(芸術の森センターまで行くと、遠回りです)