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中野北溟個展「津軽/TSUGARU」 09年東京(14)

2009年01月24日 14時51分31秒 | 展覧会の紹介-書
(承前)

 東京の旅も終わりに近づいてきた。

 前回のエントリで書いたことの続きだけど、東京に住んでいた1980年代当時、いまよりもっと多くのギャラリーが銀座・京橋かいわいに集中していた。
 最近とはちがって、まだ隔週刊だった「ぴあ」がほとんどのギャラリーの日程を分け隔てなく掲載していたので、見て回るには便利だった(この情報の徹底した平等性こそ「ぴあ」のすばらしい点だったのに、会社が事業の軸をチケット販売に移していくにしたがって、その美点は雑誌から失われていった)。
 はじめはやみくもにまわっていても、そのうちに、見るべきギャラリーがどこなにか、だんだんわかってくる。
 なびす画廊、南天子画廊、村松画廊、鎌倉画廊、かねこ・あーとギャラリー、ルナミ画廊などがなつかしい。

 当時からあって、今回も見たのは、東京画廊、資生堂、INAX、ギャラリー山口(銀座から京橋へ移転したのだろうか)といったところである。
 まわった個所は、以前も書いたが、ほかに、メゾンエルメス8階フォーラム、メグミオギタギャラリー、ギャラリー21プラス葉である。


 東京画廊は現代アートが中心で、書家をとりあげるのはめずらしい。

 中野北溟さんは、札幌在住の85歳。
 現役の近代詩文の書家としては、日本を代表する一人である。

 今回、中野北溟さんが題材に選んだのは、津軽の方言で書かれた詩。
 生まれは、留萌管内羽幌町の沖合いに浮かぶ焼尻島だが、幼いころはニシン漁のため東北地方から多くの猟師が出稼ぎに来ており、津軽弁も身近であったという。

 中野さんは、あの独特の墨色(濃墨なのに、黒々というよりはどこか軽快)で、紙いっぱいに方言詩を書いている。
 おもしろいのは、ルビがふられていること。書作品でルビは、ひじょうにまれではないか。

 ただし、見ていてどうも「いずい」感じになったのは、書があくまで「書き言葉」に立脚しているのに対し、方言詩はどこまでいっても「読む」とか「発音」といった要素から逃れられないことだ。
 ふだん、書を鑑賞するときは、目で筆の運びを追うことが多いのは、いうまでもないが、今回はどうしても、口を動かしてしまう自分がいた。
 さいわい、じぶんは北海道の生まれなので、「現代語訳」がなくても詩の意味はわかるし、それらしく朗読することもできるだろう。
(話はそれるが、以前、遠野市へ行ったとき、90歳近いおばあさんの民話語りを聴く機会があり、筆者はほとんど理解することができたが、関西から来た観光客はちんぷんかんぷんであったようだ)

 逆に言えば、中野さんの作品は、書き言葉でありながら、発語という行為の持つ「ざわざわした感じ」(うまくいえないが)を、紙に定着させようとした稀有な試みであるともいえるのではないだろうか。

 なお、3月までの間、北海道新聞本社の道新ぎゃらりーでは、道新文化センター各講座の作品展の期間中、中野さんの大作をショーウインドウに展示しています。
 お近くを通りがかった節は、どうぞごらんください。


2009年1月6日(火)-31日(土)日、月、祝日休み 11:00-19:00(土曜-17:00)
東京画廊(東京都中央区銀座8-10-5 第4秀和ビル7階)



・JR山手線・東海道線・横須賀線、地下鉄銀座線、都営地下鉄浅草線、ゆりかもめ「新橋」駅が最も近いです


□「酔中夢書」関連ページ http://www.shodo.co.jp/blog/hidai2009/2009/01/post-5.html
毎日新聞の「近況」

天彗社40周年記念書展(2007年)
第48回北海道書道展
北海道書道展(2002年)


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