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■第44回女流書作家集団展 (2018年8月28日~9月2日、札幌)

2018年09月11日 21時31分56秒 | 展覧会の紹介-書
 道内の女性書家が会派や書風を超えて毎年この時期に開いている。現在の代表幹事は太田欽舟、安藤小芳の両氏。
 今年は62人が出品。すべての女性書家が参加しているわけではもちろんない。
 例年書いていることだが、漢字が多く、近代詩文書や墨象が続き、かな書が少ない。前衛書や篆刻てんこくはない。かなが比較的少ないのは道内全体の傾向と共通しているのかもしれない。

 気になった作品について少々の感想を述べる。

 足利雅子(滝川)
 高村光太郎の有名な詩集「智恵子抄」の一節。ただし詩行ではなく、後書き「智恵子の半生」から引いている。

二人の着物や羽織を手織で作つたのが今でも残つてゐる。同じ草木染の権威山崎斌氏は彼女の死んだ時弔電に、袖のところ一すぢ青きしまを織りてあてなりし人今はなしはやといふ歌を書いておくられた。結局彼女は口に出さなかつたが、油絵製作に絶望したのであつた。


 実際の作品では、短歌の部分を、傍線ではなく、淡墨を用いて書いているのが興味深い。
 足利さんは「智恵子抄」が好きらしく、よく取り上げている。ただ、この後書きは、彼女の死後2年たって書かれたのに「半生」となっているのは、不思議である。

 工藤〓穂(札幌。〓は「青」にくさかんむり)
 創作「凹凸」。素朴で、ぼくとつとした表情が良い。

 寺島春代(札幌)
 創作「森」による春夏秋冬。おなじ文字の一文字書。墨の濃さも筆の勢いも違う4点を格子状に並べたユニークな作。

 則包雅芳(札幌)
 「明月清風詩満案好天良夜酒連暮蟬不可聴落葉…」と続くが、何の漢詩かわからない。ただ、漢のような昔の感じではなく、明清期の直線的な字体のような趣がおもしろい。

 松本光彗(札幌)
 「久方の光のどけきはるの日にしづこころなく花のちるらむ」
 いつまでたっても、かな書の読めない筆者であるが、これは珍しいことに、読めた。
 しかしそれは、単に筆者がこの短歌を知っていたためかもしれない。
 あるいは、「の」がすべて「の」と書かれるなど、一般的なかな書に比べると、可読性に意を用いた作品だったせいかもしれない。語頭の「の」と格助詞の「の」が同じというのは、よくあることなんだろうか。筆者には、助詞の「の」は「乃」や「之」「ノ」として書かれることが多いような印象がある。


 他の出品者は次の通り。
青木敏子、阿部洋子、雨宮百合子、安藤小芳、石井眞弓、石川岬香、井幡郁子、右近灯香、太田欽舟、太田岬蒼、越智星渚、亀岡芳扇、菊地彰子、近藤敏子、今野美香、斉藤靖子、椎名恵舟、神内青雪、高橋揮星、竹本克子、塚原純子、津山和惠、長嶋幸子、浪田美芳、成田光葉、丹羽香翠、長谷川美奈子、林維子、松永和子、山下青楓、山道秀華、横山純江、渡辺煌花(以上札幌)
阿部華雪(岩見沢)
荒野紫洋(後志管内俱知安町)
海老名素子、小西広恵、白井恵子(以上小樽)
大澤玉翠(苫小牧)
大滝彩舟、熊谷由加里(以上江別)
岡田静園、川村秀穂、塚原苔泉(以上函館)
加藤東虹(北見)
栗澤径水(根室管内中標津町)
笹川秀華(十勝管内広尾町)
鈴木北央、高橋美登里(以上旭川)
瀧内秋櫻、望月香雪(以上登別)
三上禮子(千歳)
渡辺逸花、渡辺京子(以上石狩)


2018年8月28日(火)~9月2日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階)

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