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吉崎元章副館長、渾身の企画。
ともすれば「歴史」は、ある定本が書かれた時点で固定化される。
しかし、心ある人によって「歴史」は、常に書き換えられる運命を持っている。
今回の展覧会は、札幌の美術の青春期とでもよべそうな時代を、34歳で早世した美術評論家の仕事を通して、新たな目で見直している。
概要については、告知のエントリも参照してください。
吉崎氏が図録に記しているとおり、なかがわ・つかさ(1929~63)、吉田豪介、竹岡和田男、小谷博貞の4氏が批評の筆を執りだしたのは、ほとんど同時であり、彼ら以前の新聞には、今田敬一らによる展評がときおり載る程度だったという。
なかがわの活動した時代は、札幌のアートシーンにおける批評が始まった時代でもあったのだ。
道立近代美術館ができるまでの間、学芸員がいない北海道で、彼らが美術をめぐる言説をつむぎ続けたのだ。
この展覧会で良かったところを挙げてみる。
その1。
当時の「北海タイムス」などの紙面と実際の作品を対比させて展示させているところ。
もちろん、図版と展示作が異なる場合も多いのだが、まったく同一の作品の場合、あらためて「当時の新聞の印刷はひどかったなあ~」と驚かされる。
一般的に美術館は、作品横に掲示する文章が長いのをいやがる。いや、美術館はというより、鑑賞者が-というべきだろう。
しかし、これは別だ。批評が主役なのだから。こういう展示もありだと思う。
その2。
美術展は、作家や国などを縦の時系列で紹介する場合がほとんどだが、この展覧会は時代を輪切りにしている。
だから、各作家の代表作を展示する一般的な展覧会では絶対に選ばれないような作品が多数並んでいる。
ヴェネツィアビエンナーレ作家で、道内の現代アートを代表する存在である岡部昌生さんの初期の油彩なんて、初めて見たし、こういう機会でもなければまず見ることはないだろう。
同じことは、栃内忠男、鎌田俳捺子、阿部典英、小川原脩の各氏などにもいえる。彼(女)らの作品から1点、となれば、まずこういう選択にはならないだろう。
もちろん、田中忠雄のように代表作が選ばれている場合もあるのだが。
その3。
昭和30年代となかがわ・つかさに照準を合わせつつも、それ以前の北海道美術史も視野に入れていること。
というか、厳しい展評を書く人だとは知っていたけれど、過去の北海道美術史についてこれほど多くの文章を書いていることは初めて知った。
現代と違って代表作を収めている美術館があったわけでもなく、美術史を記した本があったわけでもない。のちに「北海道美術史」を記すことになる今田敬一のように、初期の道展を実際に見たこともないのだ。
だから、いったいどうやって作家を選定し、作品を調査したのか、まったく想像もつかない。
この仕事が、のちの「北海道美術史」につながり、さらに道立美術館の作品収集へとつながっていったのだろう。
ひょっとするとなかがわの偉大さは、そのつどの批評文よりも、こちらの仕事の方にあったのかもしれないと思うほどだ。
図録には、なかがわの手になる文章の一覧が載っている。
歴史を掘り起こそうという執念を感じる。
展覧会を立体的にしている要素として、HBC(北海道放送)の当時の映像がある。
昭和30年代の美術展の映像などが会場で流れ、中には神田日勝など、モノクロでもすぐに作者が分かるものもある。
吉田豪介さんが担当していたのだろう。
昔のテレビ局は映像を保存するという観念に乏しかったから、これらの資料を残していたHBCは偉いと思う。
2010年10月30日(土)~2011年1月30日(日)午前9時45分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:11月8日以降の月曜(1月10日は開館し、翌11日休館)および12月28日~1月3日
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)
観覧料:一般700(560)円、高校・大学生350(280)円、小・中学生150(120)円
※( )内は前売り及び20人以上の団体料金
※65歳以上の方は当日料金が700円(団体560円)になります。敬老手帳など年齢のわかるものをご提示ください。
※障がい者手帳をお持ちの方は、当日窓口でご提示いただくとご本人と付き添いの方1名が無料になります。
※本郷新記念札幌彫刻美術館の半券をお持ちの方は、( )内の料金でご覧いただけます。
(この項続く)
ともすれば「歴史」は、ある定本が書かれた時点で固定化される。
しかし、心ある人によって「歴史」は、常に書き換えられる運命を持っている。
今回の展覧会は、札幌の美術の青春期とでもよべそうな時代を、34歳で早世した美術評論家の仕事を通して、新たな目で見直している。
概要については、告知のエントリも参照してください。
吉崎氏が図録に記しているとおり、なかがわ・つかさ(1929~63)、吉田豪介、竹岡和田男、小谷博貞の4氏が批評の筆を執りだしたのは、ほとんど同時であり、彼ら以前の新聞には、今田敬一らによる展評がときおり載る程度だったという。
なかがわの活動した時代は、札幌のアートシーンにおける批評が始まった時代でもあったのだ。
道立近代美術館ができるまでの間、学芸員がいない北海道で、彼らが美術をめぐる言説をつむぎ続けたのだ。
この展覧会で良かったところを挙げてみる。
その1。
当時の「北海タイムス」などの紙面と実際の作品を対比させて展示させているところ。
もちろん、図版と展示作が異なる場合も多いのだが、まったく同一の作品の場合、あらためて「当時の新聞の印刷はひどかったなあ~」と驚かされる。
一般的に美術館は、作品横に掲示する文章が長いのをいやがる。いや、美術館はというより、鑑賞者が-というべきだろう。
しかし、これは別だ。批評が主役なのだから。こういう展示もありだと思う。
その2。
美術展は、作家や国などを縦の時系列で紹介する場合がほとんどだが、この展覧会は時代を輪切りにしている。
だから、各作家の代表作を展示する一般的な展覧会では絶対に選ばれないような作品が多数並んでいる。
ヴェネツィアビエンナーレ作家で、道内の現代アートを代表する存在である岡部昌生さんの初期の油彩なんて、初めて見たし、こういう機会でもなければまず見ることはないだろう。
同じことは、栃内忠男、鎌田俳捺子、阿部典英、小川原脩の各氏などにもいえる。彼(女)らの作品から1点、となれば、まずこういう選択にはならないだろう。
もちろん、田中忠雄のように代表作が選ばれている場合もあるのだが。
その3。
昭和30年代となかがわ・つかさに照準を合わせつつも、それ以前の北海道美術史も視野に入れていること。
というか、厳しい展評を書く人だとは知っていたけれど、過去の北海道美術史についてこれほど多くの文章を書いていることは初めて知った。
現代と違って代表作を収めている美術館があったわけでもなく、美術史を記した本があったわけでもない。のちに「北海道美術史」を記すことになる今田敬一のように、初期の道展を実際に見たこともないのだ。
だから、いったいどうやって作家を選定し、作品を調査したのか、まったく想像もつかない。
この仕事が、のちの「北海道美術史」につながり、さらに道立美術館の作品収集へとつながっていったのだろう。
ひょっとするとなかがわの偉大さは、そのつどの批評文よりも、こちらの仕事の方にあったのかもしれないと思うほどだ。
図録には、なかがわの手になる文章の一覧が載っている。
歴史を掘り起こそうという執念を感じる。
展覧会を立体的にしている要素として、HBC(北海道放送)の当時の映像がある。
昭和30年代の美術展の映像などが会場で流れ、中には神田日勝など、モノクロでもすぐに作者が分かるものもある。
吉田豪介さんが担当していたのだろう。
昔のテレビ局は映像を保存するという観念に乏しかったから、これらの資料を残していたHBCは偉いと思う。
2010年10月30日(土)~2011年1月30日(日)午前9時45分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:11月8日以降の月曜(1月10日は開館し、翌11日休館)および12月28日~1月3日
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)
観覧料:一般700(560)円、高校・大学生350(280)円、小・中学生150(120)円
※( )内は前売り及び20人以上の団体料金
※65歳以上の方は当日料金が700円(団体560円)になります。敬老手帳など年齢のわかるものをご提示ください。
※障がい者手帳をお持ちの方は、当日窓口でご提示いただくとご本人と付き添いの方1名が無料になります。
※本郷新記念札幌彫刻美術館の半券をお持ちの方は、( )内の料金でご覧いただけます。
(この項続く)