毎年ひらかれてきた美唄市民会館での北浦晃さんの回顧展も、「版画」「人物」「静物」とつづいてきて、4回目のことしの「風景」で一区切りとなる。北浦さんが風景画に転じたのは90年代以降のことであり、しかも、90年代半ばに全道展に連続して出品していた日勝峠の連作が、今回は3点しかないため、出品43点のうちじつに35点が1998年以降の作品という、過去3回の展覧会とはかなりおもむきが異なったものとなっている。
全体から受ける印象を述べると、たとえば「人物」のときには、虚の空間と実の空間のせめぎあいといった実験が試みられ、会場全体に緊張感が漂っていたが、今回はそういう緊張から解放され、全体としてリラックスした雰囲気になっている。弛緩しているのではない。画家が、絵画空間をかたちづくるうえでのテーマ設定のようなものから意識の上では離れたとしても、制作のあとに生まれる作品は、きちんとしたものになっているようなのだ。若輩者が生意気なことをいわせてもらえれば、北浦さんも、或る種の境地に達したのだなと思わせるなにかがある。過去の苦闘が、たくまざる形で、作品に結晶する段階になったのだということかもしれない。
もちろん、分析的に作品を見ることは可能である。たとえば「天塩川」において、作品が豊かな空間をかたちづくっているのは、手前から、道路、木々、川、河畔林、ふたたび川、ふたたび木、霧と山…というような重層的なつらなりを構成し、たっぷりとした奥行きを生んでいるためだろうと思う。しかし、それはじつに自然になされていて、いかにも画面を構成したという、「作り上げた」感じがしない。言いかえれば、わざとらしさがないのだ。北浦さんがスケッチをすれば、それはおのずと、計算され構成しなおされたような完成された構図になってしまうということのようだ。
もうひとつ挙げれば、明るい緑をはじめとする色彩の美しさ。濃緑ではない、北海道らしい野山の色だ。生っぽさのない、豊かな発色が、画面を軽快なものにしていると思う。
とくに風景画を描く人や、見るのが好きな人は、列車代をかけても見に行く価値のある展覧会だ。
作品は次のとおり。
美唄市役所裏(素描) 1954年 25.0×34.0
冬木立 55年 F4
層雲峡 92年 F100
美唄・楓ヶ丘 92年 F100
日勝峠 93年 F130
水の教会・冬 94年 M60
日勝峠A 96年 F30
日勝峠B 96年 F30
美唄浅春 98年 P100
十勝岳 98年 P30
斜里岳 99年 F120
有珠山冠雪 2000年 F120
雄阿寒岳遠望 2000年 F30
雌阿寒岳遠望 2000年 F30
美瑛岳11月 01年 F120
美唄浅春B 01年 P50
室蘭岳浅春 02年 F100
旭岳新雪 02年 F120
斜里岳晩秋 03年 F120
湖上羊蹄山 03年 P50
旭岳 04年 F120
天塩川 04年 P80
斜里岳 04年 P80
夕張岳 04年 F50
支笏湖 04年 F50
羊蹄山 04年 P60
美瑛岳 04年 P60
ピンネシリ 04年 P30
隈根尻山 04年 P30
十勝岳 05年 F120
大雪山連峰 05年 F50
雄阿寒岳遠望 06年 F120
美唄橋から 06年 M30
美唄浅春2006 06年 F120
冬木立2006 06年 P30
スケッチ美唄(8点)06年 各20.0×29.6
北浦さんは1936年生まれ。赤平、美唄を経て67年から室蘭市在住。
現在、新作家美術協会会員。
9月16日(土)-24日(日)9:00-17:00
美唄市民会館大会議室(美唄市西4南1)
北浦晃 風景画小品展=9月16日(土)-22日(金)10:00-18:00
喫茶あぶみ(美唄市大通西1北1)
■自選による油彩画展 テーマ別I「人物」
■自選による版画100選
■2003年の個展
■2001年の個展
全体から受ける印象を述べると、たとえば「人物」のときには、虚の空間と実の空間のせめぎあいといった実験が試みられ、会場全体に緊張感が漂っていたが、今回はそういう緊張から解放され、全体としてリラックスした雰囲気になっている。弛緩しているのではない。画家が、絵画空間をかたちづくるうえでのテーマ設定のようなものから意識の上では離れたとしても、制作のあとに生まれる作品は、きちんとしたものになっているようなのだ。若輩者が生意気なことをいわせてもらえれば、北浦さんも、或る種の境地に達したのだなと思わせるなにかがある。過去の苦闘が、たくまざる形で、作品に結晶する段階になったのだということかもしれない。
もちろん、分析的に作品を見ることは可能である。たとえば「天塩川」において、作品が豊かな空間をかたちづくっているのは、手前から、道路、木々、川、河畔林、ふたたび川、ふたたび木、霧と山…というような重層的なつらなりを構成し、たっぷりとした奥行きを生んでいるためだろうと思う。しかし、それはじつに自然になされていて、いかにも画面を構成したという、「作り上げた」感じがしない。言いかえれば、わざとらしさがないのだ。北浦さんがスケッチをすれば、それはおのずと、計算され構成しなおされたような完成された構図になってしまうということのようだ。
もうひとつ挙げれば、明るい緑をはじめとする色彩の美しさ。濃緑ではない、北海道らしい野山の色だ。生っぽさのない、豊かな発色が、画面を軽快なものにしていると思う。
とくに風景画を描く人や、見るのが好きな人は、列車代をかけても見に行く価値のある展覧会だ。
作品は次のとおり。
美唄市役所裏(素描) 1954年 25.0×34.0
冬木立 55年 F4
層雲峡 92年 F100
美唄・楓ヶ丘 92年 F100
日勝峠 93年 F130
水の教会・冬 94年 M60
日勝峠A 96年 F30
日勝峠B 96年 F30
美唄浅春 98年 P100
十勝岳 98年 P30
斜里岳 99年 F120
有珠山冠雪 2000年 F120
雄阿寒岳遠望 2000年 F30
雌阿寒岳遠望 2000年 F30
美瑛岳11月 01年 F120
美唄浅春B 01年 P50
室蘭岳浅春 02年 F100
旭岳新雪 02年 F120
斜里岳晩秋 03年 F120
湖上羊蹄山 03年 P50
旭岳 04年 F120
天塩川 04年 P80
斜里岳 04年 P80
夕張岳 04年 F50
支笏湖 04年 F50
羊蹄山 04年 P60
美瑛岳 04年 P60
ピンネシリ 04年 P30
隈根尻山 04年 P30
十勝岳 05年 F120
大雪山連峰 05年 F50
雄阿寒岳遠望 06年 F120
美唄橋から 06年 M30
美唄浅春2006 06年 F120
冬木立2006 06年 P30
スケッチ美唄(8点)06年 各20.0×29.6
北浦さんは1936年生まれ。赤平、美唄を経て67年から室蘭市在住。
現在、新作家美術協会会員。
9月16日(土)-24日(日)9:00-17:00
美唄市民会館大会議室(美唄市西4南1)
北浦晃 風景画小品展=9月16日(土)-22日(金)10:00-18:00
喫茶あぶみ(美唄市大通西1北1)
■自選による油彩画展 テーマ別I「人物」
■自選による版画100選
■2003年の個展
■2001年の個展
http://www.doral.co.jp/gallery/kako/2003/8/index.html
でも、今回の半分以上はそれ以降の作品ですね。
すごい創作意欲です。
けっして、早がきという感じの絵ではないですよね。すごいですね。