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白崎幸子さんの作品集を見た

2009年02月21日 18時57分30秒 | つれづれ読書録
 某日。
 近所の図書館に行ったら、郷土図書のコーナーに、白崎幸子さんの作品集があった。

 奥付が昨年の6月30日になっているので、7月にひらかれていたスカイホールでの遺作展の時点では上梓(じょうし)されていたようだ。
 ただ、会場にあったかどうかは記憶がない。

 収録されている絵の図版は、遺作展の会場に展示されていたものとかなりが重複する。
 それ以外に、身近な花などを描いた小品もかなり掲載されていた。

 巻末の略年譜を見る。
 戦争中に青春をおくった人のようだ。戦後、20代になってから、青龍社系の日本画家に師事した。
 その後、一時東京に転居したこともあったが、札幌に住み、毎年道展と「北の日本画展」に出品。個展は、一度もない。結婚、出産についても、まったく記述がない。生涯独身だったのだろうか。

 何人かが序文を寄せている。
 自分が、自分がというところの少ない、落ち着いた人柄であったことがうかがえる。
 最晩年には自らの蔵書を後輩たちにくばり、静かに亡くなったらしい。

 道展会員の岡恵子さんの序文にハッとした。
 晩年、道展に出品した「山」の絵について、どの山か、尋ねたというくだり。

 あれはね、わたしの「山」なのよ、ふっふっふ。

 手元に現物の本がないから正確な引用ではないけれど、白崎さんはそんな感じで笑って答えたというのだ。

 白崎さんが道展に出した作品は、たしかに山の絵が多い。
 題には、山の名は記されていない。
 たいていは、孤峰である。すっくとそびえている山容は、荘厳ではあるが、仰々しくはない。ただ、そこに存在している。


 いろんな人がいる。
 広く名前が知られ売れっ子になる美術家がいて、
 全国的には知られなくてもその地域で相当に評価されている美術家がいて、
 全国でも地域でもそれほどの知名度はなくても周囲から尊敬されている作家がいて、
 生活に追われて制作に時間を割けなくても地道に制作を続けている人がいて…。

 世の中は、不公平だ。


 人生って、なんだろう。
 幸せとは。

 たぶん、その手のおおざっぱな問いには、正解なんてありはしないのだ。

 白崎さんが世俗的な成功を求めていたのだとしたら、それはけっしてうまくいったとはいえないだろうけど、絵筆に思いを込める「現在」の積み重ねが彼女の望んでいた人生だったのだとしたら、そんなに悪い人生ではなかったのかもしれないと思う。

 でも、たぶん、そうやって、人生を短くくくってしまうようなアプローチは、すべて間違いなんだろうと思う。
 たぶん。


白崎幸子遺作展(2008年7月)


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