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(承前)
宮城県石巻市で開かれていた「REBORN ART FESTIVAL 2019」、桃浦エリアの続きで、旧荻浜小学校の、その他の作品。
同エリアで、深澤孝史さんの作品や、増田セバスチャンさんの作品については、すでに紹介済み。
旧荻浜小学校では、このほか、2階全体とプールを使って「Peach Beach, Summer School」を展開していた中崎透さんに言及しないわけにはいかない。
なにせ、モノの分量と、聞き書きした相手の人数やことばの分量がハンパない。
会場に最初入ったとき
「ふうん、よくあるリサーチベースのインスタレーションかな」
などと思っていた自分が浅はかでした。
このブログの読者で、札幌国際芸術祭2017で500m美術館の展示「中崎透 × 札幌 × スキー「シュプールを追いかけて」」を見た人なら想像がつくだろう。
多くの人に親しみのある「スキー」という題材を取り上げながら、内地の人が上っ面をなでるように調べたのではなく、膨大な手間暇をかけて調査し、たくさんの資料を運び込んだ労作だった。
あれの「桃浦地区の歴史」版が、いくつもの教室にわたって展開されている、というふうに想像してもらえば、だいたい間違いではないと思う。
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さきほどの画像は、オーバーヘッド・プロジェクター。
透明なシートに、いろいろな色のペンで絵や文字を書いて、スクリーンに投影する教材。筆者の小さいころ、学校での最新鋭の教材だった。
いまはパソコンとパワーポイント、プロジェクターの組み合わせが圧倒的に主流になってしまったので、こういう手書きの味わいのある教材はほとんど使われていないだろう。
次の画像は、小学校のトロフィーなど。
この教室と周辺には、鉱物のサンプル図鑑や、理科室にある人体模型なども置かれていた。
このあたりの圧倒的な物量作戦は、中崎さんならでは。
一定以上の物量がないと説得力を持ち得ない、という面は、確かにあるのだと思わされる。
「海龍」という小品の絵。
第2次世界大戦末期に日本が開発した特攻用の潜水艦のこと。
終戦時、この潜水艦を隠すため、小学校の近くにトンネルが掘られた。
その作業をした人の中に、その後画家になった人がいた。この絵の作者、榎本清一郎さんだという。
この件を調査した荻浜小学校OBが榎本さんに熱心に頼んで、絵を譲ってもらったのだという。
どんな地方、どんな学校にも、それぞれの歴史がある。
日本の歴史とは、教科書に書いてあるような、京都や江戸、東京の政治や経済、文化の動きだけではない。
そんなことを、あらためて思う。
左の額は荻浜小学校の校歌。
校歌については校庭にも立派な碑が建てられていた。
左上のサインは「青葉城恋歌」で知られる歌手さとう宗幸さんのもの。
詳しく書いていけばキリがないのだが、絶妙な効果をあげていたのが、スピーカーから常時ちいさな音量で流れていた音声。学校のチャイムや子どもたちのさざめきなどが、聞こえていたようだ。
中崎さんの作品のカギは、抜粋された言葉である(冒頭画像参照)ので、そのようにすら形にならない、いわば形になる前の音が、言葉と響き合い、なんとも懐かしい空間をつくっていたように思われた。
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最後はプール。
なんか、今回の旅は、学校のプールが印象的に使われていたのを、あちこちで見たなあ。
偶然なんだろうけど、コースを示す内壁の模様が十字架に見えて、どきりとする。
先にも書いたけれど、生活の糧と恵みをもたらしてくれ、同時に、とんでもない規模の災厄を持ってくる「海」というもののアンビバレンツを、静かに、しかし雄弁に物語っているような、そんなプールだったと思う。
だから、やっぱり、ここで笑いながら自撮りしている人たちというのは、筆者の神経を逆なでしちゃうんだよなあ。
ジェローム・ワーグ、松岡美緒「石巻・自然と食べ物ミュージアム」。
リボーンアート・フェスティバルが、いわゆる「アート」だけではなく、「食」にも重きを置いていることを伝える部屋。
その意味ではこのフェスは、地方の観光振興に役立とうという意識が強いと思うのだが、この部屋だけについていえば、ビーチコーミングの成果披露みたいなところが印象に残った。
コンブとかホタテとか、北海道と似ているなあ。
そういえば、石巻地方のホタテ養殖は、噴火湾と同じく、海中に縦につる方式です(オホーツク海は海底に直接まく方式)。
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上は村田朋泰「脳舞台 -語り継ぎ、言ひ継ぎ行かむ、不尽(ふじ)の高嶺(たかね)は」。
下は同じ作者の「White Forest of Omens」。
こちらは純粋にきれい。
富士山という意匠は、注意して扱わないと、ナショナリスティックになるというか大げさになるというか…、そんな側面もあると感じた。
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最後はアニッシュ・カプーア「Mirror (Lime, Apple Mix to Laser Red)」。
世界的な作家だが、これは、着彩したまるい凹レンズを教室の壁に取り付けたシンプルな作品。
以上で、桃浦エリアの作品はおしまい。
次の記事では、作品以外のことをまとめて書く予定。
2019年秋の旅(0) さくいん
宮城県石巻市で開かれていた「REBORN ART FESTIVAL 2019」、桃浦エリアの続きで、旧荻浜小学校の、その他の作品。
同エリアで、深澤孝史さんの作品や、増田セバスチャンさんの作品については、すでに紹介済み。
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なにせ、モノの分量と、聞き書きした相手の人数やことばの分量がハンパない。
会場に最初入ったとき
「ふうん、よくあるリサーチベースのインスタレーションかな」
などと思っていた自分が浅はかでした。
このブログの読者で、札幌国際芸術祭2017で500m美術館の展示「中崎透 × 札幌 × スキー「シュプールを追いかけて」」を見た人なら想像がつくだろう。
多くの人に親しみのある「スキー」という題材を取り上げながら、内地の人が上っ面をなでるように調べたのではなく、膨大な手間暇をかけて調査し、たくさんの資料を運び込んだ労作だった。
あれの「桃浦地区の歴史」版が、いくつもの教室にわたって展開されている、というふうに想像してもらえば、だいたい間違いではないと思う。
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さきほどの画像は、オーバーヘッド・プロジェクター。
透明なシートに、いろいろな色のペンで絵や文字を書いて、スクリーンに投影する教材。筆者の小さいころ、学校での最新鋭の教材だった。
いまはパソコンとパワーポイント、プロジェクターの組み合わせが圧倒的に主流になってしまったので、こういう手書きの味わいのある教材はほとんど使われていないだろう。
次の画像は、小学校のトロフィーなど。
この教室と周辺には、鉱物のサンプル図鑑や、理科室にある人体模型なども置かれていた。
このあたりの圧倒的な物量作戦は、中崎さんならでは。
一定以上の物量がないと説得力を持ち得ない、という面は、確かにあるのだと思わされる。
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第2次世界大戦末期に日本が開発した特攻用の潜水艦のこと。
終戦時、この潜水艦を隠すため、小学校の近くにトンネルが掘られた。
その作業をした人の中に、その後画家になった人がいた。この絵の作者、榎本清一郎さんだという。
この件を調査した荻浜小学校OBが榎本さんに熱心に頼んで、絵を譲ってもらったのだという。
どんな地方、どんな学校にも、それぞれの歴史がある。
日本の歴史とは、教科書に書いてあるような、京都や江戸、東京の政治や経済、文化の動きだけではない。
そんなことを、あらためて思う。
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校歌については校庭にも立派な碑が建てられていた。
左上のサインは「青葉城恋歌」で知られる歌手さとう宗幸さんのもの。
詳しく書いていけばキリがないのだが、絶妙な効果をあげていたのが、スピーカーから常時ちいさな音量で流れていた音声。学校のチャイムや子どもたちのさざめきなどが、聞こえていたようだ。
中崎さんの作品のカギは、抜粋された言葉である(冒頭画像参照)ので、そのようにすら形にならない、いわば形になる前の音が、言葉と響き合い、なんとも懐かしい空間をつくっていたように思われた。
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最後はプール。
なんか、今回の旅は、学校のプールが印象的に使われていたのを、あちこちで見たなあ。
偶然なんだろうけど、コースを示す内壁の模様が十字架に見えて、どきりとする。
先にも書いたけれど、生活の糧と恵みをもたらしてくれ、同時に、とんでもない規模の災厄を持ってくる「海」というもののアンビバレンツを、静かに、しかし雄弁に物語っているような、そんなプールだったと思う。
だから、やっぱり、ここで笑いながら自撮りしている人たちというのは、筆者の神経を逆なでしちゃうんだよなあ。
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リボーンアート・フェスティバルが、いわゆる「アート」だけではなく、「食」にも重きを置いていることを伝える部屋。
その意味ではこのフェスは、地方の観光振興に役立とうという意識が強いと思うのだが、この部屋だけについていえば、ビーチコーミングの成果披露みたいなところが印象に残った。
コンブとかホタテとか、北海道と似ているなあ。
そういえば、石巻地方のホタテ養殖は、噴火湾と同じく、海中に縦につる方式です(オホーツク海は海底に直接まく方式)。
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上は村田朋泰「脳舞台 -語り継ぎ、言ひ継ぎ行かむ、不尽(ふじ)の高嶺(たかね)は」。
下は同じ作者の「White Forest of Omens」。
こちらは純粋にきれい。
富士山という意匠は、注意して扱わないと、ナショナリスティックになるというか大げさになるというか…、そんな側面もあると感じた。
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最後はアニッシュ・カプーア「Mirror (Lime, Apple Mix to Laser Red)」。
世界的な作家だが、これは、着彩したまるい凹レンズを教室の壁に取り付けたシンプルな作品。
以上で、桃浦エリアの作品はおしまい。
次の記事では、作品以外のことをまとめて書く予定。
(この項続く)
2019年秋の旅(0) さくいん