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The Beach Boys 札幌公演を見て - 世界を肯定する音楽、あるいは、かつて肯定されていた世界

2014年03月25日 23時19分55秒 | 音楽、舞台、映画、建築など
 米国西海岸ロックバンドの「伝説」ともいえるThe Beach Boys(ザ・ビーチボーイズ)の札幌公演が2014年3月25日、ニトリ文化ホール(旧北海道厚生年金会館)で行われ、筆者も出かけてきた。職業柄、仕事とまったく無関係でもないのだが、記事はいっしょに行ったZ記者が書くので、とくに何もすることはない。
 渡された入場券を見ると

1階 1列 51番

と印字されている。
 なに~!? 最前列か!

 筆者はべつにビーチボーイズのファンでもなんでもない。
 なのに、いちばん前だなんて、ビーチボーイズ・ファンクラブ札幌支部ゴールド会員(←そんなものあるのか)に申し訳ないではないか。
 最前列で「よくわかんな~い」という顔をしておれば、ミュージシャンもやりづらいだろうし。

 心配は無用だった。
 ビーチボーイズの場合、特別な予習は必要ないのだ。
 わかりやすいメロディー。ほとんどは1曲2~3分。シンプルな構成。

 なにも頭を悩ませる必要はない。そのまま楽しんで、手をたたいていればいいのだ。


The Beach Boys - California Girls (with lyrics)



 ただ、それは演奏がお粗末であることでは、まったくない。
 派手なギターソロがあるわけでも、すごいドラムロールを繰り広げるわけでもない。
 しかし、演奏は手堅い。

 そして、なにがすごいといって、まあいまさら筆者が言うことでもないのだが、コーラスの見事さ!
 とにかく、ハモる。ただハモるだけでなく、追いかけたり、3部に分かれたり、じつに複雑なことをやっている。
 しかし、複雑に聞こえるのではなく、爽快にきこえるのが、彼らのすごいところなのだ。



The Beach Boys ~ Surfer Girl



 こんな曲もやった。
 オリジナルメンバー(結成は1961年!)のマイク・ラヴが、ジョージ・ハリソンにささげた歌だ。
 ジョージとマイクは、60年代後半に、ハレ・クリシュナに教えを請うためインドに行ったりして、交友があったようだ。

Pisces Brothers - Mike Love



 演奏の最中、ステージの背後に映し出される映像は、サーファーに興ずるビキニスタイルのお嬢さんだったり、カーレースを楽しむ青年だったり、西海岸やハワイの真夏の景色だったりした。
 ビーチボーイズの演奏には影がない。罪もない。ただ、現世を楽しむことを、全肯定する音楽なのだと思う。

 考えてみれば、いまのわたしたちは、1961年の青年のようには、現世を肯定できないだろう。

 1961年は、相当な昔のように思われるが、基本的なところは変わっていない。
 おおかたの人は飢えることなく、職を得て、日々を楽しんでいた。
 遠くの人と話ができる手段があり(電話)、その気になれば時速100キロで走ることができ(自動車)、翌日には海外にも飛べた。家庭にはテレビがあり、新聞が発行され、グラビア雑誌でカラー写真も見られた。台所には冷蔵庫とガスレンジがあり、熱いもの、冷たいものが調理して食べられた。
 テレビがパソコンになり、ジュークボックスがCDやYou tubeになり、手紙や電話がメールやSNSになっても、それは複雑になりスマートになっただけだ。生活の大勢が変わったわけではない。
 むしろ、貧しくなった人が増えたような気さえする。

 じゃあ、なんのためにぼくたちは、あくせく働いてきたのか。
 この半世紀で、数字上の富は何倍にもなったけれど、人々は何倍も豊かになっただろうか。





 ビーチボーイズが、すなおにサーフィンUSAを歌えた時代は、幸せだった。
 その幸せは、欧米や日本などに限られたものかもしれないが、それでも、ぼくらがリアリティーを感じるのはむしろ「Hotel California」であって、底抜けに明るいサーフィンの歌ではない。
 ビーチボーイズは、例外的に幸せな時代を、体現しているのだ。
 幸せな時代の生き残りとして、今でも歌い続けているのだ。そう思う。


 ま、でも、基本的に、楽しかったです。
 70歳を超えたメンバーの元気な様子を見て、伝説に立ち会ったみたいな気分になりました。
 ペットサウンドの曲をやるときだけ「なんで、こんな複雑なことしとるねん」と思いましたが、それはそれとして。

The Beach Boys - Help Me Rhonda


The Beach Boys-Sloop John B




 あ、これはおまけです。




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