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新製品フジクロームベルビア50展・ニュークラッセ展(2月27日まで)を見てデジタル写真について考えた

2008年02月27日 00時34分06秒 | 展覧会の紹介-写真
 話の始まりは、NHKギャラリーですずらんフォトクラブの写真展を見たことだった。

 海外旅行でのスナップ、風景、花などが題材で、よくあるタイプの写真グループ展なのだが、ひとつびっくりしたことがある。
 全点がデジタルカメラで撮影されているのだ。

 これがちょっとショックだった。

 もちろん、いまどきデジタルなんて、めずらしくない。
 ショックだったのは、そのプリントを見て、デジタルであることがまったくわからなかったことだ。

 いままで筆者は、プリントを見て、それが銀塩であるかデジタルであるかを見分けられているつもりだった。
 それが完全に不可能になったことを思い知らされたのだ。
 いまにして思えば、それは、銀塩とデジタルの差というよりもダイレクトプリントとインクジェットの違いであったような気がする。

 これまでデジタル=インクジェットにいだいていた感想というのは…

1.硬調
2.立体感に乏しく、輪郭が強調されている
3.とりわけ木や草など、緑色の描写が平板。葉っぱじゃなくてバラン(駅弁やコンビニ弁当に入っている樹脂製の緑のギザギザ)みたい

というものだった。

 もちろん、6-8年前ごろは、デジタルカメラの画素数もいまよりずっと少なかったから、全紙ぐらいまで引き伸ばしてプリントすると、斜めの線がかぎ状になったりして、すぐにデジタルであることが見破れたものだ。
 それも、今は昔になってしまった。

 銀塩の存在価値はどこにあるのだろう。
 ここまでデジタルの水準が上がってしまったいま。

 そんなことを思いながら富士フイルムフォトサロンに足を運ぶ。

 そこには、ベルビアで撮影されたみごとな写真のプリントがならんでいる。
 なるほど。
 銀塩は健在である。

 むかしは
「派手な色をとるならベルビア」
といわれたこともあり、実際夕焼けなんかを撮ると、すごいピンクや紫のグラデーションの織り成す世界がそこにあってびっくりしたものだが、ともあれ、すくなくてもいまギャラリーにならんでいるプリントを見る限りでは、それほど派手な印象はない。

 まあ、銀塩かデジタルか、というのは、じつは大した問題ではないのかもしれない。
(そんな話を写真家のIさんとしたことがある)

 もし機材がそんなに大事な要素だとしたら、土門拳は名写真家ではなくなってしまうだろう。いまよりもずっと低い感度とできの悪いレンズで撮っているのだから。
 もちろん、最大の問題は、なにが、どう写っているかということだ。

 とはいえ、ポラロイドのフィルムが製造中止ということが決まったり、写真を取り巻く環境はものすごい速度で変わっていく。
 銀塩派は、これまで以上に、銀塩の優位性を筋道立てて説かなくてはいけない時代になったのかもしれない。

 ちなみに、富士フイルムフォトサロンに展示されているテラウチマサトさんのモノクロ写真はなかなかスゴイです。
 黒のスパッツを、あんなに質感豊かに撮れてる写真ってあんまりないんじゃないでしょうか。
 いいなー、クラッセ、ちょっとほしくなってしまった。


 
すずらんフォトクラブ自然の風景展
=08年2月22-28日10:00-18:00(最終日-15:00)
NHKギャラリー(中央区大通西1 地図A)

新製品フジクロームベルビア50展・高級コンパクトカメラニュークラッセ展
=08年2月22日(金)-27日(水)10:00-18:30
富士フイルムフォトサロン(中央区北3西3、札幌北三条ビル 地図A)  


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5 コメント

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コメントありがとうございます (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2008-02-29 00:39:02
sueさん、郡山三郎さん、いつもどうもです。

sueさんの環境負荷の説は興味深いです。
ただ、みんなどうしてるんだろう。
わたしは、いまはフィルムをまったくつかっておらず、デジタルのプリントはお店任せです(自宅でプリントするよりずっと美しい)。
撮るだけとってプリントしない人が多いような気もします。

でも、ほんとに、ニコンとキヤノンって、どうしてあんなに色が違うんですかね。
わたしが言うとアレですが、ほんとはキヤノンの色のほうが好きです。


郡山さんの

>デジタルOR銀塩の話って、何かオーディオマニアの機材自慢みたいで、レコードが良いかCDが良いのかという論争に似ていて、中身の話がどちらも余所を向いていて悲しいです。

って、そのとおりだと思います。
わたしも文中に書きましたが、大切なのは中身、ですよね。
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Unknown (郡山三郎)
2008-02-28 18:31:24
あるキュレーターの方がデジタル出力の作品を出された作家の方に「この色でよいの?」ということを盛んに言っておられた場面に遭遇しました。
印刷の現場でもそうですが、残念ながらデジタルの時代になってから質の部分での意識低下は著しいです。

デジタル写真に対する認識や知識が若者層に低いというのは感じますが、先日ある印刷会社のセミナーの現場でも感じましたが昨今のデジタルに詳しい方のスタンスが「フォトショップの使い方自慢」、もしくは機材自慢で、本質とは別の部分が先行しているのが残念です。

デジタルOR銀塩の話って、何かオーディオマニアの機材自慢みたいで、レコードが良いかCDが良いのかという論争に似ていて、中身の話がどちらも余所を向いていて悲しいです。
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今後 (sue)
2008-02-28 00:23:52
クラッセ・ベルビア展の次にキャノンギャラリーで山本純一さんの写真展を見ましたが、さすがEOSを使い、RAWで撮影して画像を整えてあるので美しいです。でもやはりEOSっぽい仕上がりで、もし自分で使うとなるとどうかなあ。デジカメの場合は銀塩ほどにはフィルムを変える自由さが無いように思えます。RAWで撮っているのになぜなのか不思議ですが、印刷媒体でもカメラメーカーの違いが出てきます。まあそれも面白いことではあるので、できればその日の気分、被写体にあわせてカメラも変えればいいんですが、当然そんな余裕はありません。今後も好きで撮る写真は銀塩、仕事やメモ代わりはデジという使い分けになります。田中チョートクさんは「晴れたらライカ、雨ならデジカメ」と言っています。環境面ではひょっとしてデジタルのほうが負荷が大きいかもしれません。なぜなら銀塩と違って皆さん、プリントまで自分でやられるからです。その分、周辺機器整備まで含めたトータルな環境負荷はラボ任せの銀塩システムより高い可能性があります。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2008-02-27 23:04:10
竹下正剛さん、ていねいなコメントありがとうございます。

たしかに、銀塩には環境問題というネックがあるんですよね。
また、銀がいつまでもつのか-という問題もありますね。

ただ、小生は意外と非合理的なところがあるので、札幌の大学写真部が「銀塩モノクロ」を死守しているのも、現象としてはおもしろいと思いますよ。
何年かしたら、「札幌は銀塩写真のメッカ」となって、全国の注目を集めているかもしれません。
そうなったら、楽しいのでは?

大学を出てからも写真を楽しむ人はいきおい大半がデジタルに移行するので、あまり心配はいらないと思います。
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写真に関して (竹下 正剛)
2008-02-27 09:24:03
「デジタルか銀塩かわからない!」という写真を一~二年前から目にするようになり、環境破壊を度外視してまで銀塩にこだわらなくてもいいかな?と思うようになりました。
一つとても心配している事があります。銀塩の衰退は誰にも止められない事ですが、写真部に在籍している学生達が銀塩の衰退を現実として受け止めていない事が本気で心配です。
驚く程にデジタルの写真について認識が浅く、モノクロで手焼きをする銀塩写真部が永遠に続くかのように思い込んでいるのです。
モノクロ手焼きは残すべき崇高な文化です。しかし初めて本格的に写真を撮る平成生まれの学生まで全員、必修科目のように入部したらモノクロ手焼きをやらされるのは今の時代にそぐわないと考えています。
写真の主流をデジタルに譲り、その中で先輩達の撮ったモノクロ写真を観て金銭的にも技術量も時間もどんなリスクを負っても「モノクロ手焼きをやりたい」と思う学生が集まって「銀塩写真部」を作らなければならないのではないか、そんな事を私はかなり本気で考えています。
写真愛好家が銀塩写真の衰退と心中してしまってはいけない。
「銀塩が無くなって寂しい」と嘆くだけではなく、ヨド0シカメラの暗室用品コーナーが明日突然消滅していても少しもおかしくない時代に既になっている事を全ての写真愛好家が受け入れて、如何にデジタルを導入し、如何に銀塩を継承するかを本気で考えて欲しいと思ってます。
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