(承前)
福原記念美術館から歩いて神田日勝記念美術館へ。
ひさしぶりに入ったら、ロビーにあった什器類が減ってすっきりした感じになっていました。
今回の企画展は、1963年帯広生まれで、群馬県みなかみ町と帯広に拠点を置く半谷学さんの4点(計8点)と、日勝の絵画24点など。
日勝の絵は、遺作「馬」が定位置から入り口近くに移動し、いつも壁にかかっているスペースには、半谷学さんのインスタレーション「さしがさばなー差傘花14」が展示されています。
「さしがさばな」は半谷さんの代表的なシリーズ。十勝の公共施設に置き去られていた不用のビニール傘を使い、花に見立てています。
空中につるされて並んだ傘の花は25個。
つるした作品は「自然の傘」(2015)で、計4個ありました。
これも荒廃した竹林から伐採した竹や、帯広の劇場で使わなくなった緞帳のロープなどを使ったリサイクルの作品。6本の骨から、海藻で作った紙による各4枚の葉が左右に出ています。葉の部分が小さいので、雨をさえぎる用途には使えそうにありません。
4本の傘が、空調の風でゆらゆらと動きます。
壁の日勝の絵に、傘の影が落ちてぼんやりと文様が揺れるようすもおもしろいです。
「Coral HAL 5」と「Coral HAL 6」は2024年の新作。
フライヤーなどにもあしらわれている立体で、テトラポッドを細長くしたような同一の形状のパーツがつながって球状をなしています。
「いのちのつながり」を表現しているということでしょうか。
階段で上ったところのコーナーは、ふだん展示されている日勝のスケッチブックなどのかわりに、半谷さんのノートや、作品に使った不用品の傘やロープが置かれていました。
一方、日勝は、大作の「ゴミ箱」や「静物」などは同館の所蔵ですが、帯広信用金庫や佐野力氏、個人蔵などもけっこう多いです。
個人的には、離農した廃屋を描いた風景画が胸にしみました。
白い塔みたいのはなんだろうと思ったら、サイロなんですね。
廃サイロは北海道の山奥などでいまもよく見かけますが、どうしてどれも屋根がなくなっているのだろう。
「滞船」という小品は、厚塗りのイエローオーカーを配した大ぶりの風景画で
「お兄さんにそっくりだなあ」
と感服していたら、キャプションに「神田一明」とありました。
ただ、ちょっと思ったのは、やはり時代を経てこの美術館が手狭に感じられるようになったなということ。
企画展を意欲的に開いているのはすばらしいことですが、今回の半谷さんのインスタレーションは、網走市立美術館の個展などにくらべても半分以下の小規模になってしまっています。
もう一つ。
「見捨てられたもの、不用になったものへのまなざし」という点で、半谷さんと日勝には共通するものがあるのではないかと思いました。
その視線は今後ますますたいせつになってくるような気がします。
館内は撮影不可でした。
2024年9月21日(土)~12月8日(日)、月曜休み(祝日は開館し翌火曜休み)・10月27日休み
神田日勝記念美術館(十勝管内鹿追町東町3)
http://www.hangais.com/art.htm
過去の関連記事へのリンク
■半谷学展 さしがさ花の花さくころ(2020年2月22日~3月29日、網走)
■イコロの森 ミーツ・アート2019 ー森の野外美術展ー
■中庭展示Vol.12 半谷学 「花降りーFlower Fallー」(2019年4~9月)
■Post 3.11 in Sapporo 〜沈み行く記憶の淵で (2019年3月)
■帯広コンテンポラリーアート2016 ヒト科ヒト属ヒト
防風林アートプロジェクト (2014)
六花ファイル第3回収録作家作品展 「秋の漂い 冬の群れ 半谷学展」 (2013、画像なし)
・帯広駅ターミナルから拓殖バス「然別湖行き」「新得駅行き」「鹿追町役場行き」のいずれかに乗り「神田日勝記念美術館前」降車、すぐ
福原記念美術館から歩いて神田日勝記念美術館へ。
ひさしぶりに入ったら、ロビーにあった什器類が減ってすっきりした感じになっていました。
今回の企画展は、1963年帯広生まれで、群馬県みなかみ町と帯広に拠点を置く半谷学さんの4点(計8点)と、日勝の絵画24点など。
日勝の絵は、遺作「馬」が定位置から入り口近くに移動し、いつも壁にかかっているスペースには、半谷学さんのインスタレーション「さしがさばなー差傘花14」が展示されています。
「さしがさばな」は半谷さんの代表的なシリーズ。十勝の公共施設に置き去られていた不用のビニール傘を使い、花に見立てています。
空中につるされて並んだ傘の花は25個。
つるした作品は「自然の傘」(2015)で、計4個ありました。
これも荒廃した竹林から伐採した竹や、帯広の劇場で使わなくなった緞帳のロープなどを使ったリサイクルの作品。6本の骨から、海藻で作った紙による各4枚の葉が左右に出ています。葉の部分が小さいので、雨をさえぎる用途には使えそうにありません。
4本の傘が、空調の風でゆらゆらと動きます。
壁の日勝の絵に、傘の影が落ちてぼんやりと文様が揺れるようすもおもしろいです。
「Coral HAL 5」と「Coral HAL 6」は2024年の新作。
フライヤーなどにもあしらわれている立体で、テトラポッドを細長くしたような同一の形状のパーツがつながって球状をなしています。
「いのちのつながり」を表現しているということでしょうか。
階段で上ったところのコーナーは、ふだん展示されている日勝のスケッチブックなどのかわりに、半谷さんのノートや、作品に使った不用品の傘やロープが置かれていました。
一方、日勝は、大作の「ゴミ箱」や「静物」などは同館の所蔵ですが、帯広信用金庫や佐野力氏、個人蔵などもけっこう多いです。
個人的には、離農した廃屋を描いた風景画が胸にしみました。
白い塔みたいのはなんだろうと思ったら、サイロなんですね。
廃サイロは北海道の山奥などでいまもよく見かけますが、どうしてどれも屋根がなくなっているのだろう。
「滞船」という小品は、厚塗りのイエローオーカーを配した大ぶりの風景画で
「お兄さんにそっくりだなあ」
と感服していたら、キャプションに「神田一明」とありました。
ただ、ちょっと思ったのは、やはり時代を経てこの美術館が手狭に感じられるようになったなということ。
企画展を意欲的に開いているのはすばらしいことですが、今回の半谷さんのインスタレーションは、網走市立美術館の個展などにくらべても半分以下の小規模になってしまっています。
もう一つ。
「見捨てられたもの、不用になったものへのまなざし」という点で、半谷さんと日勝には共通するものがあるのではないかと思いました。
その視線は今後ますますたいせつになってくるような気がします。
館内は撮影不可でした。
2024年9月21日(土)~12月8日(日)、月曜休み(祝日は開館し翌火曜休み)・10月27日休み
神田日勝記念美術館(十勝管内鹿追町東町3)
http://www.hangais.com/art.htm
過去の関連記事へのリンク
■半谷学展 さしがさ花の花さくころ(2020年2月22日~3月29日、網走)
■イコロの森 ミーツ・アート2019 ー森の野外美術展ー
■中庭展示Vol.12 半谷学 「花降りーFlower Fallー」(2019年4~9月)
■Post 3.11 in Sapporo 〜沈み行く記憶の淵で (2019年3月)
■帯広コンテンポラリーアート2016 ヒト科ヒト属ヒト
防風林アートプロジェクト (2014)
六花ファイル第3回収録作家作品展 「秋の漂い 冬の群れ 半谷学展」 (2013、画像なし)
・帯広駅ターミナルから拓殖バス「然別湖行き」「新得駅行き」「鹿追町役場行き」のいずれかに乗り「神田日勝記念美術館前」降車、すぐ
(この項続く)