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■片岡球子展 (5月30日まで)

2010年05月13日 00時51分37秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(5月22日、追記しました)

 札幌生まれで、文化勲章を受章した日本画家・片岡球子(1905~2008)の、歿後初めての回顧展。
 代表作50点が展示される、というふれこみである(会期中、展示替えあり)。

 50点のうち、道立近代美術館の所蔵品が16点、札幌芸術の森美術館の所蔵品が10点であり、両館だけで過半数を占める。
 このほか、神奈川県立近代美術館から13点が来ている。この3館だけで全体の8割近くに達しており、筆者のように何度も片岡球子の展覧会を見ている人間にとっては、出品作にあまり新鮮味は覚えない。
 まあ、「浅間山」の作品などは、あまりにド派手な色彩配置が、見ていてクラクラしそうで
「ここまでやるとかえってすがすがしい」
なって思ったりしたが。

 もっとも、新味を感じないなどというのは、スレた物の見方であって、あまり彼女の絵を見たことのない人にとっては、鮮やかな色彩の大作がどんどんと並ぶ会場は、迫力と精彩に満ちたものと感じられるだろう。

 色彩といえば、今週の北海道新聞夕刊1面で、片岡球子の絵を紹介しているが、本物の絵の色彩はこんなものではない。
 もっとあでやかで、ギラギラしているのだ。
 この点については、図録もちょっとおとなしい。
 やはり、本物を見るにしくはないと思う。

 このほか、スケッチブックなどの写生が17点展示されている。これは、見る機会のとぼしい、貴重なものだろう。

 展覧会の構成じたいは、それほど奇をてらったものではない。
 特徴をあげれば、画家自身のことばを強調した展覧会といえようか。
 彼女自身は、たとえば岸田劉生や鏑木清方のように文章の得意な画家というわけではないだろうが、画業80年ともなるとインタビューなどがかなり残されており、それらから抜粋した文が、会場の壁に大きく印字されているのだ。図録にも目立つように印刷されている。
 ポスターにもあった
「北海道から東京に出てるんだから、こまごましてケチ臭い絵を描かないで、北海道の大地のような、でっかい、人が私の絵を見たら息が詰まるというような、そういう迫力の絵を描きたいと思った。それはもう、ああいう寒いところに生まれた根性です。」
といった文である。これは短いほうで、こういうのが11あるのだ。

 画家自身の言葉が、絵に接近するカギとなることについて、異論のある人は少ないだろう。

 ということで、彼女の絵については、「いのちの賛歌」であり「きわめて個性的」であり「北国の風土の反映」である-といったあたりで、評言は落ち着くのであろう。
 しかし、そういうことばを持ち出して文章をまとめて「わかったつもり」になるのは、それ自体を責めるつもりはないけど、「知的怠慢」のような気もする。
5月22日追記。「知的怠慢」というのは、見る側、批評する側のことであって、美術館が或るオリジナルな見方を提示しなくてはいけないなどと言っているのでは決してありません)

 そこで、ちょっと違った角度から、彼女の絵に迫ってみたいのだが、とりあえずこのエントリは、展覧会の概要を書いたところでいったんおしまい。
 


2010年4月24日(土)~5月30日(日)午前9時45分~午後5時
休館日:4月26日(月)のみ
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2)

一般1000円、高校・大学生600円、小・中学生400円、65歳以上800円(敬老手帳など提示)、「障がい者手帳」持参者と付き添い1人は無料。
※野外美術館、佐藤忠良記念子どもアトリエとの共通券もあります(当日のみ)

アクセス
・地下鉄南北線真駒内駅バスターミナルの「2番乗り場」から出るバスはすべて「芸術の森入り口」に止まります。
(2番のバスという意味ではない)
一般280円。地下鉄との乗り継ぎ割引あり。
ウィズユーカードは使えますが、「1dayカード」は使用不可


(2番乗り場の位置。改札口を出て、左側に行くとあります。ずっと屋根があります)

・駐車場は500円(5分以上歩きます)


2010年6月5日(土) ~ 7月25日(日)9:30~5:00
月曜休館。ただし7月19日は祝日のため開館し翌20日(火)休み
道立旭川美術館( 旭川市常磐公園内)

一般1000円、高校・大学生600円、小・中学生400円

◆アクセス
・旭川駅から、買物を直進、7条緑道に左折。1.7キロ、徒歩22分(楽しい散歩コースです)

・旭川駅前(西武A館前)14番バス停から、3・13・23・24・31・35番のバスに乗り、「4条4丁目」で降車(3・31・35番)、徒歩5分。または「8条西1丁目」で降車(13・23・24番)、徒歩3分。

・札幌駅前ターミナルから出ている中央バス「高速あさひかわ号」に乗り「4条通1丁目」で降車すると、約600メートル、徒歩7分で、意外に近いです



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