これまでも書いてきたことだが、島田無響さんというと、白髪の長髪で和装の、いかにも書家といった外貌と、1998年に京王プラザホテル(札幌)のロビーなどを会場に使用した個展を思い出す。
ホテルロビーの吹き抜けに大きな紙を張り渡すなど破格のスケールで、あれほど大規模な書の個展は、道内ではそれ以降開かれていないだろう。
毎日新聞北海道面「辞林」に、次のようにあった。
会場には遺作46点と小品が出品されていたが、率直に驚かされたのは、漢字、かな、近代詩文がおなじように並んでいたことだ。
現代の書家はたいてい、取り組む分野が決まっている。島田無響さんもメインは漢字だったのだろうが、漢字とおなじ運筆で、かなも書いている。つまり、連綿などを駆使した伝統的なかな書の筆法ではない。
では、どういう書風なのか。
書を評するときに「墨の潤渇」ということがよくいわれるが、無響さんは「渇」の部分が多い。
たっぷりと墨をつけて黒々と太い文字を書くのではなく、ややかすれた線を引っ張る。
もちろん、墨をつぐときには「潤」になるが、ほどなくして線はかすれていく。
しろうと目には、筆先が割れて線が二筋になるのはどうなのかとも思うが、細かいことは気にしないのだろう。
だから、道内の近代詩文にありがちな、むやみな力強さではなく、自在で飄逸とした線質といえそうだ。
かといって、良寛流の力が抜けた線でもないし、佐藤満さんふうのひょろひょろした線でもない。それほど太くなく、直線を軸にして、どしどし先に進んでいく、そういう文字だといえると思う。
この直線というのが独自の味とリズム感があり、「喝」で始まる軸など、書家から叱責されているような緊張感がある。
荘子の一節を3行に書いた軸は、号の由来となった「无響(無響)」の2文字が、ちょうど左上に来るような、絶妙の配置。
宮澤賢治の詩を題材にした作品は、字の背後に淡墨の太い縦線を引き、全体を引き締めている。
小品も軽妙洒脱な味のある作が多いが、なかでも次の詩はおもしろかった。
2018年10月30日(火)~11月4日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5 大五ビル)
参考
ブログ「白うさばらし」の記事 https://blog.goo.ne.jp/shirousa4494/e/2a6a5894fa654517cd458cfb8ae76774
関連記事へのリンク
島田無響さん(書家、札幌)死去
オホーツク文学館 ~オホーツク小さな旅(49) 網走・生田原その8
■無響書展 (2007)
■第45回北海道書道展(2004)
http://saruuni.blog96.fc2.com/blog-entry-710.html
ホテルロビーの吹き抜けに大きな紙を張り渡すなど破格のスケールで、あれほど大規模な書の個展は、道内ではそれ以降開かれていないだろう。
毎日新聞北海道面「辞林」に、次のようにあった。
島田さんは1928年、千葉県銚子市生まれ。早稲田大卒。29歳の時、札幌市に移住し、本格的な書作活動に入った。70年書道研究団体「點の会」を結成。日展会友、創玄書道会監事、毎日書道展審査会員などを歴任し、90年に札幌市民芸術賞を受賞。「水の流れ、雲の動き、風の音など生活の中のあらゆるものを手本にしたい」と語り、最晩年まで創作への情熱が衰えることはなかった。
会場には遺作46点と小品が出品されていたが、率直に驚かされたのは、漢字、かな、近代詩文がおなじように並んでいたことだ。
現代の書家はたいてい、取り組む分野が決まっている。島田無響さんもメインは漢字だったのだろうが、漢字とおなじ運筆で、かなも書いている。つまり、連綿などを駆使した伝統的なかな書の筆法ではない。
では、どういう書風なのか。
書を評するときに「墨の潤渇」ということがよくいわれるが、無響さんは「渇」の部分が多い。
たっぷりと墨をつけて黒々と太い文字を書くのではなく、ややかすれた線を引っ張る。
もちろん、墨をつぐときには「潤」になるが、ほどなくして線はかすれていく。
しろうと目には、筆先が割れて線が二筋になるのはどうなのかとも思うが、細かいことは気にしないのだろう。
だから、道内の近代詩文にありがちな、むやみな力強さではなく、自在で飄逸とした線質といえそうだ。
かといって、良寛流の力が抜けた線でもないし、佐藤満さんふうのひょろひょろした線でもない。それほど太くなく、直線を軸にして、どしどし先に進んでいく、そういう文字だといえると思う。
この直線というのが独自の味とリズム感があり、「喝」で始まる軸など、書家から叱責されているような緊張感がある。
荘子の一節を3行に書いた軸は、号の由来となった「无響(無響)」の2文字が、ちょうど左上に来るような、絶妙の配置。
宮澤賢治の詩を題材にした作品は、字の背後に淡墨の太い縦線を引き、全体を引き締めている。
小品も軽妙洒脱な味のある作が多いが、なかでも次の詩はおもしろかった。
山の人を仙といい
谷にすむのが
俗ならば川のほ
とりのこの人は
何だろう
2018年10月30日(火)~11月4日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5 大五ビル)
参考
ブログ「白うさばらし」の記事 https://blog.goo.ne.jp/shirousa4494/e/2a6a5894fa654517cd458cfb8ae76774
関連記事へのリンク
島田無響さん(書家、札幌)死去
オホーツク文学館 ~オホーツク小さな旅(49) 網走・生田原その8
■無響書展 (2007)
■第45回北海道書道展(2004)
http://saruuni.blog96.fc2.com/blog-entry-710.html