永野曜一さんは札幌の画家、自由美術会員。
その抽象画にはますます磨きがかかっている。
昨年は個展と2人展を開いており、精力的な活動ぶりだ。
それは、直接的には、何者かを表象しているのではない。
にもかかわらず、その作品世界は、実際の大きさを超えたはるかな広がりを感じさせる。
その広さの感覚は、透視図法的な構図から生まれるのではない。平坦な画面でありながら、スケール感があるのだ。
冒頭は、左が「雨の日はブルー」、右が「風景」。
「雨の日は…」の青灰色は、実に渋い。
上部の複雑なマチエールは、シルクスクリーン用のゴムスクイージーで表面の絵の具を一気にかきとったというから、驚きだ。
聞けば、永野さんは以前、版画を制作していたとのこと。小さな画面に豊かな広がりを感じさせるのは、そういう経験が物を言っているのかもしれない。
画面の下方にあるターコイズブルーが良いアクセントになっている。これも、彩度が高すぎず低すぎず、面積も広すぎず狭すぎず、絶妙の差し色だ。
右手前は「風のかたみ」。
今回の出品作で最も大きいF50だ。
永野さんは「大きい作品は難しい」と腕を組む。「100号も、小さいのと同じような水準で描けるようにならないと。やっぱり画家の試金石だからね」
小品と同じストロークで描けば絵はこじんまりと縮こまってしまうし、大きく筆を走らせれば、大雑把になりかねないのだろう。なかなかむずかしい。
「庭の木立」F6。
画面の四隅は、構図をつくる上での難点だが、こうして画中にもうひとつ額縁のようなものを描くと、画面の世界は広がりを獲得する場合が少なくない。
かっちりした部分と、流れるようなストロークの部分との、鮮やかな、しかし、派手すぎない対比。
全体的に、以前と比べると、下地などはかっちり作っているのは変わらないものの、仕上げでは気ままに、半ば即興的に筆を走らせていることが分かる。
計算ずくで画面を構築しつくすのではなく、遊びや勢いの部分を残しつつ、タブローとして完成させるという姿勢がみてとれるのだ。
他の出品作は次の通り。
通り過ぎた日々 F50
いつかの空 F20
浄夜 F15
気ままに M10
秘宝 F6
地異 M10
遁走 F8
黄土 F8
都市 SM
いちじくの味 F3
森 SM
2015年2月10日(火)~15日(日)午前10時30分~午後6時30分(最終日~5時)
さいとうギャラリー(札幌市中央区南1西3 ラ・ガレリア5階)
■自由美術北海道展 (2014)
■永野曜一個展 (2008)
■永野曜一個展 (2008)
■自由美術/北海道グループ展 (2007)
■永野曜一個展(2002年、画像なし)