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「アールブリュット」について思ったこと

2016年03月14日 16時50分33秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 北海道アールブリュットネットワーク協議会という団体が発足して「北海道アールブリュット展 ~こころとこころの交差点~」という展覧会が2016年3月1日(火)から6日(日)までの午前10時~午後5時、札幌のギャラリー大通美術館(中央区大通西5)で開かれた。1日の北海道新聞にもカラーで大きく取り上げられていたから、ごらんになった方もおいででしょう。
 また、NHKギャラリー札幌では「アートセンターあいのさと~アールブリュット展~」も3月4日(金)~10日(木)に開かれ、「アールブリュット」の展覧会は、道内ではちょっとした盛り上がりを見せているようです。

 実はこれ、道内(といっても、いまのところは札幌と旭川近郊がほとんどのようですが)に限った話ではありません。
 日本のアウトサイダーアート展がパリで成功を収め、欧米の市場では、日本のその種の作品が次々と買われているという話も聞きます。日本ではアウトサイダーアートの市場が未整備のため、安い値段で流出しているのではないかという危惧も耳にします。
(アールブリュットとアウトサイダーアートも厳密には違う概念ですが、ここでは省略します)

 ただ、すくなくても道内の動きについては、ちょっと考えてしまうことがあります。
 それは、北海道アールブリュットネットワーク協議会が、ほとんど障碍者福祉や医療の関係者によって発足したことからもうかがえるとおり、道内では「アールブリュット」が「障碍者の芸術」という文脈でとらえられるようになってきていることです。
 これは、従来の「エイブルアート」という枠組み(概念)と、どう違うのでしょう。

 アールブリュットについて少しでも学んだり本を読んだりしたことのある人なら、釈迦に説法でしょうが、アールブリュット=(イコール)障碍者の芸術、ではありません。
 むしろ、アールブリュットの普及に努めてきた人たちは「イコール障碍者の芸術」という先入観を払拭するために多くの言説をついやしてきました。
 昨年、札幌芸術の森美術館に巡回した「すごいぞ、これは!」展が、ポスターなどにひとことも「アールブリュット」とうたわず、出品作家に精神障害者以外の人が複数入っているたことも、そのあらわれではないかと思います。

 また、精神障碍とまったく関係なく、しかしアールブリュットの文脈で評価されている道内の作家に、江別の林田嶺一さんがいます。
 林田さんはかつて全道展会員でしたが、途中で作風を一変させ、一般的な画壇とは別のところでとりあげられてきています。

 ところが、今年に入って札幌で「アールブリュット」と銘打たれて開かれた展覧会はすべて福祉や障碍、医療の関係者によって開かれています。
 精神障害者の作品発表の場があること自体に、異を唱えるつもりはまったくありません。
 しかしそれって「アールブリュット」とはちょっと違うんじゃないかという気がしてならないのですが、関係者の皆さんは、どうとらえておられるのでしょうか。



 関連する記事へのリンク
すごいぞ、これは!(2015)

 参考
幼少期見た旧満州描く 北海道・江別の美術家・林田さん、滋賀の国際芸術展に出展 (北海道新聞2016年2月18日付、江別・当別版)


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