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屏風型の支持体に鮮烈な色彩で人間模様とも風景ともとれる絵を制作し続ける札幌の大地康雄さん。同姓同名の役者さんがいるが、札幌の大地さんは、今年で全道展初入選からちょうど半世紀というベテラン画家だ(独立美術会員、全道展会員)。
しかし、髪を伸ばし、次回作への意欲を語り出したらとまらない大地さんを見ていると、1938年(昭和13年)生まれということが信じられないほど若々しく、エネルギッシュだ。
45回目だか46回目となる個展の会場中央にある200Fの大作は「大震災からの脱却」。
冒頭画像がそれで、一部を拡大してみると…。
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直線で区切られた区画の中を鮮やかに塗り分けるという基本的な手法は、筆者が見始めた1990年代半ばと変わっていないように感じる。
しかし、かつては画面を埋め尽くすようにちりばめられていた細かい色の粒は、整理された。
裸婦の人体は極限まで解体され、そこに展開されるのは、がれきに埋もれた大地のようにすら見える。
各作品の下部に、落款のような、しかし黒い印が、サインの代わりにおされているのがおもしろい。
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大地さんの作品のうち、大きなものは、屏風の形をした半立体型をしている。
支持体のスタイルだけでなく、輪郭線を生かしたところや、箔を活用している点など、洋画でありながら日本の絵画を非常に意識した画風であるから、黒い印なのだろう。
比較的小さなサイズの作品も多彩だ。
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「図と地のテレトリー(扇図)」。
版画の技法を応用した作。よく見ると、裸婦の図のパターンはいくつかしかない。
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本物の貝殻を支持体に用いた作品もある。
アワビ、ホタテ、カキなど、さすがに北海道の貝は大きい。
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会場入り口附近には「雷電刀掛け」(8F)など、比較的とっつきやすい風景画が並んでいる。朱色や、金色のようなアンバーをたっぷり使っているあたりは大地さんらしい。
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全道展に出した「脱却」(100F変形)。
3階と4階のあいだの踊り場に展示されていた。
人物とも風景ともとれる独特の絵柄だ。
大地さんは、個展にあたり、つぎのようなメッセージを出している。
東日本大震災以来、ノアの方舟にちなんで「扇図に人類を救いユートピアを築く世界」を表現するべく取り組んできた。
これを機に、人類の「復活、復興、夢の実現」へと希望を与える絵を描いて行きたい。
今回は人間生活の高揚を図り力強く生き抜く様相を強調したいと考え、色彩も強烈でアグレッシブな色彩が優しく響きあうように配慮しグラディーションにウエイトをかけて表現した。
画面空間から緊張感と迫力ある生命力を伝えたい!
初出品・初入選から半世紀という、或る意味で節目となる個展なのですが、ご本人は
「まったく満足してないなあ。ヤナイさん、おれ、80になったら、ここ(大同ギャラリー)の上と下両方借りて、大きな個展をやるから」
と、意気軒昂でした。
ほかに出品したのは
10F 黄昏 飛翔
8F 羨望 テイクオフ 形象
4F 群化社会 幕開け 欲望
SM 北緯43度 アンニュイ 憧憬 旅立ち
0F 黄昏 赤蝦夷富士 秋景 支笏湖 岩内遠望 形象 望郷
2013年11月14日(木)~19日(火)午前10時~午後6時
大同ギャラリー(札幌市中央区北3西3 大同生命ビル3階)
大地さんは1938年、岩内生まれ。
60年岩手大学芸学部(現教育学部)美術専攻卒
63年 第18回全道展初入選(65、66年奨励賞、67年会友推挙、82年会員推挙)
65年 全道勤労者美術展で水産会長賞(札幌市民会館)
65年 第33回独立展初入選(98年新人賞、99年、00年奨励賞、01年独立賞、02年会員推挙)
70~2000年 北海道教職員美術展(74、76年奨励賞、78年特選)=札幌市民ギャラリー
81~86年 在道独立作家展=札幌時計台ギャラリー
82年~2001年 さっぽろ美術展=札幌市民ギャラリー
91年 札幌時計台文化会館美術大賞展=札幌時計台ギャラリー
91~2008年 第58、65、70、75、80回独立展北海道展=道立近代美術館
2002年 文化庁第36回現代美術選抜展推薦=道立釧路芸術館
03年 第23回日本画廊協会展=アートミュージアム・ギンザ
05年 緑陰会の指導者たち展=木田金次郎美術館
10年 輝け独立美術と神田日勝 讃=神田日勝記念美術館
個展
盛岡市自治会館 1965
岩内町公民館 1966、73。90
札幌時計台ギャラリー 1981~94(89年は3階全館で大地康雄自選展)
岩内町ホテルうきよ 1990
ギャラリーノルテ(札幌) 1995~2002
ギャラリーイセヨシ(銀座) 1996
望月画廊(銀座)97、99
兜屋画廊(銀座)98
新井画廊(銀座)2000、02
さいとうギャラリー 2000、04
シロタ画廊(銀座) 2001
大同ギャラリー 2003、06、08~13
スカイホール 2007
(2003年「屏風」編、04、05年「北の風景と人間模様」編、06~08年「異次元紀行シリーズ」、09、10年「扇図絵巻シリーズ」編、11年「方舟シリーズ」編、12、13年「大震災からの脱却」編)
【告知】“方舟シリーズ”(扇図編)「大地康雄の油絵」展 (2012)
【告知】「大地康雄の油絵」展“方舟シリーズ”編(2011)
■「大地康雄の油絵」展 “扇図絵巻”シリーズ編(2009年)
■異次元紀行シリーズ編 「大地康雄の油絵」展 (2008年)
■大地康雄の油絵展(2006年)
■2004年
■2003年(画像なし)
■2002年
■大地康雄の油絵展「人間模様シリーズ」(2001年)