北海道美術ネット別館

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■詩の黄金の庭 吉増剛造展と「石狩シーツ」 (8月31日まで)

2008年08月26日 22時02分33秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
(承前)

 ところで、文学館という施設に行くたびいつも思うことは

文学館は本屋を併設せよ!

ということだ。

 美術館の主役は作品だが、文学館の場合は、陳列されているものはあくまで資料であって、やはり
本を読んでナンボのもの」
ではないだろうか。
 ガラスケースの中の本をながめたって、その作家のことがわかるわけじゃないだろう。

 文学館の展示で知って「あら、おもしろそう」と思った作品を、その場で入手できないのはなんとも歯がゆい(北海道弁だと「いずい」)。
 近くの書店に行ってお目当ての本を見つけられればまだいいけど、本屋さんの棚にならんでいる文学書は、現役の人気作家のものばかり。文学館でとりあげているような作家や作品は、地味な文庫の棚にあったり、少部数の全集類に収められていることが多くて、小さな書店にはないし、大きな店では探すのに難渋する。

 だから、文学館には、文学書に特化した本屋を設けてもらいたいのだ。
 ついでに、道立文学館には、札幌市立図書館の検索端末を置けば便利なのではないだろうか。

 どうしてこんなことをエンエンと書いているかというと、今回の吉増剛造展では、チラシなどで
「名作『石狩シーツ』」
なーんて、うたわれているくせに、肝心の「石狩シーツ」はどうやって読めばいいのじゃ! という怒りが、あらためてフツフツとわきあがってきたからなのだ。

 札幌でいちばん大きいといわれている某書店に行っても、詩集の少ないことにはあきれるほかない。戦後の代表的な詩人の作品を収録した思潮社の「現代詩文庫」シリーズはあっても、現代詩の単行本の詩集はほとんどならんでいないのだ。
 しかも「石狩シーツ」は、比較的新しい作品なので、「現代詩文庫」の吉増剛造詩集には収録されていないときている。


 とはいえ、じぶんはどこかで「石狩シーツ」を読んだ記憶がある。
 それが、どこで読んだのかを思い出せないでいた。

 吉増剛造展の会場で「石狩シーツ」のコーナーに来て、思わず
「あっ、これか!」
と声をあげてしまった。
 そこには、初出誌として「ユリイカ」の94年12月号があったのだ。
 これなら、家にあるぞ。

 「ユリイカ」のこの号は、フランスの文豪バルザックの特集である。
 筆者はバルザックが好きだし、じっさいすごい小説家だと思う。「ゴリオじいさん」を読んで面白いと思わない人はいないだろう。

 さて、家に帰って長編詩「石狩シーツ」を読み返してみる。
 女坑夫さん、女坑夫さん…のリフレインが、絶唱というにふさわしい。

 フッサ、シップ、望来、オオウバユリ…

 さまざまな「音」がこだまし、残響する。


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