(承前)
9月3日(金)
■ あいちアートトリエンナーレ 白川公園エリア
◎名古屋市美術館:島袋道浩/エクトール・サモラ/オー・インファン/ホアン・スー・チェ/塩田千春/トム・フリードマン/ジェラティン/クー・ジュンガ/フランツ・ヴェスト/ラクウェル・オーメラ
オー・インファン(韓国)の線香の粉による「人と人とが出会う場所(名古屋)」は事前にリサーチした名古屋市内のゲイバーの名前が、線香が燃えると文字が浮かび上がる。東洋的な素材と物事の心理を浮かびあげさせる手法には感心した。オーストリアのユニット、ジェラティンには大いに期待していたが、今回は金属の箔片を無数に舞わせると言うパフォーマンス作品で、仕掛けが故障しておりそれさえも見る事が出来ずに残念である。島袋道浩は知多の篠島の漁村に暮らす人々をテーマに作品を展開。国際展慣れした展示であった。
愛知県芸術文化センターも名古屋市美術館もホワイトキューブに無菌化された空間での国際展は、この後に見る地域の中に溶け込んだ芸術祭と比べ、かなり魅力に欠ける事を認識する。美術館やギャラリーでは概ね撮影が禁止されている所が多く残念である。海外の美術館やベネチアビエンナーレなどが撮影可能であり、持ち帰った写真データをブログなどに掲載したものが大いに話題提供となるので、日本でもそのへんの国際化も望まれる。本報告の撮影可の写真以外はネットからの掲載である。
(ヤナイ註:このブログでは写真の大半は転載していません)
◎ベロタクシー:主たる会場への移動は無料のベロタクシーが運行され、ゆっくりながら街並を楽しむ事ができた。あらゆるホスピタリティーが国際展の重要な機能をサポートする。
■あいちアートトリエンナーレ 納屋橋エリア
泉孝昭/山下麻衣+小林直人/カーメン・ストヤノフ/小金沢健人/小泉明郎/孫原+彭禹(スン・ユァン+ポン・ユゥ)/楊福東(ヤン・フードン)/ダヴィデ・リヴァルタ/梅田宏明(網膜脳内映像)
納屋橋会場はボウリング場を綺麗に改修してギャラリーとして使用しているので、場が持っている固有の特性は感じられない。世界的に著名な孫原+彭禹の作品は機器のトラブルによって見る事が出来ず、それを直しもしない中国のおおらかさといいかげんさを見る事になった。ここでもドキュメント的な工夫のない即席な映像が連続して流れる作品が多かった。
◎パフォーミングアーツ(愛知県芸術文化センター):デルガド&フッシュ
スイスを拠点に活動するダンスユニット、デルガド&フッシュ。わずか1時間程度のダンスパフォーマンスであるが、鍛え抜かれた美しい身体による振り付けや演出に現代アートとして十分の内容を見せてくれた。ピンクと水色の衣装も印象的で、終了後のロビーでの撮影会や炭酸水の振る舞いもあり充実した楽しいパフォーマンスであった。あいちトリエンナーレの柱としてパフォーミングアーツは演目も多く、他の国際展との差別化や特色を出していると思った。イベントも多い。短期間の滞在では総体を見る事ができないのが残念である。
9月4日(土)
■あいちアートトリエンナーレ 長者町エリア
◎名古屋センタービル1階:川見俊
◎ 中愛株式会社地下:岡田昭憲/倉田愛実/有吉達宏/戸井田雄
◎ 長者町繊維卸会館:ルシア・コッホ/斉と公平太/淺井裕介/ジュー・チュンリン/ナウィン・ラワンチャイクン/北川貴好
◎ 旧玉屋ビル:石田達郎/山本高之/小栗沙弥子/青田真也
◎ 旧モリリン名古屋支店ビル:KOSUGE1-16/トロロスタジオ+栗本設計所・谷川寛+栗本真壱
◎錦2丁目ビル/メルヴェ・ベルクマン
◎喫茶クラウン/淺井裕介
◎瀧定ビル公開空地:ダヴィデ・リヴァルタ(2頭の馬)
◎万勝S館:市川武史/ジンミ・ユーン/マーク・ボスウィック
◎エルメ長者町:トーチカ/村田峰紀/小栗沙弥子
◎綿覚ビル1階:ルシア・コッホ(スクリーン)
◎吉田商事株式会社:ナタリヤ・リボヴィッチ & 藤田央
◎スターネットジャパンビル:渡辺英司
◎ARTISANビル1階外壁:ジラユ・ルアンジャラス など
長者町界隈を徘徊しながら見るのは楽しい。長者町繊維街は日本三大繊維問屋街のひとつで、近隣には繊維製造で有名な一宮がある。近年、日本製の繊維は中国産に押されて長引く不況が続いている。空きビル、ビル壁面、空き店舗、公開空地などが会場となり、場と歴史と人々をリンクさせる作品も多く好感の持てる作品が多かった。愛知や近隣の若手アーティストも見受けられ場と機会を得ることによって成長促す雰囲気が感じられた。札幌での国際展もこの視点が望まれる。ただし、地元偏重になり、総花的に作家を揃えるような愚は冒していないようである。今後は継続をすることによって、地域や地元の人々との関わりが大いに増すのではないかと推測される。長者町エリアのなかで傑出していたのは渡辺英司である。図鑑から切り抜かれた無数の蝶のインスタレーションや全館使った作品も充実していた。他にも市川武史、山本高之、ナウィン・ラワンチャイクン、淺井裕介、ジュー・チュンリンなど充実のラインナップであった。
(続く)
9月3日(金)
■ あいちアートトリエンナーレ 白川公園エリア
◎名古屋市美術館:島袋道浩/エクトール・サモラ/オー・インファン/ホアン・スー・チェ/塩田千春/トム・フリードマン/ジェラティン/クー・ジュンガ/フランツ・ヴェスト/ラクウェル・オーメラ
オー・インファン(韓国)の線香の粉による「人と人とが出会う場所(名古屋)」は事前にリサーチした名古屋市内のゲイバーの名前が、線香が燃えると文字が浮かび上がる。東洋的な素材と物事の心理を浮かびあげさせる手法には感心した。オーストリアのユニット、ジェラティンには大いに期待していたが、今回は金属の箔片を無数に舞わせると言うパフォーマンス作品で、仕掛けが故障しておりそれさえも見る事が出来ずに残念である。島袋道浩は知多の篠島の漁村に暮らす人々をテーマに作品を展開。国際展慣れした展示であった。
愛知県芸術文化センターも名古屋市美術館もホワイトキューブに無菌化された空間での国際展は、この後に見る地域の中に溶け込んだ芸術祭と比べ、かなり魅力に欠ける事を認識する。美術館やギャラリーでは概ね撮影が禁止されている所が多く残念である。海外の美術館やベネチアビエンナーレなどが撮影可能であり、持ち帰った写真データをブログなどに掲載したものが大いに話題提供となるので、日本でもそのへんの国際化も望まれる。本報告の撮影可の写真以外はネットからの掲載である。
(ヤナイ註:このブログでは写真の大半は転載していません)
◎ベロタクシー:主たる会場への移動は無料のベロタクシーが運行され、ゆっくりながら街並を楽しむ事ができた。あらゆるホスピタリティーが国際展の重要な機能をサポートする。
■あいちアートトリエンナーレ 納屋橋エリア
泉孝昭/山下麻衣+小林直人/カーメン・ストヤノフ/小金沢健人/小泉明郎/孫原+彭禹(スン・ユァン+ポン・ユゥ)/楊福東(ヤン・フードン)/ダヴィデ・リヴァルタ/梅田宏明(網膜脳内映像)
納屋橋会場はボウリング場を綺麗に改修してギャラリーとして使用しているので、場が持っている固有の特性は感じられない。世界的に著名な孫原+彭禹の作品は機器のトラブルによって見る事が出来ず、それを直しもしない中国のおおらかさといいかげんさを見る事になった。ここでもドキュメント的な工夫のない即席な映像が連続して流れる作品が多かった。
◎パフォーミングアーツ(愛知県芸術文化センター):デルガド&フッシュ
スイスを拠点に活動するダンスユニット、デルガド&フッシュ。わずか1時間程度のダンスパフォーマンスであるが、鍛え抜かれた美しい身体による振り付けや演出に現代アートとして十分の内容を見せてくれた。ピンクと水色の衣装も印象的で、終了後のロビーでの撮影会や炭酸水の振る舞いもあり充実した楽しいパフォーマンスであった。あいちトリエンナーレの柱としてパフォーミングアーツは演目も多く、他の国際展との差別化や特色を出していると思った。イベントも多い。短期間の滞在では総体を見る事ができないのが残念である。
9月4日(土)
■あいちアートトリエンナーレ 長者町エリア
◎名古屋センタービル1階:川見俊
◎ 中愛株式会社地下:岡田昭憲/倉田愛実/有吉達宏/戸井田雄
◎ 長者町繊維卸会館:ルシア・コッホ/斉と公平太/淺井裕介/ジュー・チュンリン/ナウィン・ラワンチャイクン/北川貴好
◎ 旧玉屋ビル:石田達郎/山本高之/小栗沙弥子/青田真也
◎ 旧モリリン名古屋支店ビル:KOSUGE1-16/トロロスタジオ+栗本設計所・谷川寛+栗本真壱
◎錦2丁目ビル/メルヴェ・ベルクマン
◎喫茶クラウン/淺井裕介
◎瀧定ビル公開空地:ダヴィデ・リヴァルタ(2頭の馬)
◎万勝S館:市川武史/ジンミ・ユーン/マーク・ボスウィック
◎エルメ長者町:トーチカ/村田峰紀/小栗沙弥子
◎綿覚ビル1階:ルシア・コッホ(スクリーン)
◎吉田商事株式会社:ナタリヤ・リボヴィッチ & 藤田央
◎スターネットジャパンビル:渡辺英司
◎ARTISANビル1階外壁:ジラユ・ルアンジャラス など
長者町界隈を徘徊しながら見るのは楽しい。長者町繊維街は日本三大繊維問屋街のひとつで、近隣には繊維製造で有名な一宮がある。近年、日本製の繊維は中国産に押されて長引く不況が続いている。空きビル、ビル壁面、空き店舗、公開空地などが会場となり、場と歴史と人々をリンクさせる作品も多く好感の持てる作品が多かった。愛知や近隣の若手アーティストも見受けられ場と機会を得ることによって成長促す雰囲気が感じられた。札幌での国際展もこの視点が望まれる。ただし、地元偏重になり、総花的に作家を揃えるような愚は冒していないようである。今後は継続をすることによって、地域や地元の人々との関わりが大いに増すのではないかと推測される。長者町エリアのなかで傑出していたのは渡辺英司である。図鑑から切り抜かれた無数の蝶のインスタレーションや全館使った作品も充実していた。他にも市川武史、山本高之、ナウィン・ラワンチャイクン、淺井裕介、ジュー・チュンリンなど充実のラインナップであった。
(続く)