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「画家ボナール ピエールとマルト」

2024年10月08日 21時21分00秒 | 音楽、舞台、映画、建築など
「画家ボナール ピエールとマルト」予告編


 ピエール・ボナールは19世紀末から20世紀にかけてフランスで活躍した、ナビ派の画家。
 全道展や道展などにも直接間接の影響が感じられる画家が散見されて、おさえておくべき重要な画家だという思いです。
 逆にいえば、これは個人的な感想なのですが、同時代の絵画の流派のなかで

・新印象派
・ポスト印象派
・ラファエル前派
・(ちょっと下って)エコール・ド・パリ

といったあたりは、現代の画家で直接的な影響を受けている人はすでにほとんどいなくて、意外とナビ派だけが根強い影響力を保持しているように感じるのです(もう少し時代が下った潮流も含めると、フォービスムやシュルレアリスム、表現主義などは現代に直接つながっていると思えますが)。

 そういうわけで、絵画の勉強のつもりで、上映最終日の札幌・シアターキノに向かいました。
 しかし、これは絵画についての映画ではなく、恋愛映画でした。

 ボナールをはじめ、どの登場人物も、実物をほうふつとさせるのは、メイク陣と俳優の大健闘でしょう。
 主人公の妻マルトは、もうすこし丸顔のほうが…と思わないでもありませんが。
 モネに至っては、遠くから小型ボートでやってくるのを一目見て、彼だと分かったほどです。
 人物造形の面でも、モネ夫妻はいい味を出していました。

 それにしても、女性の視点からみると、ボナールは相当のクズとしかいいようがありません。
 マルトがいながら、若い女学生ルネに熱を上げ、イタリアで一緒に住み始めて結婚の約束までします。 
 昔なら「恋多き男」「艶福家」で済んでいたのかもしれません。
 しかし結局この二股は、悲劇的な結末をもたらします。
 ピエール・ボナールのどこがそんなに魅力的なのか、映画を見ていてもよくわかりません。まあ、恋とは、理屈やスペックじゃないですからね。

 キャンバスをイーゼルではなく、壁に直接貼り付け、モデルを振り返りながら描くという、独特の描きかたが興味深かったです。
 あと、セーヌ川沿いのアトリエ。全裸で川に飛び込んだりして、ほんとに幸福を絵に描いたような暮らしで、まったくうらやましいです。
 この「川に飛び込む」という行為は、何度も繰り返されてさまざまな場面で象徴的な意味を附与されていたようです。

 蠟管蓄音機に「Edison」のマークが入っていたり、小道具や細部は、わかる人には楽しい作品だと思います。
 映像は美しく、さすがフランス映画だと感じました。


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