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第6回主体美術北海道グループ展(6月10日終了)

2006年06月11日 07時14分01秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 主体美術協会(主体展)は1964年、自由美術協会を脱会した、道内画壇の重鎮だった小谷博貞さんらが旗揚げした、わりと歴史の新しい全国規模の有力公募展です。会員と一般出品の2階梯しかないことや、会場の題名札に会員か一般かの別を記さないことなどは、自由美術の伝統を引き継いでいます。
 北海道グループ展の特徴は、在住者だけでなく、道内出身者も出品していること。また、出品者が道内で所属している公募展が、道展も全道展も新道展もあるということでしょうか。画風も、日展ふうの写実こそないですが、戯画的なものや抽象などバラエティに富んでいます。150号を超える大作もありましたが、これは、比較的歴史が浅く会場(東京都美術館)の壁面に余裕のあることの反映だと思います。
 このなかで、写実的な作風と目されるのは橋本礼奈さん(東京。札幌出身)と続橋守さん(神奈川。歌志内出身)でしょうか。
 橋本さんはきわめてリアルな作風で、「小石川三丁目」は、ふつうなら誰も絵にしそうにないような古びた中華料理屋のある三叉路を題材にしています。舗道に太陽光線が差し込むあたりの描写にひかれましたが、おもしろいのは、端の電柱がカーブしていること。広角レンズで撮った写真をもとにしていることを隠さないのが、橋本さん流なんだと思います。
 続橋さんは、さいとうギャラリーで個展を同時開催中です。
 旗揚げ直後に主体美術に参画したベテラン紺野修司さん(東京。全道展会員)は、一貫して、室内と屋外の風景が一体化したような、開放感のある作品を描いています。空の青を塗る筆のタッチの震えが、画面に独特のリズム感をあたえています。
 香西富士夫さん(札幌。道展会員)もベテラン。ふたりの人物を戯画化した作品を作りつづけています。画面を走る極細の線が特徴。
 この3-4月にひらいた個展がこのサイトでも評判だった水戸麻記子さん(札幌)は、個展にも出品した大作「サーカス」のほか、新作「ミスター・タンブリングマン」を出品。あいかわらず奇妙な人物が画面に躍っています。右側のピエロは、以前から水戸さんの作品に登場している故清水一郎さんだと思います。
 抽象的な作品に目を転ずると、黒木孝子さん(札幌。全道展会友)は、黄や茶をメーンにした色使いこそ変わりませんが、作品から受ける印象はずいぶん変化しました。地も図もなく、細い縦線がびっしりと画面を覆っているのです。シャープな感じを受けますが、この方向性をあまり進めると、絵ではなく壁紙になっていまい、なかなかむつかしいところだと思います。
 野本醇さん(伊達。全道展会員)や工藤悦子さん(江別。新道展会員)、永井美智子さん(同)あたりは、すでに画風が固まっています。野本さんの、暗がりで光を見たときのような希望の感じ、工藤さんの生命の根っこを思わせるふしぎさ、永井さんの、前進と後退を繰り返す色の乱舞など、どれも絵を見る楽しさを満喫させてくれます。 

 まだ触れていない人がたくさんいますが、長くなってきたのでこのへんで。
 出品作は次のとおり。

浅野修(神奈川)「○○・△□」(240×310センチ)
石崎哲男(岩見沢)「須弥山」(S100)「須弥山」(F100)
門屋武史(釧路。全道展会友)「時の歯車」(F100)
工藤悦子(江別)「夜の鼓動」(193×260センチ)
黒木孝子(札幌)「連なる」(194×266.6センチ)
香西富士夫(札幌)「会話=え・ん」(F100)「会話=お・ん」(同)
近藤健一「変貌する形態」(F130)
紺野修司「朝・昼・夜」(F130)
斉藤望(千葉)「ERROR I」(S100)「ERROR II」(S100)
齋藤典久(東京)「Spread」(F150)
竹島俊之(札幌)「2006年の群像A」(F100)「2006年の群像B」(F100)
続橋守(東京)「残された刻」(F150)
十河幸喜「浮遊柵誤」(F150)
永井美智子(札幌)「Dance with a gentle wind(1)」(162×145.5センチ)「Dance with a gentle wind(2)」(S80)
野本醇(伊達)「季節の光(秋)」(F100)「季節の光(冬)」(F100)
橋本礼奈(東京)「小石川三丁目」(S100)「同じ日は二度と来ない」(F100)
馬場京子(札幌)「協奏曲(異郷)」(S100)「協奏曲(森)」(F100)
船川照枝(旭川。全道展会友)「稜線」(85×104センチ)「私風景」(165×135センチ)
前川アキ(札幌)「水葬―夜景」(F130)「映す 冬」(S50)
水戸麻記子(札幌)「サーカス」(162×260センチ)「ミスター・タンブリングマン」(F130)
水戸部千鶴「回帰する生」(200×140センチ)
森幸子「雨が降ってくる」(S100)「日が暮れて」(S100)
渡辺良一(網走管内美幌町)「砂塵の標的」(162×230センチ)


月曜から土曜 10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A


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