写真展に足をはこんで作品の前に立つたびに、これはデジタルだろうか、アナログだろうか-とつい値踏みをしてしまう自分は、古い人間なのだろうか。
画像や被写体によっては、まったくどちらか判別が付かない写真もすでに出てきている。
それぐらい、デジタル写真の技術的な進歩はすさまじい。
もう、どっちがすぐれているかというよりも、好みの問題になりつつあると言ってよいくらいだと思う。
しかし、現在でもなお、デジタルくささが感じられる写真プリントというのは、たしかに存在する。
うまく言葉ではいえないけれど、デジタルのほうが、べちゃっとしていて平板な感じがするのだ。
キヤノンギャラリーで開催中の写真展「カムイミンタラ」は、展覧会の名前だけ聞くと、大雪山系の写真なのかと思うが、実際は摩周湖や断崖など、道内の大自然を幅広く撮った25点が並んでいる。
札幌に住んでいて、道内のネイチャーフォトはかなり見慣れているけれど、それでもなお、すごいなあと思うのが、何点かある。(もちろん、「またこれかよ」と思ってしまうのもあるけれど)
これらの作品の中で、とりわけデジタルっぽいのが、一面のヒマワリ畑を撮った1枚と、バイカモらしき水草のそよぐ中を泳ぐ魚たちの1枚だ。
デジタル写真は、まだ植物の緑をとらえると、バラン(寿し折に入っている緑のプラスチック片)みたいに、のっぺりとした色彩が残る。
ヒマワリ畑も、どこか陰影と奥行き感が欠落して見えるのだ。
一方で、デジタルでなくては撮れなかった写真もある。
典型的なのは、流氷の上に満天の星空がきらめいている作品。あまりの星の描写のすごさに、息を呑む。
フィルムの場合、感度を上げれば上げるほど粒状性が犠牲になってしまうので、この写真のように、星空を短い露光時間で撮ることはほとんど不可能だった。
この写真のようなイメージをとらえるなら、星空を赤道儀で追尾して数分から数十分露光し、下の風景と合成する以外になかった。
デジタルの場合、感度を目いっぱい高くしても、画質にはさほど影響がない。
星々が点になってうつる写真は、デジタル時代になってから実現したものといってさしつかえないだろう。
デジタル写真のプリントを見て違和感を抱くのは、自分がいかにフィルム写真に慣れ親しんできたかという証左だけなのかもしれない。
生まれながらにデジタルプリントだけを見てきた人は、フィルムを見ると、なんだか輪郭がぼやけてシャープネスに欠ける像だと思うのかもしれない。
どっちが「リアル」かは、案外むつかしい問題である。
さて、小林さんは一貫してモノクロフィルムで撮影をしている。
一見、オーソドックスな風景写真ばかりに感じられるが、ミラーをアオって、ピントが合う範囲を人為的に調節した作品があったり、ピンホールで撮ったものがあったり、いろいろなことに取り組んでいる。機材も、一般の35ミリカメラのほか、二眼レフなども用いている。
半世紀ほど前、カラー写真の興隆に立ち会った関係者たちも、いまじぶんが抱いているような違和感に直面したに違いない。
やっぱり写真はモノクロだよねー、カラーは不自然だよねー、なんて思っていたのではないか。
どっちが、真の意味で「リアル」かという、そもそもの話はそっちのけで…。
鳥や森、海の写真を見ながら、そんなことを考えていたのだった。
鎌形久写真展 カムイミンタラ-神々の庭-
2009年11月9日(月)-20日(金)9:00-5:30(最終日-3:00)
キヤノンサロン(北区北7西1 SE山京ビル 地図A)
小林孝人写真展「北海道の風」
2009年11月16日(月)-21日(土)午前11:00-午後7:00
ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館 地図A)
画像や被写体によっては、まったくどちらか判別が付かない写真もすでに出てきている。
それぐらい、デジタル写真の技術的な進歩はすさまじい。
もう、どっちがすぐれているかというよりも、好みの問題になりつつあると言ってよいくらいだと思う。
しかし、現在でもなお、デジタルくささが感じられる写真プリントというのは、たしかに存在する。
うまく言葉ではいえないけれど、デジタルのほうが、べちゃっとしていて平板な感じがするのだ。
キヤノンギャラリーで開催中の写真展「カムイミンタラ」は、展覧会の名前だけ聞くと、大雪山系の写真なのかと思うが、実際は摩周湖や断崖など、道内の大自然を幅広く撮った25点が並んでいる。
札幌に住んでいて、道内のネイチャーフォトはかなり見慣れているけれど、それでもなお、すごいなあと思うのが、何点かある。(もちろん、「またこれかよ」と思ってしまうのもあるけれど)
これらの作品の中で、とりわけデジタルっぽいのが、一面のヒマワリ畑を撮った1枚と、バイカモらしき水草のそよぐ中を泳ぐ魚たちの1枚だ。
デジタル写真は、まだ植物の緑をとらえると、バラン(寿し折に入っている緑のプラスチック片)みたいに、のっぺりとした色彩が残る。
ヒマワリ畑も、どこか陰影と奥行き感が欠落して見えるのだ。
一方で、デジタルでなくては撮れなかった写真もある。
典型的なのは、流氷の上に満天の星空がきらめいている作品。あまりの星の描写のすごさに、息を呑む。
フィルムの場合、感度を上げれば上げるほど粒状性が犠牲になってしまうので、この写真のように、星空を短い露光時間で撮ることはほとんど不可能だった。
この写真のようなイメージをとらえるなら、星空を赤道儀で追尾して数分から数十分露光し、下の風景と合成する以外になかった。
デジタルの場合、感度を目いっぱい高くしても、画質にはさほど影響がない。
星々が点になってうつる写真は、デジタル時代になってから実現したものといってさしつかえないだろう。
デジタル写真のプリントを見て違和感を抱くのは、自分がいかにフィルム写真に慣れ親しんできたかという証左だけなのかもしれない。
生まれながらにデジタルプリントだけを見てきた人は、フィルムを見ると、なんだか輪郭がぼやけてシャープネスに欠ける像だと思うのかもしれない。
どっちが「リアル」かは、案外むつかしい問題である。
さて、小林さんは一貫してモノクロフィルムで撮影をしている。
一見、オーソドックスな風景写真ばかりに感じられるが、ミラーをアオって、ピントが合う範囲を人為的に調節した作品があったり、ピンホールで撮ったものがあったり、いろいろなことに取り組んでいる。機材も、一般の35ミリカメラのほか、二眼レフなども用いている。
半世紀ほど前、カラー写真の興隆に立ち会った関係者たちも、いまじぶんが抱いているような違和感に直面したに違いない。
やっぱり写真はモノクロだよねー、カラーは不自然だよねー、なんて思っていたのではないか。
どっちが、真の意味で「リアル」かという、そもそもの話はそっちのけで…。
鳥や森、海の写真を見ながら、そんなことを考えていたのだった。
鎌形久写真展 カムイミンタラ-神々の庭-
2009年11月9日(月)-20日(金)9:00-5:30(最終日-3:00)
キヤノンサロン(北区北7西1 SE山京ビル 地図A)
小林孝人写真展「北海道の風」
2009年11月16日(月)-21日(土)午前11:00-午後7:00
ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館 地図A)