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入門書というのは、むつかしいものだと思う。
とくに、その分野で、すでに定評のある先行書がある場合。
シュルレアリスムの場合、巌谷國士氏の手になるものがあり、さらに塚原史氏がダダとシュルレアリスムについて名著を上梓している。
そこに、オーソドックスな概説書を加えてもあまり意味がないし、さりとて独自すぎる説を繰り出したり、ごく限られた分野に絞って論を進めたりしても、新書にはふさわしくない。
悩ましいところだ。
酒井健さんが中公新書の一冊として出した「シュルレアリスム 終わりなき革命」は、フロイトとの関係から書き出すよくある叙述ではなく、いまや忘れられつつある第一次世界大戦という時代背景と、シュルレアリスムの近くにいた思想家バタイユを導入することで、これまでとはやや異なった趣を読者に与えるだろう。
とりわけ、第一次大戦については、欧洲の思想に与えた影響の深刻さでは第二次大戦など他の戦争の比ではないと思われるにもかかわらず、現代日本の読者にはピンとこない部分があるだけに、興味深いものがある。エルンスト・ユンガーについては、筆者もあまり知らず、勉強になった。
このブログの読者で気になるのは、おそらく、絵画など美術のことだろう。
絵画については巻末近くまであまり登場しないが、最後の章に要領よくまとめられている。
全体的には、特色を出しつつも、手堅い叙述という印象なのだが、そのぶん、共産主義との関係、ファシズムとの対決といった観点では、突き放したような沈着さが目立つ。それは、著者にとっても読者にとっても、共産主義やファシズムが、1920~30年代の若者や知識人ほどには、切迫した問題たりえていないがゆえだろう。
□中央公論社の関連ページ http://www.chuko.co.jp/shinsho/2011/01/102094.html
とくに、その分野で、すでに定評のある先行書がある場合。
シュルレアリスムの場合、巌谷國士氏の手になるものがあり、さらに塚原史氏がダダとシュルレアリスムについて名著を上梓している。
そこに、オーソドックスな概説書を加えてもあまり意味がないし、さりとて独自すぎる説を繰り出したり、ごく限られた分野に絞って論を進めたりしても、新書にはふさわしくない。
悩ましいところだ。
酒井健さんが中公新書の一冊として出した「シュルレアリスム 終わりなき革命」は、フロイトとの関係から書き出すよくある叙述ではなく、いまや忘れられつつある第一次世界大戦という時代背景と、シュルレアリスムの近くにいた思想家バタイユを導入することで、これまでとはやや異なった趣を読者に与えるだろう。
とりわけ、第一次大戦については、欧洲の思想に与えた影響の深刻さでは第二次大戦など他の戦争の比ではないと思われるにもかかわらず、現代日本の読者にはピンとこない部分があるだけに、興味深いものがある。エルンスト・ユンガーについては、筆者もあまり知らず、勉強になった。
このブログの読者で気になるのは、おそらく、絵画など美術のことだろう。
絵画については巻末近くまであまり登場しないが、最後の章に要領よくまとめられている。
全体的には、特色を出しつつも、手堅い叙述という印象なのだが、そのぶん、共産主義との関係、ファシズムとの対決といった観点では、突き放したような沈着さが目立つ。それは、著者にとっても読者にとっても、共産主義やファシズムが、1920~30年代の若者や知識人ほどには、切迫した問題たりえていないがゆえだろう。
□中央公論社の関連ページ http://www.chuko.co.jp/shinsho/2011/01/102094.html