熊谷文秀さんは札幌の造形作家。1964年、青森県生まれ。
近年は道展に出しているほか、札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)の「つながろう」展でユニークなインタラクティブアートを出品していたのでご記憶の方も多いでしょう。
展覧会の「森の匠」、さらに会場の印象とあいまって、木工クラフト的な作品が並んでいるのは―とつい想像してしまいますが、さびかかった赤茶色の鉄によるがっしりした造形です。
ロビーにあった「DIALOG MACHINE 2」は、アルファベットの活字が取り付けられた16列のコンベヤがゆっくりとぐるぐる回ってセンテンスを表示し、またぐるぐる回って別に文を提示し…という大作で、どういう仕掛けになっているのか分かりませんが(武骨な見た目と異なり、最新式の電子制御になっているんでしょうか)、
「THIRD TIME LUCKY」
「LET IT BE!」
「ALRIGHT, LET'S GO」
「HAVE A NICE TRIP」
など、見るたびに違うふうにアルファベットの活字が並んで、異なるセンテンスが出てきます。無意味な文字列には決してなりません。センテンスにそろうのは2分に1度ぐらいでしょうか。
(同系列の作品が、JR TOWER ART BOX に展示されていたように記憶します)
やはり4列の、縦に回転する板の側面に、影絵のような穴がいくつもあいていて、背後から光に照らすと、まるで幻灯のようにシルエットが動いているかのように見える、アニメーション投影機とでもいうべき「RUNNER」。
拍手に反応する「SPROUT」。
あるいは、足踏み運動をすると、作品上部の板が起き上がる「ABS」といった、双方向的な作品も楽しいです。
切れ味の良い造形の抽象彫刻の小品の数々は、今回初めて見ました。赤茶色の鉄のごっつい作品と違ってシャープです。
あるいは、熊谷さんが道内各地で多数手がけているパブリックアートのモケットか何かでしょうか。
この系列を含む作品として
「ELBOW45」「ELBOW90」「NOPPO」「空想の軌跡 2」「空想の軌跡 / 0」「タユトウ」「タユトウ 2」「タユトウ 3」「望遠鏡のせんちゃん」「パッカン」「逡巡」
が展示されていました。
なお、熊谷さんの作品は1カ所にまとめられているのではなく、ロビーなど数カ所に分散して展示されていました。
さて、この施設は「森の美術館」と名乗っていますが、いわゆる美術館というより、小さい子と親が一緒に木のおもちゃで遊ぶ施設だといったほうがいいでしょう。
美術館というと、展示してある作品をじっと眺めるための施設という色彩が強いですが、ここは多くのおもちゃで実際に遊ぶことができます。
発足にあたって貢献したのは、かつて留辺蘂町(北見市留辺蘂町)で木のおもちゃを次々とこしらえていた伊藤英二さん(故人)でした。伊藤さんは麗々しくサインを入れて自作を主張する人ではなく、子どもたちが楽しめばそれでいい、というスタンスだったと思います。
自分の持っている技術も惜しみなく後進に伝えていました。
この施設や、遠軽町生田原の「ちゃちゃワールド」など、各地にある「木の砂場」も伊藤さんの発案と聞きます。
この「木の砂場」の奥にある「サンタワールド」が、ほんとにすばらしい。
筆者が訪れたのは真夏で季節外れもいいところでしたが、もし自分が5歳か6歳で、冬の日にここに連れてきてもらっていたら、おそらく一生の思い出になるのではないでしょうか。
夢幻的で、やさしく、空想の翼がいつまでも羽ばたいているような、そんなすてきな世界が広がっているのです。
おじさんがひとりで来てもアレですが、来て良かったなあ。
(事務室の壁に佐藤菜摘さんの大きな絵が飾ってあるのが見えました)
西興部村は人口千人あまりの小さな村ですが、高速通信網の整備や、統一感のある景観など、先進的なまちづくりに取り組んできています。
公共施設は「●夢(ム)」というネーミングになっていて、たとえばホテルは「林夢(リム)」、子育て支援センターは「里住夢(リズム)」、道の駅は「花夢(カム)」です。
2021年7月19日(月)~8月16日(月)午前10時~午後4時、7月20日休み
森の美術館「木夢(コム)」(西興部村字西興部276)
一般500円、小学4~6年生と中学生300円、3歳以上小学3年生以下100円、2歳以下無料
□ 熊谷文秀 KUMAGAI Fumihide https://www.fkuma.com/
過去の関連記事へのリンク
■つながろう2018 TIME AXIS 時間軸
■つながろう2016 Hard/Soft (5月28日~6月5日、札幌) 6月5日は11カ所(2)
・名士バス「興部線」(名寄―下川―西興部―興部)に乗り「西興部」降車、約350メートル、徒歩5分。同停留所の一つ興部寄りの「小学校前」から約200メートル、徒歩3分
※1日7往復。ただし開館時間内に走るのは3往復。名寄駅前から西興部までは乗車約1時間
近年は道展に出しているほか、札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)の「つながろう」展でユニークなインタラクティブアートを出品していたのでご記憶の方も多いでしょう。
展覧会の「森の匠」、さらに会場の印象とあいまって、木工クラフト的な作品が並んでいるのは―とつい想像してしまいますが、さびかかった赤茶色の鉄によるがっしりした造形です。
ロビーにあった「DIALOG MACHINE 2」は、アルファベットの活字が取り付けられた16列のコンベヤがゆっくりとぐるぐる回ってセンテンスを表示し、またぐるぐる回って別に文を提示し…という大作で、どういう仕掛けになっているのか分かりませんが(武骨な見た目と異なり、最新式の電子制御になっているんでしょうか)、
「THIRD TIME LUCKY」
「LET IT BE!」
「ALRIGHT, LET'S GO」
「HAVE A NICE TRIP」
など、見るたびに違うふうにアルファベットの活字が並んで、異なるセンテンスが出てきます。無意味な文字列には決してなりません。センテンスにそろうのは2分に1度ぐらいでしょうか。
(同系列の作品が、JR TOWER ART BOX に展示されていたように記憶します)
やはり4列の、縦に回転する板の側面に、影絵のような穴がいくつもあいていて、背後から光に照らすと、まるで幻灯のようにシルエットが動いているかのように見える、アニメーション投影機とでもいうべき「RUNNER」。
拍手に反応する「SPROUT」。
あるいは、足踏み運動をすると、作品上部の板が起き上がる「ABS」といった、双方向的な作品も楽しいです。
切れ味の良い造形の抽象彫刻の小品の数々は、今回初めて見ました。赤茶色の鉄のごっつい作品と違ってシャープです。
あるいは、熊谷さんが道内各地で多数手がけているパブリックアートのモケットか何かでしょうか。
この系列を含む作品として
「ELBOW45」「ELBOW90」「NOPPO」「空想の軌跡 2」「空想の軌跡 / 0」「タユトウ」「タユトウ 2」「タユトウ 3」「望遠鏡のせんちゃん」「パッカン」「逡巡」
が展示されていました。
なお、熊谷さんの作品は1カ所にまとめられているのではなく、ロビーなど数カ所に分散して展示されていました。
さて、この施設は「森の美術館」と名乗っていますが、いわゆる美術館というより、小さい子と親が一緒に木のおもちゃで遊ぶ施設だといったほうがいいでしょう。
美術館というと、展示してある作品をじっと眺めるための施設という色彩が強いですが、ここは多くのおもちゃで実際に遊ぶことができます。
発足にあたって貢献したのは、かつて留辺蘂町(北見市留辺蘂町)で木のおもちゃを次々とこしらえていた伊藤英二さん(故人)でした。伊藤さんは麗々しくサインを入れて自作を主張する人ではなく、子どもたちが楽しめばそれでいい、というスタンスだったと思います。
自分の持っている技術も惜しみなく後進に伝えていました。
この施設や、遠軽町生田原の「ちゃちゃワールド」など、各地にある「木の砂場」も伊藤さんの発案と聞きます。
この「木の砂場」の奥にある「サンタワールド」が、ほんとにすばらしい。
筆者が訪れたのは真夏で季節外れもいいところでしたが、もし自分が5歳か6歳で、冬の日にここに連れてきてもらっていたら、おそらく一生の思い出になるのではないでしょうか。
夢幻的で、やさしく、空想の翼がいつまでも羽ばたいているような、そんなすてきな世界が広がっているのです。
おじさんがひとりで来てもアレですが、来て良かったなあ。
(事務室の壁に佐藤菜摘さんの大きな絵が飾ってあるのが見えました)
西興部村は人口千人あまりの小さな村ですが、高速通信網の整備や、統一感のある景観など、先進的なまちづくりに取り組んできています。
公共施設は「●夢(ム)」というネーミングになっていて、たとえばホテルは「林夢(リム)」、子育て支援センターは「里住夢(リズム)」、道の駅は「花夢(カム)」です。
2021年7月19日(月)~8月16日(月)午前10時~午後4時、7月20日休み
森の美術館「木夢(コム)」(西興部村字西興部276)
一般500円、小学4~6年生と中学生300円、3歳以上小学3年生以下100円、2歳以下無料
□ 熊谷文秀 KUMAGAI Fumihide https://www.fkuma.com/
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※1日7往復。ただし開館時間内に走るのは3往復。名寄駅前から西興部までは乗車約1時間