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■第19回 グループ環展 (2018年6月12~17日、札幌)

2018年06月15日 21時41分46秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 道内の具象絵画のベテランが所属する団体公募展の枠を超えて集まったグループ展。年1度開かれ、今年が19回目です。
 冒頭の画像で分かるように、筆者が訪れたときは、ギャラリーの展覧会としては異例ともいえる盛況でした。美術館が有名画家の展覧会を開いても、平日にこれほどの人出はないことがよくあります。
 出品者は、史上最多だった21人より3人少ない18人。近年の中央の画壇を席巻しているスーパーリアリズム系はなく、さまざまな画風の風景画や人物画、静物画があり、誰にでも親しみやすい絵画展として、すっかり定着したといえそうです。
 

 左は藤井高志さん(北広島市、全道展会員)「水路」(F30)。
 細い水路は、藤井さんがよく題材に取り上げています。
 一直線に画面の奥へと続いて、消えていく構図は、たとえば東山魁夷の「道」のように、人生や時間の流れのようなものを見る人に感じさせます。護岸が、近代的なコンクリートの部分と、素朴な石積みの部分とがあることも、なにやら歴史の移り変わりを示しているかのようです。
 藤井さんは「少女の時間」(F50)も出品。

 右は枝広健二さん(岩見沢市、道展会員)の「冬の旅」(F50)と「冬の日に」(F30)。
 雰囲気のある女性像です。枝広さんは冬の風景の中に人物を配した絵が多いという印象があります。


 左の2点は、今回初参加の山田則意さん(後志管内共和町、道展会員)の「DRUM」(F50)と「卓上静物」(F30)。目録には「卓上生物」とありましたが…。
 「DRUM」は、ドラム缶などのさびの描写に、力がこもっています。
 背景のごつごつした石の描写も独特です。

 右は岩佐淑子さん(石狩市、新道展会員)「像」(P40)。
 岩佐さんは水彩です。淡い色調の裸婦をモティーフにしています。
 ほかに、三美神を描いたとも解釈できそうな「立像」(同)も出品しています。


 左手前は青野昌勝さん(札幌市、道展会員)の「新緑の狩勝峠にて」(F50)と「城岱高原の眺望」(F20)。
 青野さんは風景画に青や紫系の色をよく用います。
 「城岱しろたい」は、渡島管内七飯町の牧場で、眺望が良いことで知られるそうです。
 平野のむこうに、函館山が横たわり、その先の海が白く光っています。
 函館に旅したり住んだりしたことのある人には共感を得そうな一枚。

 そのとなりは、佐藤順一さん(小樽市、道展会員)の「ほたて養殖船」(F30)と「龍飛岬」(同)。
 前者はふつうのマチエールですが、後者は絵の具をチューブから出してそのままキャンバスに塗りつけたような塗り方で、表面がぎらぎらと光っています。木田金次郎にも共通する厚塗りです。
 筆者は、このような厚塗りの佐藤さんの絵を見たことがありません。


 左に「龍飛岬」があります。

 そのとなり、青く澄んだ幻想的な色合いが目を引くには、中吉功さん(札幌市、道展会員)「北風景 山景想々」のAとBです。いずれもF30。
 恐竜の背のようにとがった山容は、札幌市南区の八剣山を思わせますが、やはり、実際の山を写生したというよりは、一種の心象風景のように思えてきます。
 それほどまでに魅力的な青が画面を支配しています。


 北山寛一さん(札幌市、赤光社会員)は「樹影 I」(F50)と「樹影 II」(F30)。
 いずれも、札幌市南区真駒内でスケッチしたというシラカバの木々が、主要な画題になっています。
 どっしりと存在感豊かな幹が特徴的です。
 また、地面にちりばめられた草花が、小さいにもかかわらず、とても魅力的です。
 北山さんの絵に登場する野の花は、それがあるだけで、絵の世界が一種のユートピアのように筆者には見えてくるのです。

 その横は、西澤宏生さん(札幌市、新道展会員)「森」(F50)と「創成川早春」(F30)。
 ビリジヤンのたっぷりとした筆致が西澤さんらしいです。
 創成川は、札幌市の北区でしょう。ポプラの並木が藍色の塊として描かれ、黄色い水門が存在感をたたえています。


 右は池上啓一さん(札幌市、道展会員)の「くるまのある風景」(F30)=右=と「ばそりのある風景」(同)。
 前者は、馬車の車輪が二つ、まるで空中に半分浮いているような、あるいは、回っている瞬間をとらえているような、不思議な絵です。
 いずれも背景は雪景色で、池上さんらしく薄紫が差し色として効果を上げています。

 その左は、香取正人さん(札幌市、道展会員)「丸加高原」(F40)。
 深川にある景勝地です。前景のポピーのような花が、中景の赤い屋根のロッジと響き合い、アクセントにもなっています。
 もう1点、「脇町にて」(F40)は、店先のようなところを描いていますが、筆の勢いが見る側に伝わってきて、心地よいです。


 合田典史さん(札幌市、新道展会員)は最近、黒い輪郭線が画面から減って、それでも個々のモティーフはしっかりと存在感を持って描かれていて、筆者は好感をもって見ています。
 左は「雨の港町」(F50)。
 霧多布に取材に行った際、霧で風景が見えなかったため、釧路管内厚岸町に題材を求めた一枚。
 電話局らしい建物や木造家屋などが、情感をこめて描かれています。
 右の「廃船のある風景」(F30)は網走市の網走川河口を描いたもの。

 写真を撮り忘れた作品がいくつかありました。他意はありませんので、ご容赦ください。

安達久美子さん「定山渓初夏」(F50) 「知床沼めぐり」(F30)
猪狩肇基さん 「収穫のとき」(F50) 「白鳥のいる湖(コムケ湖)」(F30)
小堀清純さん 「卓上の静物」(F40) 「雪の資料館」(F40)
佐藤光子さん 「小憩」(F50) 「ひとり」(P30)
中村哲泰さん 「とどまることのない生命」(F50)「砂防ダム」(F20)
平原郁子さん 「黒ユリ」(F40)

 平原さんは1点のみです。


2018年6月12日(火)~17日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階)


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