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■山崎猛写真展 一瞬万感 (2020年9月30日~22年5月29日、斜里) 2021年7月8日は3カ所(5)

2021年07月20日 08時07分23秒 | 展覧会の紹介-写真
(承前)

 山崎猛さんは、会場になっている北のアルプ美術館(オホーツク管内斜里町)を開設した方で、昨年5月に亡くなりました。
 同館は、山岳をめぐるエッセーや版画などを載せていた雑誌「アルプ」(1959~83)の精神を後世に伝えようと1992年にオープンしましたが、同誌ゆかりの画家・彫刻家の作品、随筆家の自筆原稿、同誌発行の中心的存在だった随筆家串田孫一の復元書斎などが展示の中心です。山崎さんが自身の作品を展示したことはないようです。筆者は、そもそも山崎さんが写真家であることすら知りませんでした。

 今回、初めて拝見しましたが、驚嘆しました。

 山崎さんはフィルムカメラの世代です。
 会場には中判カメラと、ものすごく頑丈そうな大型三脚もありました。
 そして、展示されているプリントも、とても大きいです。35ミリフィルムであれば、ここまで拡大はできないだろうと思われます。

 展示されている写真作品は、いずれも流氷が被写体で、
「神々の時刻」
「光の洗礼」
「氷海の詩」
「流氷讃歌」
「流氷組曲」
「流氷序曲」
「華麗なるオホーツク」
の7点。
 斜里在住という地の利を存分に生かしているといえますが、流氷はいつ接岸・離岸するか予測できませんし、早朝や日没に極寒の中でカメラを構えることは大変だったはず。
 「神々の時刻」は峰浜海岸でとらえた一瞬。凍てついた水平線の上であかね色に輝く空が美しいです。
 「流氷讃歌」は、氷を透かして通る絶妙な光の加減がよく映し出されています。
 まさに、流氷が創り出す特異な光景をとらえているといえます。

 また、写真集にする際の、本と同じ大きさの初校プリントがあり、そこには「もう少しクリアーに」「ニゴリ抑える」という山崎さんの指示がかき込まれています。さすがプロのこだわりを感じさせます。

 廊下には、東亜国内航空(後の日本エアシステム)の観光ポスターなどが貼ってあり、キャプションはないですが、これも山崎さんの作品なのでしょう。
 さらに写真集「日本の灯台」に収められた、四つ切りほどの大きさのプリントもありました。

 この「日本の灯台」というのがものすごい労作で、北は利尻から南は与那国、波照間、小笠原諸島まで、日本各地の燈台を探訪しているのです。
 小笠原諸島って飛行場がないので、行くだけで数日かかるんですよ。

 会場では、写真集を自由に手にとって見ることができます。


2020年9月30日(水)~22年5月29日(日)午前10時~午後5時(11月~3月は午後4時)=入館は30分前、月・火曜休み、毎年12月下旬から2月下旬ころまで冬季休館
北のアルプ美術館(オホーツク管内斜里町朝日町11-2)
入場無料(15人以上は要予約)


過去の関連記事へのリンク
北のアルプ美術館でしずかなひととき オホーツク小さな旅(111) =2020年
北のアルプ美術館(斜里)が、当面の間臨時休館(5月18日再開の模様) =2020年

北のアルプ美術館 (2012年の訪問記)



・JR知床斜里駅、斜里バスターミナルから約1.3キロ、徒歩17分



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