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1980年滝川生まれで、金沢美術工芸大大学院を修了、現在は札幌の美術予備校で教壇に立っている佐藤さん。
独立美術で会友、全道展では昨年佳作賞を得ており、「サッポロ未来展」にも参加している新進の若手画家です。
前回の個展は、大学在学中の作品がメーンでしたが、今回は近年の連作「paranoid」を中心に、小品「small death」など、計14点を陳列しています。
いずれも女性がおもなモティーフ。
デッサンやエスキースが熟成してくるまで待つ-という佐藤さん。作品を見ると、ありきたりの人物画は描かないぞ、という意思が感じられます。
「最近は、地面に足がついていないというか、浮遊している感じの人物をかきたいんです」
ことしのサッポロ未来展および、この個展でも出品されていた「paranoid」も、高いテーブルのような台に腰かけた女性を描いて、浮かんだ感じが出ています。
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「何も、見えない」。
今回の個展ではやや古く、数年前の全道展に出品した絵です。
この画面ではわかりづらいですが、枝などの背景を、大胆に白く塗りつぶして、画面全体を簡素化しています。
こういう絵は、わかいときにしか描けない、叫びのようなものがこだましていて、筆者は好きです。
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「paranoid」のなかで唯一の未発表作。
人物がひとりだけなのも、目を引きます。
人物を取り巻く林について佐藤さんは、北海道に帰ってきてやっぱり自然というものを意識してしまう-と話していました。
ラフなタッチは、小林麻美さんなどと共通するものを感じます。
額は、角材にセメントを塗ったもの。とても重たそうです。
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冒頭画像の右から2番目の「paranoid」や、すぐ上の「paranoid」(シリーズ第1作の由)などから感じられるのは、一般的な絵画ならあまり見る人に存在を感じさせない支持体というものをあえて意識させるかのような出し方です。
上のほうの絵では、女性の服は布のコラージュになっていますし、この、首つりのような絵のほうは、目の粗い綿布を、地塗りせずに使っているのです。
絵画であることのイリュージョニスティックな性格を隠ぺいするのではなく、そこから出発して、あえて絵画であることの限界線をさらそうとしているようにも、筆者には思えました。(難しい言い回しですいません)
佐藤さんが金沢の大学在学中に、話題の「21世紀美術館」がオープンしたそうです。
「コンテンポラリーに関心のある学生が多くて、あそこで展示されるのがステイタスっていう風潮になって…。でもじぶんは、その近くの美術館でひっそりと展示されている工芸とかのほうが好きでした」
と話す佐藤さん。いわゆる現代アートよりも、公募展絵画のほうに親近感をいだいたようです。
北海道美術ネットとしては、現代アートも団体公募展系の絵画・彫刻も、ひとしく扱う方針を以前から持っています。
人間の実在を追究しようとする佐藤さんの行路に、今後も注目していきたいと思います。
2009年3月30日(月)-4月4日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■第63回全道展(画像なし)
■第6回サッポロ未来展
■佐藤仁敬個展(2006年、画像なし)