移動展、というのは、札幌の人には意外となじみがないかもしれない。
全国規模の団体公募展は、京都や九州には毎年移動展が巡回しているが、道内では、数年前に終わった行動美術の函館展をのぞいては、数年に一度、独立美術や自由美術が回ってくる程度だからである。
道展は、毎年釧路、帯広、北見で移動展が開かれている。
また、第86回については、昨年11月に芦別で、12月に日高管内新冠町で開催されている。
道展以外では、新道展が伊達などで開くことがある。
全道展は1990年代半ばに一切とりやめてしまった。
移動展で展示されるのは、札幌市民ギャラリーでのほんとうの展覧会に比べると、何分の一かである。
協会賞(最高賞)と、いくつかの受賞作品、会員の作品の一部、それに、その地方の出品者の作品が中心となる。
札幌市民ギャラリー、あるいは、国立新美術館や東京都美術館の団体公募展をじっくりと鑑賞して、とても疲れたという経験の持ち主は多いだろう。
それを考えると、移動展というのは、おいしいところはだいたい見られるし、一段掛けだし、かえって鑑賞には好都合かもしれない。
ただし
「ああ、●●さんの作品、来てないな。見たかったなあ」
などと考えだすと、どうにも気になる。
筆者みたいな人間はやはり、本展を見るべきなのかもしれない。
会場に入ってすぐ、伊藤光悦「大地の記憶」、西田陽二「帽子の婦人」、山本勇一「SUMMER TIME(やんばる)」といった絵が目に入る。
このあたりが、道展の屋台骨というか本流なのだろうなあという思いを、漠然と抱く。
伊藤光悦さんは以前、石棺となったチェルノブイリ原発のような建物をモティーフにしていた。
期せずして予言の絵になってしまったわけだが、今回は、荒地の中の、機影のない飛行場を、空中から見た絵であった。
ただ、これまで見られなかった海が画面の端に描かれている。津波の記憶かもしれないと思う。
山本勇一さんの絵は、あらためて、おもしろい。
透視図法的な奥行き感を排しつつ、それでもなおかつ、別種の立体感を出すにはどうしたらいいか、考えた作品は、現代の絵画なのだとつくづく感じる。それに、大胆に引かれた線が、見るものの視線を誘導し、なかなかキャンバスの前から離れさせてくれないのだ。
そのほか八重樫眞一「彼方の空より」はいいなあ。
雨上がりの、どこか古くて懐かしいたたずまいの街路。望遠レンズで撮ったみたいに、まっすぐなはずの道が、左右に消失点を有して曲がっている。手前のいすは、遠近法が狂っているか、もともといびつなのかはわからない。しかし、なんだか郷愁を誘う風景だ。
彫刻では、菱野史彦さんの協会賞受賞作「Cell」が目立つ。
菱野さんというと、どうしても2002年のライジングサン・ロックフェスティバルを思い出してしまうが…。
このほか、山田吉泰「風雪」は、本来は目に見えない風を可視化しようという試みであろう。
陶芸では、安藤瑛一の遺作「氷華しばれ紋深鉢」を挙げないわけにはいかないだろう。
地元・北見とおとなりの美幌から計7点も出ていることも特筆すべきだ。
ほかの分野は少なく、とくに日本画は会員が2点だけの計6点と、かなりさびしい感じがした。
2011年2月14日(火)~19日(日)
北網圏北見文化センター(北見市公園町)
・一般600円(前売り500円)、高校生以下無料
□公式サイト http://www.doten.jp/
告知のエントリ
・JR北見駅から約1.7キロ、徒歩22分
・JR柏陽駅から約1.4キロ、徒歩19分
・北海道北見バス「1 小泉三輪線」で「野付牛公園入口」降車。約5分
※この路線は日中15分間隔で運行
全国規模の団体公募展は、京都や九州には毎年移動展が巡回しているが、道内では、数年前に終わった行動美術の函館展をのぞいては、数年に一度、独立美術や自由美術が回ってくる程度だからである。
道展は、毎年釧路、帯広、北見で移動展が開かれている。
また、第86回については、昨年11月に芦別で、12月に日高管内新冠町で開催されている。
道展以外では、新道展が伊達などで開くことがある。
全道展は1990年代半ばに一切とりやめてしまった。
移動展で展示されるのは、札幌市民ギャラリーでのほんとうの展覧会に比べると、何分の一かである。
協会賞(最高賞)と、いくつかの受賞作品、会員の作品の一部、それに、その地方の出品者の作品が中心となる。
札幌市民ギャラリー、あるいは、国立新美術館や東京都美術館の団体公募展をじっくりと鑑賞して、とても疲れたという経験の持ち主は多いだろう。
それを考えると、移動展というのは、おいしいところはだいたい見られるし、一段掛けだし、かえって鑑賞には好都合かもしれない。
ただし
「ああ、●●さんの作品、来てないな。見たかったなあ」
などと考えだすと、どうにも気になる。
筆者みたいな人間はやはり、本展を見るべきなのかもしれない。
会場に入ってすぐ、伊藤光悦「大地の記憶」、西田陽二「帽子の婦人」、山本勇一「SUMMER TIME(やんばる)」といった絵が目に入る。
このあたりが、道展の屋台骨というか本流なのだろうなあという思いを、漠然と抱く。
伊藤光悦さんは以前、石棺となったチェルノブイリ原発のような建物をモティーフにしていた。
期せずして予言の絵になってしまったわけだが、今回は、荒地の中の、機影のない飛行場を、空中から見た絵であった。
ただ、これまで見られなかった海が画面の端に描かれている。津波の記憶かもしれないと思う。
山本勇一さんの絵は、あらためて、おもしろい。
透視図法的な奥行き感を排しつつ、それでもなおかつ、別種の立体感を出すにはどうしたらいいか、考えた作品は、現代の絵画なのだとつくづく感じる。それに、大胆に引かれた線が、見るものの視線を誘導し、なかなかキャンバスの前から離れさせてくれないのだ。
そのほか八重樫眞一「彼方の空より」はいいなあ。
雨上がりの、どこか古くて懐かしいたたずまいの街路。望遠レンズで撮ったみたいに、まっすぐなはずの道が、左右に消失点を有して曲がっている。手前のいすは、遠近法が狂っているか、もともといびつなのかはわからない。しかし、なんだか郷愁を誘う風景だ。
彫刻では、菱野史彦さんの協会賞受賞作「Cell」が目立つ。
菱野さんというと、どうしても2002年のライジングサン・ロックフェスティバルを思い出してしまうが…。
このほか、山田吉泰「風雪」は、本来は目に見えない風を可視化しようという試みであろう。
陶芸では、安藤瑛一の遺作「氷華しばれ紋深鉢」を挙げないわけにはいかないだろう。
地元・北見とおとなりの美幌から計7点も出ていることも特筆すべきだ。
ほかの分野は少なく、とくに日本画は会員が2点だけの計6点と、かなりさびしい感じがした。
2011年2月14日(火)~19日(日)
北網圏北見文化センター(北見市公園町)
・一般600円(前売り500円)、高校生以下無料
□公式サイト http://www.doten.jp/
告知のエントリ
・JR北見駅から約1.7キロ、徒歩22分
・JR柏陽駅から約1.4キロ、徒歩19分
・北海道北見バス「1 小泉三輪線」で「野付牛公園入口」降車。約5分
※この路線は日中15分間隔で運行