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■中橋修展―内包― (2013年8月30日~9月8日、札幌)

2013年09月06日 21時04分45秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 
 札幌在住の中橋修さんが本郷新札幌彫刻美術館を借りて個展を開いています。

 中橋さんは当初、絵画から出発し、1990年代から立体へと徐々に転じていったという経歴もあり、いわゆる「彫刻」のカテゴリーにくくりきれない作風と思います。
 今回は、はじめての立体(1995年)と、2006年以降の近作である「内包」シリーズを展示しています。

 中橋さんの作品は、幾何学的な形態と少ない色数で制作されているため、一見すると単純なものに見えるかもしれません。
 しかし、立ったりしゃがんだり、あるいは、立つ位置を少し変えたりすれば、作品の表情はがらりと変わります。そこが、中橋さんの作品鑑賞にあたって、いちばんのたのしみだといっても過言ではないかもしれません。

 また、ライティングによる作品の影や、表面に映り込む自分の姿、周囲のモノなども、作品の一部とみれば、見方はぐっと変わってくることでしょう。

(以下、ネタバレなので、実際に会場に足を運んだのちに、会期終了後にお読みください)


 たとえば、冒頭の画像。
 左側の、ストーンサークルのような「内包 ここにいる 時と場と人の内に包まれて今ここにいる」は、時計の文字盤と同じ12本の柱(高さ1.3メートル)を、直径1.3メートルの円周上に並べたものですが、円の中に入って、中心に立って首を回して眺めれば、また異なった光景が見えてきます。
 さらに、右側の塔のような「内包」についても、遠くからだと透き通って見えるのに、近づくと黒っぽくなり重量感、存在感が出てきます。透明アクリル板の性質をうまく生かしているのです。 

 会場をひとまわりして、最初の中二階コーナーにおりようとするとき、もう一度見てみてください。
 非常に透き通っていることに驚くでしょう。



 視点の高さ・見る角度によって、モアレのつくりだす模様が変わって見える作品。
 「立ったりしゃがんだりすれば、健康器具にもなるアート作品」
と中橋さんが冗談で話していました。 

 いちおう2枚の画像を付しましたが、これはやはり実物を見たほうがよいでしょう。


 2009年、コンチネンタルギャラリー(札幌)で開かれたグループ展「いすのゆめ」に発表した「内包-志向」。今回は「内包―連鎖―」という題で出品されています。
 いす(チェア)のかたちに、白いアクリル板を積み重ねた、高さ2メートルを超す大作です。
 尻をあてる部分が空いていて、内側に入って、首を出すことができます。




 95年の初期作品をのぞけば、今回の個展で事実上最も古い作品。
 2006年、ギャラリー門馬アネックスの個展で、すりガラス窓に沿って設置したインスタレーションです。

 ギャラリー門馬アネックスといえば、自然光が入り、壁は真っ白の細長い空間。
 あれほどユニークなギャラリー空間は日本中さがしてもあまりないだろうと思います。その独自性を生かした発表もこれまで数多く開かれてきています。出品者の創造意欲をかきたてる空間です。
 これは、振り返ってみれば、この2006年の中橋さんの個展が、ハードルをかなり上げてしまったということは否めないのではないでしょうか。ギャラリー門馬アネックスのオープン当時は、一般的な陶芸展なども開かれていましたが、06年以降はほとんどなくなってしまったような印象があります。

 


 2008年、紀伊國屋書店札幌本店2階のギャラリーで開催した個展で発表した、摩天楼を想起させるインスタレーション。

 ほぼ当時のままですが、大小の白い立方体のうち一番小さいサイズのものは並べていません。彫刻美術館の床の正方形模様よりも小さいためです。

 正面あるいは真横からでないと、見えてこない内部の仕掛けがあるので、これも周囲をぐるぐる回りながらじっくりと見てください。

「成長する過程であるという感じを見せたかった」
と中橋さん。
 斜めの線がないのと、色が白いので、(たとえばモンドリアン晩年の作などとくらべると)、静的な印象を受けます。


 今年制作の最新作。
 白い線が24本、正方形にひかれています。透視図法による目の錯覚で、中央部分に行くにしたがって引っ込んで見えます。
 時には、出っ張って見えなくもないですが。

 一方、通路を挟んで向かい側に置かれているのがこの「内包-時空-」。
 中にLEDを組み込んで、穴を同心円状に開けており、中から光が漏れています。

 この2点をペアのように並べたことについて「爆発的な広がりと、刻々と重ねていくものと、イメージを対比させてみた」と中橋さんは話していました。

 もっとも、黒い作品が、フランク・ステラの初期作品に非常に似ているのは、気になるところです。

 ただ、中橋さんのねらいは、たぶんミニマルアートとはちょっと異なり、西洋美術史に自作を位置づけたいという欲望よりも、もう少しあそびに近いものがあるようにも思えます。


2013年8月30日~9月8日(日)午前10時~午後5時(最終日~午後4時)
本郷新記念札幌彫刻美術館(札幌市中央区宮の森4の12)
無料




・地下鉄東西線「西28丁目」からジェイアール北海道バス「循環20 山の手環状線(神宮前先回り)」に乗りつぎ「札幌彫刻美術館入り口」で降車、約610メートル、徒歩8分

・地下鉄東西線「円山公園」3番出口、「西28丁目」3番出口からいずれも約1.78キロ、徒歩23分

中橋さんのサイト Art Works NAKAHASHI □ http://www5.ocn.ne.jp/~naka565/

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