北海道美術ネット別館

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「さよならテレビ」 あいちトリエンナーレ : 2019年秋の旅(47)

2019年11月18日 12時43分12秒 | 道外の国際芸術祭
(承前)

 筆者は以前、自分が訪れた時期は、話題の「表現の不自由展・その後」が閉鎖し、サカナクションやユザーンのプログラムは終わっている一方で、終盤の小泉明郎さんの上演などが行われる前で、いわば「谷間の時期」だったと書いたが、タイムリーなプログラムがなかったわけではない。
 9月最終週、SNSなどでいちばん話題になっていたのは、映像プログラムの、悪名は高いが実際に見る機会の少ない『民族の祭典』(レニ・リーフェンシュタール監督)と、東海テレビのドキュメンタリー番組『さよならテレビ』だったと思う。
 いちおう報道とマスコミでメシを食っている人間としては「さよテレ」は、せっかく見られるタイミングなんだから見ておくべきだろうな~と思い、12階へといそぐ。

 入場は始まろうとしていたが、まだ整理券の余分があり、ぶじ前の方にすわることができた。
 85%ぐらいの入りだったのではないか。

 
 「さよならテレビ」は、テレビ局の報道の裏側にカメラを向けたドキュメンタリー番組。
 名古屋に本社のある民間放送局の東海テレビが制作し、業界では大きな話題となった。

 驚くべきは取材期間の長さで、1年半以上にわたってカメラをまわしている。
 ニュースのおかげで訴えてきた問題に日の目が当たったーと感謝する市民もいれば、視聴率競争で思ったような成果が出ずに更迭を告げられるニュースキャスターもいる(密室で上司から交代を言われる場面まで、映像と音声でとらえられている)。
 華やかな舞台裏ではなく、影も濃いテレビ局。当のキャスターを路上で呼び止めて、エンエンとインタビューする場面もある。

 ただ、その衝撃の度合いが、おそらく地元の人と、それ以外の人とでは、違うんだろうなと感じるところが、北海道弁で「いずい」ところなんだな。

 イケメンのキャスターに迫った場面など、これがもし北海道なら、グッチーさんとか木村洋二アナとかがすっぴんで路上で本音を語るシーンが続くといったような感じであり
「え~、こんなところまで写しちゃうの?」
とビックリしてしまうんだろうけど、そのあたりがいまいち伝わってこないのだ。
 作品の背景を簡単に解説する紙などがほしかった、といえば、怠惰な視聴者ということになってしまうだろうか。

 テレビ局の裏側といえば、もとよりドキュメンタリーとドラマでは比べること自体ムリがあるのかもしれないけれど、HTB(北海道テレビ放送)の「チャンネルはそのまま!」のほうが、個人的には好きなのだ。
 「チャンネル」にも、視聴率競争やスクープ合戦といったテレビ局の舞台裏が描かれているが、とくにテーマや方向性を定めずに撮っているように見受けられる「さよテレ」に対し、肯定的というか、前向きなのだ。

 もちろん、テーマを明確に打ち出さない番組、後味に苦みの残る番組というのもあっていいし、なにかと「わかりやすさ」を求める風潮が強まっているように見えるテレビの世界にあって、こういうチャレンジをやってのける東海テレビという放送局のすごさは、あらためて強調しておきたい。




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