内山恵利さんは道都大中島ゼミでシルクスクリーンを学んだのち、京都精華大の大学院に進み、現在は札幌に戻っています。
大学院在学中の2013年にギャラリーメッセで開いた個展から3年ぶり。前回、筆者は、写真をぱしゃぱしゃ撮って「ブログで紹介します~」と言ったそうですが、その約束を果たせずにきてしまいまして、どうも申し訳ありません。
「見ないで帰っちゃう方が多いんです」
と残念そうに内山さんが話していた「あおい部屋」は、会場の3分の2をパーティションで区切って、入り口からすぐ右手に設置されています。
17枚の布が壁面を埋め尽くしています。
青一面で壁を覆う、ということは、これまでにも何人かの作家が取り組んでいますが、内山さんの作品が異なるのは、単なる癒やしの空間や静穏な美しい空間ではなく、ちょっといやな感じがすること。それは、二つの版をずらして刷っているからです。乱視が悪化したように、目がくらくらしてきます。
金沢の兼六園にある成巽閣)に「群青の間」という青い部屋があり、これに着想を得たとのこと。
人間の視覚について考えさせられる空間です。
冒頭画像は、左が「気配」、右が「4つの噓」。
モチーフになっているのはシカです。「気配」で、ところどころに黄、緑、赤といった鮮やかな色のシカが交じっているのは、「群れと個」について考えを巡らせた結果だそうです。
こちらの作品も、複数の版を用いてブレが生じています。
「A.P.」という題のついた作品は、大学院のテキスタイルの授業で制作したとのこと。いろいろな布をつなぎ合わせていますが、カラーコピーが随所に交じっています。これも、見る人の視覚を問い直す一作。
このほか、ろうけつ染めの作品もありました。こちらはさまざまな色彩の絵の具をぶちまけた厚塗りの抽象画のように見えます。
ただビジュアルが個性的なだけではなく、コンセプトが考えられているぶん、興味深い個展でした。
あおいへや、のぞいて見てください。
2016年6月14日(火)~19日(日)午前10時30分~午後6時30分(最終日~午後5時)
さいとうギャラリー(札幌市中央区南1西3 ラ・ガレリア5階)