(承前)
今回がんばったのは、Azkepanphanこと武田浩志さんでしょう。
ふだんは印象派の絵の写真などがかざられている、バックライト付きのコーナーあわせて20カ所に、カーテンの絵と、これまでの自作のエスキスやパンフレットのゲラなどが大量に展示されています。あたかも、彼の頭の内側を時系列で探ったかのような展観です。
絵はタブローがえらい! と頭から決めてかかっている人には
「なんじゃ、こりゃ」
というような展示ですし、あるいは武田さんも、時間さえゆるせばもっとしっかりした絵画作品を展示したいと考えていたのかもしれません。
でも、こういうラフなスタイルのほうが、ヨーゼフ・ボイスみたいで(あるいは奈良美智みたいで)かっこいいと思うなあ。
全体を見ていくと、武田さんの感性である「カッコ悪いことのカッコ良さ」みたいなものが感じられてきます。昭和時代につくられたダサダサなデザインのものが、かえって新鮮に見えたりするアレです(ことばで説明するのが意外とむずかしいニャー)。
だいたい、武田さんの発表の“舞台”になっている「額縁」みたいなものが、ダサイですからねー。これを逆手にとってるんですね。
ちなみに、わざとらしさが味になっているカーテンは、ひとつひとつデザインが異なります。こういうところに妙なこだわりを貫徹するのが武田さんらしさかも。
もうひとり、がんばったのは齋藤周さんです。
下のリンクでもわかるとおり、たいへん精力的に発表活動をしてきた作家ですが、67枚ものパネルやキャンバスでインスタレーションを組み立てたのは過去最大規模といえるのではないでしょうか。
長い壁面を活用し、人物のドローイングと明るい色斑を組み合わせた大小の絵が点在させて、独特の空間をつくりあげています。
もうひとつ注目すべきは、一部のパネルやキャンバスに、写真が用いられているらしいこと。
ストレートにつかわれているわけではなく、白が塗り重ねられていますが。
今村育子さん「わたしのおうち」。
CAIでの個展や「FIX! MIX! MAX!」に出品したインスタレーションのダウンサイジングバージョン。ドアを開けることはできても、中に入るものではありません。
遠くの方から声と光が漏れてくるという基本コンセプトはおなじです。
各種展覧会にひっぱりだこ状態の伊藤隆介さんは、床面に映像を投影した「光を踏む(木漏れ日)」。
題名のとおりの作品で、2002年の「northern elements」展の出品作と、基本的にはおなじタイプ。ゆるやかな映像の間に、ときおり嵐のような激しい映像が挿入されるのも似ています。
その映像は、足早に通り過ぎるだけの人は、まず目にすることができないのです。
黒田晃弘さん「読む絵画」。
点字のテキストを白い紙10枚に打っています。うち2枚は黒田さん自身のことば、のこる8枚は視覚障碍者のことばです。
後者で筆者の心に残ったのは
「また、いつか、ハワイに行ってゆっくり海辺にすわって、景色をながめていたい」
というものでした。
目の見えない人は「景色をながめる」ことはできないはずなのですが、それでも、五感で海の空気を受け止めることを「ながめる」と表現したかったのだなあ、としみじみ思いました。
黒田さんは、前回の横浜トリエンナーレにノミネートされて注目を集めた「コミュニケーションアート」の作家ですが、ほんとにストレートな人だなあ、とあらためて思います。
「思いのまっすぐさ」がこちらにもつたわってくるのです。
佐藤隆之さんは切り紙細工。
初めて見ましたが、器用な方なんですね。
仙庭宣之さんぐらい若手のなかで画風を変えない人もめずらしいと思います。
「Flight Schedule」は9枚組み。
上空を飛ぶ飛行機の機体の一部や、茫漠とした空港の風景を描いています。
最初見たときは、いわゆる「風景画」に対する批評的な視線を感じましたが、最近は、このままだと単に「おしゃれな空港の絵」として受容されてしまうのではないかという危惧を覚えます。
YOMIさん「くま natulaizer2007」。
青やオレンジ、緑など15色のクマがならんでいます。
SOSO CAFEでの個展でもおなじようなクマが出品されていましたが、おそらく、あらたに描かれたものだと思います。
1頭だけ、赤ちゃんがおなかに宿したクマがいました。YOMIさんの個人的な思いが、そこにはこめられているのでしょう。
(この項続く)
□azkepanphan website http://www.azkepanphan.com/
■PISTOL 2-SHU SAITO & HIROSHI TAKEDA a.k.a. Azkenpanphan Exhibition=武田・齋藤2人展
■Hiroshi Takeda a.k.a. Azkepanphan [Utopia MoMo-lro2
■武田浩志「A(&m).s.h.」 タケダsystem vol.02
□齋藤周さんのサイト http://www.h2.dion.ne.jp/~syu-sa/
■PLUS One Groove(07年8月)
■齋藤周「3月の次から」(07年3月)
■06年6月の個展
■06年2月の個展
■絵画の場合2005アーティストトーク
■札幌の美術2004(画像なし)
■個展「横移動の座標軸」(03年)
■個展「細かい情感のイメージ」(03年)
■個展「NEXT STEP」(02年、画像なし)
■個展「多面に存在していくこと」(02年、画像なし)
■01年の個展(画像なし)
□伊藤さんのサイト http://www.ne.jp/asahi/r/ito/
■SCAN DO SCAN(開催中)
■FIX! MIX! MAX! 現代アートのフロントライン(06年11月)
■06年の個展(札幌芸術の森美術館)
■Interaction ドイツ展帰国展(06年1月)
■04年の個展「Japanese Style」
■伊藤隆介映像個展(03年)
■伊藤隆介展(03年)
■ビデオレター sapporo映像短信(03年)
■アジアプリントアドベンチャー2003
■ぼくらのヒーロー&ヒロイン展(02年)
■northern elements (02年)
■札幌の美術2002
■今村育子展(06年、画像なし)
□黒田晃弘の旅日記 http://www.jackuro.com/
□http://www.yomiweb.net/
■ライジング・サン・ロックフェスティバル2006でYOMIさんが車にペインティング
■yomi exhibition(07年2月)
今回がんばったのは、Azkepanphanこと武田浩志さんでしょう。
ふだんは印象派の絵の写真などがかざられている、バックライト付きのコーナーあわせて20カ所に、カーテンの絵と、これまでの自作のエスキスやパンフレットのゲラなどが大量に展示されています。あたかも、彼の頭の内側を時系列で探ったかのような展観です。
絵はタブローがえらい! と頭から決めてかかっている人には
「なんじゃ、こりゃ」
というような展示ですし、あるいは武田さんも、時間さえゆるせばもっとしっかりした絵画作品を展示したいと考えていたのかもしれません。
でも、こういうラフなスタイルのほうが、ヨーゼフ・ボイスみたいで(あるいは奈良美智みたいで)かっこいいと思うなあ。
全体を見ていくと、武田さんの感性である「カッコ悪いことのカッコ良さ」みたいなものが感じられてきます。昭和時代につくられたダサダサなデザインのものが、かえって新鮮に見えたりするアレです(ことばで説明するのが意外とむずかしいニャー)。
だいたい、武田さんの発表の“舞台”になっている「額縁」みたいなものが、ダサイですからねー。これを逆手にとってるんですね。
ちなみに、わざとらしさが味になっているカーテンは、ひとつひとつデザインが異なります。こういうところに妙なこだわりを貫徹するのが武田さんらしさかも。
もうひとり、がんばったのは齋藤周さんです。
下のリンクでもわかるとおり、たいへん精力的に発表活動をしてきた作家ですが、67枚ものパネルやキャンバスでインスタレーションを組み立てたのは過去最大規模といえるのではないでしょうか。
長い壁面を活用し、人物のドローイングと明るい色斑を組み合わせた大小の絵が点在させて、独特の空間をつくりあげています。
もうひとつ注目すべきは、一部のパネルやキャンバスに、写真が用いられているらしいこと。
ストレートにつかわれているわけではなく、白が塗り重ねられていますが。
今村育子さん「わたしのおうち」。
CAIでの個展や「FIX! MIX! MAX!」に出品したインスタレーションのダウンサイジングバージョン。ドアを開けることはできても、中に入るものではありません。
遠くの方から声と光が漏れてくるという基本コンセプトはおなじです。
各種展覧会にひっぱりだこ状態の伊藤隆介さんは、床面に映像を投影した「光を踏む(木漏れ日)」。
題名のとおりの作品で、2002年の「northern elements」展の出品作と、基本的にはおなじタイプ。ゆるやかな映像の間に、ときおり嵐のような激しい映像が挿入されるのも似ています。
その映像は、足早に通り過ぎるだけの人は、まず目にすることができないのです。
黒田晃弘さん「読む絵画」。
点字のテキストを白い紙10枚に打っています。うち2枚は黒田さん自身のことば、のこる8枚は視覚障碍者のことばです。
後者で筆者の心に残ったのは
「また、いつか、ハワイに行ってゆっくり海辺にすわって、景色をながめていたい」
というものでした。
目の見えない人は「景色をながめる」ことはできないはずなのですが、それでも、五感で海の空気を受け止めることを「ながめる」と表現したかったのだなあ、としみじみ思いました。
黒田さんは、前回の横浜トリエンナーレにノミネートされて注目を集めた「コミュニケーションアート」の作家ですが、ほんとにストレートな人だなあ、とあらためて思います。
「思いのまっすぐさ」がこちらにもつたわってくるのです。
佐藤隆之さんは切り紙細工。
初めて見ましたが、器用な方なんですね。
仙庭宣之さんぐらい若手のなかで画風を変えない人もめずらしいと思います。
「Flight Schedule」は9枚組み。
上空を飛ぶ飛行機の機体の一部や、茫漠とした空港の風景を描いています。
最初見たときは、いわゆる「風景画」に対する批評的な視線を感じましたが、最近は、このままだと単に「おしゃれな空港の絵」として受容されてしまうのではないかという危惧を覚えます。
YOMIさん「くま natulaizer2007」。
青やオレンジ、緑など15色のクマがならんでいます。
SOSO CAFEでの個展でもおなじようなクマが出品されていましたが、おそらく、あらたに描かれたものだと思います。
1頭だけ、赤ちゃんがおなかに宿したクマがいました。YOMIさんの個人的な思いが、そこにはこめられているのでしょう。
(この項続く)
□azkepanphan website http://www.azkepanphan.com/
■PISTOL 2-SHU SAITO & HIROSHI TAKEDA a.k.a. Azkenpanphan Exhibition=武田・齋藤2人展
■Hiroshi Takeda a.k.a. Azkepanphan [Utopia MoMo-lro2
■武田浩志「A(&m).s.h.」 タケダsystem vol.02
□齋藤周さんのサイト http://www.h2.dion.ne.jp/~syu-sa/
■PLUS One Groove(07年8月)
■齋藤周「3月の次から」(07年3月)
■06年6月の個展
■06年2月の個展
■絵画の場合2005アーティストトーク
■札幌の美術2004(画像なし)
■個展「横移動の座標軸」(03年)
■個展「細かい情感のイメージ」(03年)
■個展「NEXT STEP」(02年、画像なし)
■個展「多面に存在していくこと」(02年、画像なし)
■01年の個展(画像なし)
□伊藤さんのサイト http://www.ne.jp/asahi/r/ito/
■SCAN DO SCAN(開催中)
■FIX! MIX! MAX! 現代アートのフロントライン(06年11月)
■06年の個展(札幌芸術の森美術館)
■Interaction ドイツ展帰国展(06年1月)
■04年の個展「Japanese Style」
■伊藤隆介映像個展(03年)
■伊藤隆介展(03年)
■ビデオレター sapporo映像短信(03年)
■アジアプリントアドベンチャー2003
■ぼくらのヒーロー&ヒロイン展(02年)
■northern elements (02年)
■札幌の美術2002
■今村育子展(06年、画像なし)
□黒田晃弘の旅日記 http://www.jackuro.com/
□http://www.yomiweb.net/
■ライジング・サン・ロックフェスティバル2006でYOMIさんが車にペインティング
■yomi exhibition(07年2月)