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■交差する視点とかたち vol.3 阿部典英 加藤委 川上りえ 下沢敏也 (7月26日まで)

2009年07月25日 23時59分50秒 | 展覧会の紹介-現代美術
(文中敬称略)

 「交差する視点とかたち」と題する展覧会は、これで3回目を迎えた。

 札幌を拠点に、陶のオブジェやインスタレーションを精力的に制作、発表している下沢敏也がホスト役となり、毎回、道内を代表するベテラン造形作家である阿部典英と、本州の気鋭の陶芸家ひとりを迎えるというスタイル。昨年からは、道内の作家もさらにひとり加えている。
 ちなみに、本州からはこれまで、走泥社の川上力三、現代陶芸の雄鯉江良二が招かれており、ことしは岐阜在住の加藤委(つぶさ)が参加している。道内勢は、昨年が艾澤詳子(よもぎさわ・しょうこ)、ことしが川上りえと、これまた豪華な顔ぶれである。
 道内と本州、立体造形と陶という「異種格闘技」戦が、会場に緊張感をもたらしており、札幌の現代美術にとって欠かせない展覧会になっていると思う。


 冒頭画像は阿部の作品。
 「ネェ ダンナサン あるいは断・弾・壇」は、STVエントランスアートで発表したばかりの作品のヴァリアントであろう。
 何度見ても、すごい存在感である。 

            

 「上昇する8つの凸」「長方形になる14の凸」「上昇する7つの凸」の平面3点。




 加藤の作品。
 いずれも「サンカクノココロ」と題された磁器である。

 いわゆるうつわとは異なるシャープな造形である。土という素材をこのように成形するのはむつかしいことに違いない。
 薄い水色の釉薬とあいまって、まるで流氷や氷山のように見える。筆者は、フリードリヒの「氷海」を思い出した。

                  


 次いで、川上りえ「Beyond Chronicles」。
 この作品は、壁に鉄線が影をつくっているのを見た後で、裏側にまわって見るのも一興。



 題は直訳すると「年代記の彼方に」といったところか。
 輪郭線で表現された岩は、空中に浮かぶことで、人間の歴史という短い時間をはるかに超えた悠久の時に、見るものを誘うかのようだ。
 と同時に、岩が爆発した瞬間を、数千分の1秒でとらえた写真のようにも見えるわけで、おそろしく長い時間と短い時間とが同時に凝縮されて表現されているともいえる。

 作者は
「人間って、岩が長い時間かかって砂になったり地形が変わったりといった変化はふだんあまり気にしないじゃないですか。この作品を機に、そんなところにも目を向けてくれれば」
というようなことを言っていたような…。


 最後は、とにかく多忙を極めているであろうと思われる下沢敏也のインスタレーション「RE-BIRTH<森>」。



 風化した林のような陶の柱は、風化のさまを表現している。
 時の流れを刻印しているという点では、川上作品と共通するものがあるだろう。

 しかし、風化は再生への第一歩なのだ。

 緩やかに傾いたかたちは、下沢の作品ではめずらしい。
 ひびや穴は、計算して生じさせたものとは思えないほど、時の経過を物語っているかのようにあちこちにできている。


           


2009年7月17日(金)-26日(日)10:00-18:00(最終日-17:00)
コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11 コンチネンタルビル地下 地図C)

加藤委作陶展=7月17日(金)-26日(日)、GALLERY 門馬


Rie Kawakami Website
□下沢さんのサイト http://zawa32.com/

交差する視点とかたち vol.2
交差する視点とかたち 川上力三・阿部典英・下沢敏也

(道内各作家のこれまでの発表については、下のリンク先を参照してください)
阿部典英 Ten-ei Abe Exhibition(2009年7月、画像なし)

川上りえ「ANCIENT SUN」

奥村博美×下沢敏也 陶展(2009年5月)


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