道立近代美術館の常設展「これくしょんぎゃらりぃ」は、本年度4回展示替えを行う。
現在開かれている第1弾では
・阿部貞夫 ―彫波の世界
Sadao Abe’s Woodblock Prints: Carved Images on Wood
・一原有徳・多面体 地球の部品掌の中にあり
The Prints of Arinori Ichihara
・現代ガラス 素材との対話
Contemporary Glass Art: Dialogue with Materials
・新収蔵品展
New Acquisitions
の4部構成となっている。
阿部貞夫は、ちょっと感慨深い。
二十数年前に留萌に住んでいた。阿部は少年時代、留萌で育った。
留萌は音楽家を多く輩出しているが、ゆかりの美術家は少ない。留萌の文化関係者は阿部のことを大切に思っていて、文芸誌の表紙に彼の版画をデザインしたりしていた。
しかし、もちろん当時のわたしは、阿部のことなどよく知らなかった。その後も、美術館などで作品を見る機会はあまりなかった。
一昨年に出版された道立近代美術館編のミュージアム新書「北海道美術あらかると」で表紙に彼の作品が用いられた。そして、今回の個展である。再評価の機運が高まってきているといえるかもしれない。
作風は、北岡文雄と共通するような、オーソドックスな多色刷り木版画である。
釧路の街や、帰港する漁船団など、道内の風景を簡略化して表現したものが多い。というか、このデフォルメがなければ、絵はがき的なものに堕してしまう。
とくに朱色の恵庭岳を描いた連作は力が内にこもっているようだ。
「版画」といっても、まったく毛色が異なるのが一原有徳さん。
小樽在住で、ことし100歳を迎える。版画を始めて、土方定一(戦後日本の美術館業界・批評のドン的存在ともいわれる)に絶讃されて東京の画廊でデビューしたのが50歳ごろという異色の経歴の持ち主。版画作品も、抽象なのだが、歯車やスルメをプレスしたり、棒のようなイメージがびっしりと画面を覆ったり、きわめて特異な作風なのだ。
一原さんは俳人でもあり、登山家でもある。
今回の展覧会は、俳句を大きく印刷して壁に掛けるなどして、一原ワールドを立体的につかめるような工夫がなされている。
一原さんの書いた小説など、本も陳列ケースの中に並んでいた。
そういえば、一原さんって、1980年ごろの「美術手帖」に連載を持ってたよなあ。
そのころはなんとも思わなかったけど、いま「美術手帖」に連載をもつような道内の美術家っているべかーと考えたら、すごいことだと思う。
ここの読者で一原さんの版画を知らない人は少ないと思うのだが、もしまだの人がいたら、絶対に見に行くべきだ。
(この項続く)
2010年4月17日(土)~6月20日(日)9:30~5:00(入場30分前まで)、月曜休み
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D)
関係するファイル
一原有徳-版の冒険 (光岡幸治著、北海道立近代美術館編)
■一原有徳「炎」
=以下画像なし
■一原九糸郎の俳句
■北海道版画協会小品展(2002年)
■しかおいウィンドウ・アート展(2002年)
■全道展2002
■一原有徳/新世紀へ(2002年)
■一原有徳/北海道の山(2001年)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」から150~200メートル、徒歩2、3分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分
現在開かれている第1弾では
・阿部貞夫 ―彫波の世界
Sadao Abe’s Woodblock Prints: Carved Images on Wood
・一原有徳・多面体 地球の部品掌の中にあり
The Prints of Arinori Ichihara
・現代ガラス 素材との対話
Contemporary Glass Art: Dialogue with Materials
・新収蔵品展
New Acquisitions
の4部構成となっている。
阿部貞夫は、ちょっと感慨深い。
二十数年前に留萌に住んでいた。阿部は少年時代、留萌で育った。
留萌は音楽家を多く輩出しているが、ゆかりの美術家は少ない。留萌の文化関係者は阿部のことを大切に思っていて、文芸誌の表紙に彼の版画をデザインしたりしていた。
しかし、もちろん当時のわたしは、阿部のことなどよく知らなかった。その後も、美術館などで作品を見る機会はあまりなかった。
一昨年に出版された道立近代美術館編のミュージアム新書「北海道美術あらかると」で表紙に彼の作品が用いられた。そして、今回の個展である。再評価の機運が高まってきているといえるかもしれない。
作風は、北岡文雄と共通するような、オーソドックスな多色刷り木版画である。
釧路の街や、帰港する漁船団など、道内の風景を簡略化して表現したものが多い。というか、このデフォルメがなければ、絵はがき的なものに堕してしまう。
とくに朱色の恵庭岳を描いた連作は力が内にこもっているようだ。
「版画」といっても、まったく毛色が異なるのが一原有徳さん。
小樽在住で、ことし100歳を迎える。版画を始めて、土方定一(戦後日本の美術館業界・批評のドン的存在ともいわれる)に絶讃されて東京の画廊でデビューしたのが50歳ごろという異色の経歴の持ち主。版画作品も、抽象なのだが、歯車やスルメをプレスしたり、棒のようなイメージがびっしりと画面を覆ったり、きわめて特異な作風なのだ。
一原さんは俳人でもあり、登山家でもある。
今回の展覧会は、俳句を大きく印刷して壁に掛けるなどして、一原ワールドを立体的につかめるような工夫がなされている。
一原さんの書いた小説など、本も陳列ケースの中に並んでいた。
そういえば、一原さんって、1980年ごろの「美術手帖」に連載を持ってたよなあ。
そのころはなんとも思わなかったけど、いま「美術手帖」に連載をもつような道内の美術家っているべかーと考えたら、すごいことだと思う。
ここの読者で一原さんの版画を知らない人は少ないと思うのだが、もしまだの人がいたら、絶対に見に行くべきだ。
(この項続く)
2010年4月17日(土)~6月20日(日)9:30~5:00(入場30分前まで)、月曜休み
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D)
関係するファイル
一原有徳-版の冒険 (光岡幸治著、北海道立近代美術館編)
■一原有徳「炎」
=以下画像なし
■一原九糸郎の俳句
■北海道版画協会小品展(2002年)
■しかおいウィンドウ・アート展(2002年)
■全道展2002
■一原有徳/新世紀へ(2002年)
■一原有徳/北海道の山(2001年)
・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」から150~200メートル、徒歩2、3分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分