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■阿部貞夫 ―彫波の世界/一原有徳・多面体 地球の部品掌の中にあり (6月20日まで)

2010年06月12日 21時41分21秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 道立近代美術館の常設展「これくしょんぎゃらりぃ」は、本年度4回展示替えを行う。
 現在開かれている第1弾では

阿部貞夫 ―彫波の世界
Sadao Abe’s Woodblock Prints: Carved Images on Wood

一原有徳・多面体 地球の部品掌の中にあり
The Prints of Arinori Ichihara

現代ガラス 素材との対話
Contemporary Glass Art: Dialogue with Materials

新収蔵品展
New Acquisitions

の4部構成となっている。

 阿部貞夫は、ちょっと感慨深い。
 二十数年前に留萌に住んでいた。阿部は少年時代、留萌で育った。
 留萌は音楽家を多く輩出しているが、ゆかりの美術家は少ない。留萌の文化関係者は阿部のことを大切に思っていて、文芸誌の表紙に彼の版画をデザインしたりしていた。
 しかし、もちろん当時のわたしは、阿部のことなどよく知らなかった。その後も、美術館などで作品を見る機会はあまりなかった。
 一昨年に出版された道立近代美術館編のミュージアム新書「北海道美術あらかると」で表紙に彼の作品が用いられた。そして、今回の個展である。再評価の機運が高まってきているといえるかもしれない。

 作風は、北岡文雄と共通するような、オーソドックスな多色刷り木版画である。
 釧路の街や、帰港する漁船団など、道内の風景を簡略化して表現したものが多い。というか、このデフォルメがなければ、絵はがき的なものに堕してしまう。
 とくに朱色の恵庭岳を描いた連作は力が内にこもっているようだ。

 「版画」といっても、まったく毛色が異なるのが一原有徳さん。
 小樽在住で、ことし100歳を迎える。版画を始めて、土方定一(戦後日本の美術館業界・批評のドン的存在ともいわれる)に絶讃されて東京の画廊でデビューしたのが50歳ごろという異色の経歴の持ち主。版画作品も、抽象なのだが、歯車やスルメをプレスしたり、棒のようなイメージがびっしりと画面を覆ったり、きわめて特異な作風なのだ。

 一原さんは俳人でもあり、登山家でもある。
 今回の展覧会は、俳句を大きく印刷して壁に掛けるなどして、一原ワールドを立体的につかめるような工夫がなされている。
 一原さんの書いた小説など、本も陳列ケースの中に並んでいた。

 そういえば、一原さんって、1980年ごろの「美術手帖」に連載を持ってたよなあ。
 そのころはなんとも思わなかったけど、いま「美術手帖」に連載をもつような道内の美術家っているべかーと考えたら、すごいことだと思う。

 ここの読者で一原さんの版画を知らない人は少ないと思うのだが、もしまだの人がいたら、絶対に見に行くべきだ。


(この項続く)

2010年4月17日(土)~6月20日(日)9:30~5:00(入場30分前まで)、月曜休み
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D)



関係するファイル
一原有徳-版の冒険 (光岡幸治著、北海道立近代美術館編)
一原有徳「炎」
 =以下画像なし
一原九糸郎の俳句
北海道版画協会小品展(2002年)
しかおいウィンドウ・アート展(2002年)
全道展2002
一原有徳/新世紀へ(2002年)
一原有徳/北海道の山(2001年)


・地下鉄東西線「西18丁目」4番出口から400メートル、徒歩6分
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」から150~200メートル、徒歩2、3分
・市電「西15丁目」から700メートル、徒歩10分


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