「池袋モンパルナス」とは、戦前から戦後にかけて、東京・池袋かいわいに、画学生をあてこんだ貸しアトリエなどが立ち並び、絵描きが多く集まっていたため、パリの街区名に引っ掛けてそう呼んだ名前。名付け親は、旭川ゆかりの詩人、小熊秀雄だといわれる。
くわしくは、宇佐美承「池袋モンパルナス」(集英社文庫)を読んでほしい。美術や絵を愛する人すべてにおすすめできる名著です。小川原脩、丸木俊といった北海道関係者も登場する。
会場に入ると、まず、小熊秀雄のペン画「長崎アトリエ邑」がお出迎え。ただし、これは複製。
長崎とは、池袋のある豊島区の地名あ。
この一角には、松島正雄のやわらかくもあたたかみある、オーカーを基調とした風景画「セーヌ橋」をはじめ、熊谷守一、熊谷榧(かや)、古沢岩美らの絵画がならぶ。
奥には、木内克のレリーフや、原精一、福沢一郎、前川千帆(木版画)、三岸好太郎(リトグラフ)、斎藤求、児島善三郎といった画家の絵が展示されている。
こちらのコーナーでいちばん目を引くのが、右側の久保一雄「3・15」(1933年)。
ガラスの反射であまりうまく撮れていないが、1928年3月15日の共産党一斉弾圧で逮捕された久保が、獄中非転向を貫いて、出所後に、奈良刑務所を思い出して描いた作品だという。囚人が運動させられている情景で、菅笠をかぶせられているのは思想犯だとのこと。
久保一雄(1901~74)は、映画美術の世界で活躍し、携わった作品には「人情紙風船」(山中貞雄監督)、「瞼の母」、「素晴らしき日曜日」(黒澤明監督)をはじめ、五所平之介、山本薩夫、今井正といった監督の作品で仕事をしているという(Wikipedia を参照するのはあまり好きじゃないんだけど、ほかにまとまった資料が見当たらない)。
その一方、絵筆も執り続け、1944年(昭和19年)の独立展で「雪の石狩牧場」が独立賞を受賞している。
戦後の48年、独立の会員となった。
いずれにしても、戦前のプロレタリア美術の実作は、大月源二の「告別」などを例外としては、あまり現存していないといわれるのだから、この作品はとても基調だと思う。(この段落は、12月23日追記)
ほか、難波田龍起(なんばた・たつおき)の抽象画「風景」、八木伸子「ペケレット(湖)」、一木万寿三(ますみ)「街の残照」など。
八木作品のモティーフになっているのは、北区茨戸(バラト)の沼なのだが、こんなに近くに山が見えるのだろうか?
一木さんの絵は、パステルカラーで、やさしい絵柄だ。
意外だったのは鶴田吾郎「犬」。背景が真っ暗で、犬が1匹だけ描かれていた。
ところで、肝心なことを聞くのをわすれていた。
上期と下期で作品の入れ替えがあるのだろうか。
◆上期 2014年12月3日(水)~12月27日(土)
◆下期 2015年2月3日(火)~28日(土)
午前11時~午後6時、日月曜、祝日休み。※2015年1月は冬季休業
ギャラリー北のモンパルナス(札幌市西区二十四軒4の3 清水マンション)
・地下鉄東西線「琴似」駅5番出口から約390メートル、徒歩5分
・同「二十四軒」駅から約790メートル、徒歩10分
・JR琴似駅から約900メートル、徒歩12分
・ジェイアール北海道バス「山の手1の1」から約890メートル、徒歩10分
(カフェギャラリー北都館から歩いて2分ほどです)
□参考:久保一雄の略歴 http://www.shiinamachi.com/gallery/kako/kubo-kazuo/ryakureki.html