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(長文です)
1.はじめに
道内の美術関係者はすでに大半が知っているだろうが、7室を擁する道内最大の貸しギャラリーで、これまで多くの画家たちが個展やグループ展を開いて、北海道美術の歴史を刻んできた「札幌時計台ギャラリー」が、年内いっぱいで閉鎖となるという話が広まっている。
老朽化した建物の建て替えに伴うものなので、改築後の建物で再開される可能性がないとはいえないが、今のところ方針は固まっていないようだ。
札幌のギャラリーでは、大丸藤井スカイホールと並ぶ老舗であり、道立近代美術館が開館するよりも前から道内の美術ファンや作家に親しまれてきた存在であっただけに、その衝撃は大きい。前進の札幌時計台画廊は1966年開設で、69年に現在の札幌時計台ギャラリーとなった。
2階のA室とB室は大御所、ベテランが個展を開き、C室と3階のDEFG室は、絵画教室などのグループ展に用いられた。
隔月のフリーペーパー「21ACT」を出して、展示作品の批評を掲載するなど、道内のギャラリーでその存在感は群を抜いていた。
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今年は3月末で大同ギャラリー(75年開設)が、4月末でギャラリーたぴおが、それぞれ閉まる。
この3カ所は、道内の美術史にも数々の軌跡を刻んできた。
この3カ所がなくなると、ギャラリー回りで、札幌駅と北1条通の間に大きな空白が生じてしまう。
2.中心部のギャラリーの現状
札幌には美術(アート)の展示会場として総計で100を上回るギャラリーやカフェ、会館などがあるが、中心部で、いつも何らかの展示を行っている会場はそれほど多くない。
このうち、銀行のロビーや喫茶店を除いて、また、写真専門ギャラリーなどを除外し、専業のギャラリーを北から順に並べると…
ギャラリーエッセ
石の蔵ぎゃらりぃはやし
大丸画廊
大同ギャラリー
ギャラリーたぴお
グランビスタギャラリー
道新ぎゃらりー
札幌時計台ギャラリー
ギャラリー大通美術館
Kitakara ギャラリー
北海道文化財団アートスペース
三越画廊
大丸藤井スカイホール
さいとうギャラリー
HOKUSEN Gallery ivory
アートスペース201
クラーク+Shift ギャラリー
の17カ所となるだろう。
上で二つのカテゴリーに分けたのは、単に、大通公園よりも北側にあるか南側にあるかで、便宜上に区分けしたにすぎない。
このうち、グランビスタ、クラーク+Shift、Kitakara、北海道文化財団アートスペースは、企画系の比較的新しいギャラリーであり、また、大丸と三越は百貨店の画廊である。
北海道文化財団アートスペースは道内作家の作品を展示しているものの、ほかはいずれも、主に地元の作家が発表する場とは言い難い面がある。
(百貨店系画廊としては、丸井今井がなくなり、ほかに東急画廊があるが、催事や版画市などが割合に多いという印象がある)
このほか、時々空いているスペースとして、紀伊國屋ギャラリー、らいらっく・ぎゃらりぃなどがあるが、いずれにしても、道内の作家に発表の場として借りられているギャラリーというのは、札幌の都心に11カ所あるということになる。
したがって、10分の3が閉まるというのは、影響が大きい。
とはいえ、三つのギャラリーがなくなるからといって、利用者が深刻な会場難に陥ることは、たぶんないと思う。
先に挙げたギャラリーのうち、日程を埋めるのにそれほど苦労をしていないのは道新ぎゃらりーぐらいなもので、あとは特に冬場を中心に空きが生じている会場も少なくない。
3.利用減の背景
札幌時計台ギャラリーの「全盛期」は1980~90年代であったという。
毎年、あるいは、2年に1度、個展やグループ展を開いている人が多く、彼ら・彼女らは、展覧会が済むと次回を予約していくため、年末には、その翌年のスケジュールはあらかた埋まっていた。
新たに借りようとする人は、会期の希望がなかなかかなわなかったようだ。
だが、大御所が年を追って亡くなったり、年を取ったりして、個展を開かなくなっていく。
8月のグルッペ・ゼーエン、9月の小川原脩さん、10月の藤野千鶴子さんなど、「●月といえば誰それ」というのがあったのだが、その分、若い世代が参入しないので、スケジュールに年を追って、穴があいていくのである。
さらに、もともと利用の少ない季節は、大学の卒業展が開かれていたが、道教大が自前の施設に会場を転じた。
今世紀に入って、ギャラリー大通美術館や道新ぎゃらりーなど、1階のため搬入・搬出が楽なギャラリーが近くにできた影響もあるだろう。
(札幌時計台ギャラリーは日曜が休みで、搬入搬出は土曜の夕方、短時間のうちに行わねばならず、高齢者には負担感が大きい)
さらに、都心から離れた場所に貸しギャラリー、企画ギャラリー、ギャラリーカフェなどができたことも、利用者離れに拍車をかけたものと思われる。
札幌時計台ギャラリーは、絵画の展覧会が圧倒的に多く、見ているお客さんは(少なくても近年は)、中心部の道新文化センターなどカルチャーセンターの絵画教室に通っている高齢者が目立った。
大同も絵画が多いものの、工芸などもけっこうあった。
たぴおは現代美術や抽象画もいくらかあり、他の二つに比べ、やや作品傾向が異なっていた。
4.勝負すること
道内の第一線の画家、美術家にとって、札幌時計台ギャラリーを筆頭とする札幌のギャラリーで年に1度、あるいは2年に1度、大作から小品までを発表するのは、「勝負すること」である…。
函館の輪島進一さんがかつて、そういう意味のことを言っていた。
逆の言い方をすれば、年1度の団体公募展に作品を出すだけでは「第一線の画家、美術家」とは呼べない。札幌時計台ギャラリーなどを借りて、近年の成果を問うのが、現役の画家、美術家のあるべき姿だということだ。
団体公募展はともかく、ギャラリーでも定期的に個展を開く習慣は、若い世代にも引き継がれてほしいものだ。
なお、札幌時計台ギャラリーは、サッポロ未来展などは、おそらく貸し賃を安くしていたものと思う。
大同ギャラリーは、道展、全道展、新道展に企画展の機会を与えていた。
そういうメセナ的な役割も果たしていたのである。
このギャラリーの相次ぐ閉鎖が、札幌や北海道のアートを沈滞させることのないように希望したい。
1.はじめに
道内の美術関係者はすでに大半が知っているだろうが、7室を擁する道内最大の貸しギャラリーで、これまで多くの画家たちが個展やグループ展を開いて、北海道美術の歴史を刻んできた「札幌時計台ギャラリー」が、年内いっぱいで閉鎖となるという話が広まっている。
老朽化した建物の建て替えに伴うものなので、改築後の建物で再開される可能性がないとはいえないが、今のところ方針は固まっていないようだ。
札幌のギャラリーでは、大丸藤井スカイホールと並ぶ老舗であり、道立近代美術館が開館するよりも前から道内の美術ファンや作家に親しまれてきた存在であっただけに、その衝撃は大きい。前進の札幌時計台画廊は1966年開設で、69年に現在の札幌時計台ギャラリーとなった。
2階のA室とB室は大御所、ベテランが個展を開き、C室と3階のDEFG室は、絵画教室などのグループ展に用いられた。
隔月のフリーペーパー「21ACT」を出して、展示作品の批評を掲載するなど、道内のギャラリーでその存在感は群を抜いていた。
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今年は3月末で大同ギャラリー(75年開設)が、4月末でギャラリーたぴおが、それぞれ閉まる。
この3カ所は、道内の美術史にも数々の軌跡を刻んできた。
この3カ所がなくなると、ギャラリー回りで、札幌駅と北1条通の間に大きな空白が生じてしまう。
2.中心部のギャラリーの現状
札幌には美術(アート)の展示会場として総計で100を上回るギャラリーやカフェ、会館などがあるが、中心部で、いつも何らかの展示を行っている会場はそれほど多くない。
このうち、銀行のロビーや喫茶店を除いて、また、写真専門ギャラリーなどを除外し、専業のギャラリーを北から順に並べると…
ギャラリーエッセ
石の蔵ぎゃらりぃはやし
大丸画廊
大同ギャラリー
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グランビスタギャラリー
道新ぎゃらりー
札幌時計台ギャラリー
ギャラリー大通美術館
Kitakara ギャラリー
北海道文化財団アートスペース
三越画廊
大丸藤井スカイホール
さいとうギャラリー
HOKUSEN Gallery ivory
アートスペース201
クラーク+Shift ギャラリー
の17カ所となるだろう。
上で二つのカテゴリーに分けたのは、単に、大通公園よりも北側にあるか南側にあるかで、便宜上に区分けしたにすぎない。
このうち、グランビスタ、クラーク+Shift、Kitakara、北海道文化財団アートスペースは、企画系の比較的新しいギャラリーであり、また、大丸と三越は百貨店の画廊である。
北海道文化財団アートスペースは道内作家の作品を展示しているものの、ほかはいずれも、主に地元の作家が発表する場とは言い難い面がある。
(百貨店系画廊としては、丸井今井がなくなり、ほかに東急画廊があるが、催事や版画市などが割合に多いという印象がある)
このほか、時々空いているスペースとして、紀伊國屋ギャラリー、らいらっく・ぎゃらりぃなどがあるが、いずれにしても、道内の作家に発表の場として借りられているギャラリーというのは、札幌の都心に11カ所あるということになる。
したがって、10分の3が閉まるというのは、影響が大きい。
とはいえ、三つのギャラリーがなくなるからといって、利用者が深刻な会場難に陥ることは、たぶんないと思う。
先に挙げたギャラリーのうち、日程を埋めるのにそれほど苦労をしていないのは道新ぎゃらりーぐらいなもので、あとは特に冬場を中心に空きが生じている会場も少なくない。
3.利用減の背景
札幌時計台ギャラリーの「全盛期」は1980~90年代であったという。
毎年、あるいは、2年に1度、個展やグループ展を開いている人が多く、彼ら・彼女らは、展覧会が済むと次回を予約していくため、年末には、その翌年のスケジュールはあらかた埋まっていた。
新たに借りようとする人は、会期の希望がなかなかかなわなかったようだ。
だが、大御所が年を追って亡くなったり、年を取ったりして、個展を開かなくなっていく。
8月のグルッペ・ゼーエン、9月の小川原脩さん、10月の藤野千鶴子さんなど、「●月といえば誰それ」というのがあったのだが、その分、若い世代が参入しないので、スケジュールに年を追って、穴があいていくのである。
さらに、もともと利用の少ない季節は、大学の卒業展が開かれていたが、道教大が自前の施設に会場を転じた。
今世紀に入って、ギャラリー大通美術館や道新ぎゃらりーなど、1階のため搬入・搬出が楽なギャラリーが近くにできた影響もあるだろう。
(札幌時計台ギャラリーは日曜が休みで、搬入搬出は土曜の夕方、短時間のうちに行わねばならず、高齢者には負担感が大きい)
さらに、都心から離れた場所に貸しギャラリー、企画ギャラリー、ギャラリーカフェなどができたことも、利用者離れに拍車をかけたものと思われる。
札幌時計台ギャラリーは、絵画の展覧会が圧倒的に多く、見ているお客さんは(少なくても近年は)、中心部の道新文化センターなどカルチャーセンターの絵画教室に通っている高齢者が目立った。
大同も絵画が多いものの、工芸などもけっこうあった。
たぴおは現代美術や抽象画もいくらかあり、他の二つに比べ、やや作品傾向が異なっていた。
4.勝負すること
道内の第一線の画家、美術家にとって、札幌時計台ギャラリーを筆頭とする札幌のギャラリーで年に1度、あるいは2年に1度、大作から小品までを発表するのは、「勝負すること」である…。
函館の輪島進一さんがかつて、そういう意味のことを言っていた。
逆の言い方をすれば、年1度の団体公募展に作品を出すだけでは「第一線の画家、美術家」とは呼べない。札幌時計台ギャラリーなどを借りて、近年の成果を問うのが、現役の画家、美術家のあるべき姿だということだ。
団体公募展はともかく、ギャラリーでも定期的に個展を開く習慣は、若い世代にも引き継がれてほしいものだ。
なお、札幌時計台ギャラリーは、サッポロ未来展などは、おそらく貸し賃を安くしていたものと思う。
大同ギャラリーは、道展、全道展、新道展に企画展の機会を与えていた。
そういうメセナ的な役割も果たしていたのである。
このギャラリーの相次ぐ閉鎖が、札幌や北海道のアートを沈滞させることのないように希望したい。
開催しています。締めくくりのような自選展になっておりますので、ご来場ください。
会期中に必ずうかがいます。
みなさんも、行きましょう!!
いよいよ大同ギャラリーとお別れですが、
また、どこかでお目にかかりましょう。
集大成的な個展になりましたね。
見ることができて、良かったです。