回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

赤い手帖

2021年04月09日 15時52分31秒 | 日記

「黒革の手帖」といえば、松本清張のピカレスク・サスペンスの長編として名高いが、これが赤い手帖だったらどうだろうか?アントワーヌ・ローランの「A Femme au Carnet Rouge」は、ある種サスペンスでもあり、またよくできたおとぎ話のような恋愛小説でもある。ここ2週間ほど、ほかにできることが何もなかったのでゆっくりゆっくりと読んだのがこの本。この小説の邦訳、題名が「赤い手帖の女」ではなく「赤いモレスキンの女」というのも秀逸。モレスキンと言えば、すぐに手帖のことだとわかるしアマゾンでは2000-3000円で売っているから日本でもファンが多いと思う。もちろんこの本に出てくる赤い表紙の手帖も。今は、ジェンダーについて何か不用意なことを言うと大変なことになるご時世だが、この本の題名が例えば、「赤いモレスキンの男」というものでは何だかさまにならない(あるいはおどろおどろしい)ような気がする。

もともとモレスキンは19世紀後半、フランス、トゥールの製本業者によって手工業で作られた硬い表紙と手帖を閉じるためのゴムバンドが特徴だった。パリの文房具屋で販売され、ゴッホやピカソといった多くの有名人が使用していた。最も有名なモレスキンのユーザーは英国紀行作ブルース・チャトウィンと言われている。一旦は製造中止となったが1997年に再開された。その時のモットーが「製品には“物語”があることが重要」となかなかスノッブ。しかし、この小説を読んだ後ではこのひとことがしっくりくるのも事実。

ネタバレになるから本の中身を細かく書くことはできないが、書店主が拾った女もののバッグに赤いモレスキンの手帖が入っていた、というところから始まってスリリング?な展開を見せる。もっとも、「黒革の手帖」のように大銀行から巨額の金を横領する、夜の銀座での魑魅魍魎の跋扈、と言った犯罪やカネの話はないので安心して読める。

手帖や日記帳に凝る知人は結構いるが自分は毎年航空会社から贈られてくるこのデスクダイアリーで間に合わせている。モレスキンの手帖を買えばもう少ししゃれた日を過ごせるかも知れないが~

コメント (6)
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