ロンドン時代の現地の同僚の一人に骨董好きがいて、なかんずく古い時計を集めていた。ただ集めるだけではなく、動かなくなった古時計を二束三文で仕入れてきて時間をかけて修理し動くようにしてからまた売りに出す、ということもやっていた。昔の時計の中には時報を打つものが多い。その時報の音も千差万別。大体1時間ごとに鳴るもの多いが、古い時計でもあり一斉に鳴りだすとは限らない。5分10分のずれは当然だし、また時計自体どこで止まるかわからないから、結局家の中ではひっきりなしに時報が鳴っていて、特に夜などは近所迷惑になるから音が出ないようにしなければならず大変、とこぼしていた。
時計が一般に普及するまでは教会の鐘などが時刻を知らせる役割を果たしていた。以前TVの旅番組でスコットランド、エジンバラ城の時刻を知らせる大砲の話があった。普通であれば、区切りの良い正午に大砲を撃つのだが、この城では午後1時に大砲を撃つという。その理由は、もし正午に撃ったのなら12発撃たなければならないが、午後1時なら1発で済むから、という経済的な理由だそうだ(その真偽は判らないが・・・)。しかしもし昼食の合図にしようとするなら役に立たないかもしれない。
昨日、エリザベス2世女王の夫君、フィリップ殿下が99歳で逝去された。彼はヴィクトリア女王の血を引くギリシャ王族の一人だが、結婚してからはエジンバラ公爵に。王配として女王を長年支えてきたから、彼の死は自分にとってイギリスの一つの時代の区切りのように感じられる。
同僚に触発されたというわけではないが、自分もいくつか古時計を買ってみた。その一つ、まだヴィクトリア女王治世の19世紀に、ブドウをかごに入れようとしている少女をモチーフにした、フランスで作られた置時計。ケンジントンの骨董屋で見つけて、少し高かったのをいくらか値引きしてくれたので手に入れることが出来た。